「Level-R」開発元Invictus Games CEO,Tamas Kozak氏のオンラインゲームへの取り組みと決意
ゲームポットが運営予定のオンラインレースゲーム「Level-R」では,12月15日から12月17日までの3日にわたり,ネットワーク関係などの技術的な問題を洗い出すための“技術テスト”が行われていた。4Gamerでは,その直前の14日に,開発を担当するInvictus GamesのCEO Tamas Kozak氏にインタビューすることに成功。日本側で指揮を執るディレクターの加賀直柔氏にも同席していただけたので,合わせて話をうかがった。Level-Rが生まれた経緯や,核となる物理演算/3DCG描画エンジン「INVICTUSエンジン」,今後の展開などについてあれこれ聞いてみたので,興味のある人はぜひ目を通してほしい。
■Invictus Gamesはレースゲームを作り続けてきた
Invictus Games CEO Tamas Kozak氏
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4Gamer: Kozak氏を筆頭に,Invictus Gamesのスタッフの皆さんは,車や自動車競技がかなりお好きだと聞いています。Kozak氏ご自身は,どのような系統の車や,自動車競技が好きなのでしょうか?
Tamas Kozak氏(以下,Kozak氏): 私はどんなカテゴリーの自動車競技も好きなのですが,強いていえばオフロード系ですね。車の性能よりも,ドライバーのテクニックにかかる比重が大きいところが,好きな理由です。自分自身がドライバーとして自動車競技に出場したことはないのですが,ハンガリー国内のラリーでコ・ドライバーを務めたことはあります。
4Gamer: コ・ドライバーでも凄いですよ!
Kozak氏: ありがとうございます(笑)。また,Invictus Gamesのスタッフは,それぞれストリートが好きだったり,レースが好きだったりとカテゴリーの好みは違いますが,みんな車や自動車競技が大好きです。実際のところInvictus Gamesでは,デビュー作の「1NSANE」(オフロード系のレースゲーム)以来,ずっと自動車競技系のゲームを開発していますしね。ちなみに,ラリーチームのスポンサードをしていて,車体に“INVICTUS”のロゴを貼っていますよ。
4Gamer: ラリーチームのスポンサードまでしていたんですか。車や自動車競技ゲームに関しては,筋金入りともいえるデベロッパですね。
Kozak氏: そういった社風や,開発者個人の好みは,Level-Rにも大いに反映されています。ストリートコースもあれば,サーキットもある。オフロードもあるし,中には,それらをミックスしたようなコースもあります。
4Gamer: 車種も,ストリート/サーキット系からオフロード系まで,各種用意されていますよね。バギータイプまであるのには,ちょっと驚きました。
Kozak氏: いろいろなカテゴリーのレースを表現するためには,やはりいろいろな種類の車が必要です。今後も,どんどん車種を増やしていきますよ。
■共同開発を行うことになった経緯
4Gamer: ところで,どういった経緯で,Invictus Gamesのパッケージタイトルの最新作「CROSS RACING CHANMPIONSHIP 2005」(以下,CRC2005)が,「Level-R」のベースとして選ばれることになったのでしょうか? そもそも,ゲームポットとはどういったきっかけで,共同開発をすることになったのでしょうか?
Kozak氏: 2005年のE3で,Invictus Gamesとアエリアの担当者が,とある人物の紹介で会ったのがきっかけでした。
ゲームポット ディレクター 加賀直柔氏
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加賀直柔氏(以下,加賀氏): 当社の親会社であるアエリアの担当者が,Invictus Gamesにこれをオンラインゲームにしてみませんか? と,打診しました。Kozakさんも興味を示してくれて,2005年の7月に正式な契約を結び,現在に至っているという形です。
4Gamer: その共同開発ですが,どんな部分にやりがいを感じていますか? また,どんな面で苦労がありますか?
Kozak氏: CRC2005にも,TCP/IPやLANを介したマルチプレーモードは搭載していましたが,オンラインゲームではありませんでした。Level-Rの開発にあたって,オンラインゲームにスイッチしていくというのが非常に新しい挑戦で,同時にとても難しい部分でしたね。 ゲームポットが持つ「スカッとゴルフ パンヤ」のノウハウなどを吸収させてもらえたことは,幸いでした。お互いの知識をアップさせることができたし,やりがいがありますね。
4Gamer: ビジネスや文化などの面で,ギャップを感じることはありますか?
