「Angel Love Online」開発者インタビュー:これから導入されるRvR,その先の地下ダンジョン
Taipei Game Show 2007の会場で行った,「Angel Love Online」開発プロデューサーJacky Chang氏へのインタビューをお届けする。ショウのレポート記事でも触れたように,Angel Love Onlineに関して,台湾では日本サービスより二つ先の大型アップデートがすでに導入されている。そこで,日本サービスでこれから導入予定のRvRシステムおよび,ショウ会場でアピールされていたその次の「伊甸謎城」(エデンの謎の城)アップデートについて,状況を聞いてみた。また,日本と台湾におけるプレイヤーの傾向の違い,台湾サービスでのRvRシステムとゲーム全体の展開との関係なども,見どころとなるだろう。 当サイトではChinaJoy 2006の記事でお届けして以来となる,Angel Love Onlineの“硬派”な一面の具体的な姿,そして長期的なアップデート予定をぜひチェックしてほしい。
■次の次の目玉は地下ダンジョンと結婚システム
UserJoy Technology Angel Love Online 開発部門 Vice General Manager Jacky Chang氏
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4Gamer: 本日はよろしくお願いします。まず,台湾におけるAngel Love Onlineのサービス状況,アカウント数などについて教えていただけますか。
UserJoy Technology Angel Love Online 開発部門 Vice General Manager Jacky Chang氏: 台湾でAngel Love Onlineのクローズドβテストが始まったのは2006年の7月,翌8月にはオープンβテストを実施しました。累計アカウント数は現在100万,同時接続者数は最大4万人となっています。そして1月30日には,大型アップデート「伊甸謎城」が実装されました。
4Gamer: UserJoyブースにも,「伊甸謎城」展示がありましたね。この大型アップデートでは,どんな新要素が入っているのでしょうか?
Chang氏: 「エデンの謎の城」と名づけられたこのアップデートの目玉は,エデン大陸に作られた「地下ダンジョン」です。これは最大5名のパーティで挑戦するインスタンスダンジョンで,3パートで構成されるものと,4パートで構成されるものの2種類を実装しました。 パートを一つずつ攻略しなければ先に進めないシステムで,七つめのパートにはこれまでにない強さと賢さをもったボスが待ち構えています。これを倒せれば,メインストーリーのクエストをさらに進行させられます。
4Gamer: インスタンスダンジョンは,楽しめるコンテンツとして人気が高いようですね。挑戦するのにレベル制限などはあるのでしょうか。
Chang氏: ええ。掲示板などを見る限り,攻略方法の相談がプレイヤー同士でかなり活発に行われているようです。 この地下ダンジョンには「竜の墓場」から入れますが,レベル制限はとくに設けていませんので,誰でも挑戦可能です。ただし,モンスターはそれなりに強いですよ。
4Gamer: 地下ダンジョンのほかには,どんなものが実装されていますか?
Chang氏: 次に大きな要素というと「結婚システム」でしょうか。とあるクエストをクリアすると結婚が可能となり,式も挙げられます。結婚式には豪華版と質素版の二つがあって,豪華版は教会で挙式でき,2時間有効なステータスアップなどのボーナスがありますが,これは有料アイテムを買わないと行えません。一方の質素版は,何も特別なことはできませんが無料です。
4Gamer: 結婚によるメリットは何でしょうか?
Chang氏: 結婚でもらえるアイテム「結婚指輪」の機能として,テレポートが使えるようになります。これは男性が女性のいる場所へ即座に飛んでいくというものです。男性が使おうが女性が使おうが,移動するのは常に男性キャラクター側になります。
4Gamer: な,なるほど。微妙にリアルですね(笑)。
Chang氏: そのほかに,ギルドチャットやパーティチャットに加えて,二人だけの夫婦チャット,相手のオンライン/オフライン状況が分かるチェック機能があります。 念のために離婚システムも準備中でして……。結婚と違って相手の同意を得なくても,専用NPCに話しかければ結婚を解消できるというものです。相手には「結婚が解消されました」というシステムログが表示されるだけなんですが。
4Gamer: ……なんだかいろいろ示唆的な気がして,笑いづらいなあ……。それはさておき,通常のフィールドマップやアイテムに関して,新要素はありますか?
Chang氏: 六つの新マップと,それに伴う新モンスター,それに新しい機甲として「アヒル」型と「ワニ」型が,騎乗生物としてはカブトムシとゾウが登場します。
4Gamer: 機甲には「コアラ」型など,可愛いデザイン多いですよね。その新作ということですか。ところで騎乗生物は,国によって販売しているタイプが異なりますが,カブトムシとゾウはどこの国で買えますか。
Chang氏: この新機甲,新騎乗生物は購入できません。どちらも先ほどのインスタンスダンジョンの中で,モンスターからのドロップアイテムとしてしか入手できないんですよ。
4Gamer: なるほど,プレイヤーさんのがんばり次第なわけですね。ところで,アップデートに伴ってキャラクターのレベルキャップ(レベル上限)は引き上げられていますか?
