NVIDIA,新チップセット「nForce 600」発表(2) PCIe×3を用意する「nForce 680i SLI」
別記事でもお伝えしているとおり,NVIDIAは「GeForce 8800」に合わせて,対応製品となる新チップセット「nForce 600」を発表した。AMD製CPUに対応した「nForce 680a SLI」については別記事を参照してもらうとして,本稿ではIntel製CPUをサポートする「nForce 680i SLI」の詳細をお伝えしていきたい。
nForce 680i SLIの「i」は「Intel」の頭文字から取ったもので,対応CPUパッケージはLGA775。「Core 2 Duo」や(クアッドコアを含む)「Core 2 Extreme」,そして未発表のクアッドコアCPU「Core 2 Quad」を正式にサポートする。
nForce 680i SLIについては,やはりGeForce 8800のテクニカルガイダンスと同じタイミングで詳細が説明されている。会場では,NVIDIAのDrew Henry(ドリュー・ヘンリー)氏(Senior Director of Platform Products,左)がプレゼンテーション,Thomas A. Petersen(トーマス・ピーターセン)氏(Director of Technical Marketing-MCP Products,右)が後述するデモを行った
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■リファレンスデザインでPCIe x16スロット×3に対応 ■“NVIDIA純正”のマザーボードが登場
nForce 680i SLIは,先頃搭載製品が市場に登場したばかりのIntel製CPU向けチップセット「nForce 590 SLI」の後継で,同製品と同じく,ノースブリッジに相当する「nForce 680i SLI SPP」(SPP:System Platform Processor),サウスブリッジ相当の「nForce 680i SLI MCP」(MCP:Media Communications Processor)からなる2チップ構成をとる。 ブロックダイアグラムは下に示したとおりだ。
nForce 680i SLIのブロックダイアグラム
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nForce 680i SLIのリファレンスマザーボード
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ブロックダイアグラム,そして右に示したリファレンスマザーボードの写真を見ると分かるように,NVIDIAのリファレンスデザインでは,3本のPCI Express x16スロットをサポートする。黒いスロットが16レーン,青いスロットが8レーン接続となっており,16レーン×2でNVIDIA SLI(以下SLI)を利用するためには,この離れた2スロットを使う必要がある。 これは,2スロット仕様のグラフィックスカードでSLI構成を行うと熱がこもりやすかったという問題を改善するための工夫だそうで,熱源同士を離してクリアランスを設け,冷却効果を確実なものにする意味合いがあるという。
さて,GeForce 8800シリーズについて解説した連載記事でも説明しているように,最上位モデルである「GeForce 8800 GTX」のリファレンスカードには,SLIコネクタが二つ用意されている。 となれば,8レーン接続のPCI Express x16スロットに差したカードと合わせて,3個のGPU(グラフィックスチップ)による“トリプルSLI”を実現できるのではないかと勘ぐってしまうわけだが,現時点でNVIDIAは否定も肯定もしていない。「今の時点で言えるのは『3番めのスロットには3枚めのグラフィックスカードを差せる』ということだけだ」とはNVIDIAの弁。 詳しくは同記事を参照してほしいが,NVIDIAは新しいSLIテクノロジーを提供するという情報がある。そのタイミングで何らかの動きがある可能性もあるので,楽しみに待ちたいところだ。
左:上が,新しいSLIブリッジだ。間に2スロット空く仕様のASUSTeK Computer製SLIブリッジと比べると若干長く,間に3スロット空く仕様になっているのが分かる
右:GeForce 8800 GTXのリファレンスカードに用意された,二つのSLIコネクタ。発表時点では,NVIDIAはこれに対してノーコメントを決め込んでいる
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また,nForce 680i SLIの特徴としては,“NVIDIA純正マザーボード”というべき製品が流通する点も挙げられる。もちろんチップセット単体での出荷も行われ,ASUSTeK ComputerやMSI,GIGABYTE TECHNOLOGYといった,コンシューマ向けマザーボードの大手からは独自デザインの製品が登場見込み。だがその一方で,BFG Technologies,BIOSTAR MICROTECH,ECS,EVGA,XFX(Pine Technology)を通じて,NVIDIAが設計&製造したnForce 680i SLIマザーボードが発売される予定になってもいるのだ。後述するオーバークロック機能などは,OEM出荷するNVIDIA製ボードに共通した仕様となり,オリジナル製品を投入するメーカーは,必ずしもNVIDIA製ボードと同じ仕様にはならないという。
なお,nForce 680i SLIの下位モデルとしては,SLIサポートが8レーン×2になる「nForce 650i SLI」も登場する。
左:NVIDIA自らマザーボードを設計し,パートナーとなるOEM各社から出荷されるとアピール
右:nForce 680i SLIとnForce 650i SLIのマザーボードを投入するメーカー一覧。nForce 650i SLIのNVIDIA純正ボードが登場する予定はない
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SPP自体は90nmプロセスルールで製造されており,メモリインタフェースはCoreマイクロアーキテクチャに最適化したとされるDASP4.0(Dynamic Adaptive Speculative Preprocessor)技術を搭載する
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このほか,チップセットとしての仕様を見ていくと,まずシステムバスクロックは1066MHzを公式サポート。詳細は後述するが,高い信頼性を持つオーバークロック機能で,さらに上までをサポートできるという。 SPP内蔵のメモリコントローラはDDR2 800(PC2-6400 DDR SDRAM DIMM)のデュアルチャネルアクセスに対応。NVIDIAの提唱する「SLI Memory」をサポートしており,拡張SPD(Serial Presence Detect)ともいえる「EPP」(Enhanced Performance Profiles)を持つメモリモジュールを組み合わせると,自動的に定格以上の設定で動作するようにもなっている。
MCPはnForce 590 SLI Intel Editionが搭載するものとほぼ同じで,1000BASE-T LANコントローラ×2,3Gbpsの転送速度に対応したSerial ATAポート×6,そしてUSB 2.0ポート×10をサポートする。
■さらに拡張されたオーバークロック機能 ■FSB 500MHzでCore 2 Duoが安定動作!?
