■"ときメモ"ファンにとっては夢のような作品が登場
「ときめきメモリアル Girl's Side」のキャラクターを使って,オリジナルのストーリーを制作できるソフト。男の子の服装や背景,音楽などは,すべてオリジナルのものを使用。キミならどんな物語を作る? |
とはいっても,以前発売されていたタイピングソフトやパズルゲーム,メールソフトとは少し毛色が違う。どう違うのかというと,この作品,"自分だけのときめきメモリアル"が作れるツール,なんである。
本作のモチーフとなっているのは,2002年にコナミからプレイステーション 2向けに発売されて大ヒットを記録した「ときめきメモリアル Girl's Side」(以下 ときめきGS)。葉月珪,氷室零一など,個性的で素敵な男性が登場する"女子向けときめきメモリアル"だ。
そのときめきGSに登場する男の子たちとの会話シーンを,自分で作って楽しめるのが,このゲーム(正確にはゲームじゃないが……)の最大の売り。ときめきGSを何度もプレイし,「彼とこんなデートがしたかった!」「こんなシチュエーションで口説かれてみたいのよォ!」といった妄想をかきたてられていた人にとって,本作はまさに夢のような作品といえるだろう。
恋愛シミュレーションゲームを自分で作れるソフトといえば,同様のもので「恋愛シミュレーションツクール2」(エンターブレイン)などがあるが,これはビジュアルから音楽,システムまで作り込める,かなり本格的なもの。
それに対してときめきファクトリーは,ときめきGSのシステムとビジュアルを利用して,自分だけの新しいストーリーを組み立てられるというソフトだ。
その分,恋愛シミュレーションツクール2と比べると自由度は低いものの,ときめきGSのシステム上にテキストと芝居を乗せるだけで簡単に一本のストーリーが作れるというのは,ファンにとっては十分に楽しい作業のはず。
ゲーム制作の知識がまったくない人でも,いくつかの作業を繰り返すだけで,ときめきGSの世界観を持ったオリジナル作品が作れるという気軽さは,評価に値するものだと思う。
あらかじめ用意されたセリフやグラフィックを組み合わせるだけでデートシーンが制作可能 | ソフト制作の専門的な知識は必要ない。初心者でもカンタンに「ときめきGS」の物語が作れる | 慣れれば一回のデートシーンがわずか10分程度で作れてしまう。この手軽さは驚愕に値する |
制作するうえでのサンプルとして,新規に書き起こされたストーリーも収録。お手本にするといいだろう | こちらはメニュー画面。ストーリーを見る,作る,オプション設定などの選択はここから行う | ストーリー制作時の画面。コマンド類の多くはボタンとして配置されていて,初心者でも直感的に作れる |
■それでは制作の流れを見てみよう
最初に誰と会話するかを決め,それから服装や背景などのグラフィックスを選択する |
最初に会話相手となる男の子を選択し,男の子の服装と背景のグラフィックスを決める。背景画像にはかなりの数があるが,"主人公自宅関連" "学校関連" "繁華街関連"というように分類されているので,目的のものを探すのは容易だ。それからBGMを決めるのだが,こちらもときめきGSで使用されたものの中からシーンに合った音楽を選択するだけ。曲の選択時に再生ボタンを押すと試聴もできるので,シチュエーションに合ったものが見つかるまでじっくりと選ぶといいだろう。
ここまでの設定が終わったら,いよいよ会話内容の入力へ。基本的な構成として,プレイヤー(デフォルトでは「あなた」という名前で設定されている)と男の子,一人ずつのセリフが1セットで,このセットを複数組み合わせて,一本のストーリーを組み立てていく。こう書くと難しく感じる人もいるかもしれないが,実際にプレイしてみればなんてことはない。プレイヤーと男の子のセリフを一つずつ入力する作業を,何回か繰り返すだけだからだ。
ここで気を付けなければならないのは,プレイヤーのセリフは任意に文字入力できるが,男の子のセリフはあらかじめ用意された音声付きのものから選択する方式だという点。つまり,男の子側のセリフを,プレイヤー側で作り出すことはできないのだ。個人的には,プレイする前にここがかなり気になっていた。会話ではセリフが重要な役割を果たすため,もし目当てのセリフが収録されていなかったら,せっかく考えたデートシーンが作れないのではないか? と思っていたからだ。
