[GC 2007#036]アメリカの著名デザイナーコンビによるADV「Mata Hari」
アメリカではゲーム業界の大御所として知られる,Hal Barwood(左)氏とNoah Falstein氏(右)
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ドイツではAnacondaというブランドでゲーム販売を展開するdtp Entertainmentが,新作アドベンチャーゲーム「Mata Hari」のデモンストレーションを実施した。同社はもともとアドベンチャーゲームを量産する会社として知られているが,今回のプロジェクトはかなり大型。なんたって,アメリカのゲーム業界で知名度の高いHal Barwood(ハル・バーウッド)氏とNoah Falstein(ノア・ファルステイン)氏が,共同でストーリーやゲームデザインを手掛けているのである。
Hal Barwood氏といえば,映画「未知との遭遇」の制作に参加するなど華々しい経歴を持ち,その後は80年代から学友のジョージ・ルーカス監督が立ち上げたゲーム部門LucasArts Entertainmentを引っ張って,「Indiana Jones and the Fate of Atlantis」など,同社の名作アドベンチャーシリーズの登場に深く関与した。 一方のNoah Falstein氏は,同時期のLucasArts EntertainmentでBarwood氏とともに活躍し,ゲームデザインに関する著作で名高い。両氏とも,アメリカゲーム業界の重鎮としてGame Developers Conferenceなどの会合では常にセミナーを開くなどしており,現在はゲームデザインの統一化が可能かどうかを実験するために,400種類のデザインルールを収集/検証するという「The 400 Project」の旗振り役である。
そんな彼らが,Anacondaブランドでアドベンチャーゲームの復興を狙うのが,「Mata Hari」である。Mata Hariとは,第一世界大戦時にヨーロッパ各国のダブルスパイとして活躍したダンサー,“マタハリ”ことマーガレタ・ツェレという実在の人物のこと。その美貌を利用して軍人や政府高官らさまざまな人物に取り入り,ドイツの侵攻で多大な被害を被ったフランスのスケープゴートになる形で処刑されたが,ゲームではスイスの高官に見出されてスパイとなり,第一次世界大戦勃発の裏に潜む,大きな秘密を解明するという設定になっている。
Mata Hariは,ドイツのハノーファーに拠点を置く4Headというチームが開発を手がけており,Barwood,Falstein両氏らしいクラシカルなタイプのポイント&クリック型アドベンチャーゲームだ。Anacondaが行なったゲームの紹介では,マタハリが下着姿で政治家らしい人物を誘惑するような場面も見られたが,Falstein氏は「誘惑自体はパズルを解くための要素であって,決してこのゲームが大人向けということではない」と,過激なセックス表現はないことを説明する。
Mata Hariのユニークな部分は,そのインタフェースである。会話の内容や保有している物件は,すべてアイコン化されてゲーム画面の下に並べられ,これらをキャラクターやほかのオブジェクトにドラッグ&ドロップすることで,インタラクションが生じる。アイコンは,青であれば会話に利用し,赤であればすぐに解かなければならない問題を示しており,緑であればプレイヤーが使用したりほかのものと組み合わせたりすることで,何らかのリアクションが得られる。 デモで見た例では,マッチの緑アイコンを画面中のオブジェクトである石鹸にドラッグ&ドロップし,軟らかくして刻印の型を取るというようなパズルになっていた。わざわざインベントリウィンドウを開いたりすることなく,すべて同じ画面で処理できるようになっているのだ。
Mata Hariは,2008年第1四半期にリリース予定。北米およびアジアでの展開は決まっていないようだが,参加しているデザイナーが大御所コンビということもあり,クラシカルなアドベンチャーゲームながらそれなりの話題となるのは間違いない。実在の歴史的人物をモチーフにしているのも興味深く,アドベンチャーゲームファンならぜひ注目しておきたい作品である。(ライター:奥谷海人)
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