Kozak氏: 最初の頃は問題だらけでしたね(笑)。ハンガリーと日本というのは文化の面でも,ビジネスの面でもかなり違います。とはいえ,それが大変だったかというと,そんなことはありませんでした。むしろ面白かったんですよ。
4Gamer: どんなところが面白かったんですか?
Kozak氏: 漠然とした表現になってしまいますが,アメリカの文化に比べると,日本の文化のほうがアジャストしやすい印象を受けました。この点がとくに興味深かったですね。ほかにも,なにごとにも細かい日本人の気質に感銘を受けることが多く,我々もその影響を受けていると思います。
4Gamer: そういえば,ハンガリーと日本では暮らす人の気質が似ているという話を聞いたことがあります。 これも文化的な話になるかもしれませんが,ハンガリーの車のハンドルは,左ですか? それとも右ですか?
Kozak氏: ハンガリーは左ハンドルです。Level-Rでは,ローカライズの一環として,すべて右ハンドルにしています。
■レース用に特化した独自開発のINVICTUSエンジン
4Gamer: それでは,Level-Rの核となる,物理演算/3DCG描画エンジンのINVICTUSエンジンについて話をお聞かせください。Kozakさんは,INVICTUSエンジン最大の長所はどこだと考えていますか?
Kozak氏: INVICTUSエンジンは,いくつかのパートに分かれます。車の挙動を計算する物理演算,3DCGの描画,サウンド,ネットワークなどです。INVICTUSエンジンを最初に作ったのは,2001年に発売した1NSANEの時ですね。それ以来,継続的にアップデートを続けてきています。
4Gamer: 同じINVICTUSエンジンでも,ベースとなるCRC2005のものよりも,Level-Rのほうが新しいわけですね?
Kozak氏: はい。部分を改良して,常にチューニングを続けています。Level-R用に新たに作ったパートとしては,ネットワーク部分があります。そのほか物理演算,3DCG描画,サウンドも,オンラインゲームとして最適な形に改良しています。3DCG描画に関しては,DirectX 10への対応も進めていますよ。 長所は,なんといっても車の物理演算部分ですね。ただ単に,車がアーケードチックに動くのではなく,物理演算を元に描画しているので,車体の揺れを初めとする車の挙動は,画面がそれっぽく揺れるのではなくて,実際にサスペンションやタイヤの動きを物理シミュレートして,その結果を積み重ねることで描画しているんです。
4Gamer: かなり本格的ですね。エンジンを独自に開発したのは,車の挙動にこだわりたかったからですか?
Kozak氏: そうですね。サードパーティ製のエンジンには,レースゲームに特化したものがないから,というのが大きな理由です。確かに3Dエンジンは,最新のバンプマッピングなどを用い,非常にリアルな描画を行えるものもあります。しかし,それらはまずFPS用です。レースゲームはFPSとは比べものにならない速さで背景が移り変わっていくので,それで代用するのは難しいんですよ。 それから,レースゲームを開発するに当たって,アーケードチックなゲームにはしたくないし,かといって完璧なシミュレータにもしたくない。プレイヤーにとって,一番楽しいバランスにしようとすると,やはり自分達で開発するのが最適だったというわけです。
4Gamer: 挙動もリアルだけど,ゲームとしても楽しめるというバランスの取り方は,大変そうですね。
Kozak氏: ええ,確かに大変ですが,非常にやりがいのある挑戦ですよ。
4Gamer: ちなみに,他社にエンジンをライセンスする予定はありますか?
Kozak氏: 今のところはありません。当分は,Level-Rに注力していきますよ。
■車の挙動だけでなく環境そのもののシミュレータ
4Gamer: Level-Rの特徴の一つとして,車体がダメージを受けると,車が壊れていく仕様が挙げられます。遠心力でドアが開いたりとか,空気抵抗によってボンネットが開き,重力によって閉まったりという演出も印象的でした。これらも,すべてINVICTUSエンジンで演算されているのでしょうか?
Kozak氏: はい,そうです。
4Gamer: つまりパーツ単位,それぞれの動きを演算しているということですか?
Kozak氏: その通りです。パーツごとにパラメータを設定し,ぶつかる位置,角度,勢いによって,車のどこが壊れるか,どんな壊れ方をするかが変化するんです。 例えば,ドアのロックの辺りにぶつかれば,そこはめり込んでしまう。反対側から力がかかるような衝突があれば,ヒンジ(ちょうつがい)の部分に衝撃が加わり,ドアは外れてしまうというわけです。それらはすべて,物理演算に基づいてシミュレートされています。
4Gamer: パーツが壊れると,車の挙動を表すパラメータが変化する,ということですか?