しかし実際にプレイしてみると,1000種類以上のセリフが用意されていたので,その心配は杞憂に終わることとなった。事実,今回記事を作るうえで数パターンのストーリーを作ったが,「こういったセリフがなくて困る」ということは一切ナシ。「おお,このセリフが入ってるのか!」というツボをついたセリフのチョイスには,開発者側のこだわりも感じられた。
余談だが,セリフ一覧のPDFファイルが付属していたのは非常にありがたかった。得てしてこういう作品では,多数のサンプルが収録されているのはいいが,目当てのものを探すのに苦労してしまうことが少なくないからだ。そういう意味では,このPDFファイルは非常に役に立つ一品。実際,筆者も今回サンプルストーリーを作るときに活用させてもらった。
また,本作のシステム&インタフェース群の完成度は非常に高く,ストレスなくプレイできる点も記しておきたい。ボタンを中心としたシンプルなインタフェースで,説明書を読まなくても,そう困ることはない。この手のゲーム制作系ソフトといえば,分厚いマニュアルが必ずセットになっていて,それを熟読しないと分からない部分があったりするものだが,本作ではそういうことはまったくなかった。この分かりやすさは,プレイヤーの制作意欲を損なわない,本作品の"裏側の売り"ではないかと筆者は思う。
音楽は本編を遊んだ人には聞き覚えのあるものばかり。シーンを盛り上げるチョイスをしよう | 会話設定画面。シンプルな作りになっているため,説明書を読まずとも作っていけるのがうれしい | 男の子のセリフは,あらかじめ用意されているものの中から選択する方式が採用されている |
制作画面の画面右下にある"プレビュー再生"ボタンを押せば,制作途中でもプレビューが可能だ | シーンを複数作れば,デートの途中で場所を移動したり,ほかのキャラクターを登場させたりもできる | 男の子からしゃべりだすのか,プレイヤーからしゃべりだすのかといった細かい設定も可能 |
■それでは実際に作ったサンプルを紹介しよう
この程度のサンプルなら,約30分で作れてしまう。サクサク作れるのが非常に楽しい |
関西出身の僕は,関西弁をしゃべる姫条くんが好きなので,彼との会話を中心にしたものをテーマに設定。最初に大まかな会話の流れを作って,それに合ったセリフを選び,それに対応するこちら側のセリフを入力して完成。テーマ決めからセリフ入力,細かい調整までを含めて約30分で制作できた。
内容は,コメディ色を強めたものにしたのでときめきGS本来の主旨,設定からは離れたものかもしれない。だが,これぐらい自由度の高いものが作れますよというサンプルなので,ファンの皆さんには石や生卵を投げないでいただきたい。
葉月くんとデート中,おもしろい関西人に遭遇。その関西人こそ,姫条まどかその人である | デート中に関わらず,姫条くんの強引さに負けてどういうわけだか漫才の相方をやることに | ぶっつけ本番でちぐはぐな会話となるが,それがボケへとつながる展開。姫条くんの狙いが的中? |
結局漫才はかなりいい感じで進み,観客から大爆笑をいただくことに成功。うーむ……。これでいいのか? | ステージ終了後,姫条くんから「ありがとう」と感謝の言葉が。不本意に始めた漫才だが,ちょっとうれしい | 葉月くん,どうやら漫才がおもしろかったご様子。どこか満足げなのは,気のせいだろうか? |
さて,そんなわけでサンプルも含めて紹介してきたときめきファクトリー。少しでも興味を持った人は,公式サイトで公開されている体験版をダウンロードして,実際に触ってみるといいだろう。
ちなみに発売されているパッケージは,葉月珪,守村桜弥,鈴鹿和馬を収録した「Vol.1」と,氷室零一,姫条まどか,三原色を収録した「Vol.2」。そして2本がセットになった「コンプリートBOX」の3種類。
今回のサンプルのように,一本のストーリーの中に,複数の男の子を登場させたいなら,Vol.1とVol.2の両方をそろえておくと,選択肢が増えるので,より楽しめるだろう。
個人的には,Vol.1にもVol.2にも,ダンディな一鶴理事長や,隠れキャラの蒼樹くんなど,未収録のキャラがいるのは残念だったが,そちらはもしかしたらあるかもしれない続編に期待しよう。
また,男性向け"ときめきメモリアル"をモチーフとした"ときめきファクトリー"の発売があるのかどうかも気になるところではあるが,それについて書くと長くなってしまいそうなので,今日のところはこのあたりで筆を置きたいと思う。