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「ゲリー グリグスビー ワールドアットウォー」のプレイに必須な未訳ルールをフォロー
2007/08/16 20:58
英文マニュアルに付属する,資源/工場ポイントの配置状況マップ。東アジア地域は資源(水色の○),工場(黄色い四角)ともに,あまり潤沢な設定ではなく,これが日本軍の行動を大きく制約する
 「ゲリー グリグスビー ワールドアットウォー 日本語版」は,第二次世界大戦全期間を5〜6時間というごく短い時間で楽しめる貴重な作品である。ただ,本作はゲーム内のデータやインタフェースこそ日本語化されているものの,付属の日本語マニュアルが極端な抄訳版で,戦略を立てるうえで重要な特殊ルールが訳されていないという,少々困った仕様になっている。

 そこでこの記事では,プレイ上重要な特殊ルールに限って,大まかな内容が把握できるよう解説したいと思う。英語版譲りの仕様として,本作ではインストールを済ませると,インストール先フォルダに英語版マニュアルのPDFファイルが作られ,これを読めばルールは完全に把握できるのだが,それなりにボリュームのある英文マニュアルを一から読むのは骨が折れる。
 この記事では,重要な未訳部分を中心に取り上げ,それだけでほぼプレイできるところまで説明したいと思うが,これを足がかりとして,マニュアル全体に挑んでみるのが正攻法ではある。
 また,未購入だが以前から興味はあったという人には,本作が第二次世界大戦をどう再現しようとしているかについての手短な解説としても,役立つものと思う。

■生産と,資源/工場/人口ポイント

完成ターンが示されたボックスが並ぶ生産画面。生産中のユニットは1ターンごとに時計回りで移動していき,最終的には左上のボックスに移って,次のターンに配備される。ボードゲームではおなじみの「生産スパイラル」だ。画面中央に,資源/工場/人口のポイントが示されている
 まず,本作のユニット生産ルールについて整理してみよう。この部分は和文マニュアルでもある程度訳されているが,やはり重要な部分が少なからず欠けている。和文マニュアルと多少重複するが,ルールの全体を示してみたい。
 生産に関係するのは,資源・工場・人口という3種類のポイントだ。生産画面は視覚的には分かりやすいものの,「ユニットを作るには何がどれだけ必要か」は,実はけっこう込み入っている。

 資源ポイントは,資源を産出する領域から得られる。産出領域の資源インフラにダメージがなければ,領域に設定されている値がそのまま使われる。ダメージは2段階あって,得られる資源ポイントとの関係は,以下のようになる。

無傷 → 規定値どおり
半壊 → 規定値の半分
全壊 → ポイントなし

 ダメージを回復するには,補給ポイントを使って修復を行うことになる。あるターンで生産に使わなかった資源ポイントは,規定に沿った形で,多少は次ターン以降に持ち越しできる。

 工場ポイントは,マップに特殊ユニットとして配置された工場から得られる。ダメージについては資源ポイントと同様だ。ただし,工場の数に「乗数」(国家やゲームターンなどによって変動する)を掛けた値が最終的な工場ポイントになるという点,そして次のターンへの持ち越しができないという点で,資源ポイントとは特性が異なる。なお,かなりの生産コストがかかるものの,工場自体の新規生産も可能だ。また,これも30ポイントという膨大な補給ポイントがかかるが,工場ユニットは陸上に限って戦略移動(鉄道を経由しての移動)ができる。

 人口ポイントは資源ポイントと同じく,各領域に設定されている人口の値をベースに算出される。自国や友好的な領域からは,その領域に設定されている人口に等しい値が得られる。一方,占領した敵国の領域から人口ポイントは得られない。なお,人口ポイントも次ターンに持ち越し可能だ。

 これらのうち,1資源ポイントと1工場ポイントが組み合わさって,1生産ポイントが構成される。一般のユニットは,この生産ポイントを1ターン(3か月)に1ポイントずつ使って生産される。例えば日本の場合,空母艦載機は4ターンの間1ポイントずつの生産ポイントを投じ続けることで完成する(陣営によってユニットの生産コストは異なる場合がある)。
 そして各ユニットは,完成するターンにだけ2ポイントの人口ポイントを消費する。これはユニットの能力にはよらず,民兵でも重艦隊でも同じだ。それに対して補給ポイントと開発ポイントは,ユニットと同様の手順で生産するのだが,人口ポイントの消費は発生しない。