Intelのゼネラルマネージャ,David Tuhy氏。当日はCore 2シリーズに関するプレゼンテーションを行った。この人の前でNVIDIAは「Core 2 Duo E6300が3.5GHzで安定動作する!」というデモを行ったわけだ
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nForce 680i SLIについて,NVIDIAは「安定したオーバークロック性能」を前面に押し出している。4Gamerのレビュー記事で判明しているように,Core 2 Duoは冷却さえしっかりやればかなりのオーバークロックが可能だが,この特性をしゃぶり尽くすためのプラットフォーム,という訴求を強く行ってきているのだ。どれほど強いかというと,Intelからのゲストが在席している事前テクニカルガイダンスの場で,「Core 2 Duo/1.86GHzを定格の2倍以上のクロックに設定しても安定動作する」と解説してそのスライドを示し,なおかつ実際にデモを行ってしまったほどである。
NVIDIAによるnForce 680i SLIのリファレンスボードでは,多くのベンチマークマニアから上がった要望を取り入れてBIOSメニュー構成や設定範囲を決めたとのこと。FSBに関していえば,nForce 590 SLIをはるかに上回る,定格の2倍以上のクロックすら設定可能という。 実際,NVIDIAはステージ上に大型の空冷CPUクーラーを装着したnForce 680i SLIベースのデモ機を用意。BIOSからシステムバスクロックを2GHz(FSB 500MHz)に設定して,定格1.86GHz(266MHz×7)のCore 2 Duo E6300を3.5GHz(500MHz×7)で動作させ,簡単な3Dデモソフトも実行した。
左:BIOSから,システムバスクロックが2GHz(2000MHz)に引き上げられている。このままリブート
中央:Windows XPが実クロック3.5GHzのCore 2 Duo E6300で動作していることを証明
右:川瀬正樹氏作のHDRレンダリングデモをしばらく動かして安定動作をアピール
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Core 2 Duo E6300を3.5GHzで動作させていたデモ機1号の様子。グラフィックスカードはもちろんGeForce 8800 GTX×2
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さらにNVIDIAは,先述したSLI Memoryのデモも行った。EPPに記録されている「Expert」設定を利用することで,動作し得る最高クロック&電圧へ自動的に引き上げられるとして,実際にPC2-6400仕様のSLI Memoryを1.2GHz/2.1V駆動で動作させてみせたのだ。
CPUのオーバークロックは,水冷式クーラーやペルチェ素子のような大がかりなものを用意することなく,やや大型の空冷式のクーラーを組み合わせて,多少電圧を上げて駆動させるだけ。メモリのオーバークロックに至ってはSLI Memoryを利用するだけで,簡単に,安定したオーバークロック動作環境を実現できるというわけである。
プレゼンテーション後,デモ機の構成について,自身も相当なオーバークロックマニアであることを自負するPetersen氏にその“レシピ”を聞いてみたところ,快く教えてくれたのでお知らせしたい。 CPUクーラーはZalman TechとNVIDIAが共同開発したという「CNPS9700NT」。CPUコア電圧は定格1.35Vに対して1.6Vという,かなり高い設定がなされていたが,これは同製品を用いたからこそ実現できた荒技とのことだ。 また,デモにおいて1.2GHz動作していたメモリモジュールは,Corsair Memory製のSLI Memoryで,2.2V設定時に1.142GHzでの動作が確認されている「XMS2 Dominator」だった。
左:CNPS9700シリーズのNVIDIA推奨スペシャルモデル,CNPS9700NT。パッケージには「Recommended By NVIDIA」マークが
中央:Corsair Memory製のDDR2モジュール。SLI Memoryで,型番は「CM2X1024-9136C5D」だった
右:これはnForce 680i SLIのBIOS画面。(その結果どうなるかはともかく)CPUコア電圧を最高1.8Vに設定できる
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■注目は3番めのPCIe X16スロット ■次の展開に注目
NVIDIAの技術としてSLIが登場してから2年半近くが経過した。Quad SLIというイレギュラーを除けば,2枚のグラフィックスカードによるSLIは信頼性の向上に合わせて新味が薄れてきたのも事実だが,ここに来て次世代SLIの可能性がnForce 680i SLIで示されたのは興味深い。
仮にトリプルSLIが実現されなかったとしても,デュアルGPUでSLI構成を行ったうえで,3枚めのグラフィックスカードを「Havok FX」のような物理アクセラレーション用途に活用するといったことはできるはず。また,nForce 590 SLIからさらに拡張されたオーバークロック機能も,(ゲーマーはともかく)オーバークロックマニアの注目は集めるだろう。 続報次第では,IntelプラットフォームにおけるnForceは,多数のユーザーを獲得することになりそうだ。(トライゼット 西川善司)
会場にあったデモ機2号。Core 2 Extreme QX6700/2.66GHzを,システムバスクロック1.5GHzの3.7GHzで動作させていた。クアッドコアCPUということもあって,冷却機構はさすがに水冷式だった
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