[CJ 2007#38]作品鈴生り,人も鈴生り。大手パブリッシャThe9ブースの週末
「World of Warcraft」の運営元であり,中国第2位のオンラインゲームパブリッシャたるThe9(第九城市)は,その勢力にふさわしくChinaJoy会場に巨大なブースを展開。プレイアブル4作品にムービー出展4作品,アートワークのみの2作品を加えて10本もの作品をアピールしていた。 新作のムービーは,ステージ裏の,大きなアートワークをあしらったモニターで披露されていた。その内訳は以下の4本だ。
■Webzenの「Huxley」 ■Gravityの「Ragnarok Online 2」(仙境伝説2) ■唯晶科技(Winking)の「Fantastic Melody Online」(幻想世界) ■SF FPS「Field of Honor 3015」
最後の「Field of Honor」は,北京のGameWorld(格美時空)が3年の期間をかけて開発したMMOリアルタイムストラテジー&シューティング。3015年の世界を舞台に,地球人と異星人の戦いを描いた作品で,ChinaJoy開幕三日前の7月9日に,The9によるパブリッシングが発表されたばかりである。本作の直撮りデモムービーを4GamerにUpしたので,興味のある人は確認してみよう。
→ムービーのダウンロードは「こちら」(1分59秒,WMV) ダウンロード詳細:32MB(33,632,137バイト)
またモニターの前には,その作品のキャラクターに扮したコンパニオンさんが並び,カメラを構えた観客のリクエストに,ポーズをもって応えていた。
一方会場でプレイアブル展示されていたのは,以下の4作品。
■World of Warcraft: Burning Crusade(魔獣世界 燃焼的遠征) ■Hellgate: London(暗黒之門) ■Granado Espada(卓越之剣) ■SUN(Soul of the Ultimate Nation)(奇跡世界)
World of Warcraftは言うまでもなく現在も中国で大ヒット中のMMORPG。Hellgate: Londonについては,昨年のChinaJoyレポートでカンファレンスの模様をお伝えしたとおり,中国での期待度も高い作品だ。残る2本は中国で「2006年における2大期待タイトル」と目されていた作品である。 試遊機はタイトルごとに分けられ,かまぼこ型の屋根がかかったスペースに,背中合わせで2台ずつ計4台が用意されていた。World of Warcraftには2スペース計8台が当てられていたのだが,常に待ち行列が生じており,これがPvPの小イベントともなると,すっかり周囲が囲まれてしまう。 ほかの作品についても,試遊機が空いていることはほぼ皆無で,景品配布付きの体験プレイ時間になるや,瞬く間に長蛇の列が出来上がる。開幕後の平日である12日,13日でもそれは同様で,土曜日の14日には試遊機の周辺とブースの横を(通常ここに行列が整理される)中心に,ほぼ通り抜け不能の空間となっていた。
アートワーク/作品ロゴ入りのオブジェのみとなったのが,ダンスゲーム「Audition2」(勁舞団II)とサッカーゲームの「FIFA Online」である。FIFA Onlineのスペースは,フェンスに囲まれて人工芝と小さなサッカーゴールが置かれるのみで,これはブース内イベントのとき以外は機能しないようだ。一方Audition2については,大陸中国および台湾におけるダンスゲーム熱を考えると,大きく注目すべきタイトルなのだが,おそらくはさまざまな事情により,会場にあったのはロゴとアートワークをあしらった円いお立ち台のみ。このお立ち台は,混み合うブース内で貴重な憩いの場として機能していた。
そんなThe9ブースでは,ステージも多くの来場者を集めていた。ゲームキャラクターに扮したコンパニオンさんが壇上に集まり,景品を観客に投げるといった定期的な(?)サービスが行われているときは,広い通路が来場者でいっぱいになって,なかなか通れないくらいだった。 なかでもそれが激しかったのは,13日の午後に行われた,Hellgate: Londonのクローズドβテスト参加権プレゼントのときだ。このときはビル・ローパー氏を筆頭にFlagship Studiosのスタッフが登壇して挨拶したあと,来場者と関係者各人が一対一でダーツ勝負を展開,勝った来場者が10人になるまでそれを続け,10名中上位の5名がβテストの権利を獲得するという趣向になっていた。 ステージ前はほとんど身動きできない混雑ぶりで,1日も早く同作品をプレイしたい来場者達の挙げる手で視界がいっぱいになる。だが,幸運にも司会に選ばれた来場者達の成績は,ダーツがマグネット式だったためか総じて振るわず,ローパー氏が高得点を出すと,それを仔細らしく眺めていた別のスタッフがこっそりと(そして見えるように),隣の低得点エリアに矢を移すといった微笑ましい光景も見られた。
国際ゲームショウには必ずいるイメージのビル・ローパー氏。今年はE3とChinaJoyの両方で「Hellgate: London」の実演をしているのではないかと予想していたほどだ
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このイベントの終了直後,控え室に戻るビル・ローパー氏を通路でつかまえ,ほんの二言三言ではあるが話せたので,その会話を付記しておく。
ローパー氏: やぁ,世界中どこにでもいるね!(笑)
4Gamer: いや,あなたこそ(笑)。ChinaJoyの印象はいかがですか?
ローパー氏: 去年も来たけど,相変わらずすごい熱気だね。熱心なファンが多いので,直接触れあうとパワーをもらえるような気がするよ。
4Gamer: 開発の進み具合はどうですか?
ローパー氏: 開発を行いながら,各地域のパブリッシャと協力してローカライズ作業をしているので,なかなか大変。日本のファンのみなさんも,もう少しだけ待ってね。
World of Warcraftの成功を元手に,まるで知名度が高くて高価な作品だけを買い集めているかのようにすら思える,The9。収益の97%以上をWorld of Warcraftに依存している同社が,WoWに続く大ヒットを探し当てるべく動きを拡大するのは必然ともいえるが,その動きには当然のことながら,金融市場における自社の材料を増やし,話題性を高めるという経営的判断が同時に働いているものと思われる。 今回のChinaJoyにおける集客を見る限り,話題性の点ではまったく不足のない水準ではないだろうか。そして,ある意味で実によく見る光景なのだが,次の大ヒットまでの期間を支えるのは,各作品に対するプレイヤーの支持と,The9の次の一手に対する期待感なのだろう。 Hellgate: London,FIFA Online,Ragnarok Online 2といった,今後に大きな期待のかかる作品群と,ダンスゲームAudition2,韓国で著名なMMORPGであるGranado Espada,SUNといった「王道」とも呼べる作品群。WoWの版権獲得以降,不自然なまでに急激に伸び続けるThe9の今後は,中国オンラインゲーム事情の台風の目と呼べそうだ。(Guevarista)
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