AMD,次世代GPU「R600」の概要を説明 カードの正式発表は5月に
次期GPU製品の概要を発表したAMDのRick Bergman氏(リック・バーグマン,Senior Vice President and General Manager, Graphics Products Group, AMD)
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AMDは「CeBIT 2007 Hannover」で記者発表会を開催し,DirectX 10に対応する次期GPU(グラフィックスチップ)「R600」(開発コードネーム)ファミリーについて,概要の一部を公開した。
AMDがR600について公式に説明を行うのは,2006年12月14日(米国時間)に開催された投資家向け説明会「2006 AMD Analyst Day」以来だ。そのときは,単にR600がShader Model 4.0に準拠したDirectX 10 GPUになるという程度のものだったが,今回は,もう少し踏み込んだ内容まで説明されたので,紹介したい。
■高解像度ビデオ再生機能を実装するR600 ■GPUの正式発表は5月に
R600は,Xbox 360のATI Xenosを手がけたSanta Claraの開発チームによるGPU。Shader Model 4.0に完全準拠するほか,DirectX 10.1を見据えた機能拡張がなされる
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R600として知られる次期フラグシップGPUを筆頭とする次世代ATI Radeonファミリーは,Xbox 360に搭載された「ATI Xenos」(Xbox 360-GPU)に続く,第2世代の統合型シェーダ(Unified Shader)アーキテクチャを採用。具体的な製品ラインナップ構成や製造プロセス,シェーダユニット数などの詳細は明らかにされなかったが,R600の下位モデルとして,複数の「RV6xx」が投入されることが明らかになった。 また,イメージクオリティや物理演算,ストリーミングプロセッシングのパフォーマンスを引き上げる新機能も数多く搭載される。その一つの指標として,デュアル(2-way)OpteronとR600のCrossFire構成を採用したワークステーションで1Tflops(T:Tera)の演算性能を実現したとアピールされた。1Tflopsというのは,1997年に世界最高速のスーパーコンピュータとして君臨したIBMの「Deep Blue」の10倍の値とされている。
上下段とも,左がDirectX 9,右がDirectX 10ベースでレンダリングされたもの。DirectX 10の登場で,PCグラフィックスはさらなる表現力を得ることになる
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次世代ATI Radeonには,UVDが実装され,3DエンジンやCPUに負荷をかけることなく,高品位のビデオ再生を可能にすると謳われる
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また,次世代ATI Radeonファミリーには,これまでの「Avivo Technology」よりも進化した動画再生機能「UVD」(Universal Video Decoder)が実装される旨も発表された。
UVDは,旧ATI Technologiesがテレビ&セットトップボックス向け統合チップ「Xilleon」で培ってきた動画再生機能をGPUに統合したもの。UVDにより,Blu-rayやHD DVDなどといった高解像度ビデオコンテンツを,CPUに負荷をかけることなくGPU側で再生できるようになる。これにより,比較的安価なCPUを搭載したPCでも1080p/40Mbpsのフル精度で高解像度(HD)コンテンツの再生が実現できるようになるほか,既存のGPUのように,ビデオ再生に3Dグラフィックスエンジン(の一部)を利用する必要もなくなって,Windows VistaのAeroデスクトップなどの3Dグラフィックスパフォーマンスにも影響を与えずに済むという。 これと併せて,次世代ATI RadeonファミリーではGPUにHigh Definition Audio(以下HD Audio)コントローラが内蔵されることも明らかになった。HDMI出力時にはこのコントローラを通じてサウンドを出力できるようになるため,映像と音の同期が取りにくいといった,現在のHDMI出力の問題点も解消されるとのことだ。
左はUVDのユーザーメリットを謳ったスライド。インタラクティブコンテンツの再生や,ビットレート40Mbpsのフル精度Blu-rayコンテンツ再生なども可能になるという。右は次世代ATI Radeonの特徴の一つである,HD Audioコントローラ内蔵に関する説明だ。これにより,HDMI出力時の映像と音声のズレを防ごうという考え。「RV6xx」とあるので,最上位のR600では実装されない可能性もある
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さて,4Gamer読者が気になるだろう,ATI Radeonの出荷時期に関して公式な発表はなかった。しかし,CeBIT 2007 Hannoverにあるグラフィックスカードベンダーのブースでは,顧客向けのR600実機デモや,RV6xxのエンジニアリングサンプル公開が行われており,そんなベンダーから得られた情報を総合するに,R600ファミリーは5月中に発表,出荷される見通し。ラインナップはハイエンドとなるR600のほか,ミドルレンジ向けとなる「RV630」,そしてローエンド向けの「RV610」という三段構えになるようである。
パートナー向けに配布された初期のR600エンジニアリングサンプル。12.4インチ長のSI/OEM向けで,一般市場向けには9.5インチ長の製品が用意される
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R600に関していうと,実は,2006年第2四半期にはエンジニアリングサンプルが完成済み。SI/OEM向けにはPCI Expresカードとしてはフルサイズとなる12.4インチ(約315mm)長の製品が供給される予定で,その最大消費電力は270Wに達すると,OEM関係者は指摘する。しかし,一般ユーザー向けに出荷されるモデルとしては,新たに9.5インチ長(約241mm)の製品も開発が進んでおり,その消費電力は240W前後に収まる見通しだそうだ。 とはいえ,240Wでも,GeForce 8800 GTXのそれと比べて圧倒的に高く,9.5インチ版のPCI Express電源コネクタは,8ピンタイプと6ピンタイプの2種類が必要とされている(編注:別記事でCooler Masterもこれを裏づける発言を行っている)。
一方,RV630とRV610については,モバイル向けGPU共通のデザインを採用し,65nmプロセスを採用。とくにローエンド向けのRV610は上位モデルでも35Wクラス,下位モデルでは25W以下の低消費電力を実現し,パフォーマンスは現行の「ATI Radeon X1550」よりも向上しながら,ファンレスデザインが可能になるという。 なお,RV630/RV610シリーズは,PCI Express 2.0でサポートされる5Gbps帯域での動作にも対応するとされており,DirectX 10(=プログラマブルシェーダ4.0)対応やUVDの搭載以外にも,最先端のスペックを実現した製品となる見込み。もちろん,全モデルがCrossFireに対応する予定だ。
左:某社の製品カタログに記載されていた,9.5インチ版R600のシルエット
右:モバイル版の開発も進められており,今年第2四半期中にデスクトップ版と同等の機能で市場投入される予定だ
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DirectX 10対応ゲームタイトルが出揃ってない現状において,DirectX 10対応グラフィックスカードの価値はまだそれほど高いとはいえない。しかし,最先端のビデオ再生技術やPCI Express 2.0への対応など,R600ファミリーが,これからのグラフィックス環境を先取りした製品になることだけは確かなようだ。(ライター:本間 文)
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