「女神転生IMAGINE」,プロデューサー谷川ハジメ氏が語る開発秘話とアップデート予定,そして未来像について<後編>
4月18日に掲載した,“「女神転生IMAGINE」,プロデューサー谷川ハジメ氏が語る開発秘話とアップデート予定,そして未来像について<前編>”では,「女神転生IMAGINE」(以下,IMAGINE)のプロデューサーである谷川ハジメ氏に,IMAGINEの開発裏話から正式サービスに至るまでの苦労,現在抱える問題点などについての話を聞いた。 今回の後編では,3月27日に行われた発表会で明らかにされた“近い将来”実装予定である要素についてのプランや,谷川氏がイメージするIMAGINEの未来像について,そのインタビュー内容をお届けしよう。
■次回のメジャーアップデートでは3身合体が実装? ■エンチャントは剣合体の拡張的なシステムに
4Gamer: では,今後の展開について教えてください。次の大きなアップデートは,8月ということになるんですか?
ケイブ オンラインゲーム部 プロジェクトディレクター 谷川ハジメ氏
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谷川ハジメ氏(以下,谷川氏): 全体的な流れでいうと,メジャーアップデートを4か月に1回,ゲームデザイン的なものを2か月に1回,それより細かいものについては,毎月かそれより短い間隔で実装していきます。今回,正式サービスと同時に大規模なアップデートを行ったので,次回は8月ですね。
4Gamer: 次回は3身合体,エンチャントあたりが入るんじゃないかと読んでいるんですが……。
谷川氏: (メモを見ながら)……合体はいいセン突いてますね。合体周りのシステムも,その時期に大きく強化したいなと思ってはいます。ドカンとやりたいと思っているので,ご期待ください。
4Gamer: 3身合体は想像がつくんですが,エンチャントは具体的にどのようなものになるんですか?
谷川氏: エンチャントというのは,要するに剣合体の拡張みたいなものですね。全部のアイテムに悪魔の魂を封じ込める。基本的に悪魔2体とアイテムを合体させて,アイテムに悪魔の力を封じ込める,定着させるという合成ですね。 悪魔を封じ込めるには何かしらのマテリアルを必要として,このマテリアルもいくつか性格の異なるものを種類を用意しようかなと考えてます。 これについては,できあがるもの(報酬)を先に決めて,それを作るにはどのような組み合わせにするか,という順序で考えているところです。
4Gamer: もう少し具体的に教えてもらえますか?
谷川氏: 例えば,悪魔を封じ込める力の強弱があって,封じ込める力が弱いと,武器だったらダメージの振り幅が大きいとか,ときどきいうことを聞かなくなるとかできたら面白いですね。逆に封じ込める力が強いと,面白みのないアイテムになっちゃうとか。 エンチャントするときの悪魔のレベル(育成状態)によって,同じアイテムでも効果や強さに違いが出るようにしたいです。あと,せっかく悪魔を封じ込めるのだから,成長の要素はほしいですよね。 まだイメージしている段階ですが,悪魔合体と成長の要素,そしてというか生産の要素は入れたいと思っています。
4Gamer: 生産といえば,スキルのほうの生産はどうなんでしょう? これは一般的なMMORPGにあるようなものと同じようなものですか?
谷川氏: そうですね。女神転生らしいアレンジというか消化はするにせよ,既存のMMORPGにあるようなスキルの延長線上にあると思っていただければと。 ただ,これは人気のありそうなものだけ入れようかなと思っています。銃製造,刀鍛冶が花形だと思うので,まずはそのあたりから入れていく予定です。幅を広げすぎて,政治家とかミュージシャンがいても「これは違うなー」って思うでしょうし。
4Gamer: さすがに違和感があるかもしれませんね。
谷川氏: IMAGINEに職業のシステムはないですけど,自分のやっていることで自分が何者であるかを示すような感じじゃないですか。 生産したものを弾薬として使ったり,悪魔やプレイヤーキャラクターに飲ませたり,できあがるものは同じでも,用途によって効能が違うようにしたいですね。 例えば,悪魔を素材にして作ったポーションだとしたら,プレイヤーキャラクターが飲むと,一定時間その悪魔の能力が乗り移って,その悪魔しか使えない特殊能力が発現するとか。
4Gamer: なるほど,それはもっともらしい感じですね。
谷川氏: なかなか,そのいい落とし込み方が思いつかないんですけどね。
■騎乗システムは秋か冬に実装予定 ■乗ったまま戦闘できる可能性も
4Gamer: 騎乗システムの実装時期などは決まってますか?