画面左:生産画面の中央にある,ポイントの表示部。各ポイントはスラッシュの左が「このターンに使える総ポイント数」,右が「現時点で生産指示をしているものを作ったうえで,さらに使用できる残りのポイント数」を示す
画面右:資源ポイントと工場ポイントの現状は「生産要約画面」を見ると把握しやすい。左上が資源ポイントのブロックで,左列中央が「このターンの生産に使える資源ポイントの合計」。工場と生産物の状況は下に並ぶ


陸上の領域にカーソルを合わせると,その領域の軍事/経済情報がポップアップする。ここでは「キエフ」がドイツに占領されている状態だ。占領地域なので人口ポイントは0になる。また,本来工場1,資源3がある領域だが,赤い爆発アイコンが付いている=2段階のダメージがある状態のため,これらのポイントも利用できない
 以上が生産の概要だが,「要は版図を広げ,ポイント数が多い領域さえ取ればよいのだろう」と,いきなり単純化してはいけない。これらのポイントの利用には,さらに非常に厳しい制約がかかっているのだ。

 資源ポイントの場合,それを使う工場のある土地との間が,破壊されていない鉄道や海上領域に配備した輸送艦隊で「リンク」されていなければならない。とくに海上の場合,敵陣営の海上ユニットがいないことや,自国の戦闘艦がいることだけでは条件が満たされない。実際に輸送艦隊を置いておかなければ,リンクは形成されないことに注意が必要だ。
 ただし,リンクさえ確保していれば占領した領域からも資源ポイントは得られるし,同一の勢力(ゲーム内の訳語では世界強国)の中で自由に融通できる。例えば大西洋に輸送艦隊を適切に配置すれば,アメリカで産出される資源ポイントはイギリスでも利用可能なのである。

 一方工場ポイントは,ほかの領域や国家へは移転できない。アメリカの工場ポイントを使ってユニット生産が行えるのはアメリカだけで,イギリスが使用するわけにはいかない。
 同様に人口ポイントも,工場が属する国家の中でしか利用できない。さらに,非友好的な領域(敵陣営や,中立国だったところを占領した領域)から人口ポイントは得られない。

 こうしたルールを踏まえ,ケーススタディとして日本の状況を見てみよう。1940年開始のゲームの場合,工場の数は本州に5,九州に2,そして満州に1。ただし満州は人口ポイントに関して占領地域に準ずる扱いで,一般のユニットは生産できない。そして,日本の工場ポイントはゲームを通じて工場数×3と決められている。したがってゲーム開始時の日本では,ユニット生産に使える工場ポイントが21(本州と九州の工場数合計7×乗数3),補給/開発ポイントの生産にだけ使える工場ポイントが3(満州の工場1×3)ということになる。
 工場ポイントを他国と比べただけでも,日本が苦戦しそうなのは見て取れるが,実際にはそれ以上に資源確保が厳しい。開始時からの支配地域に加え,中国沿岸部と東南アジア一帯を支配しても,日本が得られる資源ポイントは23でしかない。このため日本の生産力は,中国以外の勢力に対し,かなりハンデを負っているといえる。

画面左:工場,資源,鉄道といったインフラは,その領域の支配国が変わると(たとえ敵から奪い返した場合でも)2段階のダメージを受ける。これを復旧させるためには,補給ポイントを使って修復する必要がある
画面右:西側連合の場合,インド西岸からアフリカを取り囲む形で輸送艦隊を配置すれば,この地域の資源を利用できる。日本は艦隊や潜水艦の一部をインド洋方面に派遣して,通商破壊を試みるべきだろう


■ゲリラと民兵の発生条件は?

中国沿岸部の多くでは,侵攻時に4ユニットの民兵が登場し,見かけより攻略が難しくなる。日本の補給ポイントは厳しいが,これを確実に片付けられるだけの戦力を投入しないと,かえってロスが増えかねない
 枢軸側でプレイしたり,あるいは連合国側でプレイしていても枢軸側のターンを見ていたりすると,ゲリラ(英文マニュアルでは「partisan」=パルチザン)や民兵が自動的に発生するのが見て取れる。この効果について紹介しておこう。

