飯島茜プロ推薦? ただの移植ではない「スイングゴルフ パンヤ」の出来はいかに
左から:テクモ ハイシナジープロダクション プロデューサー 菊地啓介氏,プロゴルファー 飯島茜さん
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すでに「コチラ」でもお伝えしている,Wii版「スイングゴルフ パンヤ」。PC版「スカっとゴルフ パンヤ」のプレイヤーの中には,グラフィックスも新たに描き起こされた同タイトルが気になって仕方ない人も多いようだ。そんなモヤモヤをすっきりさせるべく,10月24日,女子プロゴルファーの飯島茜さんを招いて,実際にパンヤをプレイしてもらう,パンヤ体験会が行われた。
飯島さんは1983年生まれの23歳。13歳から本格的にゴルフを始め,2005年にプロ入り。2006年「近未來通信クイーンズオープン」で初優勝を飾っている,若手選手の中ではたいへん注目度の高いプレイヤーだ。
体験会直前の10月20日〜22日に行われた「マスターズGCレディース」では,首位と1打差の2位と,惜しくも優勝を逃してしまったが,気持ちを切り替えて,続く10月27日〜29日に行われた,「樋口久子 IDC大塚家具レディス」にも出場(こちらは28位タイ)と,正に忙しいツアーの合間を縫って参加してくれた。
現実にはありえないファンタジーテイストなゴルフコース,キュートな衣装を身に着けたアリンやクーが飯島プロの目にはどう映ったのか? 飯島さんと,テクモ ハイシナジープロダクション プロデューサー 菊地啓介氏に,Wii版パンヤの魅力について話を聞いてきた。
■「夢の国」みたいなコースに,飯島プロもすっかり虜に?
飯島茜プロ
生年月日:1983年7月11日
血液型:O型
出身地:千葉県八千代市
飯島茜オフィシャルサイトは「こちら」
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4Gamer: ツアー中に時間を割いていただき,ありがとうございます。さっそくですが,Wii版パンヤを実際にプレイされた感想から聞かせてください。
飯島茜さん(以下,飯島さん): ゴルフ場の形になっているのに,実際にはありえない,夢の国みたいなコースでプレイできるのが楽しかったですよ! 12年近くゴルフをプレイし続けていると,ゴルフ場も飽きるんです(笑)。こんな,真っ赤なキノコが生えてるようなコースが実際にあったらいいんですけど。
4Gamer: 確かに,「Silvia Cannon」みたいに軍艦の上がコースだったりとか,ありえないシチュエーションもパンヤの魅力ですからね。Wii版には全11コースが用意されていますが,飯島さんはすべて試されたんですか? とくにお好きなコースがあったら教えてください。
飯島さん: プレイできたのは二つ,「Blue Lagoon」と「Blue Water」ですけど,まだそれほど回数をこなしていないので,あんまり違いが分かってなくて……。プレイ前に流れるムービー? あれが好きです。見てるだけでプレイしたくなっちゃいましたね。
4Gamer: 事前にお聞きしたところ,飯島さん,パンヤのプレイはこれが初めてとは思えないほど上手だったとか。
菊地啓介氏(以下,菊地氏): そうなんですよ。最初は私がプレイの手本をお見せしながら教える予定が,いきなりボギーを叩いてしまったんです。その後にプレイした飯島さんは,Wiiのリモコンを持つのも初めてなのにバーディでしたよ(笑)。 実は本作の場合,ゲームのことは全然知らないけれどゴルフ歴10数年なんていう人が,意外とすぐに,ゲーム内でもまっすぐボールを飛ばせたりします。
飯島さん: ゴルフの経験がある人なら,1,2回練習すれば曲がらずに綺麗に打てるようになると思いますよ。
4Gamer: 実際のゴルフ経験をゲームに生かせるというのは,Wii版パンヤならではですね。とはいえ,初プレイでバーディはすごい。飯島さんは,普段からゲームを趣味でプレイしているのですか?
飯島さん: いえ,実はゲームは得意ではないのですが,これはリモコンでの操作がクラブを持っている感じに近いので,すぐに馴染めました。ただ,あんまり本当のゴルフに感覚が近すぎて,たまにボタンを押し忘れちゃったりして,そこが戸惑ったところです(笑)。
4Gamer: ちなみにキャラクターはどれでプレイされたんですか?
飯島さん: セシリアとマックス,エリカかな。この中では,セシリアでプレイしたときが一番調子良かったので,セシリアがお気に入りです(笑)。パンヤのコースは,本物にはありえないものばかりなので,まだプレイしてないコースもやってみたいですね。
4Gamer: 練習の合間の息抜きに,ぜひ残りのコースもプレイしてみてください。
キノコが生えてるコースとは,PC版プレイヤーにはおなじみのコチラ。11歳からゴルフを始めたという飯島さんには,このありえなさが新鮮に見えた様子
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■女の子が生まれたらプロゴルファーに?