谷川氏: 騎乗システムは,ほかの実装との兼ね合いもありますが,年内には実装したいですね。
4Gamer: 騎乗システムに期待してるプレイヤーも多いと思うんですが,どんな悪魔に乗れるんですか?
谷川氏: 騎乗できるのは,ケルベロスとか獣系の悪魔だけですね。基本的に四足歩行系の悪魔だと思っていただければ。空を飛ぶ悪魔とかは乗れるようにならないと思います。
4Gamer: 残念です。ネコマタとかエンジェルに乗りたかったのに……。ちなみに,乗ったまま戦闘とかできたりするんですか?
谷川氏: ちょっと難しいですね。高速移動するオブジェクトがあると,いっぱいムリが生じてくるので。
4Gamer: じゃあ,戦闘のときはいったん降りたりするんですか?
谷川氏: 今のラッシュなんかがそれに近いんですけど,手軽に大技を出したいというのがあるんで,乗ったままで使えるスキルを入れると思います。 戦闘シーンなんかでは,パーティメンバーが足止めしている隙に悪魔にまたがってスキルを発動するとか。あとは演出重視で自動処理になるでしょうけど,仲魔が敵悪魔につっこんで,その間にプレイヤーキャラクターは飛び上がって上空から攻撃するとか。そういうのがあったら見た目重視で映えるかなと。 ……これ,僕のイメージとしては,「バビル二世」※のロデムなんです。分かります?
※横山光輝氏原作のコミックで,超能力を持ち,三つの僕(しもべ)を操る少年「バビル2世」の活躍を描いた作品。ロデムとは,普段は黒豹の姿で,どんなものにでも変身できるという特徴を持ち,主人公のバビル2世を背中に乗せて移動する姿が印象的だった。
4Gamer: 分かります分かります。
谷川氏: 純粋に僕が乗りたかったんですよね,ロデムに(笑)。スタッフに言っても伝わらないんですけど。「バビル2世知らないのか?」って聞いても「知りません」って言われて。
4Gamer: ジェネレーションギャップですね(笑)。悪魔じゃない乗り物も登場するというのは,やはり移動速度が速くなったりする移動手段なんですか?
谷川氏: そうですね。高速移動手段として考えています。乗り物については,バイクをやりたいんですけどね。車輪のないホバータイプになるかと。正直なところ,本当に難しいです。車輪は。
4Gamer: 車輪回したりとか地面に埋まらないようにするとかですか。
谷川氏: そうですね。バンクつけてとか。車輪でやろうとするとどうしても絵的にしょぼくなっちゃうんで。
■複数対複数で戦う悪魔コロシアム ■PvPやGvGが実装される可能性はある?
4Gamer: 悪魔コロシアムはどのようなものになるんでしょうか?
谷川氏: これはPvPと同じですね。ただ,悪魔1体同士だと削り合い勝負になって面白くなさそうなので,複数対複数にしようかなと思っています。パーティとかフォーメーションとか,まさに映画の「グラディエーター」みたいなコロシアムです。 一定時間戦ってより大きなダメージを与えた方が勝ちというようなルールを検討しています。それから,プレイヤーはちょっとした指示を出す程度で,直接操作はできないようにしようかと考えています。
4Gamer: それはいつ頃実装されるんですか?
谷川氏: 要望が多ければ優先順位を上げると思いますが,現段階では騎乗システムの前後どちらか,といったところでしょうか。
4Gamer: そういえば,以前クローズドβテストの最終日にPvPイベントが行われましたよね。将来的にPvPとかGvGができるようになるんでしょうか?
谷川氏: あれはテスト最終日のお祭りだからやろう! ってことでやったんですよね。IMAGINEの歴史の一幕としてそういうのがほしかったので(笑)。もう一つの目的として,IMAGINEのシステムでは,PvPは無理だということをプレイヤーに分かってほしかったというのもあります。 PvPをやるとしたら,ある条件があります。これは自分に課している条件なんですけど,戦闘職じゃない人も楽しめるような要素を盛り込まないとだめだと。じゃないと,入れないでしょうね。その点,悪魔コロシアムはプレイヤー同士が直接対決しない,傷つけ合わない要素だからいいかなと。
4Gamer: PvPをやる条件とは,どのようなものを考えているんですか?
