「エクストリームサッカー」のSonicAnt,新作はオフロードバイクレース「Extreme Bike」
SonicAntのPresident/CEO,Richard Chang氏
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日本国内ではガンホー・オンライン・エンターテイメントがパブリッシングしている,ストリートサッカーゲーム「エクストリームサッカー」。その開発元であるSonicAntに,G★のタイミングでインタビューの機会を得た。 日本市場では,話題が盛り上がっているとやや言いづらいエクストリームサッカーだが,ワールドカップを控えたタイミングで韓国で続々とリリースされたサッカーゲームの中では,出来と趣向の両面で注目度の高かった作品である。 その趣向,つまり“Extreme”を受け継いでSonicAntが次に手がけるのはどんな作品になるのか。社長兼CEOのRichard Chang氏にたっぷりと話を聞いたので,お届けしたい。
■オンラインスポーツに特化したSonicAnt
4Gamer: 本日はよろしくお願いいたします。SonicAntといえば,日本では差し当たり「エクストリームサッカー」の開発元として知られていますが,そもそもどんな会社で,どういった作品を作ってきたのか,まずは簡単に教えてください。
Richard Chang氏(以下,Chang氏): SonicAntは2004年8月に設立された会社です。「ポトリス」を作ったCCRのメンバーが起業し,最初は企画専門の会社としてスタートしました。2005年4月に元Actoz Softの開発陣が合流し,あらためて完全な開発会社になったのです。
4Gamer: 得意とする開発ジャンルは,やはりオンラインアクションということになるのでしょうか?
Chang氏: そうですね。現在開発しているのもスポーツゲームですし。特殊なアクション要素を加えたスポーツゲームを,一つのジャンルとして進めていこうというのが,独自の部分といえるかもしれません。 韓国で現在オープンβテスト中のエクストリームサッカーについては,18万人という総ID数が示すとおり「知っている人は知っているけれど,大々的なプロモーションが行われているわけではない」という状況です。そこで12月中旬くらいを目途に,韓国サービスのパブリッシャとして,本格的なプロモーションを展開しようと計画しています。これは,別のポータルサイトへのチャネリングも含めて現在話を進めているところです。
4Gamer: SonicAntは今後とも,デベロッパ兼パブリッシャとして動く予定と考えてよいのでしょうか。
Chang氏: ええ,そうです。
■次回作はオフロードバイクレース
4Gamer: エクストリームサッカーに続く作品も,いろいろ開発を進めていると聞きますが,それはどういったテーマの作品となるのでしょうか? やはり,オンラインアクションもしくはスポーツということになりますか?
Chang氏: 今お話しできる範囲では,すでに開発が進んでいて,もうすぐプロトタイプが完成するバイクレーシングゲーム「Extreme Bike」という作品があります。
4Gamer: ほう,バイクレースですか。サーキットにおける耐久レースやモトクロスなど,オートバイ競技にはさまざまなバリエーションがあります。Extreme Bikeではそのうち,どういったレースを扱うのでしょうか?
Chang氏: サーキットではなく,オフロードになります。エクストリームサッカーでもそうですが,我が社の作品の個性として大切にしているのは,相手に殴りかかるなどラフプレイが可能な点です。“Extreme”という言葉には,そういったゲーム性を織り込んでいるつもりなのです。 Extreme Bikeでも,押したり殴ったりしてお互い邪魔をしながら,レースを進めていきます。
4Gamer: ふむふむ。よくあるカジュアルゲームだと,アイテムを使って相手の邪魔をしますが,Extreme Bikeでそのあたりはどういった形になっているのでしょう。エクストリームサッカーと同じくプレイヤーキャラクターのスキルとして存在するのか,それともアイテムなのか,ということですが。
Chang氏: そこはスキルとして実現されています。スキル取得のためのアイテムを買う形になっていますが,攻撃の発動には身につけたスキルを使います。 とはいえ根幹はバイクレースですから,プレイにおいてはリアリティも同時に追求しています。カーブを曲がるときの挙動とかが分かりやすい例ですが。やや繰り返しになりますが,それに加えて華麗なスキルが繰り出されるのが,ExtremeのExtremeたるゆえんです。
4Gamer: プレイの基本は人対人の対戦になるのでしょうか?
