[GC 2007#054]ひさびさに登場するスペースコンバットMMOタイトル「Black Prophecy」とは?
「Black Prophecy」について説明してくれた,ReakktorのHolger Nathrath氏(右)と,Kark Lenke氏(左)。彼らのスペースコンバットに対するこだわりは相当なものだ
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「Neocron」シリーズの2作でMMORPGにサイバーパンク風なシューティング要素を加味させたReakktorが,新たに「Black Prophecy」と呼ばれるMMOタイトルを開発中だ。未来の宇宙というテーマはNeocronと同じながら,ゲームとしての趣向はガラリと変わり,プレイヤーは自分で宇宙戦闘機を設計してスペースバトルを楽しむというものになる。ソーシャルな要素よりも,個人やクランでのミッション攻略やPvPを基本に据えた作品となるようだ。
Black Prophecyのストーリーや世界観は,ドイツの著名なSF作家Michael Marrack(ミヒャエル・マラック)氏の手によるものである。宇宙開拓に乗り出した地球人は26世紀までに,機械で身体能力を強化したTyi,遺伝子工学による改良を施したGenidesという2系統に分化し,内部分裂を抱えているという設定だ。そこにRestorers(回復者)と呼ばれる謎の軍団が侵攻,プレイヤーはTyiかGenidesかのどちらかに加わって,Restorersとの間で激しい戦闘を繰り返すことになる。
本作のウリは,Modular Fighter Construction Systemと呼ばれる,戦闘機の設計システム。プレイヤー1人1人の好みでパーツを組み合わせ,自分のプレイスタイルや好みに合った戦闘機を作成できる。クラン仲間でお金を出し合えば,複数人がパイロットや迎撃手に分かれて搭乗できる母艦や,自動の防御兵器が装着された巨大な宇宙ステーションだって建設できるとのことだ。
ただ,少し違和感を覚えたのは,Black Prophecyにプレイヤーキャラクターが用意されていないこと。Reakktorでディレクター兼CEOの役職にあるHolger Nathrath(ホルガー・ナスラス)氏の説明によれば,このゲームは母艦や宇宙船の内部で仲間達と交流を楽しむという作品ではなく,あくまでも激しい戦闘アクションに重点を置いたものだという。仲間達とのチャットは,顔部分のアートを挿入した交信画面風のものにする計画はあるというが,そもそもどこか一つの場所にプレイヤーが集まって,お互いの姿を見るという概念はないのである。
技術的に興味深いのはミッション時に生成されるインスタンスマップ(専用マップ)である。ソロプレイでもクランでも使えるように,参加人数に合わせて自在にサイズが変化するという。ただ,あまり狭いと宇宙を高速で航行する感覚が得られないため,ソロプレイ用といっても相当なサイズになる模様だ。
またテクスチャは非常に美しく,金属質の宇宙船と,オーガニックな惑星や隕石の対照的な描写は実に見事である。惑星にある程度以上近づくことはできないものの,山岳や河川がまるで衛星写真のように緻密に描き込まれていて,見ているだけでも感心する。雲も刻々と変化しており,恒星との位置関係によって惑星の雰囲気が随分と変わるようになっていた。そもそも惑星に行けないので無駄な技術にも思えるが,緻密に描写することで,宇宙にいるという臨場感を高めようとしているのだろう。
完成予定は2008年末で,10Tacleが販売を手がける。ドイツ語と英語のほかに,フランス語,イタリア語,スペイン語にも対応させてヨーロッパで広く展開させていくという。 今回はアイテムトレーディングなど,経済活動に関する仕様が詳しく説明されず,まだまだ謎の部分が多いのは事実。あくまでタクティカルなアクションに重点を置いているため,RPG的要素が少ないのは残念だが,今後仕様が変化することもあり得るだろう。宇宙が舞台のMMOGはひさびさであって,今後の進展には注目しておきたい。(ライター:奥谷海人)
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