Kozak氏: いえ,違います。壊れた場合に挙動が変化するのは,パーツが脱落したり歪んだりすることで,空気抵抗が変化したり,サスペンションなどが本来の性能を発揮できなくなるからなんです。結果的に操縦特性が変化するとか,最高速が落ちるといった挙動の変化が出るようになっているわけです。 つまり,パーツが壊れた場合,車の性能を表すパラメータのどれかが変化するというわけではありません。パーツごとのパラメータが変化すると,それに連動して,結果的に車の挙動が変化するのです。
4Gamer: それはすごいですね……。ちなみに,あのリアルさを出すために,実際に車を壊してみたりするんですか?(笑)
Kozak氏: 壊さないですよ(笑)。全部演算です。
4Gamer: ということは,ウィングなどエアロパーツを装着した場合も,車のトップスピードというパラメータがアップする,というわけではないのですね。
Kozak氏: そうです。エアロパーツをつけることで,空気抵抗が軽減されるという演算結果が出るため,同じ馬力のエンジンでもその分,最高速が上昇するわけです。コーナーでも,ウィングがあればダウンフォースが強まるので,タイヤを押さえつける力が増して,よりグリップ力が増し,結果としてコーナリングスピードが速くなるとなるわけです。 単純にパラメータが変化するのではなくて,環境に対してパーツごとのさまざまな演算がなされて,車全体の性能や挙動が変化している,というわけです。
4Gamer: パーツごとの挙動を再現しているだけでなく,空気抵抗やグリップなどまで計算に入れているわけですから,もはや一種の環境シミュレータといってもいいのではないでしょうか。
Kozak氏: そうかも知れませんね。Level-Rを純粋なシミュレータにはしたくありませんが,物理演算面では,シミュレータと大差はないでしょうね。
■リアルさとゲームとしての楽しさのバランス
4Gamer: でもやはり,ゲームとして楽しめるものにするためには,リアルさを追求するだけではダメですよね。
Kozak氏: そうなんですよ。先ほども言いましたが,シミュレータになってしまうことは,我々の本意ではないんですね。かといって,アーケードチックにはしたくない。リアルさと,ゲームとしての楽しさのバランスが非常に重要なんです。 でも,壊れ方に関しては,ゲームとしての楽しさをやや重視して,あまり壊さないようにしています。実際に時速40km/hで壁に正面衝突したら,車はかなりのダメージを負い,まともに走れなくなりますよね? でも,それだとゲームにはなりません。そこで,ある程度ダメージは負っても,完全に壊れてしまうような結果は出さないように調整しているんです。
4Gamer: そこら辺のバランス調整は本当に難しいでしょうね。
Kozak氏: リアルに感じるんだけど,ゲームとしても楽しいという,リアルさとアーケードチックの中間点を探すのは,非常に難しいことです。実際のところ,プレイする人によって,その中間点は異なりますから。
4Gamer: 国や地域によっても,好みは変わっていきますしね。例えば,アジア地域でLevel-Rを展開していくためには,サービスをする国ごとに味付けを変えないといけないかもしれません。
Kozak氏: そうだと思います。幸い,これまでの経験で,大多数の人が喜んでくれるポイントというのは見つけ出せていますが。
4Gamer: それが,CRC2005であり,Level-Rというわけですね。
Kozak氏: 自分でいうのもなんですが,そのとおりです。
■リアルに感じさせるためのデザイン面での工夫
4Gamer: ところで,Level-Rに登場するのは実車ではなく,架空の車ですが,とてもリアルに感じられますね。デザインに関して,なにか工夫があるのでしょうか?
Kozak氏: 実は,社内にとても優秀なカーデザイナーがいるんです。かつて,メルセデス・ベンツやランボルギーニ,フォードなどに所属していた人物で,ランボルギーニのオフロードカーや,メルセデス・ベンツのバスやトラックなどをデザインしていました。2005年にロサンゼルスで行われたカーデザイナーのコンペティションで受賞しているほどのセンスなんですよ。彼が,Level-Rのカーデザインをしているんです。
4Gamer: 本職のカーデザイナーがデザインしているから,あれほどのリアリティが表現できているというわけですか?
Kozak氏: いえ,優秀なデザイナーがデザインしていることだけが,リアルさに結びついているわけではないんです。架空の車ではありますが,完全なオリジナルデザイン,というわけでもないんですよ。 実は,既存の車のさまざまなパーツを参照し,それを組み合わせたものをベースにして,リデザインしています。
4Gamer: というと……?