谷川氏: 例えば,戦闘職と生産職があるMMORPGでPvPとかGvGをやったとして,生産職の人にとってそれほど面白いものにならないじゃないですか。結界を延々と張っている係とか。楽しくないだろうと(笑)。 なので,PvPなりGvGに参加した6割7割の人が,自分に嘘をつかずに楽しんで参加できるというものにする,ということですね。直接戦闘に関わらない人でもちゃんとした役割を担えて,かつ楽しめるという。……どうしたらいいか,ぜんぜん思いつかないんですけどね。
4Gamer: 難しいですね。
谷川氏: 例えば,ハンデ戦なんかが近いのかなと思うんです。上級者はPvPとPvMを同時にこなさなければいけないとか,初級者は敵悪魔からは襲われないとか。ただ,フェアにはなるんですけど,それは戦闘面だけなんですよね。そもそもPvPじゃなくなっちゃうし(笑)。 戦闘を楽しくないと思える人でも参加できる仕組みってなんだろう,って考えると難しいです。もしかしたら,プレイヤーはPvPにもっと抵抗がないかもしれないんですけど。
4Gamer: 確かに,統計を取ったことはないですね,4Gamerも。
谷川氏: 勝者になれるチャンスというのは,ある程度幅がある必要はあると思ってるんですけどね。例えば条件戦とかハンデ戦とか。あとはある程度の運の要素が関わってくるとか。そうでないと逆転があり得ないので。ちょっと悩むなぁ……報酬入れようかなぁ……。
■東京カジノで「コードブレイカー」が遊べる!? ■入場制限はどのような形になる?
4Gamer: では次に,東京カジノについて教えてください。発表会のときに,入場条件があると話に出ましたが。
谷川氏: これはまだ決めてないんですよ。カジノには入場料とプレイ料があって,プレイ料をマッカでやるとかCPでやるとかいう説があって……。決まっていることはまだないです,正直なところ。本当に考えている最中です。ただ,現実の東京よりは早く実装したいとは思っていますが(笑)。
4Gamer: 入場料代わりに,タキシードとかドレスみたいな衣服を買って着るって条件だったりしたら面白いですね。
谷川氏: ギャンブル要素の強いミニゲームを入れたとして,何人が遊ぶかと考えると疑問点もありますし。ギャンブルがあると,もうけがあって,それをどうするかという問題もあります。CPにしてもマッカにしても,それをカジノ用のコインにして,賞品を交換するような形になるとは思うんですけど。それだけが目的となるのもちょっと抵抗があるので。
4Gamer: なるほど。
谷川氏: ミニゲームとはいえ,駆け引きが楽しめないとだめだと思うんですよ。思いつきですけど,例えば先述の悪魔コロシアムで,観覧席から見ながら「あのチームにいくら」みたいなとか。そっちのほうが楽しいですよね。応援する気持ちで張ったりとか。そうすれば,コロシアムの参加者以外も巻き込んで楽しめるので。 報酬がすべてではないのですが,報酬がないと盛り上がらないという部分もあります。難しいですよね。 さきほどおっしゃったように,ドレスアップするとか,その雰囲気を楽しむというのは面白いと思うんですよ。今後アイデアを絞り込んで,なにをやったら面白いかということを考えていきたいと思います。
4Gamer: 具体的には,どういったミニゲームが入る予定なのでしょうか?
谷川氏: 今,カジノに対する要求が集中していて,難しいんですけど。スーパーファミコン版真・女神転生IIのカジノにあった「コードブレイカー」をベースにしたゲームは入れると思います。あとは大人のカジノってことで,カードとかルーレットとかスロットマシーンなんかを入れるかもしれません。
4Gamer: ということは,騎乗システムより先になったりしますか?
谷川氏: いや,……うーん。早いかもしれませんし遅いかもしれません(笑)。正直なところ,プライオリティはプレイヤーさん達の意見に合わせて流動的に組み替えているので,現段階では後になるんじゃないかと思います。
■IMAGINEの世界で地下鉄が実装される? ■数年後には,現段階の5倍強のボリュームに
4Gamer: さて,発表会で明らかにされた主な要素については一通りお聞きしましたが,それ以外に検討中の要素などはありますか?
