「TGS 2006#52」「女神転生IMAGINE」スタッフが実機操作を交えながら現在の開発状況を説明
谷川ハジメ氏
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コンシューマゲーム機で人気の女神転生シリーズ。その,悪魔合体を代表とする個性的なシステムはそのままに,3Dタイプの国産MMORPGとして現在開発されているのが,「女神転生 IMAGINE」だ。4Gamerでも頻繁に新情報を公開しており,少しずつ期待感が高まってきている読者もいることだろう。
東京ゲームショウ2006において,女神転生 IMAGINEは一般公開こそ行われなかったものの,近くのホテルの一室で,メディア向け紹介が行われた。 その場で,女神転生 IMAGINEのプロジェクトディレクターである谷川ハジメ氏に,実機でのプレイを交えながら本作の全体像や現在の進捗を大まかに説明してもらった。そこで得られた新情報の数々をお伝えしていこう。 取材はインタビューに近い形式で進められたものの,そのまま記事化するとかなりの量があるため,本稿では項目別にまとめて紹介していく。かつてメガテンシリーズに夢中になった世代の人を含め,本作に注目している読者はぜひとも目を通してほしい。なお,これらの仕様は今後開発が進むにつれ変更する可能性もある点はご了承を。
■メインストーリー
「真・女神転生」(1のほう)で,ICBMが落とされ,その後立て続けに起こった大洪水により壊滅的な被害を受けた東京が,本作でも舞台となる。 一部の人々はこれらの大災害を生き延びたもの,各地にある地下シェルターで細々と暮らす生活を余儀なくされてしまう。それらのシェルターの内の一つである「第三ホーム」に,プレイヤー扮する主人公が漂着するというところから,本作の物語はスタートする。 主人公は最初は半人前の「デビルバスター」として,鬼教官“スネークマン”の元でこの過酷な世界を生き抜くための術を身につけていく。これらのチュートリアル的な部分は,実際には一連物のミッションである“クエスト”を通じて行われるとのことだ。
メガテンシリーズ全体におけるIMAGINEの時代設定について説明しておくと,「真・女神転生」によって世界は混沌の中に突き落とされたものの,続く「真・女神転生II」では,すでにロウやカオスといった体制が完全に出来上がってしまっている。しかしながら,そういった体制が整うまでのプロセスは今のところ描かれておらず,この空白期間を補完するのがIMAGINEというわけだ。 つまりプレイヤーは,ロウ,ニュートラル,カオスのどの勢力に,どれだけ加担していくかを選び,ゆくゆくはそれらの体制に深く関わっていくというわけだ。
■キャラクター育成システム
IMAGINEの成長システムに関しては,キャラクターレベルのほかに「エキスパート」と呼ばれるスキル群が存在するのが大きな特徴である。エキスパートは,行動にちなんだ「テクニック」と,それを支える知識の「ナレッジ」に大別でき,それらを合わせると十数種類のジャンルがある。そして各テクニックやナレッジのさらに下には,数多くのスキルが属している,というわけだ。
具体的なスキルの種類に関していうと,剣,銃,攻撃魔法,回復魔法といったメジャーなタイプだけでなく,悪魔を“仲魔”にするための「交渉」や,「悪魔合体」に関するものも含まれている。 かつてのメガテンシリーズを振り返ると,悪魔を仲魔にするときは複数コマンドの中から選択を繰り返していたが,リアルタイムで進行するMMORPGのIMAGINEでは,攻撃や魔法などの通常行動と同じレイヤーに位置づけられているのだ。
悪魔を仲魔にするプロセスは,ファンにとって最も気になる部分の一つなので,もう少し詳しく聞いてみた。交渉に属する具体的なスキルには,「挑発」「挨拶」「勧誘」「説得」「誘惑」といったものがある。これらを悪魔の種類に応じて使い分けていき,聞き分けの悪い相手には「数回殴ってから説得」といったさまざまなアプローチが選択可能だ。交渉コマンドの使用時は,実際にモンスターに近寄ってジェスチャーが行われるため,周りのプレイヤーからは「ああ,あいつ失敗したな」などと分かるのも面白い。
これらの交渉スキルは,仲魔にするため以外でもなんらかの効果がある。例えば交渉によって悪魔を油断(=一時的に硬直)させてそのスキに攻撃,といったことも可能だ。 ちなみに,敵の中には交渉するだけの知能を持たないものも当然いるようだ。「いったいなぜ,スライムに挑発が通用するのだろう?」といった,ありがちな矛盾はIMAGINEでは起こりえないという。
■仲魔,パーティシステム関連
