「Windows Vista」時代のコンシューマ向けサービスが発表に 「Games for Windows」は「これから」
Windows Vista発売ということで,日本らしく鏡割りをするマイクロソフト幹部
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Microsoftの日本法人であるマイクロソフトは,新世代OS「Windows Vista」家庭用エディションの発売日となる2007年1月30日に,家庭用Windows Vista向けの新サービスを発表した。 今回,具体的な事例とともに紹介されたのは,ムービーや音楽などといった家庭向けのコンテンツ配信や,WPF(Windows Presentation Foundation)を利用した,インタラクティブなWebサービスなど。WPFに関しては2006年9月4日の記事を参照してほしいが,スクウェア・エニックスが自社運営の直販サイト「スクウェア・エニックス e-STORE」の一部をいち早くWPFに対応させ,3Dで描画されたボックス画像を動かしながらゲームタイトルを選べるようなデモを展示するなど,Windows Vistaがさまざまなコンテンツホルダーからサポートを得ているとアピールされていた。
「新しいものが大好きなセガとしては,Windows Vistaらしいタイトルを,ローンチに合わせてお見せしたかった」と小口久雄氏(セガ 代表取締役社長)。化石プレイはまだ開発中という
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なかなか興味深かったのは,「タッチアプリ」と名付けられたコンテンツ群だ。これは,Windows Vista Home Premiumおよび同Ultimateが採用する「タブレットテクノロジー」に基づくもので,簡単にいえば,ペンタブレットでの入力を前提としたコンテンツ。もっといってしまえば,ニンテンドーDSが謳う「Touch! Generations」のPC版といった感じである。
Windows Vistaの発売日時点で提供が予定されているのは,漢字学習ソフトやナンプレ(ナンバープレイス)などといった,ニンテンドーDSでリリースされているジャンルが中心。そのなかで,“化石発掘ゲーム”「化石プレイ」を発表して異彩を放っていたセガから,小口久雄代表取締役社長が登壇した。 ペンというインタフェースが,キーボードやマウスを使いこなせない年配者や主婦層,あるいは子供にとって非常に重要な存在であるとした同氏は,「タブレットは,新しいOSを家族全員が使っていくことを考えたとき,非常に魅力的な存在。将来的に,PCゲームでも,ニンテンドーDSのようなことが起こるかもしれない」と述べ,化石プレイだけでなく,セガがWindows Vistaに取り組んでいくと強調していた。
化石プレイのデモ。ペンを使ってダウジング(化石探索)したり,土を掘ったり,化石の上にある土を掃いたりしながら,発掘作業を行っていく。どこからどう見てもカジュアル向けのタイトルである
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化石プレイのほかには,メディアカイトが漢字練習ソフト「漢検×Pen」に「ナンバープレイス×Pen」をプレイアブルで出展(上段)。フロンティアグルーヴは,イルカをなでたり,ジェスチャーで芸をさせたりできるという「AQUAZONE タッチ・ザ・ドルフィン」を出展していた(下段左)。ゲームではないが,サイバーフロントやNTTデータシステムズは,イラスト関連のアプリケーションを用意している。下段右の写真はサイバーフロントの「Friend Draw」。オンラインでキャンバスを共有できるペイントソフトだ
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以上,4Gamer読者にとって大いに関係のありそうなところを中心にお伝えしてきたが,驚きだったのは,「Games for Windows」や「Live Anywhere」について,発表会中に何の言及も行われなかったことである。
発表会では,「Windows Media Center」向けとして,1月30日時点で45ものサービスが用意されており,今後も日本テレビなど,多くのコンテンツホルダーが有料/無料の形で参入すること,「Windows Media Player 11」から,「HMV」や「mora」などといった複数の有料音楽配信サービスなどを利用できることなど,ビデオや音楽コンテンツ関連の説明に多くの時間が割かれた
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Games for Windowsの英語版オフィシャルサイト
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もちろん,「Games for Windowsは全世界的にこれからの話」ということであればやむを得ないのだが,北米を見てみると,2007年1月23〜24日にかけてGames for Windowsのローンチイベントが行われ,「Microsoft Flight Simulator X」はもちろん,「Crysis」「Age of Conan: Hyborian Adventures」「Supreme Commander」といったタイトルが出展されたと,Games for Windowsオフィシャルサイトが伝えている。このイベントには,Live Anywhere対応タイトル,「Shadowrun」もプレイアブルで展示されていたそうで,ビデオ配信や音楽配信が大きくクローズアップされ,ゲームはちょっとしたカジュアルタイトルだけという日本とのギャップを痛感せざるを得ない。
この点について,Q&Aセッションで聞いてみたところ,「日本では,Games for Windows対応タイトルとしては,『マイクロソフト フライト シミュレータ X』を投入したところ。これとWindows Vistaの発売を皮切りに,PCゲームを盛り上げていく活動をこれからどんどん行っていく。日本でもプロモートできる段階になったら大々的に発表したい」との回答が得られた。
発表会中に表示されたスライドより。Windows Vistaの提供する「プレミアム デジタルライフ」の柱の一つとしては,ゲームは認識されていない
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要するに,マイクロソフトも――北米からかなり遅れてはいるが――ゲームプラットフォームとしてのWindows Vista訴求へ動こうとしているのだ。将来的な活動についての言質が取れたことは,大いに歓迎したいところである。 ただし,すべてはこれからだと半ば断言された点も,見逃すわけにはいかないだろう。Windows Vistaがゲームプラットフォームとして日本で急速に立ち上がる可能性は,まずなくなったと見ていい。タブレットを用いたカジュアルタイトルはともかく,進化したグラフィックスやゲームに関連したオンラインサービス面での“Windows Vistaらしさ”は,マイクロソフトが次の動きを見せるまでの間,待つほかなさそうだ。
4Gamerではこれまでも何度か繰り返しているが,ゲーム用途でWindows Vistaの導入を考えているのであれば,自分のプレイしたいゲームが同OS上で明らかなメリットが出るタイミングまで,慎重に見守る必要があると,改めて強調しておきたい。そして同時にマイクロソフトには,できる限り早いタイミングで,日本におけるGames for WindowsやLive Anywhereの全容を明らかにしてほしいと思う。(佐々山薫郁)
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