Kozak氏: 例えば,ハッチバックタイプのCORUS S2という車があります。これは実在するハッチバックタイプの車,数車種の各パーツから着想を得ています。それを最終的に,デザイナーがリデザインし,ゲームにフィットさせているというわけです。
4Gamer: なぜオリジナルデザインではないのでしょうか? もちろん,そんなすごいデザイナーがいるわけだから,デザインできないわけがないと思うのですが。
Kozak氏: 完全なオリジナルデザインにしてしまうと,プレイヤーには作り物っぽく映ってしまうんですよ。プレイヤーにリアルさを感じてもらうには,「既存のエレメント+何か」という形にする必要があります。このような手法を取るほうが,プレイヤーにアクセプトしやすいと,我々は考えています。
4Gamer: なるほど,そういわれてみると納得できますね。ちなみに今後,日本車っぽいデザインの車は登場しますか? それとも,すでにあるのでしょうか?
Kozak氏: 技術テストに登場する車だと,オフロード用の四駆車 C LACER Xが,日本のとあるSUV車をモデルにしています。
■日本の自動車メーカーとライセンス協議中!
加賀氏: これは,今回初めてお話しするんですが,実は日本の自動車メーカー数社とライセンス協議を行っている最中なんです。話がまとまれば,Level-Rに実車を登場させられる予定です。
4Gamer: おお,それは楽しみですねぇ。しかしLevel-Rのように,マシンがクラッシュする仕様が盛り込まれているゲームの場合,メーカー側が「うちの車はこんな壊れ方をしない」と嫌がったりしませんか?
加賀氏: そのあたりも現在調整中です。NGが出る部分もありますが,Level-Rの壊れ方なら許容範囲内という感じで落ち着きそうですね。許可が出たら,また正式にアナウンスさせていただきます。
4Gamer: それは楽しみですね! ところで,実車が登場するとなると,現在のようなオリジナルデザインのクルマは登場しなくなるのでしょうか?
加賀氏: なくなることはないでしょうが,実車が登場したあとにオリジナルデザインの車を出す場合には,実車に負けないデザインを心がけることになるでしょうね。
■Tokyoマップはこのあと改良される予定!
4Gamer: 次はマップに関して話を聞かせてください。「Tokyo」マップの制作用の参考資料は,加賀さんが集めてInvictus Gamesに送ったのでしょうか?
加賀氏: いえ,違います。Kozakさんが来日して,ビデオやカメラで撮影したデータを元に,開発を進めてもらいました。
4Gamer: なるほど。ちなみにTokyoマップですが,非常にいい感じで東京らしさが表現されていますね。Kozakさんご自身はどう思いますか?
Kozak氏: 実は昨日(12月13日),マップ作りの参考にした場所をいろいろと回ってみたのですが,あまり本物と似ていなくて,がっかりしました(笑)。正直な話,今の段階のものは気に入ってないですね。もっとも,今回の来日で修整すべきポイントが見つかったので,帰国後,直ちに修正作業に入る予定です。
4Gamer: 自己採点が厳しいですねぇ。それなりに雰囲気は出ていると思うのですが。
Kozak氏: 初めての土地を1回取材しただけでは,やはり見えてこないものがいっぱいありますね。ヨーロッパなら姉がドイツに住んでいますし,イギリスには何度も行っているので,感覚的にわかるのですが。 日本には,Level-Rを開発するようになり,ゲームポットとのお付き合いが生まれてから訪れるようになったので,まだまだ感覚的に分からないところだらけです。
■リアルな街の再現より,走って面白いコースにしたい
4Gamer: ちなみにこのTokyoマップですが,先ほどの架空のクルマ同様,「リアルさを出す」という目的で,東京のさまざまな場所をパッチワークした感じなのでしょうか。
加賀氏: それはどちらかというと,私の指示ですね。私自身は,現実の街をサーキットにしたからといって,面白いとは限らないと思っています。それよりも,コースとしてしっかりレイアウトしたほうが,走っていて面白いはずです。なので,リアルな街並みを再現する,という方向性は考えていませんでした。
4Gamer: でも,東京に住んでいたり,通勤している人限定の話ですが,自分の家とか会社の前を通ってみたいとか,北海道のラリージャパンのコースをそっくりそのまま走ってみたいとか。そういうプレイヤーも多いんじゃないかと思うのですが。
加賀氏: そうですねぇ。まあ,要望が来たら考えないこともないです。社内の人間からも,すでにラリージャパンを走りたいという声が挙がっていますし。
Kozak氏: ちなみにInvictus Gamesでは,以前のパッケージタイトルで,一つの都市を丸々再現したこともありますよ。
4Gamer: では,Invictus Gamesの技術をもってすれば,東京を丸々再現することも不可能ではないと?