 まず,侵攻時に自動で発生する民兵について(英文マニュアル 9.8節)。これは中国/日本/ドイツ/イギリス/カナダ/アメリカの,本来の支配領域で発生する(ソ連では,後述する別ルールがあるので発生しない)。中国以外では,発生する民兵のユニット数はその領域の「人口」の値と等しく,中国では領域の人口の2倍になる。例えば中国の人口2の領域に攻め込むと,4ユニットの民兵が自動的に登場するわけだ。この民兵は,ほかの守備戦力があってもなくても,同じだけ発生することになっている。
 同じ領域に何度も侵攻する場合であっても,民兵ユニットはそのたびに同じ数だけ発生する。とくに中国を相手にするときには,散発的な攻撃を繰り返していると,相手の戦力を増やすだけに終わってしまうことになる。
 ソ連については,「枢軸側に占領されているソ連領域の人口ポイントと同数」の民兵が,ソ連の生産フェイズごとに自動的に追加される。連合国は首都を落とされても降伏しないので,ソ連を相手にする場合,戦力的に泥沼の戦いを強いられることになる。

ゲリラ対策が不十分だと,戦争経済にとって深刻な脅威となる。ルールを十分に理解して対処する必要があるだろう
 次にゲリラの発生について(英文マニュアル 11.5節)。ゲリラが発生する可能性があるのは,枢軸軍にターン開始時から占領されている非枢軸(連合国または旧中立国)領域で,人口ポイントが0ではないところだ。この条件を満たす領域には,毎ターンその人口ポイント分だけの「ゲリラポイント」が加算されていく。一方ゲリラポイントを減らすためには,その占領地域に陸上戦闘ユニット(対空砲以外)を置いたうえで,1補給ポイントを消費する必要がある。陸上戦闘ユニットが置かれていれば,その数だけゲリラポイントが減少する。

 ゲリラポイントが1以上の値になった地域では,移動フェイズの終わりに,ゲリラがその地域のインフラや資源ポイントなどを攻撃する。攻撃が成功するとインフラや備蓄された資源ポイントにダメージが生じ,失敗するとゲリラポイントが減る。この攻撃結果は自動的に判定される。さらに,ゲリラポイントが5以上蓄積された領域では,その領域のユニットに被害が出ることもある。
 なお,ゲリラ対策には民兵を使うのが効率的だ。陸戦ユニットであれば戦闘力にかかわらず,抑止効果は同じなのである。

画面左:ゲリラポイントが発生するような移動を行うと,画面にアイコンが表示され,警告してくれる。ただし,ゲリラ制圧には補給ポイントが必要であることも忘れずに
画面右:AIは概してゲリラ対策に消極的なようで,とくにドイツの場合,インフラへのダメージは深刻なレベルに達する。工場や資源の確保は勝利条件にもつながることを忘れてはならない


■関東軍は動ける? 開戦/参戦までの特殊ルール

国家間の戦争関係を見る画面。これは1940年キャンペーンの開始時点のものだ。アメリカは日独どちらとも戦争に入っておらず,日本も中国だけを相手にしている状態だ
 1940年から始まるキャンペーンの場合,まだ戦争状態にあるのは「ドイツvsアメリカを除く西側連合」「日本vs中国」だけだ。ここから開戦に至るまでの状況下で適用される特殊ルールもある。

 まず「政治的に凍結された領域」(以後「凍結領域」)について。日本語マニュアルでは「凍結領域に置かれたユニットは移動できない」「凍結状態で攻撃を受けると戦闘上不利になる」といった程度の情報しかない。しかし実際のところ,このルールは初期戦略にかなり大きな影響を与えるものであって,英文マニュアルでは3.2.6節でまとめて解説されている。
 基本的に凍結領域のユニットは,攻撃を受けたり敵機が上空を通過したり,隣接する海峡の敵を臨機射撃したりといった条件が成立することで「凍結解除」の状態になり,自由に動けるようになる。凍結解除されると「(領域名)が戦闘領域になりました」というメッセージが表示される。ただしこれはその領域を保有している国が,その原因を作った国と即時交戦状態になるという意味ではない。

 さらにソ連に関しては,隣接する領域の敵ユニット数が一定数以下になることで凍結解除される場合がある。逆にいうと枢軸軍は戦争に入る前でも,ソ連軍をひきつけておくため,こうした領域に軍事力を貼り付けておく必要がある。これに該当するのは以下の領域だ。

ドイツ……プロシア東部に歩兵(または民兵,以下同様)1ユニット,ポーランド西部に歩兵3ユニット。これらのいずれかが満たされない状態だと,ソ連西部が凍結解除される。
日本……満州に歩兵3ユニット。この条件が満たされないと,ソ連東部が凍結解除される。