4Gamer: では少し話題を変えて,飯島さんご自身のお話をお聞きしますね。飯島さんが,ゴルフを始めたきっかけは何だったんでしょう。
飯島さん: 父に勧められたのがきっかけで,11歳の頃にやり始めました。まだ子供だったこともあって,初めのうちはつまらないと感じていたんですが,やり続けるうちにだんだん好きになって。でも,プロになってからは楽しいです。
4Gamer: お父さんもゴルフプレイヤーだったんですか?
飯島さん: いいえ,そうではないんですが,女の子が生まれたらプロゴルファーにしようと考えていたみたいです(笑)。
4Gamer: 男の子だったらプロ野球選手に育てよう,というのと同じような感じでしょうか……。飯島さん自身がプロを目指そうと明確に意識したのはいつ頃だったんでしょう。
飯島さん: 高校生ぐらいだったと思います。それぐらいまでは父も一緒にコースを回っていました。
4Gamer: そういえば,妹の遥さんもゴルフをプレイされるんですよね。
飯島さん: ええ,妹も以前はゴルフをやっていたのですが,今は私のマネージャーとして,いつも助けてもらっています。
4Gamer: 先ほどその遥さんと対戦されていましたが,もちろん飯島さんの勝利ですよね。
飯島さん: 実は,負けちゃいました……。実際のゴルフでは負けないんですけどね(笑)。ボタンの操作が最初は難しくて,Badマークが画面に出たりしていたんです。
4Gamer: そうだったんですか。でも,なかなか家族揃ってゴルフをプレイする機会はありませんよね。「スイングゴルフ パンヤ」を通じて,実際のゴルフが好きになるきっかけなんて生まれそうでしょうか?
飯島さん: はい。小さなお子さんならとくに,パンヤを通じてゴルフって面白いものだなと感じてもらえると思います。ゴルフの初心者でも楽しめるはずなので,ぜひプレイしてみてください。
さて,ここで飯島プロの華麗なるフォームを見せていただくべく,菊地プロデューサーとの対決をその場で行っていただいた。選んだコースは「Blue Lagoon」。キャラクターは飯島さんが「エリカ」,菊地氏が「ケン」だ。
飯島さんはプロゴルファーといえども,パンヤはあくまでゲーム。そして,パンヤのプレイ経験で言えば,菊地氏が圧倒的に有利なはず……だが,フタを開けてみれば「思い通りに打てると,気持ちいいです」と飯島さんがパンヤショットを連発。慣れないうちは,グリーンの傾斜などを読みにくいにもかかわらず,ハーフのうちほとんどをバーディで上がり,飯島さんの圧勝であった。ちなみに対決終了後,飯島プロから菊地プロ(デューサー)へのアドバイスを求めたところ,「緊張していたんだと思いますよ」との回答であった……。
■家族と友達と,リアルなコミュニケーションを楽しむのがコンセプト
飯島プロとの対決後は,菊地プロデューサーにWii版パンヤについて,短いながら話を聞くことができた。ここではオンラインゲームとして人気を博しているPC版パンヤと,残念ながら通信機能には非対応のWii版のコンセプトの違い,あるいは新たな魅力についてお伝えしよう。
4Gamer: 飯島プロとの対決は完敗でしたね(笑)。さて,まずはPC版パンヤとのコンセプトの違いと,本作ならではの特徴などを教えてください。
菊地氏: PC版パンヤには,ネットワークを使って,顔の見えない誰かとコミュニケーションをとりながら対戦するという楽しみ方がありました。しかしWii版は,そもそもスタンドアローンですから,コンセプトはまったく異なります。顔が見えない人とではなく,家族や友人と,テレビの前でお互いにフォームを見たり見られたりしながら,楽しむ。そのような,リアルなコミュニケーションを前提に,ゲームデザインを見直しています。
4Gamer: すでにPC版パンヤを楽しんでいる人達がプレイしても,同様に楽しめる内容と言えるんでしょうか。対象となるプレイヤー層も当然変わっていると思いますが,どのあたりをターゲットに想定しているのか教えてください。
菊地氏: もちろん,オンライン部分がなくなることは,PC版を楽しんでいる人にはマイナスに捉えられると思います。ただしその代わり,キャラクターごとに用意されたストーリーモードによって,愛着のあるキャラクターでのプレイをWii版で楽しんでいただけるのでは,と考えています。この,ストーリーが分岐する「パンヤ・フェスタ」も,Wii版の大きな特徴と言えるでしょうね。水着などの特定のコスチュームを着ている場合だけ,例えば水着大会に突入するなどの仕掛けがあるほか,対戦成績でもストーリーが分岐します。 プレイヤー層についてですが,家庭用ゲーム機ですから当然,PC版よりもターゲットは広がります。コスチュームなどは,PC版パンヤプレイヤーはもちろん,親子でもプレイできることを前提に,お父さんと娘さん,あるいは恋人同士でプレイすることなども考えて,バラエティ豊富にバランス良くピックアップしました。
ストーリーモードとは別に,風船を狙って割った数を競う「バルーン・クラッシュ」といった,独自のステージも用意されている
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4Gamer: なるほど。すでにPC版をプレイしていて,自分の持っているキャラクターに愛着のある人でも楽しめるということですね。しかし,そういった,いわゆるヘビープレイヤー層を満足させることと,家族でプレイすることを前提としたゲームデザイン,というのは矛盾していませんか?
