[TGS 2006#29]ATI,携帯電話で3Dゲームを実現する次世代Imageon実働デモを展示
TGS 2006のホール3,カナダ系企業の合同ブースであるカナダパビリオンにATI Technologies(以下ATI)が出展している。 AMDに買収されるため,カナダ系企業としては最後のTGS出展となるATIだが,今回は携帯電話などのハンドヘルド機器向けメディアプロセッサ「Imageon」を中心に展開。Radeonシリーズを搭載したPCゲームの試遊台に囲まれる格好で,一番目立つ場所にImageon搭載の携帯電話と,開発キット(以下SDK)の実動デモが置かれ,かなりの注目を集めていた。
Radeon搭載PCによる試遊台。Radeon X1600シリーズが中心だった
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■Xbox&PS2クラスの3Dゲームがそのまま動く ■次世代Imageon
ブースにあった,Imageon搭載携帯電話の例。ずらっと並んでいたなかでは,Motorola製端末が多かった
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ATIといえば,PC向けプロダクトであるRadeonのイメージが強いものの,携帯機器やデジタル家電向けのプロセッサでも,同社はかなりのシェアを持っている。そしてImageon(イマジオン)はそんなATI製品のなかで,携帯機器にフォーカスした製品だ。 Imageonは,グラフィックス処理のほか,LCDやカメラのコントローラ,MPEGデコーダなどの機能を統合した製品。これだけの機能を統合していると,消費電力面が気になるかもしれないが,ATIテクノロジーズジャパン コンシューマービジネス・ユニット ハンドヘルド・プロダクツ・グループ ISVリレーションズ・マネージャーの伊藤克己氏は「これまで別々に携帯電話へ実装していたさまざまなコントローラを,Imageonで一つに集約できるため,消費電力面でも非常に有利です」と説明する。実際,国内大手メーカーの3G携帯電話では,バッテリー駆動時間を長くする目的でImageonが採用されているという。
Imageon W2300のSDK。携帯電話のサブディスプレイや,カメラも制御できるようになっているのが分かる
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そして本題。今回,手にとって画面をチェックできる状態でSDKが展示されていたのは,Imageon W2300シリーズだ。現行製品であるImageon W2200シリーズが2Dグラフィックスに特化していたのに対し,Imageon W2300シリーズは「Xboxやプレイステーション2クラスの3Dグラフィックスがそのまま動く」(伊藤氏)レベルの3Dグラフィックス能力を持つのが特徴とされている。実際,SDKではPCやXboxで発売された3D RPG「Sudeki」をほぼそのままポーティングしたというウォークスルーデモが動作していた。 3D APIは組み込み機器向けのOpen GLである「OpenGL ES 1.1」(ES:Embedded Systems)。別のSDKで動作していたATIによるテクニカルデモでは,反射や透過,水&炎の表現やスキン(肌)シェーダなどが,240×320ドットの小さな画面で表現されているのを確認できた。
左上がSudekiのウォークスルー,残る5点はATIのテクノロジーデモから。これらはすべてリアルタイムで動く
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ちなみに,現在の携帯電話では,Linux,Symbian OS,Windowsや,BREWベースのものなど,OSが多岐にわたっているが,OpenGL ESベースのImageon W2380シリーズはそのどれでも利用可能だ。
ATIは,Imageon W2300シリーズに「Imageon 3D」という名前を与えている
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SDKはWindows CEベースで,伊藤氏によれば「Live Anywhereで,Windows VistaやXbox 360との連携も考えられます」とのこと。確かに,これだけ滑らかに3Dグラフィックスが動くなら,PCやゲーム機との連携は不可能でないかも……と思えてくる。もちろん,2007〜2008年を考えると,携帯電話といえど640×480(あるいは480×640)ドット程度のディスプレイ解像度が標準になるはずで,その解像度でどれだけ動くかは,さすがに今回のデモだけだと分からない。そのため,軽々しく結論を出すべきではないが,次世代携帯電話にPCゲームとの連携という期待を抱かせてくれるには十分なのも確かだ。
PCゲームだけを追いかけている人にとっては,ほかのプラットフォームにまで目を向けるのはなかなか大変だが,Live Anywhereを携帯電話側から実現するかもしれないImageon W2300シリーズには,目を向けておいたほうがいいかもしれない。(佐々山薫郁)
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