Chang氏: ええ。日本サービスでは現在レベル60が上限となっていますが,台湾では2006年12月のPvPシステム実装と同時にレベル70まで引き上げられ,今回さらにレベル80までとなりました。
アヒル型機甲と,新しい騎乗生物カブトムシのデザイン画。どちらも台湾では「エデンの謎の城」アップデートで導入された
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■台湾ではプレイヤーの半数が集まるRvRチャネル
4Gamer: 話は前のアップデートまで遡るのですが,日本ではこれから導入される予定のRvRについて,詳しいシステムを教えて下さい。それと,台湾での反応なども。
Chang氏: ギルド同士が争うRvR,つまり戦争システムについてですが,台湾サービスではワールド(サーバー)が全部で8個あり,それぞれにチャネルが三つずつ存在します。各サーバーでPvPが可能なのは1chのみです。 戦争は1週間に2回,2時間限定で行われます。戦争が嫌いなプレイヤーは,2chまたは3chへ移動するだけで避けられる仕組みですが,実際のところ戦争の時間には,半分以上のプレイヤーキャラクターが1chにいるのです。 勝利ギルドのメンバーとなれば,大きなメリットがあるのがその主な理由でしょうが,単純にゲーム内で自分の強さをアピールしたいというプレイヤーも多いようです。
4Gamer: 勝利ギルドが得られるメリットとは,具体的には何ですか。
Chang氏: ギルド単位で参加するRvRは専用マップで行われます。専用マップは12個のエリアで構成されていて,各エリアに一つずつ設置された「トーテム」を破壊すると,そのエリアにおける勝利ギルドとなります。トーテムを保持しているギルドと同じ国に属するギルドは,そのエリアは攻められません。 勝利ギルドは,国別に用意された特別エリアに出入り可能となり,そこではモンスターから得られる経験値が普通より多いだけでなく,そこでしか手に入らない資源も用意されています。
4Gamer: 複数のギルドが協力して攻めた場合,勝利ギルドはどのように決まるのでしょうか。
Chang氏: 複数のギルドが協力しあい,トーテムを倒した場合には,最も貢献したギルドが新たにそのエリアを保有します。
4Gamer: 攻める側は戦いが有利になるように,当然複数のギルドで攻めると思いますが,防衛側はどうなんでしょうか。こちらも複数ギルドで守ることは可能ですか?
Chang氏: もちろん防衛側も複数で当たれます。また,事前に所有エリアとトーテムの周辺には防御施設を建築できるのです。敵を矢で自動攻撃するタワーや,その近くにいるとHPが回復したりステータスが上昇したりする建物ですね。これは生産クラスだけが作れるものなので,RvRではすべてのクラスが,必要とされる存在になるわけです。
4Gamer: ただ,先ほどのお話ですと,同国所属ギルドが保持しているエリアは攻められないうえに,経験値や資源がおいしい特別エリアには勝利ギルドしか入れないわけですよね。防衛に対する貢献がシステム上評価されでもしない限り,防衛側ギルドに協力したところで,攻めてよいエリアが減るばかりであって,メリットがいっさいないように思えるのですが。
Chang氏: そのとおりです。そのときのメリット/デメリットだけで見てしまえば,防衛側ギルドへの協力には何の得もありません。 しかし,戦争システムが実際に機能している様子を見る限り,普通は同国民で助け合っています。これは,立場が逆になって自ギルドがトーテムを守る立場となったときに,今度は助けてもらえるはずという,ギルド同士の信頼関係で成り立っています。
4Gamer: なるほど,そのときそのときの利害だけではないのですね。ところで国別に用意された特別エリアですが,勝利ギルドが協力ギルドに開放するといった選択肢は用意されていないのでしょうか?
Chang氏: 現在のところ,恩恵を受けられるのは勝利ギルドのみですね。ただし,それだとどのくらいのメリットがあるのか分かりづらいですから,RvRシステム実装直後の1週間だけ,体験会と称して誰でも入れる期間を設けていました。
新しいアヒル型機甲とワニ型機甲。アヒルには色違いのほか,フード付きパーカーを着たものもいる。ワニでは色と模様/表情にバリエーションがあるようだ
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■日本でRvRを盛んにするための方策は?
