AMD,次世代デスクトップ向けCPUを「Phenom」(フェノム)と命名
英語読みでは「フィーノム」が近いとのことだが,日本では「フェノム」とされる
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「ATI Radeon HD 2000」シリーズのリリースに合わせる形で,AMDは次世代以降のデスクトップ向けCPUの名称を,これまでの「Athlon」から「Phenom」(フェノム)に変更すると発表した。Phenomは「Phenomenal」(驚異的な,目を見張るような)という英単語をベースとする造語。2007年後半には,Phenomの名を冠したCPUがデビューする予定だ。
ミドルレンジ以降のCPUラインナップがどう変わるか説明したスライド
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さて,最も気になるラインナップだが,誤解を恐れずにざっくりと“Phenom前 → Phenom後”で切り分けると,およそ以下のような感じになる。
●ウルトラハイエンド Athlon 64 FX → Phenom FX
●ハイエンド Athlon 64 X2 → Phenom X4
●ミドルレンジ Athlon 64 X2 → Phenom X2
●エントリーミドルレンジ Athlon 64 → Athlon X2
●ローエンド Sempron → Sempron(※変わらず)
AgenaベースとなるクアッドコアCPUの概要。見たところ,2006年11月29日の記事で紹介したBarcelonaとデザインはまったく変わらない
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Phenom FXおよびPhenom X4がクアッドコア,Phenom X2がデュアルコア。順に「Agena FX」「Agena」(Agena:アジーナ)および「Kuma」(クマ)という,恒星から取られた開発コードネームが与えられていることから,まとめて「STARS」などと呼ばれたりすることもある。
「……で,Phenomって具体的にはどんなCPUなの?」という話になるわけだが,基本的には,FSBなどを介したマルチチップモジュール(MCM)構成を採らない“ネイティブな”クアッドコアを採用する次世代サーバー向けCPUとして開発が進んでいる「Barcelona」(バルセロナ,開発コードネーム)のデスクトップ版,ということになる。 ならばBarcelonaとはどんなCPUかというと,ざっと以下のような特徴を持つ製品だ。- 65nm製造プロセス採用
- 浮動小数点実行パイプラインの,128bit幅への拡張(従来は64bit)
- L2キャッシュ容量は1コア当たり512KB。容量2MBの共有L3キャッシュも搭載
- CPUコア部とノースブリッジ部で異なる電圧設定を可能にする「Split Power Plane」対応
- HyperTransport 3.0対応
既存のFSBに対する,ネイティブクアッドコアの利点をアピールするスライド。FSBを採用するCPUだと生じるボトルネックが,ネイティブクアッドコアでは発生しないと謳う
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土居憲太郎氏(日本AMD マーケティング本部 マーケティング部 デスクトップ/モバイル プロダクトマネージャー)
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実際,公開されたAgenaのCPUデザインはBarcelonaのそれとまったく同じ(ように見える)ため,この仕様を踏襲すると思われたのだが,今回説明に立った日本AMDの“兄貴”こと土居憲太郎によると,現時点でL2/L3キャッシュ容量は非公開とのこと。代わりにいくつか,PhenomやAthlon X2に関する情報が明らかにされた。
以下,やや散漫になるのを覚悟のうえで,土居氏から発表された内容と,報道関係者との間で行われたQ&Aセッション中に明らかになった事柄を,箇条書きで紹介したいと思う。
AM2+パッケージに対応するCPUソケットは,これまでと変わらずSocket AM2であるとするスライド。「“Socket AM2+”というCPUソケットは存在しません」(土居氏)
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- CPUパッケージは「AM2+」。対応ソケットは「Socket AM2」で,現行のSocket AM2マザーボードでも,「Hybrid BIOS」が搭載されていれば,そのままPhenomを搭載可能。ただし,PhenomをAM2+パッケージ対応の現行マザーボードで利用するときや,逆に既存のSocket AM2対応CPUをこれから登場するHyperTransport 3.0対応マザーボードで利用するときは,「CPUとチップセットのどちらかがサポートしていない機能」は利用できない
- Hybrid BIOSがどれくらい採用されている,あるいはされるのか,(今のところ)AMD側では把握していない
- TDPは現行製品とほとんど変わらない
- メモリコントローラはDDR2 1066に対応すべく動いている。現在,JEDECに対してDDR2 1066を正式対応としてもらえるよう,強力にプッシュしている段階
- BarcelonaよりもPhenomの登場は若干遅くなるが,登場タイミングに差はほとんどない。少なくとも1四半期遅れたりするようなことはない
- Split Power Planeにおける「ノースブリッジ部」がどこを指すかはノーコメント。ただし,L3キャッシュメモリはCPUコア扱いとなる
- Quad FX対応のAthlon 64 FXは2個セットになっていたが,Phenom FXでは「ひとまず1個買っておいて,後からもう1個追加する」ことが可能になる。時期やマザーボードメーカーは言えないが,ゲーマー向けにCrossFireをサポートするものや,あるいは(例えばオンボードグラフィックスを利用するような)別の用途に向けたものなど,いくつかの用途に向けたQuad FXプラットフォーム対応マザーボードがAMDチップセットを搭載してリリースされる
- Athlon 64から「64」が取られることになったのは,2003年の登場以降,これまでの間に「AMDのCPUは64bit対応である」ことが十分に浸透したから
- Athlon X2はRev.Gの65nmプロセスを採用し,TDP 45Wでまもなく市場投入される(具体的な時期は「ノーコメント」)
- 新たに投入される,TDP 45WのRev.Gだけが「Athlon X2」となる。(Rev.Fまでの)現行製品は,今後もAthlon 64 X2のまま流通する
- Athlon 64ファミリーでは,あと1製品だけ,新製品が投入される予定
Quad FXが発表されたときに予告されていた“8コア搭載PC”は,Phenom FXベースで実現することになる
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とまあ,肝心なところは未だベールに覆われているのだが,いずれにせよ,1999年6月に発表されてから,さまざまな歴史を作ってきた「Athlon」ブランドが――下位モデルにその名は残るものの――第一線を退くことになるのは,なかなか感慨深いものがある。
果たしてPhenomは,Athlon以上のヒット作になれるのか,そして,再び「AMDのCPUはゲームプレイに最も向いている」と言えるようになるのか。発売に向けて少しずつ出てくると思われる続報に注目していきたい。(佐々山薫郁)
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(C)2007 Advanced Micro Devices, Inc. |
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