[CJ 2006#51]なぜ中国で「Eve Online」? あのコアなSFゲームが25万人の課金者
欧米ナイズ(?)されたアジア人という雰囲気満点のKen Woo氏。バタバタと忙しく指示を飛ばしていた最中なのに快く取材に応じてくれて感謝。Woo氏曰く「なんで日本でEve Online売れないんですかねえ? 疑問で仕方ありません」
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4Gamer読者なら知っている人も少なからずいるかと思うが,カリカリのSF MMORPGである「Eve Online: The Second Genesis」(Eve Online)は,欧州を除くと中国でスマッシュヒットを飛ばしている。昨年同様,今年もChinaJoyに出展。しかもオープンβテスト直後の正式稼働を迎えての,記念ともいえる展示となった。 中国で流行っている理由を,当人達はどう考えているのだろうか。Eve Onlineの中国パブリッシャーである光通通信有限公司のマーケティングディレクターKen Woo氏が会場にいるところを見つけたので,立ち話程度ではあるが話を聞いてみた。
4Gamer: 慌ただしいところすいません。私の浅はかな読みでは,そもそも中国市場でEve Onlineがこれほど熱烈に迎え入れられるとは思っていませんでした。そのあたりはどうお考えですか?
Woo氏: いろいろな要因があるとは思いますし,我々自らも考えているのですが,なかなかはっきりしたことは分かりません。ただ確実に言えることもいくつかあって, 1)中国オンラインゲームマーケットは恐ろしい勢いで拡大している 2)中国はSFのファン層が非常に多い という部分は否定できないと思います。
4Gamer: SFファンってそんなに多いんですか?
Woo氏: 多いんですよ。知りませんでした? そもそもその要因は日本のアニメなんですけどね(笑)。日本のアニメが入ってきたときに,そのあまりの影響力にSFファンが大量に増え,その人たちが中心になってEve Onlineを盛り上げてくれていると思っています。
4Gamer: 確かにグラフィックスは非常に美しく,まさにみんなが頭でイメージする「SF」というものそのものですよね。やはり制作者も強烈なSFファンなんですかね?
Woo氏: どんな人がやってると思います?
4Gamer: 素直にSFファンな人なんだろうなぁ,と思っています。しかも結構コアなSFファン。
Woo氏: なるほど。普通そう考えますよね。Eve Onlineの開発元CCPはアイスランドの会社なのですが,実はそのメンバーの非常に多くが天体物理学者なんです。
4Gamer: ……天体物理学者?
Woo氏: ええ。最初は実習教材か何かだったんですかねえ(笑)。なもので,宇宙をシミュレートするという方向にかけては異様なまでの凝りようを見せています。星系なんてすでに2500も実装されてるんですよ。
4Gamer: 学者が多いというのもまた変わったゲームですね……。しかし,このなんともいえないいわゆる「欧米の匂い」というものが,中国でこれほど受け入れられるとは,ちょっと意外でした。
Woo氏: その「欧米の匂い」が好まれる原因だと思ってます。確かに中国はまだゲーム市場の歴史も浅く,遊ぶ側のユーザーのレベルも高いとはいえません。しかし,そんな中にも先進的な嗜好を持つユーザーが少なからずいて,彼らの欲求を満足させてあげられるのが,このEve Onlineというものではないかと。
4Gamer: 言葉で聞けば確かに理解できるのですが,アジア圏で結果を出しているのって中国だけじゃないですか。
Woo氏: そうですね。私に言わせてもらえるならば,なんで日本で流行らないのかのほうが意外です(笑)。
4Gamer: ちなみにプレイヤーは何人くらいいるんですか?
Woo氏: 同時接続が4万人ほどです。
4Gamer: 参考までに,課金者数は何人で,IDの累計数は何人くらいなんですか?
Woo氏: 課金者が25万人ほどで,ID累計は150万人です。……でも累計IDなんか聞いても仕方ないでしょう?
4Gamer: そうなんですけど,日本では結構指標に使われるんですよ。
Woo氏: 中国ではとにかく「同接数」ですね。そこですべてが決まります。累計ID数で語るなんて始めて聞きました(笑)。
4Gamer: ちなみに普通に月額課金なんですよね。課金額はいくらくらいですか?
Woo氏: 月に66元です(1000円強)。
4Gamer: Eve Onlineが動くそれなりにいいマシンを持っている人で毎月66元を払っている人が25万人いるんですね。
Woo氏: スペックはそんなに必要ないですよ。もちろんいいマシンのほうがキレイに表示されますが,GeForce2レベルでもプレイはできます。それに,評価を得ているとはいえ,まだわずか25万人です。もっと数を伸ばしていけるようにがんばっていきたいです。
4Gamer: なるほど。ありがとうございました。
広大な中国では「わずか25万人の課金」(Woo氏談)とのことだが,あの作品が中国でちょっとしたブームになっているのは,正直なところ,とても意外。あの圧倒的な「SF」の雰囲気バリバリのビジュアルを,25万人もの人が面白いと思ってお金を払っているわけだ。 まだまだコピーと“インスパイア”に代表される作品が満載のChinaJoyの会場において,圧倒的なエレガンスさを持って異彩を放っていたEve Online。日本上陸も目指しているようなので,知らなかった読者はぜひお知りおきいただきたい。昨年「こちら」に掲載したプロモムービーなど見つつ,(3年以上前の作品なのに)いまでも十分に通用するそのグラフィックスを堪能してもらいたい。(Kazuhisa)
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