 なお英文マニュアルでは「歩兵」としか書かれていないが,実際には民兵ユニットでも構わない。
 加えてソ連だけに適用される特別ルールとして,もし一部でも凍結解除された領域ができたら,凍結領域のユニットも戦略移動は自由に行える(ただし,同一ターンに戦術移動=侵攻は行えない)という項目がある。
 こうしたルールがあるため,日本は満州に初期配備された部隊を軽々に動かすわけにはいかないのだ。手薄にするとソ連はシベリアの部隊を引き抜き,対ドイツ戦に備えてヨーロッパに配置できるようになってしまう。
 もう一点,ドイツがルーマニア,ハンガリー,ブルガリアの政治的凍結を解除するには,ユーゴスラビアへの侵攻を行う必要があることも紹介しておこう。

画面左:中国制圧の足がかりになるのは満州に置かれた軍事力だが,これをうかつに動かすと戦略的には大幅なデメリットが生じることになる。民兵と入れ替える形での進軍を考えよう
画面右:「政治的に凍結された地域」は領域にカーソルを当てることで確認できる。ソ連でフルキャンペーンをプレイする場合,このルールのため,序盤はひたすら開発/備蓄と軍備増強だけを行うことになる


このゲームでは,外交によりタイを枢軸側に参加させることはできない。日本プレイヤーは1941年夏以降の適当な時期に進出し,拠点化することになる
 次に,開戦前の資源ポイント譲渡について。ソ連とドイツ,日本と西側連合の間では,開戦するまでは特殊ルールとして,枢軸側への資源ポイントの譲渡が行われる(英文マニュアル9.7節)。
 ドイツはソ連との開戦前に,ソ連から毎ターン3ポイントの資源ポイントを得られる。一方日本は,1940年春から1941年春まで西側連合から毎ターン3ポイントの資源ポイントを得る。ただし,そのためには以下の条件をすべて満たしている必要がある。

ソ連,西側連合のどちらとも開戦していない
タイを日本が支配していない
日本が中国の非沿岸領域を支配していない

 最後に連合国との開戦に関して。このゲームの,1940年・41年からのキャンペーンでアメリカが参戦する条件は,アメリカ本土・アラスカ・ハワイ・東南アジア地域などへ攻撃が行われることだ。つまり事実上,アメリカの参戦は日本の行動を引き金としている。
 ただし一定の期日になると,それまで開戦していなかった場合でも,連合国側から枢軸国側へ自動的に宣戦布告が行われる。具体的には以下のとおりだ。

西側連合:日本・ドイツの両方に対し,1943年冬ターンに開戦。さらに日本に対しては,1942年冬ターン以降,中国内陸部の領域を支配し,しかもソ連と開戦していると,自動で宣戦が行われる。
ソ連:ドイツに対して,1943年冬ターンに開戦。日本に対しては,ドイツの降伏と同時に開戦。

 枢軸側でプレイするときには,こうした諸条件を考慮して開戦時期を考えるようにしたい。あまりに早期に動き出すと,かえって状況が――とくに経済面で――不利になってしまうことがある。

■完全勝利でないサドンデス勝利の条件とは?

勝利条件としての生産ポイントは戦略マップ画面で確認できる。枢軸の勝ち目はかなり薄そうだが,1944年まで日独が初期の領土+αを保有していれば(これ自体非常にキツイことだが),自動的勝利の可能性が出てくる
 和文マニュアルでは,具体的な勝利条件も省略されているので,紹介しておこう。英文マニュアルでは12章に記述されている。

枢軸国の完全(Total)勝利……いずれかのプレイヤーの移動フェイズ終了時に,マップ上に連合国が支配する領域が存在しなくなること。なお前述のとおり,連合国は首都のある領域を陥されても降伏しない(イベントムービーは流れるのだが,あくまで「首都陥落」であって「国家の降伏」ではない)。

連合国の完全勝利……いずれかのプレイヤーの移動フェイズ終了時に,マップ上に枢軸国が支配する領域が存在しなくなること。なお,ドイツは東部ドイツ・西部ドイツがともに占領された時点で,日本は本州が占領された時点で降伏し,支配していたすべての支配領域は連合国に占領される。

枢軸国の自動的(Automatic)勝利……いずれかのプレイヤーの移動フェイズ終了時に,世界強国としてのドイツと日本の,マップ上での生産ポイント数の合計が70以上になること。生産のところで述べたように,1生産ポイント=1工場ポイント+1資源ポイントだが,勝利条件としての生産ポイントの計算には,備蓄している資源ポイントは使えない。マップ上での資源算出領域から,その時点で工場にリンクしている資源ポイント数だけが算入できる。もちろん,資源や工場がダメージを受けている場合は,それらの影響も計算する。