Chang氏: そのとおりです。
4Gamer: では何人くらいが競技に参加できますか?
Chang氏: 最大で4 vs. 4です。
4Gamer: レースゲームでチーム戦もあるのですか。
Chang氏: そうです。個人戦なら単純に8人まで,チーム戦なら4 vs. 4までということになります。チーム対戦ではスキルをうまく使わないと,チームメイトにダメージを及ぼすこともありますので,個人戦とはまた違った面白さがありますよ。
4Gamer: ふむふむ。そうした,普通のレースゲームではできない“Extremeな”プレイの例を,いくつか教えてください。
Chang氏: そうですね,例えば車体をぶつけて木を倒し,後続車の走行を妨害するなどということが可能です。倒れた木だけでなく,外れた部品なども後ろに飛んでいきます。 また,これは別に突飛な話ではありませんが,オフロードですから道が何通りか選べるところが出てきます。例えばウォーターハザードに強いバイクを選んだり,そうしたチューニングを施した車両を使ったりしたうえ,ショートカットルートを採ることで後続車を引き離したり,わざとウォーターハザードにおびき寄せたりといった駆け引きが可能になるわけです。
4Gamer: なるほど,それはオフロードを扱うゲームならではですね。ところでエクストリームサッカーだと,例えばポジションによってキャラクターの能力が違ったわけですが,このゲームではどうなのでしょうか。そういった,分業のようなものはありますか? マシンが違ったり,ライダーの能力にタイプがあったりとか。
Chang氏: ええ。エクストリームサッカーで体型によって能力が違ったように,Extreme Bikeでも5種類の体型が設定され,性別との組み合わせで10種類の能力セットがあることになります。 バイクのほうに沿っていうと,チューニング要素が大きく関わってきます。地形に合わせて,バイクに手を入れられるようになっています。そもそもバイクには寿命があり,ラフに使うとそれだけ耐久度が下がり,修理代がかさみますし寿命が早く来ます。そのあたりのマネジメントも,面白さの一つですね。
4Gamer: 壊れたバイクを修理したり,新しいバイクを買ったりするには,レースで稼いだお金(ゲーム内通貨)を使うわけですよね。そこには有料アイテムも入ってくるのでしょうか?
Chang氏: はい。正式サービス後にはもちろん有料アイテムも入ってくるのですが,とりあえず最初はゲーム内通貨「GP」で買う形になっています。
エクストリームサッカーのメンバー待ち画面(左)と,ラフプレイの画面(右)。しっかりしたゲーム性を備えながら「相手選手を殴れるサッカー」を作ったSonicAntは,どんなバイクレースを作ってくるだろうか?
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■スポーツゲームは放送コンテンツに向いている?
4Gamer: そもそもバイク競技に着目した理由はどのあたりにあるのでしょうか?
Chang氏: そうですね,まず我が社が開発する作品の基本線として,カジュアル要素を持ったスポーツゲームという枠組みがあります。2008年の北京オリンピックを機会として,IPTV(インターネット放送)は今後大きな成長を遂げると思われますが,そこで放送コンテンツにふさわしいゲームとして,スポーツがあると思います。家族全員が楽しめて,かつExtremeな雰囲気を持つ,つまり若者に好まれるジャンルの一つがレースだと思うのです。 今までも「グランツーリスモ」や「Kart Rider」など,四輪車のレースゲームはたくさんあるのですが,バイクはそれほど多くありません。また,ファッションや音楽など周辺の文化コードを考えても,若者向けには有望なジャンルと判断したわけです。
4Gamer: 文化コードというと,エクストリームサッカーと同じように,若者ファッションを取り入れたものになる感じでしょうか。
Chang氏: 現在考えているところでは,例えばBGMが重要な要素になりますね。エクストリームサッカーではヒップホップ系の音楽をBGMに用いていますが,Extreme Bikeでもヒップホップやテンポの速い音楽を,使ってみようと思っています。
4Gamer: では,文化コード,ゲームモチーフの双方と関連して,現状で用意されているアイテムの例をいくつか教えてください。現実のモトクロスレーサーの服装とは,かなり異なるものになりそうでしょうか?
