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[CJ 2006#58]商業・娯楽・教育。8月15日クローズドβテスト開始の日中戦争MMORPG「抗戦Online」について,きちんと聞いてみた
2006/08/07 22:44
 当サイトでは「奥谷海人のAccess Accepted」第70回で状況をお伝えして以来,話題が途絶えていた日中戦争MMORPG「抗戦Online」。今年のChinaJoyでは開発元である宝徳網絡のブースが設けられ,試遊台も用意されていた。
 日本国内ではセンセーショナルな受け取り方ばかりが先行した感のある本作だが,肝心のゲーム内容はどうなのか。気になる周辺事情とともに,宝徳網絡のマーケティング担当 喬嬌氏にじっくり話を聞いてきたので,お届けしよう。

 プレイヤーは1937年から1945年にわたる日中戦争に参加,中国を舞台に日本軍と戦うのがプレイの内容だ。八路軍,新四軍,東北抗日民主連軍という共産党系部隊のいずれかに参加することになるが,プレイの難度はどれでも同じで,史実に基づき,戦場の所在と相手になる日本軍の部隊が変わる,ということのようだ。
 なお,数的にはずっと多かったはずの国民党軍が登場するかどうか聞いてみたが,現在は実装されていないとのこと。ただし,今後サービス提供地域を拡大する段階で導入していく予定という,なかなか微妙な回答だった。なお国民党軍は単純に味方として登場するようだが,これはゲームのモチーフを考えれば然るべき位置づけといえよう。

 プレイヤーの職業は,二次にわたる転職後のものを合わせて,現在37種類が用意され,一次職は17種類ほど,このうち10種類は生活/生産系のようだ。戦闘系の職業は大まかに,刀や槍を使う接近戦系と,銃器系,医療/地雷/爆弾などを担当する特殊系という三つに分かれている。ちなみに医療系には女性兵士のキャラクターも含まれている。RPGの生産職から「国家総力戦」という単語をリアルに連想する機会も,そうそうあるまいと思う。
 キャラクターの成長システムはレベルベースで,これに武器の種類などに応じたスキルが加わる。スキルの総数は400種類,1キャラクターで20から30種類ほどを身につけられるという。
 キャラの成長について特筆すべきなのが「軍隊システム」だ。これは,キャラのレベルが上がるにつれて軍隊内における階級が上がり,強力な特殊スキルが覚えられるようになるというもの。ただし,例えばNPCを率いて指揮官の役を務めたりするようにはならないようで,あくまでキャラの成長段階についての概念に留まる。
 キャラクターが使用する武器には,「大刀」(いわゆる青竜刀)「紅桜槍」(赤い総のついた槍)「歩槍」(歩兵銃)「手槍」(拳銃)のほかに手榴弾や地雷などがあるという。

 このゲームにおいて,味方は「根拠地」におり,日本軍は各都市に陣取っている。そして日本軍との戦いには,以下のとおり大きく三つのタイプがある。

根拠地から出撃して,都市の周囲を警戒する「哨兵」と戦う
「良民証」を持って都市に潜入,都市内の日本軍と戦う
根拠地に攻め寄せる「掃蕩軍」と戦って撃退する

 共産党系部隊として参加するだけに,日本軍を相手にしたゲリラ戦が,通常の戦闘となるようだ。



 ブースの試遊台では,収穫物を日本軍から守るとか,偽の抗日武装勢力のところに行って旗を持ち帰るとかいったクエストが体験できるようになっていた。実際にプレイしてみると,村の中を歩き回るニワトリを剣で倒して,「新鮮な鶏肉」を手に入れたりするという,いたってオーソドックスなクリックゲーである。
 そこで,もう少し大がかりなクエストやミッションが用意されているかどうか聞いてみたところ,ゲーム内イベントを含め,史実の状況に基づくものが多数用意される予定とのことだった。また,それとは別に,坦克(戦車)に乗り込んで戦闘できる「タンクモード」も盛り込まれているという。
 史実に範をとったクエスト/ミッションが存在するとなると,気になるのは歴史上の実在人物が登場するかどうかである。これについては,中国側には登場せず,日本軍側には実名をもじった感じのキャラクターが登場するという話だった。例えば“東條英鶏”というように,実名の一字を中国語で同音の別の字に代えるといった調子らしい(「機」と「鶏」は同音で,カタカナ表記すればともに「チー」である)。