キューエンタテインメント オンライン事業パブリッシング部部長 森 健志氏
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4Gamer: こうして聞いてくると,台湾でRvRは人気も高く定着しているようですね。今度は日本サービスを担当するキューエンタテインメントのお二人にお聞きします。 日本国内ではこれからRvRが実装される予定ですよね。日本のプレイヤーは一般的に戦争やPvPにそれほど熱心ではなく,むしろPKや戦争に巻き込まれることを嫌う傾向が強いと思います。Angel Love Onlineで戦争システムに興味を持ってもらえるよう,何か独自の工夫を考えていますか?
キューエンタテインメント オンライン事業パブリッシング部部長 森 健志氏: ええ。台湾で実装されたものを,ただそのまま持ってくるつもりではありません。 例えば台湾版のAngel Love Onlineは,戦争中でもデスペナルティによる経験値減少があるという厳しい仕様です。これは日本のプレイヤーには受け入れにくいでしょう。そこで,日本サービスにおける戦争中のデスペナルティについて,検討している真っ最中です。 もう1点,台湾版にはPvPによるランキングシステムがありまして,これも日本にそのまま持ち込むと,「勝手にキャラクター名を出さないでほしい」といった反応もあることが予想されます。そこでランキングシステムはそのままに,キャラクター名の表示/非表示をプレイヤー側で任意に選べるようにするか,あるいはランキングシステムそのものを導入しないといった可能性があります。
キューエンタテインメント オンライン事業パブリッシング部 ゲームディレクター 君塚靖征氏
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4Gamer: そういった日本向けの変更を踏まえたうえで,戦争システムについて,いつごろの導入を予定しているか教えて下さい。
キューエンタテインメント オンライン事業パブリッシング部 ゲームディレクター 君塚靖征氏: 早ければ3月中旬から4月にかけてを予定しています。ただし,一度にすべての機能が入るのではなく,プレイヤーの反応を見ながら段階的に実装されることになるでしょう。
4Gamer: では再びChangさんに。日本で実際にAngel Love Onlineをプレイしていると,国別のプレイヤー数にだいぶ偏りがあるように見えます。こういった偏りはRvRにも影響を及ぼしますよね。台湾でも似たような状況なのでしょうか?
Chang氏: 実は台湾でも,RvR導入前には国ごとに人口がかなり偏っていました。その当時の人気順に申し上げますと「聖光城」「風香林」「永夜宮」「鉄機塞」です。しかしRvRがスタートしてみると,高レベルプレイヤーとその所属ギルドほど,人口の少ない国へ移っていきました。
4Gamer: そのほうが得になることがあるのでしょうか?
Chang氏: ええ。先ほど述べたとおりトーテムをめぐって争うRvRマップには12個のエリアがありますが,勝利ギルドが入れる特別エリアは各国に一つずつしかないからです。 人数が多く勢力が強い国のギルドが,12個のエリアのうち例えば10個を取ってしまうと,特別エリアには10のギルドのメンバーが殺到して,資源もモンスターもすぐに狩り尽くされてしまうわけです。その点人口の少ない国であれば,協力し合えるギルドが少なくて攻守ともに厳しくはなるものの,ひとたび勝利すれば特別エリアは空(す)いているわけです。
4Gamer: なるほど。他ギルドに頼らなくても,トーテムを維持する自信のある上位ギルドとそのメンバーほど,人口の少ない国に移籍したがるわけですか。これは日本で導入した場合でも同じかもしれませんね。
新しい騎乗生物であるゾウ。インドのマハラジャ風の鞍飾りが付いたバリエーションもある
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■情報収集とコミュニケーションに積極的な台湾プレイヤー
4Gamer: ところで,せっかくデベロッパさんにお話を聞ける機会ですので,ゲーム全体に関わる仕様についてもお聞きしたいことがあります。Angel Love Onlineには30種を超える豊富な技法(スキル)がありますが,プレイヤーキャラクターがある時点で実際に使えるのは6種類に限定されています。これはなぜなのでしょうか?
Chang氏: 一つめの理由は,ゲームバランスを保つためです。一人で多くの技法をカバーできてしまえば,万能なキャラクターが出来上がってしまいます。それを防ぐためです。 理由はもう一つ,台湾でβテストを開始したころは,実をいうと職業と初期技法のセットは存在せず,プレイヤーが好きなように組み合わせられる形でした。 ところが,ターゲットプレイヤーの年齢が低めなこともありまして,有効な技法を自分で考えて組み合わせたり,試行錯誤しながら組み替えるたりするのが少し難しかったようなのです。それで現在ある,クラスと初期技法のセットという形に変更しました。
4Gamer: MMORPGではよく,何でもできる自由度の高さが評価されますが,年齢の低いプレイヤーにはそれがハードルになってしまうのですね。では今度は台湾と日本のプレイヤーの違いについてお聞きします。Changさんから見て,両者の傾向や好みは違いますか?
