[G★2006#61]開発元SOFTMAXとBANDAI KOREAに聞く,「SDガンダム カプセルファイター オンライン」開発秘話と今後の展開
G★2006会場のBANDAI KOREAブースにプレイアブルデモが展示されていた「SDガンダム カプセルファイター オンライン」(以下,SDガンダム CFO)。[G★2006#15]の記事でお伝えしたように,韓国ではクローズドβテスト1の募集枠1000名に対し,16万5000名もの応募があったという話題作だ。 本作はBANDAI KOREAが企画し,SOFTMAXが開発した“韓国産ガンダムゲーム”で,日本でのサービス予定は立っていないのだが,4Gamer読者の中にも,本作に注目している人は多いのではないだろうか。 今回,G★2006会場で,SOFTMAXのクリエイターであるKim Do-Hyung氏に話を聞く機会を得た。“韓国産ガンダムゲーム”を開発することになった経緯や作品のコンセプト,そして今後SDガンダム CFOはどのように進化していくのかなど,非常に興味深い内容となった。インタビューというよりは,同席したBANDAI KOREAのYong-Suk Jon氏との対談のようになってしまったが,本作に興味を持っている人はぜひ読んでほしい。
■BANDAI KOREAが持ちかけたプロジェクトからすべてが始まった
SOFTMAXのOnline Game Team,Deputy General ManagerのKim Do-Hyung氏。以前勤めていた企業では,ゲームの海外営業/開発管理を行っていたそうだ。日本を含むアジア/アメリカを担当していたこともあり,日本語堪能という一面も持つ
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4Gamer: 本日はよろしくお願いします。
Kim Do-Hyung氏(以下,Kim氏): よろしくお願いします。
Jon Yong-Suk氏(以下,Jon氏): よろしくお願いします。
4Gamer: お二人とも韓国の方なのに,ネイティブスピーカー並みに日本語が上手でびっくりしました。ここが韓国だということを一瞬忘れそうです(笑)。
Kim氏: そんな上手くないです(笑)。ただ,以前勤めていた会社(編注:Kim氏の経歴参照)で,日本を担当していたので,日本語の勉強はしました。
4Gamer: 早速ですが,SDガンダム CFOについて聞いていきたいと思います。まず,本作が開発されることになった経緯を教えてください。
Kim氏: そもそものきっかけは,BANDAI KOREAさんからいただきました。BANDAI KOREAでオンラインゲームを作ろうというプロジェクトがあって,バンダイグループ(当時)が持つ優秀なキャラクターを使ったもので何かできないか,ということでJonさんから話をもちかけられたんです。それが2002年頃ですね。
BANDAI KoreaのDigital Business Section Game Business Team Manager,Jon Yong-Suk氏。ほかのスタッフと異なるシャア専用ザクのスタッフジャンパーは,プロジェクト立ち上げ時の初期メンバーの証だとか
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Jon氏: 当時からKimさんとは交流があったので,いろいろと相談に乗ってもらいました。焼酎を飲みながら(笑)。いろいろといいアイデアを出してもらって,「これはいける」という確信を持てました。オンラインゲームで実績を積んでいるSOFTMAXさんと組んで,2003年に入ってから,プロジェクトが本格的にスタートしました。
4Gamer: 最初から現在のように,SDキャラを利用したシューティングというアイデアだったんですか?
