ASUSTeK「R.O.G.」担当者ミニインタビュー,「ゲーマー向けマザーボードとしてまだやるべきことがある」
Derek Yu氏(Product Manager, Product Marketing Dept., ASUSTeK,写真左)。右はOCZ Technology Group Inc. Taiwan BranchのScott Suo氏
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2006年12月6〜7日に台湾で開催されたOCZ Technology主催のイベント「OCZ Summit 2006 APAC」会場で,ASUSTeK Computer(以下ASUSTeK)のDerek Yu(デレック・ユー)氏に質問をする時間を得られた。 ユー氏は,ゲーマー向けマザーボードブランド「R.O.G.」(Republic of Gamers)担当プロダクトマネージャーだ。今回は,R.O.G.の現状と今後について,いくつか質問をぶつけてみたので,氏の回答内容を中心にまとめてみたい。
なお,インタビューは日本の報道関係者を対象に30分弱行われ,筆者以外にはExpertsPC,ITMedia,MYCOMジャーナル,PC Watch(アルファベット順)の代表者が同席していた。聞き手として「4Gamer.net」とあるのは筆者,「Q」とあるのはそのほかのメディアが行った質問である。(佐々山薫郁)
「スニークプレビュー」として未発表のまま公開されたCOMMANDO
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4Gamer.net: R.O.G.ブランドの立ち位置を教えてください。
デレック・ユー氏: R.O.G.のターゲットはゲーマーとオーバークロッカーです。一般のPCユーザーは対象にしていません。例えば,一般ユーザー向けのA.I.シリーズでは,静音や使いやすさといった部分に注力していますが,ゲーマーやオーバークロッカーにとっては,それよりむしろ,BIOSレベルで動作クロックや電圧を細かく設定できたり,そのテストを簡単にできることのほうが重要でしょう。R.O.G.では,そういった,ゲーマーやオーバークロッカーに対する新しい,意味のある機能の提供を目的としています。
Q: そういった機能提供のせいか,R.O.G.のマザーボードはA.I.シリーズよりも高価なものになってしまっています。
デレック・ユー氏: それはまだR.O.G.が立ち上がったばかりだからですね。今後,ラインナップが増えていくにしたがって,“下”の価格の製品も増えてきます。最上位モデルの店頭価格を比較すると,A.I.シリーズよりもR.O.G.のほうが高くなると思いますが,それ以外の価格帯ではオーバーラップすることになるでしょう。 R.O.G.とA.I.は,どちらかが上位のブランドというわけではありません。専用のデザインや信号の最適化,部品といった部分で,ゲーマーやオーバークロッカー向けとして特別にデザインされるのが,R.O.G.というわけです。
Q: 第1弾製品「CROSSHAIR」に対する,ユーザーからの反響はいかがでしたか?
デレック・ユー氏: 非常に高く評価してもらっています。マザーボードが光ることや,BIOSのPOST状況を目で見て確認できることなどは,とくに評価していただきました。 また,Socket AM2システムのオーバークロックランキングで,CROSSHAIR採用システムがトップを取ったりもしていますね。
4Gamer.net: COMMANDOについて,あなたはセッションで「CPUのオーバークロックによってメモリは“DDR2 1300相当”で動作した」と述べ,実際にデモも行いました。これは,このあたりのクロックなら,ほかのデバイスはともかく,マザーボードは壊れないとASUSTeKが保証するということですか?
デレック・ユー氏: いえ,製品保証という意味では,あくまで定格動作のみです。「速く走るポテンシャルを持ったクルマ」があったとして,それを速く走らせるのは楽しいことですが,同時にリスクもありますよね? それと同じです。 ご指摘のオーバークロック設定は,あくまで,コンポーネント,マザーボードレベルで「このくらいは行けるだろう」という目安に過ぎません。仮にクルマが100mを4.1秒で走れるポテンシャルを持っていたとしても,ドライバーにその技術がなければ,その速度で走るのは不可能です。同時に,4.1秒というのは当社のラボにおける結果であって,ひょっとしたら,外では3.9秒で走れるかもしれない。
例えば,セッションでお見せしたデモではDDR2 1300相当でOCZ Technology製のメモリを動作させていましたが,ラボではDOSレベルで,DDR2 1400相当でも動作を確認しています。ただ,ラボでは互換性の検証など,ほかの作業もあるので,オーバークロックのテストだけに時間を割くわけにはいきません。 ゲーマーやオーバークロッカーの方達であれば,私達より時間がありますから,より広範なテストを行って,より高いクロックで動作させることは,十分にあると思います。
4Gamer.net: ASUSTeKのラボにおけるオーバークロックのテスト結果を,それこそCPUのモデルごとに公表したりする予定はありませんか?
R.O.G.公式ページ
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デレック・ユー氏: 難しいですね。当然のことながら,どのパーツを使っているかによって,オーバークロックの限界値は異なりますし,もっといえば,同じパーツでも(個体差によって)異なる結果が出ます。その平均をASUSTeKとして出すというのは,現実的ではありません。 ただ,http://rog.asus.com/というR.O.G.の公式ページがありまして,まだ完成形といえるものではないのですけども,「OCZ Technology製メモリのこれがお勧め」などといった情報を紹介したり,フォーラムを用意して,ユーザー間でテスト環境やお勧めパーツの情報を交換できるようにする予定でいます。
4Gamer.net: セッションの休憩時間にも伺った水冷についてですが,“水冷マザーボード”の実現予定はあるのでしょうか?
デレック・ユー氏: コストや,より高い冷却効率を求めるという観点に立つと,「水冷をやるならA.I.ではなくR.O.G.」とだけはいえますね。ただ――COMPUTEX TAIPEI 2006のときにお見せしたサンプルは,実はモックアップではなく完動品だったのですが――水冷をもしやろうとすると,パイプの配線やらなにやら,非常に複雑になってしまいます。 果たして,皆が本当に歓迎するのか? 人に自慢するだけのモノになってはしまわないか,本当にユーザーは欲しがるのかと,疑問に感じていたりします。逆に質問しますが,どう思いますか?
4Gamer.net: うーん……。どうでしょうねぇ。
デレック・ユー氏: そう,皆「うーん」って言うんですよ(笑) 現時点で製品化するのは厳しいかなと思っています。
4Gamer.net: 最後に,R.O.G.でマザーボード以外の製品を投入する可能性について聞かせてください。
デレック・ユー氏: 可能性があるかないかといえば,あります。ですが,今はマザーボードのことしか考えていません。ラインナップを拡充する必要がありますし,そもそも,ゲーマーやオーバークロッカーのために,追加すべき機能が残っています。R.O.G.のマザーボードには,まだまだやるべきことがあるんです。
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