Chang氏: そうですね……例えばサービスが先に始まっていて,情報がプレイヤー間に行き渡っているということか,日本よりも台湾のほうがレベリングが速いですね。 1月30日のアップデートでは新サーバーも一つ追加されているのですが,サーバーオープンから2週間ですでにレベル51のキャラクターがいました。日本でのレベリングペースと比べたとき,これは熟練度の違いとしかいいようがないでしょう。
君塚氏: プレイヤーの振る舞い自体も違います。日本でのアイテム売買は,「エンジェル学園」に露店を開き,それをほかのプレイヤーさんが見て,欲しいものを購入していくという無言のやりとりが中心です。これに対して台湾ではシャウトを使って,アイテムの販売や交換,ギルドメンバーの募集などをしょっちゅうやるため,シャウト用アイテムが非常によく売れます。
4Gamer: 日本でとくに売れ行きのよいアイテムなどはありますか?
森氏: サービス開始から2か月ほどしか経過していませんので,そのあたりはまだ手探り状態としかいえません。台湾では季節イベントと絡んだ,期間限定アイテムなども人気があるようですので,日本でもプレイヤーの反応を見つつ,イベントやアイテムの導入を企画していく予定です。
君塚氏: コアラの機甲はすでにあることですし,パンダの機甲があれば人気が出ることと思いますが,ご存じのようにAngel Love Onlineは中国でもサービスされています。その関係で慎重な調整が必要になる部分もあるのです。日本オリジナルの機甲としてなら,むしろ導入が容易かもしれません。
4Gamer: うーん,少なくとも海外でサービスされている中国製MMORPGにもパンダは出てきますが,サービス地域によっては特段の配慮が必要な場合もあるわけですね。 さらに先の話になりますが,「エデンの謎の城」以降のアップデート予定を,お聞きできる範囲で教えてください。
Chang氏: 先のスケジュールについては,まだはっきり固まってはいませんが,メインストーリーに登場する3番目のボスモンスターは,近々ゲーム内にお目見えする予定です。
4Gamer: では最後に,日本でAngel Love Onlineを楽しんでくれている人にメッセージをお願いいたします。
Chang氏: 日本と台湾における,プレイヤーの好みや傾向の違いは,私なりに把握しているつもりです。日本プレイヤーのみなさんに向けてローカライズを行っていく予定ですので,今後ともAngel Love Onlineをよろしくお願いします。
君塚氏: 日本でAngel Love Onlineのサービスが始まってから約2か月。未実装の機能もまだまだ多いですが,ゲームシステムが広がるのはこれからです。ぜひ楽しみにしていてください。
4Gamer: 本日はありがとうございました。
新騎乗生物の一つ,カブトムシ。片方はヘラクレスオオツノカブトあたりか?
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日本におけるAngel Love Onlineは,レベルキャップに到達したプレイヤーこそ出ていないとはいえ,中級以上のプレイヤーの多くは,ほとんどのエリアを体験し尽くした感がある。 そこへ加わるRvRは,単に高レベルプレイヤーが強さを競う場および目標となるだけでなく,特殊エリアで入手できる採集物をもとにした新アイテムの作成,防御施設の構築など,生産職の存在価値を高める意味合いも強い。とくに防御施設については,ギルド構成員の内訳を制約しないという意味で,うまく考えられたシステムといえるのではないだろうか。 インタビューにもあるとおり,強者揃いのギルドであれば,プレイヤー人口の少ない国に属したほうが結果として有利というのは面白い仕組みだ。理屈でいえば,各国でのRvR参加ギルド数が自然に調整され,それはRvRの勝敗をも大枠で均衡させていくだろう。各自が利害に基づいて動くだけで,RvRがより盛り上がる方向へ向かう「神の見えざる手」というわけである。
今回はアップデート内容で2歩先を行き,そうした仕組みがうまく機能している台湾サービスの状況を中心にお伝えしたが,この「ビルトイン・スタビライザー」がうまく機能するためには,まずRvRにプレイヤーが集まらなくてはならないという宿命がある。デスペナルティの軽減やランキングシステムの改良といった工夫によって,本作の日本プレイヤーの間にうまくRvRが定着するか。今度はキューエンタテインメントの取り組みに注目したい。(ライター:麻生ちはや)
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Angel Love Online |
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(C)2006-2007 UserJoy Technology Co., Ltd.
(C)2006-2007 Q Entertainment Inc. |
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