Kim Hakkyu氏インタビュー

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〜たいていの場合,作品が元々持っている部分を変えてしまうような作業になるでしょうし

4G:

 ところでROってアジア圏では大きく成功してますけど,欧米なんかではどうだと思いますか? 韓国のゲームが欧米で大成功したという話は聞かないし,欧米のゲームがアジアで大成功したという話も聞きません。そのへんの解決に向けてのヒントとか,なにか考えていたら,ぜひ。

Hakkyu:
 難しいですよね。先ほどの表で言うならば,Taste AとBで韓国と日本,中国あたりを狙ってると仮定するならば,Taste Cというものを加えて,ある程度欧米のコアプレイヤーにもリーチさせるように作らないといけません。最初からそれを考えていないのなら,おそらくはうまくいかないでしょう。

4G:
 でも極少数いるであろう,Taste A/B/Cにヒットする人に浸透できれば,少ないとはいえある程度の数は見込めませんか?

Hakkyu:
 ええ,もちろんそうですよ。それがペイするかしないかは,また別な次元の問題ですけどね。韓国にも欧米のゲーム好きはいるし,欧米にもアジアのゲーム好きはいるんです。韓国人は韓国のゲームメディアを見る,欧米の人は欧米のゲームメディアを見る,今はそういう地域閉鎖的なものが相当崩れてると思いますしね。

4G:
 そうですね。あ,でもこの思想を元に考えるならば,よく業界で言われる「その国独自のローカライズ」(編注:通常カルチャライズといわれるもの)は不要だということですか?

Hakkyu:
 そのとおりです。最初から思想に入っていないような要素に関するカルチャライズなど,必要ありません。たいていの場合,その作品が元々持っている部分を変えてしまうような作業になるでしょうし,そんなことはまったくの無意味です。Taste Aという部分を変えても,それは結局Taste Bにはなりえないのです。

4G:
 なるほど……非常に新鮮かつ大胆な意見ですね。日本ではよくカルチャライズについて話がなされてるんですよ。

Hakkyu:
 アメリカのゲーム開発者と一度そういうことで話し合ったことがあります。欧米のMMORPGでは,アジア圏の人にとってキャラクターのグラフィックが合わないんじゃないかということで変えてみたのですが,それはそれでまったくうまくいかないし,逆に反応が悪かったのです。やはり本質を変えてはいけないんだ,と確信しました。

4G:
 恥ずかしながら,日本でオンラインゲーム市場って広がらないなぁ,やっぱりある程度の"カルチャライズ"も必要なのかなぁ,と思ってました……。ところでその"本質"というのは,システムとかグラフィックとかサウンドとかすべてを含んだものとみていいですか?

Hakkyu:
 そうですね。でも一番大事なのはプレイヤーの立場です

4G:
 立場?

Hakkyu:
 欧米のMMORPGは,新しい世界の探索(Survive,Explore)という部分に重点が置かれていますよね,結構。UOやEQなどは,広い世界の中で自分より強いものが世界の中にいくらでもいて,パーティとか複数人でいくわけです。言うならば,環境と自分との競争ですね。あれは西部開拓の名残なんですかね。

4G:
 なるほど。そういう面はあるかもしれませんね。

Hakkyu:
 一方アジアのプレイヤーにとっては,自分が生き残るのは当たり前です。というか"生き残るか死ぬか"という選択は概して好きではないですね。どうやったらTopになれるのか,それを追求することが,アジアプレイヤーの特質だと思います。リアリティよりは強さ,という感じでしょうか。

4G:
 で,Granadoには世界の探索もあるし,競争もあるというわけですね。

Hakkyu:
 若干のブレはあるけど,まぁそれは誤差範囲でしょう。Tasteの話に戻すなら,Granadoの大きな2つの要素はSurviveとPvPです。国によって細かな差はあるでしょうが,この二つの要素を,ブレさせることなくキチンとリーチさせるのが,まずは最も重要です。

4G:
 実はですね,日本で韓国のMMOを成功させるために,なにか代理店向けのアドバイスなんかもらおうと思ったのですが,いまの思想を聞く限り,そういうものでもないような気がします。元々のゲーム開発の方向性というものが,最後まで影響してしまうんですね。

Hakkyu:

 でもね。どんなゲームも,こういう考え方は多かれ少なかれ持っていると思うんですよ。それが実装されているかいないか,という違いだけで。あとは,それぞれの国に応じたローカライズを含めた,代理店の展開などの問題なのではないでしょうか。

4G:
 でも例えば日本なんかが今そうだと思うんですけど,パイが広がりきってないところに万全の構えで突入しても,結果的には悪い数字が出たりしませんか?

Hakkyu:
 ええ,そうですね。そのとおりです。じゃあついでにMMO市場の広がり方についても,ちょっと自説を展開してもいいですか?(笑)

4G:
 ぜひ!

Hakkyu:
 では……(といってまたおもむろにホワイトボード)。


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