菊地氏: その落としどころというのは,大変悩みました。ただ,両方のプレイヤーに満足していただけるよう,いろいろなゲームモードと2タイプの操作方法を用意しました。PC版のプレイヤーにもパンヤキャラクターが,Wiiリモコンで自分と同じ動作をしている感覚を味わってもらいたいです。
4Gamer: Wii版には,PC版のSeason2にいない新キャラも登場しますが,当然これらは最初からは選べないわけですよね。
菊地氏: 一定条件を満たさないと新キャラは登場しません。ストーリーモード「パンヤ・フェスタ」をどんどんクリアしていき,お話を進めていってたくさんのキャラクターを開放してください。あとは実際に皆さんの目で確かめてください。
4Gamer: ちょっと細かい質問もさせてください。PC版ではキャラクターごとに基礎能力値,つまりショットの正確さやスピンのかかりやすさなどが異なっていましたが,これはWii版にも引き継がれるのでしょうか?
菊地氏: はい,各キャラクターの基礎能力についてもパラメータにも調整が入っています。
4Gamer: コスチュームといえば,パンヤでは各キャラクター専用に用意された,かわいらしい衣装が大きな魅力になっていますよね。「スイングゴルフ パンヤ」は通信機能に対応していませんから,新規コスチュームが今後増える可能性はありません。その点,パンヤの楽しみ方と魅力を,大きく削いでしまう恐れはありませんか?
菊地氏: 今回はコンシューマゲーム機用ということで,コスチューム数にもだいぶ制限が入っているのは事実です。思い入れの強い衣装は入れていますが(笑),取捨選択では大変悩みました。アズテック(ゴルフボール)の中には,Webとの連動でパスワードを入力するとアンロックされるものがあるなど,工夫は凝らしているつもりです。
4Gamer: 実際のところ,コスチュームは何種類入っているんですか?
菊地氏: 衣装は大きく3パターンに分かれていまして,一つはPC版に用意されているものとまったく同じコスチュームですね。二つめはPC版をベースにカラーバリエーションを変えたもの。三つめがPC版パンヤにはない,オリジナルデザインの衣装になっています。種類は……例えば,パーツ数でいうとエリカだけで60〜70種類は用意しているでしょうか。先ほどのご質問にもあったように,今回は通信機能に対応していません。ですので,新たなコスチュームの追加実装ができない代わりに,最初からかなりの数を用意しました。
グラフィックスはパワーアップ。PC版パンヤ同様に,水着やセーラー服といったコスチュームは豊富に用意されているので,アリンやセシリアのラブリーさが損なわれる心配はない(?)。あなたのクーも,こんなに可愛くなって帰ってきました
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4Gamer: ところで,なぜWiiのローンチタイトルに,テクモのオリジナルタイトルではなく,パンヤを選んだのでしょうか。
菊地氏: 私自身は10年近く,「ギャロップレーサー」や「零 〜zero〜」シリーズといったタイトルを手がけてきました。ですから,新しいハードに対して過去のシリーズを持ってくることは可能でした。しかし,できればWiiにふさわしい,新しいタイトルを持ってきたいと思いまして。PC版のパンヤについてはもちろん知っていましたが,Wiiのコントローラの操作感と,パンヤというタイトルが非常にうまくマッチするのではと思ったのが理由ですね。
4Gamer: 確かに,キャラクターと一体になってコントローラをスイングする操作感は,Wii版ならではですね。とはいえ,PC版のプレイヤーにとって,わざわざハードを購入するのはちょっとハードルが高いと思います。今後店頭などで,気軽に触れる機会を設けてもらえると嬉しいです。
菊地氏: ええ,できれば手にとっていただくチャンスは増やしたいです。ゴルフ場のクラブハウスとかに置いて,お父さん世代に試してもらいたいなとは思っていますよ。
4Gamer: ゴルフ場にパンヤがあったら,そっちに夢中になってしまいそうですね(笑)。ぜひ実現させてください。本日はありがとうございました。
スイングゴルフ パンヤは,友人同士や家族でのプレイをコンセプトに置いているため,同時に4人までの対戦が可能。普段はゲームなんてサッパリ,子供相手にはまったく歯が立たないというお父さんも,接待ゴルフの腕前を生かしてパンヤに挑戦してみてはいかがだろう。(ライター:麻生ちはや)
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