Chang氏: ええ。もちろん基本的なライダースーツはあるのですが,それ以外もいろいろ買って身に着けられます。それこそタンクトップとか,ヒップホップスタイルの服装,いろいろな色や形のプロテクターなどを組み合わせておしゃれを楽しめます。
4Gamer: エクストリームサッカーだと,そうしたファッションアイテムにもプレイヤーキャラクターの能力を上げる働きがありましたが,Extreme Bikeではどうですか?
Chang氏: はい,そこはほぼ同様です。
4Gamer: バイクがモチーフとなると気になるのは,ライダーの服装だけでなくバイクのカスタマイズです。いわゆる「ステッカーチューン」,外見的なバリエーションの発揮も可能でしょうか。
Chang氏: そうですね。性能だけでなく見映えの面でもいろいろ工夫できます。まだ具体的に盛り込まれてはいないのですが,ボディに自分の好きな言葉を入れられるような形を考えています。デザインのインタフェースなども今後考える必要が出てきますが,ぜひ実現したいと思っています。
4Gamer: また別のゲーム要素についてなのですが,エクストリームサッカーにはランキングなどの機能がありました。これはExtreme Bikeにも入りますか? また,Extreme Bike独自の部分などがあったら教えてください。
Chang氏: ランキングはもちろん盛り込まれていますし,「クラブ」(プレイヤーギルド,クラン)の機能も備えています。ご存じのように,エクストリームサッカーではこれから実装される予定のクラブですが,Extreme Bikeでは初めから組み込まれています。クラブの人数規模については,まだ企画を詰めている段階ですが。
4Gamer: スポーツゲームとなると,必然的に出てくるのが実在のメーカー/ブランドとの協調体制の話です。とくに今回はバイクがモチーフなわけですし,実車メーカーやアパレルメーカーとのコラボレーションはお考えですか。
Chang氏: まだ決まってはいませんが,話を進めている最中です。当然,可能な限りやるものと考えています。 例えばエクストリームサッカーでは,スポーツブランドのPUMAとコラボレーションを行っています。PUMAの韓国における今年のファッションコード,ビジュアルイメージはフットサルでした。ゲームとも一致していたのでタイアップしたわけですが,偶然にも来年のそれがバイクなのです(笑)。そこで,Extreme Bikeも同じ路線で行こうと考えています。 まだ詳しくはお話しできませんが,日本の有名なバイクメーカーのモデルに基づいた車両も,制作しています。現在コラボレーションの話を進めていますが,それが実れば実際にゲームに登場することになるでしょう。 クローズドβテストやオープンβテストのタイミングで,テスターさん達がいろいろなバイクを体験できるイベントも,考えています。バイクはPixerの支社が制作したハイポリゴンレンダリングのモデルですから,迫力がありますよ。
エクストリームサッカーのアイテム購入画面。アイテムはオシャレ要素であるのみならず,プレイヤーキャラクターの発揮能力にも,大きく関わっている
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■パブリッシャとの間に必要なのは信頼関係
4Gamer: おお,それは楽しみですね。βテストの話題が出たところで,今後の大まかな開発/サービス日程について教えてください。それと先ほど有料アイテムという話が出ましたが,課金形態についても。
Chang氏: そうですね,大まかに言うと,クローズドβテストが2007年5月ごろ,オープンβテストは秋ぐらいに予定しています。具体的な日程はまだ決まっていません。正式サービスは冬休みに入る前を狙いたいところです。課金については,先ほどの話のとおり,基本無料/アイテム課金ですね。
4Gamer: では続いて,日本でのサービス見通しについて聞かせてください。
Chang氏: 日本ではどこかのパブリッシャを通してということになりますけど,サービスの予定はあります。エクストリームサッカーは初回作でしたから,βテスト以降も安定させるまでに時間がかかってしまいましたが,Extreme Bikeでは我が社の真の姿を見せられるものと思っています。 完成度を高め,韓国と日本でほぼ同時にサービスができるようにしていこうと,そういう考えです。
4Gamer: そう言うからには,すでに日本パブリッシャは決まっているわけですね?