続いては,仲間とどうやって戦うのかについて。IMAGINEでは,ハンドヘルドコンピュータ内から一体の悪魔を呼び出すことができる。このときには例によってマグネタイトが必要になるが,活動している間は一切のリソースを必要としない。つまり仲間と常時行動を共にするというデザインになっているのだ。 呼び出す数が一体ということで,パートナーといった意味合いがより近く,従来のシリーズ作でたとえるならば「if」,つまり一派的なMMORPGにおけるペットクラスに近いプレイスタイルだ。
プレイヤーは実質的に2キャラクターを同時に操ることになるが,これらの操作を簡単に行うための工夫がされている。例えば,掲載画面の左下にあるスキルトレイを見ていただきたい。ここにはF1〜F12キー,それとShift押下時を含めた合計24種類の行動をセットできる。なお,F1〜F8はプレイヤー自身を対象としているが,F9〜12は召喚中の仲魔専用のスキルを登録できるのだ。 多くのMMORPGにおけるペットクラスは,操作時にワンクッション介入することで,どうしても面倒さが生じていたが,IMAGINEではダイレクトに操作できる。しかも初心者向けには,仲魔の行動をAIで支援してくれるモードも用意されている。その一方で上級者は完全なマニュアル操作も可能で,幅広いニーズに対応してくれているのは嬉しいところだ。
パーティでは,最大で5名のプレイヤーキャラクターとそれぞれの仲魔で,計10キャラクターによる戦闘が可能。そして意外なことに,このときに交渉で仲魔にした悪魔は,パーティメンバーに自由に分け与えられるという。 当然出てくるパワーレベリングの問題については,悪魔を呼び出すときに,キャラクターのレベル条件を設けることで対処している。 このようなシステムを採用したのには理由がある。すでに説明しているように,IMAGINEでは,交渉や悪魔合体といったスキルが,ほかの戦闘などのスキルと同列に扱われている。もちろんスキルの習得時には有限のポイントが必要になるため,交渉や悪魔合体といった戦闘以外のジャンルに長けたキャラクターでも,何らかの形で活躍できる場を設けているのだ。
IMAGINEの世界では人類全体が滅亡の危機に瀕しており,これに対抗するためお互いに手を取り合って悪魔と戦っている。開発側としては,プレイヤー同士の協力要素をシステム面に反映させることで,そういった微妙なニュアンスを感じ取ってほしい,とのことだ。そのため,IMAGINEにPvP的要素が導入される予定はないという。
てっきり,メガテンの混沌としたイメージとPvPは通じるものがあるかと思っていたのだが,谷川氏によると実際は少々異なるようだ。ロウとカオスはお互いが相容れないだけであり,イデオロギーとして対立しているわけではない。まずは悪魔に対抗するのが先決で,そのための手段としてデビルバスターといった存在がある。なのでロウとカオスが協力することは別におかしくないのである。
■グラフィックス・エリア関連
IMAGINEを見てとくに驚いたのは,3Dで描かれた悪魔のモデリングである。元々は金子一馬氏による一枚絵だったものが,実に巧みに3D化されて動いているのだ。実際これらの作業にはかなりこだわっているようで,メインの開発作業を行っているケイブではなく,アトラスのスタッフが担当しているとのこと。なお,現在3D化されている分だけでも,その数,実に300体以上。
エリアについても同様で,崩壊後の東京の雰囲気がよく描かれているのではないだろうか。ちなみに最終的なTOKYOの完成形として予定しているエリア数は20強で,広さとしては,都内全域+α程度の範囲になるようだ。+αというのは主に地上/地下のダンジョンかと思われるが,ほかにも例えばシリーズのファンにはお馴染みに某テーマパークや,当時は存在しなかった東京湾アクアラインなどが含まれるかもしれない。
大まかなところでは以上である。取材の最中は,プロジェクトディレクターである谷川ハジメ氏の,女神転生に対する知識の豊富さに驚くことしきりだった。もっと詳しく話を聞いてみると納得,氏はかつてのシリーズ作の制作に携わっていたのだ(セガサターン版の「デビルサマナー」「ソウルハッカーズ」など)。それだけにIMAGINEの今後の構想もたっぷりと聞かせてくれたのだが,現時点では導入が確定していないこともあり,このあたりについては本稿では割愛させてもらった。いずれまた別の機会に紹介することもあるだろう。
ともあれ,これまではプレスリリースなどからその雰囲気をイメージするしかなかったIMAGINEが,今回の取材を経てようやく形になってきたな,という実感が得られた。現在はモンスターのマップ配置や戦闘のバランシングなど,開発作業も佳境に差しかかっているようで,このままいけば案外早くクローズドβを実施してくれるかもしれない。 4Gamerでは近いうちに,ケイブのオフィスに訪れてのIMAGINEプレイレポートをお届けできればと考えているので,お楽しみに。(ライター:川崎政一郎)
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