[GC 2006#81]鉄道シム久々の新作「Rail Simulator」は,ファン待望の古くて新しいタイトルだ
2001年発売の「Microsoft Train Simulator」(邦題 マイクロソフト トレイン シミュレータ)は,Microsoft Game StudiosとイギリスのKuju Entertainmentによって制作された,タイトルどおりの列車シミュレーションだ。プレイヤーは,電車や蒸気機関車などの運転手として,決められたダイヤどおりの正確な運行をしたり,「吹雪の中,貨車を牽引してロッキー山脈を越える」といったミッションを楽しんだりできる。ゲームには,その特性やサウンドなどが再現されたさまざまな車両が用意され,多くの鉄道好きゲーマーに高く評価されたシミュレータだった。
しかし,2002年に制作開始が発表され,翌年には発売されるはずだった「Microsoft Train Simulator 2」は開発が遅れ,2004年8月にキャンセルされてしまった。キャンセルの理由としてMicrosoftは,「ビジネス上の戦略的なもの」としかアナウンスしていないが,かくして,Train Simulatorはシリーズにならず,1本で終わってしまったのだ。
そのため,GC 2006会場の「Games for Windows」ブースでこの「Rail Simulator」のプレイアブル展示を見たとき,なんというか,妙な既視感を覚えたのは仕方のないところ。2005年6月28日の記事でお伝えしたとおり,Microsoft Train Simulator 2のキャンセル後も,開発元のKuju Entertainmentは単独でプロジェクトを続けており,今回,Electronic Artsをパブリッシャに迎えて,再び我々の前に姿を現したというわけだ。なんとなく,生き別れの子供に再会したような気分といえるだろう。いえないかな。
“リスタート”の発表以来,出てくる情報は壁紙と数点のスクリーンショットぐらいと,あまり多くなかったのだが,にもかかわらず,いきなりプレイアブル展示というところがGCである。むろん,Electronic Artsのブースにも試遊台があったが,1台こっきりで,なぜだかGames for Widowsブースのほうが本作を大々的(試遊台が12台以上。ただし,説明員なし)に取り扱っているという面白い現象が見られた。
プレイアブル展示されていたRail Simulatorだが,選べる列車はDB(ドイツ鉄道)のDeutsche Bahn 101,イギリスのBritish RailClass 55 Deltic,そして蒸気機関車Black5の3種類。選べるゲームモードは(ドイツ語なのではっきり読めなかったが)フリー走行に相当するものだけ,また走れる範囲もさほど広くなく,全体としてテクニカルデモの色合いの濃いバージョンだった。とはいえ,少ないキー操作で手軽に走れるためか,展示台の前にはたくさんの人が並び,走ったり転覆したり逆走したりと,なかなか楽しい光景が見られたのである。
電車のモデリングや運転席内部の作り込みはそれなりに細かい印象を受ける。走れるのは,牧場や畑の広がるヨーロッパの田園地帯で,ところどころに駅や操車場などがある牧歌的な雰囲気の土地。グラフィックスのレベルも高く,走行中の電車の運転席から外を眺めると,窓の外を流れる風景は非常にリアルだ。 とはいえ,部分的にテクスチャやオブジェクトの乏しい部分もあり,まだまだ開発途中といった感じを受けるのも事実。いかに“本物っぽい”ムードを出せるかどうかがシミュレータの肝なので,さらなるアップグレードを期待したい。
■ルートは4種類。エディタも付属
製品版に予定されているルートは,ヨーロッパにある以下の4路線。- オックスフォード 〜 パディントン(現代)
- ハーゲン 〜 ジーゲン(現代)
- ニューキャッスル 〜 ヨーク(1970年代)
- バス 〜 テンプルコンベ(1950年代)
それぞれ走れる列車が決まっており,そのあたりはTrain Simulatorに似た仕様だ。ゲームシステムに大きな変更はないということだろう。4路線では寂しいという人は,サードパーティのデータセットや,ほかのプレイヤーの作ったデータを利用することになる。
というわけで,土地やシナリオ,新しいルートなどを作ることができる「エディタ」も本作の重要な要素。Train Simulatorにもエディタ機能は備えられていたが,こちらはさらに使いやすく高機能なものが提供される予定だ。現段階では,いささか動作が不安定な感じは否めなかったが,クリック一つで簡単に路線やシーナリーを生成できるのは面白そうだった。 Flight Simulatorのように,機体(車両)や空港(駅)などさまざまなデータが拡充し,それらをダウンロードしてゲームの幅を広げられるようになれば,さらに人気が出る。そのためにもエディタの存在は欠かせないので,開発側としては力を入れてくるはずだ。
久々に登場する列車シミュレータとなるこのRail Simulatorは――やや未知数の部分が多いものの――かなりの訴求力を持った一本だ。憧れの運転手となって,ヨーロッパを颯爽と駆け抜けよう。発売は2007年春が予定されている。(松本隆一)
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