谷川氏: あくまで僕個人の意見ですが,IMAGINEに地下鉄を入れたいと思っているんです。
4Gamer: 地下鉄ですか?
谷川氏: 「魔神転生」のときに地下鉄のホームが戦闘場面にあったり,地下道が3Dマップになってたりとか,過去の女神転生でも表現がなかったわけではないので,世界観に沿っているとは思うんです。ただ,地層って年月を積み重ねるとともに奥深くなっていくじゃないですか。地下鉄っていうのは,比較的近代のものだから,あまり地下の深い場所に設定できない,というのが悩みの種です。
4Gamer: 単純に,スギナミから新宿バベルとかに地下鉄で移動できたりするだけでも嬉しいですけどね。
谷川氏: そこにプラスαがほしいんですよね。それをどう表現するかでいま悩んでるんですが。IMAGINEの時代の移動手段として地下鉄があったりとか,旧時代の廃坑のようなダンジョンの形であって,そこで遺物を手に入れられるようなとか,そういうのをやりたいんですよね。
4Gamer: なるほど。
谷川氏: あと,悪魔の肉体との掛け合わせの中でアイテムを鍛えていくようなこともしていきたいです。……まあ,普通の生産/鍛錬なんですけどね(笑)。そうなると世界が資源を生まないといけないじゃないですか。でも,採掘とかやるときに,自然資源を採掘して,ってのはIMAGINEの世界観に似つかわしくないと思うんですよ。むしろ,旧時代の文明の遺産のようなもの,廃材を利用したりとか。まずは,マテリアルとなるものを生み出すのと,どう世界観とフィットさせるか,というところですね。
4Gamer: IMAGINEに実装される要素はまだまだありそうですが,現時点では完成予想図の何割くらいを実現しているんですか?
谷川氏: そうですね,ストーリー,空間,できる事柄という三つの軸すべてのおいて,2割くらいがいいところだと思います。理想としては,IMAGINEをいつまでも運営していきたいので,これからも何らかの成長をし続けるようにはしたいと思います。
4Gamer: 東京都は,全部フィールドとして入る予定なんですか?
谷川氏: そうですね。東京は全部作りたいです。あと,かつての真・女神転生I/IIの時期にはなくて現在新しくできたもの,レインボーブリッジとかお台場とか,そのあたりも盛り込みたいですね。
4Gamer: では最後に,読者にひとことメッセージをいただけますでしょうか。
谷川氏: IMAGINEは,かなり大きく育てようと思っている作品です。これから始めるという人は,IMAGINEが成長していく過程を,一緒に楽しんでいただけると嬉しいです。 また,クローズドβテストをミニマムの状態で始めたので,当時はできることが少なく,それでIMAGINEから離れてしまった人もいるかと思いますが,今ゲームにログインしたらがらっと変わっているはずです。ぜひ現段階,そしてこれからのIMAGINEを見てほしいなと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
4Gamer: ありがとうございました。
コンシューマでも人気を博した女神転生シリーズは,その独特な世界観や物語にのめり込んだという,コアなファンが多いことだろう。しかし,IMAGINEにおいては,現段階では,悪魔合体(2身合体)以外において,旧来のファンに訴えかける要素は希薄であると言わざるを得ない。 ただ,「現段階ではまだ最低限のことしか入れていない」「現段階は完成予想図の2割程度」と谷川氏は説明している。これから長い期間をかけ,IMAGINEをほかのMMORPGに負けないものに育てていこうという考えなのだろう。今回,インタビュー中に明らかにされた構想は,IMAGINEプレイヤー達にとっては,今すぐにでも実装してほしいものばかりなのではないだろうか。
この後編で谷川氏が語ってくれた話の数々は,現段階では計画中のものが多いため,今後実装されるときにまったく違ったものになる可能性は十分ある。とはいえ,まだ確定していないプランのアイデアを惜しげもなく語ってくれたことで,プレイヤー達の期待は否が応でも高まるのではないだろうか。筆者もIMAGINEプレイヤーの一人として,本作の今後の展開に期待したい。(ライター:midi,photo by kiki)
(2007年4月2日収録)
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