連合国の自動的勝利……まず,枢軸側よりも先に原爆を開発する(重爆撃機ユニットの対地攻撃力を開発で10まで上げたうえで,重爆撃機ユニットを最低1ユニット保有することで,原爆開発が完了したとみなされる)。そのうえで勝利条件としての生産ポイントで,枢軸側の50倍を達成する。

時間切れ勝利……1946年秋のターンが終了した時点(キャンペーンV以外)で,勝利条件としての生産ポイントを計算する。連合国が枢軸国の8.00倍以上の生産ポイントを持っていれば連合国の勝利,そうでなければ枢軸国の勝利。

自動的勝利の達成時期,時間切れ勝利の場合の生産ポイントの差で,これらの勝利条件は決定的勝利と限定的勝利に分かれることになる。

画面左:本文でも触れたように,連合国側に用意されているのは「首都陥落」のムービー。ほかの地域が健在ならば,自由のための戦争は継続される,ということらしい
画面中:一方枢軸国側には「国家の降伏」のムービーが用意されている。首都陥落で枢軸国側の戦争指導者が排除されれば,戦争は終わるということか
画面右:兵器開発は勝利条件に関わるばかりでなく,実際の戦闘への影響も小さくない。まずは主力となるユニットの戦闘力を上げて,効果を確認してみよう


■あえてソ連から叩く? 日本の採り得る戦略とは

 以上の情報に基づいて,1940年からのフルキャンペーンを日本でプレイする場合の戦略を考えてみよう。とはいえ,非常に縛りがキツいのは間違いないところなのだが。

 まず生産力と資源,とくに後者が非常に限られている。1940年キャンペーンでは,日本が序盤に確保できる資源は14ポイント程度で,ドイツの生産力の半分程度しかない。最大限伸びてもせいぜい30ポイント(本文で述べた満州分の影響があるため,ユニット生産に使えるのはあくまで21ポイント分)で,1943年以降本土だけでも最大72ポイントの生産力が発揮できるアメリカに対抗するには,かなり心もとない生産力しか確保できない。
 また,相手にする国を限定する戦略がほとんど採れない。西側連合が一体なので,アメリカと事を構えずイギリス/オランダだけを相手にするのは無理だ。まず中国を押さえようとしても,ゲリラ対策にかなりの戦力と補給ポイントを割く必要があり,うまい手とはいえないだろう。

 結局のところ,まず中国沿岸部を押さえ,内陸部は爆撃でダメージを与える(中国内陸部は「占領」しなければ,日本にとって不利な状況にはならない)。資源供与が切れる41年春以降の適当なところで,西側連合と開戦して東南アジアに進出する。ここで資源を確保してさらなる攻勢を図る……という,史実を踏襲するスタイルが基本になってしまうだろう。
 東南アジアの諸領域には人口ポイントが設定されていないから,ゲリラは発生しない。中国内陸に進出するよりも,日本軍の戦略としてはまず南方の資源地帯を先に押さえたほうが合理的といえるのだ。また,日本のゲーム開始時点からの支配領域と,中国沿岸部〜東南アジアの資源ポイントの合計を見てみると23ポイント。したがって日本は,まずは工場をフル稼働させられる資源を確保すべく,これらの地域を手に入れることを考えるべき,となる。
 また,あえてソ連を先に攻撃するというオプションもある(これは英文マニュアルの13.2.1節でも触れられている)。東南アジアやハワイなどに手を出さなければ,アメリカは1943年になるまで日本やドイツに宣戦できない(ただし,その間アメリカはフリーハンドで軍備と備蓄に専念できることになる)。史実と大きく違った展開を求めるのならば,試してみてもよい戦略かもしれない。

 ただ,いずれにせよ枢軸側が苦しい戦いを強いられることには違いない。良くも悪くも史実どおりになるように強力な誘導が行われているのがこのゲームの特徴なのであって,もう少し自由に暴れたいという場合は,紹介記事でも触れたように,設定変更で毎ターン無料の補給ポイントが10〜20程度供給されるようにしたり,戦闘判定にハンデを加えたりするしか,手段がないかもしれない。(ライター:虹川 瞬)


ゲリー グリグスビー ワールドアットウォー
■開発元:2by3 Games
■発売元:ズー
■発売日:2007/06/29
■価格:8190円(税込)
→公式サイトは「こちら」
ゲリー グリグスビー ワールドアットウォー ア ワールドディバイデッド 日本語版
■開発元:2by3 Games
■発売元:ズー
■発売日:2007/08/31
■価格:6090円(税込)
→公式サイトは「こちら」

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2007.08/20070816205811detail.html