[TGS 2006#46]「HoAE」開発元,GSC Game World CEO,Sergiy Grygorovych氏インタビュー
テクモのPCゲーム第一弾として発売が予定される,ファンタジーRTS「Heroes of Annihilated Empires Episode I 〜 黄泉の国 アトランティス 〜」(以下,HoAE)のデベロッパ GSC Game WorldのCEO,Sergiy Grygorovych氏が東京ゲームショウ2006に合わせて来日していた。同氏が登壇したテクモのプレスカンファレンスについては,こちらの記事でチェックしてもらいたい。
4Gamerでは,このGrygorovych氏にインタビューを行ったので,その模様をお伝えする。発売間近のHoAEはもちろん,話題だけが先行している「S.T.A.L.K.E.R. Shadow of Chernobyl」(以下,S.T.A.L.K.E.R.)は,今一体どうなっているのか,についても,じっくりと話を聞かせてもらってきた。
(左から)GSC World Publishing Sales Manager Victoria Boyko氏,GSC Game World CEO Sergiy Grygorovych氏,テクモ マルチコンテンツ事業部プロデューサー 河野順太郎氏,テクモ 国際事業部 吉良真史氏
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4Gamer: 本日はよろしくお願いします。来日は今回が初めてですか?
Grygorovych氏: こちらこそよろしくお願いします。ええ,私が日本に来たのは今回が初めてです。
4Gamer: 日本の印象はいかがでしょう。
Grygorovych氏: まずびっくりしたのは,日が沈むのが早いことですね。ロシアではこの時期は22時くらいまで日が出ているのですが,日本では18時くらいには沈んでしまうので驚きました。……というくらい,日本では見るものすべてに驚かされていますよ。
4Gamer: 我々としては,22時まで日が出ているということに驚きますけどね(笑)。 では,今回この日本で,東京ゲームショウ2006という大きな舞台に出展することになりましたが,今のお気持ちは。
Grygorovych氏: 今回のHoAEは,テクモさんを通じての出展で,しかもテクモさんのPCゲームとして初のタイトルということでたくさんの注目を寄せてもらい,とてもありがたいことだと感じています。こうした大きなショウで,多くの人に見てもらう機会が持てたことを嬉しく感じています。来年以降もまた,必ず東京ゲームショウに来ようという気持ちになりました。
4Gamer: 次回来日したときには,HoAEの第二章以降の聞かせていただけるようになっているといいですね。
Grygorovych氏: ええ,そうできるようにがんばります(笑)。
魔法世界と現実世界を結ぶ,壮大な謎を解き明かしていく
4Gamer: ではまず,HoAEのバックストーリーについて教えてください。
Grygorovych氏: まず,HoAEの場合,三部作となっていて,ストーリーの核となる部分は,魔法の世界と我々の住む現代の世界の謎です。そして,今回発売する第一部は,魔法の世界の話がメインです。第二部,第三部で,我々の住む現在の世界とのつながりに関する謎が解かれていきます。 この世界では,太古の昔に存在した魔法文明がある一人の男の手によって失われてしまい,現実世界にあるような,科学万能の時代に変わっていくのです。その謎を解き明かしていくというのが,第二部,第三部でのストーリーになります。
4Gamer: 本作の世界観や背景のストーリーは,ファンタジー小説に基づいているわけですが,原作の魅力は一体何でしょう。
Grygorovych氏: ゲームでも同様ですが,原作の一番の魅力は,魔法世界だけの話ではなく,魔法世界と我々の住む現実世界がどのように結びつくのかという,壮大な謎を解き明かしていくところにありますね。
4Gamer: なるほど,確かに通常のファンタジーものではあまり見られないテーマですね。 さて,HoAEはヒーローシステムを大きく取り上げたRTSですが,一般的なヒーローシステムと比べて,本作ならではの部分を教えてください。
Grygorovych氏: 例えばWarcraftシリーズのヒーローは,単独ではなく,常に自分の軍勢を作って行動していますが,HoAEの場合はこうした軍勢に頼らずに,ヒーローだけをこれらに匹敵するほど強くしてことができます。
4Gamer: HoAEは,コサックスシリーズなどのこれまでの作品同様,膨大な数のユニットを動かすというイメージが強いのですが,ヒーローだけで戦うこともできるのですね。
Grygorovych氏: その通りです。通常のRTSのようにユニットを育ててゲームを進めていくこともできますし,RPGのようにヒーローをどんどん強く育てていく遊び方もできます。この両者のバランスをうまく取っているのがHoAEの特徴で,具体的には,ユニットを生産している間は,ヒーローユニットを動かすことができません。つまりその間は,経験値を上げることができないわけです。そして一定時間が過ぎるとヒーローユニットを動かせるようになるのですが,その間は逆にユニットを生産できないようになっています。 こうすることで,RTSとRPG的な要素をプレイヤーがうまくバランスを取りながら遊べるようにしています。これは今までに誰もやったことがなかった,RTSに新しい戦略を持たせるシステムだと自負しています。
4Gamer: なるほど,確かにこれまで聞いたことがないシステムですね。
Grygorovych氏: 私達はこのシステムを“RTS vs RPG”と呼んでいます。
4Gamer: 日本ではなかなかRTSがヒットしないという背景がありますが,このRPG的なヒーローシステムなら,日本のゲーマーに受け入れられそうな気がしますね。ほかにも何か特徴的なものはありますか?