今回質問に答えてくれた,宝徳網絡のマーケティング担当 喬嬌氏
 大まかな展開スケジュールと今後の予定を聞いてみると,差し当たり8月15日(戦勝記念日)にクローズドβテストを開始し,10月にはオープンβテストに移行予定とのことだった。長期的な予定としては,中国でのサービスインを済ませたのち,台湾や東南アジア諸国,韓国,日本での展開を考えているそうで,すでに韓国や日本の企業とは話を始めている(!)そうだ。

 さて,この作品は抗日戦60周年記念事業として,共産主義青年団(共青団)中央と宝徳網絡が協力して企画したものだ。では,開発費用は共青団側から出ているのだろうか? 喬嬌氏はこれを明確に否定,開発費用はすべて宝徳網絡が負担しており,その点では通常のオンラインゲームビジネスであると述べた。
 もう一つ気になるのが,開発/展開の意図の問題だ。喬嬌氏はこのゲームが持つ性格として「商業」「娯楽」「教育」の三つを挙げた。そして教育要素に関連して「これまでに日本で開発された第二次世界大戦のゲームのいくつかを見て,中国の人はたいへん悲しみました。それで,どうしても中国側から見た戦争を,ゲームで表現する必要があると考えたのです」と,いたってシンプルに答えてくれた。



 冒頭でも触れたように,日本国内の一部にはこの作品をセンセーショナルな話題と受け止め,過度に政治的なものと見なす傾向が見られる。そこで念のため少々,いらぬ講釈に踏み込んでおこう。
 まず,日中戦争終結60周年という分かりやすいタイミングで,こうしたモチーフのゲーム作品が登場することに対し,過度に神経を尖らせてみても,それはおそらく見当違いであろう。中国にしてみれば,過去に幾多の文学作品や映像作品,はたまた演劇で描いてきたお馴染みのモチーフを,昨今の社会情勢に応じてゲームでも展開する,ただそれだけのことである。

 中国の人々が広汎に反日意識を持っていて,その表れが例えばこのゲームだと考えるのも,同じ種類の誤りである。現在の日本人が全体としてそうであるように,現在の中国人は全体として,反日意識に凝り固まるほど単純でもなければヒマでもない。およそ,ある国が自分の国にことさら敵意を持っていると「信じたい」のは,自国が恨まれるに値するだけ偉大だと「信じたい」心理の裏返しである。実際,この作品のブースに取り立てて多くの人が集まっている様子も見られなかった。
 細かな事実認定がどうあれ,60年(以上)前に日本が中国を侵略し,幾多の悲劇を生み出したのは歴史的事実である。その彼らが,彼らの国家的/民族的体験を,彼ら自身の視点でゲーム作品にしたところで,それ自体は不思議なことではない。もちろん,喬嬌氏の言う一部日本製WWIIゲームが持っていた問題と,ちょうど逆の問題が含まれてしまう危険はあるけれども。

 日中間で歴史問題が政治的なカードになってしまっている以上,日本人として中国側の意図を警戒してしまうのは,確かに無理からぬことだろう。だが,中国側の事情やここまでの経緯を踏まえず,抗日モチーフのゲームだからといってただちに不公正な反日宣伝と見なすのでは,視野の狭い自国中心主義レベルの言説に落ちてしまう。彼らがこのゲームに,彼らから見た教育という意味を込めるなら,それを見た我々日本人は,なるべくレベルの高い「対話」を以て応じなければならない。そのための題材として,抗戦Onlineは実に興味深い存在なのだといえよう。(Guevarista)


抗戦Online
■開発元:宝徳網絡
■発売元:宝徳網絡
■発売日:2007年内
■価格:N/A
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2006.08/20060807224439detail.html