Kozak氏: ええ,不可能ではないですね。
加賀氏: 先ほどもいいましたが,私は現実の街をコースにするのなら,それ以上に面白い架空の街でコースを作ろうと考えているので,リアルに街並みを再現するというのは,今のところは考えていません。まぁ,要望次第ですね。
4Gamer: プレイヤーの反響が楽しみですね。ところでLevel-Rには,「スノー/アイス」という要素もありますよね。ということは,雪道やアイスバーンといった新マップも近日中に公開されるんですか?
Kozak氏: CRC2005の話ですが,北欧のロケーションで,スキー場の斜面を下ったり,全面が凍った湖の上を走ったり,というコースを作ったことがあります。Level-Rでも,雪道やアイスバーンのコースを開発していますよ。オフロードファンは期待していてください。
■Invictus Gamesは今後,オンラインゲームのみを開発!
4Gamer: Invictus Gamesとして,このゲームを通じて今後実現したいことはありますか?
Kozak氏: 成功すること!(笑) それはビジネスの話ですけど,ゲームの話だったら,プレイヤーの声を聞きたいですね。フィードバックを得たいです。そして,そのフィードバックに対してどんどん対応していきたいですね。プレイヤーが実際のところ,どんなことを望んでいるのかは,まだ分かりません。だからこそ,できる限り多くの人の声を聞きたいです。テストを通じて,さまざまな問題が浮上してくるでしょうが,それも含めて,楽しみにしています。
4Gamer: では最後の質問です。ビジネスモデルの話なのですが,パッケージと(アイテム課金の)オンラインゲームとでは,開発のスタイルも随分異なると思います。パッケージ販売は,発売してしまえば,バグフィックスのバージョンアップなどはありますが,一応そこで完結します。オンラインゲームの場合は,ひたすら作っていかないとなりませんし,アイテム課金となると,また別の苦労もあると思います。そこら辺の心構えを教えていただけますか?
Kozak氏: 個人的には,あまり大きな差異はないと考えているんです。私達はいいゲームを作るだけ。それがビジネス的な成功につながれば,最高に嬉しいです。確かに新たなチャレンジではありますが,問題なくやっていけると信じています。
4Gamer: Level-Rが一段落したら,またパッケージタイトルの開発も行うのでしょうか?
Kozak氏: いや,もう行わないですね。今後は,オンラインゲーム1本で行きます。ヨーロッパなどでは,パッケージゲームをオンラインでダウンロード販売するようなケースは増えていますが,“オンラインゲーム”はまだまだです。ですが,ビジネスとして考えると,今後はやはりオンラインゲームが伸びるであろうと思います。それに,オンラインのレースゲームというのは現状では少ないので,我々がパイオニアになるつもりで頑張っていきます。
4Gamer: 頼もしいお言葉ですね。こちらも一ゲームファンとして,大いに期待させてもらいあます。本日は長い間,ありがとうございました。
加賀氏: ありがとうございました。
Kozak氏: Thank you very much!
熱心な4Gamer読者にとっては「Field Ops」や「D-Day」などの第二次世界大戦RTSを開発しているDigital Realityの印象が強いかもしれないが,日本のゲーマーの多くにとって,ハンガリーという国はそれほどなじみがないのではないだろうか。 そんなハンガリーのゲームデベロッパが,日本でサービスするオンラインゲームを開発しているということ自体が,なかなかレアなケースではある。 インタビュー中でも軽く触れているが,ヨーロッパのオンラインゲーム市場の規模は,まだ大きくない(このあたりは,2006年9月に掲載したConnection EventsのCEO Pierre Carde氏のインタビューに詳しい)。にも関わらず,Invictus Gamesが今後,パッケージゲームには戻らず,オンラインゲームに注力していくと語ってくれたのには,少し驚かされた。
Level-Rは当面,日本でのサービスを重視し,その後にアジア地域への展開を予定しているが,ヨーロッパでの展開は未定となっている。だが,Invictus Gamesとしては,ゲームポットと手を組みながら今のうちにオンラインゲームのノウハウを吸収しておき,いずれはヨーロッパのオンラインゲーム市場に向けて,何らかの行動を起こすつもりなのかもしれない。 だがこれも,Level-Rの成否にかかってくる部分が大きいはず。このあたりも含め,Level-Rには注目していきたい。(ライター:デイビー日高)
(2006年12月14日収録)
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