Jon氏: 最初は,機動戦士ガンダム(以下,ガンダム)のコンテンツを利用した,ごくかんたんなカジュアルなゲームプランだったんです。
Kim氏: そうですね。ただ,せっかくガンダムという優れた素材を利用するのだから,世界中に通用するコンテンツにしたいと思いました。
4Gamer: 世界中に通用する,というのは具体的にはどのようなものでしょう。
Kim氏: 例えば,ガンダムでゲームを作るとなると,基本的にガンダムの世界観が前提になると思います。ガンダムシリーズの作品知識がある人は,ゲームに感情移入しやすいのですが,知らない人にとっては,その世界観が壁となって感情移入しにくいという一面があると思います。そこで,ガンダムを知っている人はもちろん,知らない人にも楽しんでもらえるものを作りたいということです。
4Gamer: 確かに,今まで発売された“ガンダムゲーム”の多くは,アニメのファンに向けたものが多い気がします。
Jon氏: 日本ではまずアニメとしてのガンダムありきだと思うんです。しかし,韓国を含めて海外で受けるガンダムのゲームを作ろうとなると,アニメが放映されてない地域ではその図式が成り立ちません。そこで,ガンダムを知らない人でもゲームに入っていける,「かっこいいロボットアクション」としてのゲーム形式を重視しました。
Kim氏: そういう意味では,日本的な味付けと隠し味を逆転させたというところでしょうか。その調整にはだいぶ苦労しました。
Jon氏: 企画書はVersion 20くらいまで作りました。A4用紙2〜3枚の簡単なものから100枚単位のものまでボリュームはさまざまで,いろいろなゲームシステムを検討したのですが,最終的に現在の形に落ち着くまでに,いろいろなアイデアをボツにしました。
4Gamer: その中にはどのようなアイデアがあったのですか?
Jon氏: 例えば,SDキャラじゃなくてリアル系のガンダムだったりとか,アクションではなくクォータービューだったりとかですね。
4Gamer: 韓国ではこのところFPSが元気なジャンルですが,FPSというアイデアは出ましたか? SDガンダム CFOも操作感はFPSに近いタイトルだと感じましたが。
Kim氏: SDガンダム CFOは,ジャンル的には格闘アクションだと思っています。海外で受けるゲームとして考えた場合,確かにFPSという選択肢もあります。ただ,女性や低年齢層のプレイヤーに遊んでもらうためには,やはりFPSというスタイルはハードルが高いと感じています。 例えば,マウスで視点変更をするというのは,FPSが普及してきたといっても慣れていないと難しいものです。SDガンダム CFOの操作感はFPSに近いですが,使うボタンを減らすなど,できるだけ簡単にしたつもりです。
4Gamer: 確かに,実際に初めてプレイしたときでも覚えられるレベルだと感じました。
Kim氏: また,FPSは基本的にリアル志向なので,幅広いプレイヤー層に遊んでもらおうと思った場合,僕達が追求したいこととは違うな,と感じました。それもFPSというスタイルにしなかった理由の一つです。まだまだ調整中ですが,操作は簡単だけど完璧にマスターするのは難しい,間口は広いが奥は深いというシステムにしたいと考えています。
Jon氏: あと,FPS系のタイトルとしては,「機動戦士ガンダム ターゲット インサイト」があるので,そちらに任せたというのはありますね。
■プレイする楽しみのほか,集める楽しみを加えるのが今後の課題
4Gamer: 12月中に実施を予定しているクローズドβテスト2ですが,その内容はどのようなものになるのでしょうか?
Jon氏: 先日行われたクローズドβテスト1は,おかげさまで大変好評でした。サーバー負荷の面でも問題はなかったので,クローズドβテスト2では,もっと多くのプレイヤーに参加してもらいたいと考えています。
4Gamer: それはどのくらいの規模になる予定ですか?
Jon氏: 人数は運営元のCJ Internetと相談してから決めるので正確な数では答えられませんが,クローズドβテスト1の5倍から10倍くらいはいけるんじゃないかと考えています。
4Gamer: 韓国のファンにとっては朗報ですね。今後のサービス展開において,どのような機能を強化していくのか教えてもらえますか?
Kim氏: 一つは,ハイクオリティを求める人たちのために,グラフィックス面の強化をしたいという点ですね。
4Gamer: それはPCの必要スペックを引き上げるということですか?
Kim氏: いえ,SDガンダム CFOのゲームエンジンはSOFTMAXが独自に開発したものを使っているのですが,低スペックのPCでの楽しめるよう,Shaderモデルなどの機能を利用していません。最適化することで現在の必要環境の下限はキープしつつ,グラフィックスオプションを増やしてあげたいと思います。
4Gamer: なるほど。パワーのあるPCを使っている人が,PCのスペックをもてあまさないようにとの配慮ですね。ただ,SDキャラがリアルになりすぎると,違和感が生まれそうな気もするのですが。
Kim氏: そのあたりは,ゲームのイメージを損なわず,対戦時にラグが発生しないようバランスを取りつつ調整していきたいと思います。
4Gamer: そのほか,今後実装を予定している機能にはどのようなものがあるのでしょうか。
Kim氏: クローズドβテスト1では,対戦する機能のチェックが主な目的でした。クローズドβテスト2では,SDガンダム CFOのもう一つの特徴である,「集める」楽しみを実装する予定です。
4Gamer: 具体的にはどのようなものですか?