Chang氏: 申し訳ありませんが,それはノーコメントで(笑)。
4Gamer: では,現在エクストリームサッカーを提供している,ガンホー・オンライン・エンターテイメントと御社の関係を,どのように捉えていますか。
Chang氏: ガンホーの方達とは,今後とも親しくやっていきたいと考えています。ガンホー側に当社の力量を見せる場面では,全力で対応したいですね。不幸にして,日本のパブリッシャが韓国のデベロッパに失望して離れていく場面をしばしば目にしますが,当社では長期にわたる信頼関係を築くことを重視しています。 韓国で成功しているタイトルを,日本に持ち込んでローカライズサービスを行う場合,デベロッパとパブリッシャ双方のゲームに関する考え方が食い違う場合があります。そして,そこでうまく歩み寄れず,しばしば双方の利害を主張し合うだけになったりもするわけです。 しかし,考えてみればPCオンラインゲームが盛んになる前,コンシューマゲームのディストリビュートが盛んだったときは,日本の作品を韓国でローカライズ/販売していたわけです。そこで持ってきたゲームが売れなかったときなどは,日本の会社が次回作の契約条件を有利にしてくれたりして,どうにか赤字を埋められるようにという配慮があったものです。 オンラインゲームでは立場が逆になりましたが,デベロッパとパブリッシャ,両者が協力して考えていくのは当然のことだと思います。それが,信頼という言葉の意味だと思うのです。
4Gamer: ふむふむ。本来は基本的な事柄のはずなのですが,まさにそこが難しいのかもしれませんね。ところで,SonicAntのExtremeシリーズには,きっとまだまだ続きがあるんですよね? それについて,お聞きできる範囲でぜひ。
Chang氏: 現在開発中のものを含め,シリーズ作品は当面五つ,ラインナップとして考えると,2008年までに正式サービス予定なのがこのうち三つ,残りは2009年中のサービスを予定しています。
4Gamer: だとすると,Bikeからそれほど経たないうちに,少なくとももう1本は出てくるということですね。詳細が明かされるのが実に楽しみです。……では最後になりますが,SonicAntとその作品に,日本のゲーマーは何を期待できるのか,いわば日本の読者へのメッセージをお願いします。
Chang氏: 日本のゲーマーは,実に“ハイクオリティ”なプレイヤーだと認識しています。我が社はスポーツゲーム専門のメーカーですから,毎年新作を,あるいは旧来作品をブラッシュアップしたニューバージョンを提案していきます。日本のゲーマーにも楽しんでもらえるようがんばっていきますから,ぜひ応援してください。
4Gamer: 本日はありがとうございました。
Extremeシリーズの核心たる,スポーツ+αのコンセプトを共有する新作の名は「Extreme Bike」であり,ラフプレイと若者文化のコードを特徴とする,これまた個性的なレースゲームになることが明かされた。 日本パブリッシャとの長期的な信頼関係の醸成,市場的成功のための密接な協力の必要性を,Chang氏は強調する。その言葉が真実であるとすれば,日本サービスの暁にExtreme Bikeは,今回聞けた以上の魅力を備えた作品となるはずだ。なぜなら,市場の特性に合わせたアレンジやプロモーションこそが,現地パブリッシャの参画によって付け加えられるべき要素なのだから。 バイクレースに続く3本のExtremeシリーズのモチーフも,大いに気になるところなのだが,とりあえずはExtreme Bikeのプレイの雰囲気が分かる,画面イメージやムービーなどさまざまな要素を見られる日が,実に待ち遠しい。(Guevarista)
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