Grygorovych氏: HoAEではグラフィックスエンジンを新しくしており,マップ上で動かせるユニットの最大数は6万4000ユニットにまで拡大されています。
4Gamer: それは,これまでのコサックスのエンジンをベースにしたものですか?
Grygorovych氏: いいえ,まったく新しいエンジンを一から作り直したものです。コサックスは2Dのグラフィックスエンジンでしたが,HoAEの場合は完全に3Dのグラフィックスエンジンになっています。
4Gamer: そうだったんですね。ところで,あまりにユニットの数が多すぎて,初心者にとっては難しすぎるといったことはないんですか?
Grygorovych氏: もちろん,6万4000ユニットを一つ一つ動かすわけではなくて,うまくグループ化できるようになっています。6歳くらいの子供でも,最初のステージから最後までプレイできるようになっていると思いますよ(笑)。1画面には,大体,1000から2000くらいのユニットが表示できます。
4Gamer: 3Dグラフィックスで1画面に2000ユニットだと,相当のマシンスペックが必要に思えるのですが,実際にはいかがでしょうか。
Grygorovych氏: 実は,シングルプレイではそれほどのスペックは必要ありませんが,マルチプレイの場合は,対戦相手のユニットも含めるとかなりの数になりますので,ある程度高いスペックが必要になります。とはいっても,最新のFPSが要求するほどのスペックが必要となるわけではありません。 エイジ オブ エンパイアシリーズがまだ50〜60ユニットくらいしか動かせなかったときに,コサックスではすでに8000ユニットを動かしていました。よく似たような質問をされるのですが,グラフィックスカードが少しくらい旧型でも,多くのユニットをあまり無理なく動かせるノウハウがあります。HoAEで使われているグラフィックスエンジンは,S.T.A.L.K.E.R.のようなFPSにも応用できるほどの高性能なものなので,日本のプレイヤーにもぜひ注目してもらいたいですね。
HoAE第三部では千人規模のマルチ対戦が実現? S.T.A.L.K.E.R.はついに発売秒読み段階へ
4Gamer: 少し気が早いかもしれませんが,第二部以降の構想について,できる範囲で聞かせてください。
Grygorovych氏: 今回の第一部では,機械仕掛けの敵が少しだけ出てくるのですが,第二部ではそれが大きな国となって登場して,戦いを繰り広げることになります。第三部に関しては,技術的な新しい試みに取り組んでみようと思っていて,千人レベルのマルチプレイを実現できればと考えています。ちなみに,第一部では7人までのマルチプレイになっています。
4Gamer: 千人レベル? それは凄い。そのようなマルチプレイのRTSなんて想像したこともありませんが,どのようなものになるんでしょうか?
Grygorovych氏: もちろん,一般的なマルチプレイとはまた違ったものにしなくてはいけないと考えています。この場で説明をするのはなかなか難しいので,それについてはまた別の機会に,あらためてお話しできればと思います。
4Gamer: 分かりました,期待しておきます。 さて,ゲームエンジンに関していえば,S.T.A.L.K.E.R.もまたグラフィックスエンジンが見どころの一つとなっているゲームですよね。
Grygorovych氏: S.T.A.L.K.E.R.のグラフィックスエンジンに関しては,我々は自信を持って世界で一番優秀だと言えます。いま市場に出ているDirectX 9世代のグラフィックスカードの性能を,すべて引き出すことができるものです。
4Gamer: 優秀なグラフィックスエンジンのウワサと共に,頻繁に聞こえてくるのが発売延期のニュースなのですが……。
Grygorovych氏: 開発自体もそうなのですが,それ以上に難しいのが,ロシアからヨーロッパにゲームを売ることなのです。コサックスの一作目がヒットした後も,パブリッシャからのオファーは芳しいものではありませんでした。これは,ゲームの好みの違いといった話ではなく,ロシア人に対する彼らの姿勢なのだと思います。
4Gamer: それはなかなか難しい問題ですね。4Gamer読者の中にはS.T.A.L.K.E.R.について気にしている人もたくさんいるのですが,開発のパーセンテージでいうと,実際にはどのあたりまで進んでいるんでしょうか。
Grygorovych氏: S.T.A.L.K.E.R.の最終テストはすでに済ませています。今はもう出荷前のバグチェックを行っているところで,ゲーム自体はすでに完成しています。
4Gamer: あ,もう完成していたんですね。では残すはバグチェックと,発売だけですね。リリース時期は決定したのですか?
Grygorovych氏: スケジュールについてはTHQに聞いてください。我々はただゲームを作る立場ですので(笑)。
4Gamer: では今度こそ延期しないように祈っています(笑)。
Grygorovych氏: ええもちろん。この前の遅れが,最後の延期だと考えてください。
4Gamer: それでは最後に,4Gamerの読者に対して一言コメントをお願いします。
Grygorovych氏: 4Gamerの読者の皆さんはもちろん,もっと多くの人がPCを買って,PCゲームを楽しんでもらえるようになってほしいと思います。PCゲームはやり応えのある,楽しいものですから。
4Gamer: 本日はありがとうございました。
発売が延び延びになっていたS.T.A.L.K.E.R.も,どうやら今度こそは本当に,発売秒読みという段階まで来ているようだ。発売されるまではまだ安心できないが,心待ちにしている人もあと少しだけ辛抱してみよう。 一方,HoAEは海外では10月上旬,日本語版は11月下旬の発売が予定されている。ファンタジーRTSが好きな人は,お楽しみに。(ginger)
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S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl 日本語マニュアル付 英語版 |
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