Kim氏: 戦闘しながらモビルスーツユニットを手に入れていくことですね。今後はシークレットユニットも登場し,ある条件を満たせば出てくるようになります。 それ以外にも,クローズドβテスト2では,細かな点ですが修正が入っています。例えば,マップは6枚あるのですが,新しいマップを追加したほか,実装済みのマップにアレンジを加えています。
Jon氏: マップのアレンジは,新しいゲームモードに対応させるためです。クローズドβテスト1では,単純な点取り合戦的なモードしかありませんでしたが,例えば「何かを守れ」といった,目的/クリア条件のあるモードを実装したいと思っています。それから,「こんなことができたらいいな」と考えているものがあるんです。
4Gamer: それは興味深いですね。ぜひ詳しく教えてください。
Kim氏: 実装するかどうかはまだはっきりと言えないのですが,今考えているものに「アイテム戦」というものがあります。ちなみに,このアイデアをお伝えするのは4Gamerさんが初めてになるのですが。
Jon氏: そのまま言ってしまうと楽しみが減ってしまうし,そもそも実装されるかどうかも分からないので(笑),プレイできるようになったときのお楽しみと言うことで。
4Gamer: そこをなんとか,ヒントだけでも。
Jon氏: そうですね……。戦闘中に単なるアイテムがぱっと出てくるようなものではないことは確かです。ストーリーに沿ったアイテムが出現するといった形にしたいと思います。
4Gamer: うーん,ほかのガンダムゲームでいう「if」モードのようなものでしょうか? ステージをクリアしたときにある条件を満たしていると,使えるユニットが増えるというような。そのアイテムってモビルスーツを指すんでしょうか?
Kim氏: それはアイテム戦が実装された暁にお答えします(笑)。
4Gamer: それでは最後に,日本でのサービス実現を心待ちにしている4Gamer読者に向けて一言お願いします。
Jon氏: まず,日本のガンダムファンの皆さんには,韓国からサービスがスタートするということを,非常に申し訳なく思っています。 ただ,韓国を皮切りに,海外での展開も視野に入れた開発を行っていて,もちろん日本のバンダイナムコゲームスとも話をしています。日本でのサービスが実現するときは,コアなファンの方でも満足できる,いい形で提供したいと考えています。
Kim氏: ガンダムというコンテンツは,世界中で愛されているものだと思います。世界中のガンダム好きな人が満足できるのはもちろん,ガンダムを知らない人でも好きになってくれるゲームにしたいと思います。近いうちに,日本のファンの皆さんに挨拶できる場が実現すればいいなと思っているので,そのときはよろしくお願いします。
4Gamer: 日本でのサービス実現を期待して待っています。本日はありがとうございました。
Kim氏の語るSDガンダム CFOのコンセプトは,日本人の筆者にとっては非常に新鮮なものに感じられた。Kim氏が語るように,日本のガンダムゲームは,想定されるプレイヤー層はまずアニメのガンダムありきで,ガンダムの世界観を知っていれば知っているほど楽しくなる半面,知らないと楽しみが半減してしまうという要素があるのは否めない。つまり,日本以外のマーケットではヒットする可能性が低いとも言い換えられる。 それゆえ,ガンダムを知らない人のほうが多い韓国で,ヒットするために工夫が凝らされた本作の開発経緯を聞くと,なるほどと思わせられることが多い。これはガンダムに限らず,日本のゲームメーカーが海外進出するときに大いに参考になる話ではないだろうか。(oNo)
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SDガンダム カプセルファイター オンライン |
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(C)SOTSU AGENCY/SUNRISE (C)SOTSU AGENCY/SUNRISE/MBS (C)BANDAI KOREA Developed by SOFTMAX |
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