― 連載 ―

奥谷海人のAccess Accepted

PCゲーマーにとって,非常に充実した2004年が終わった。とくに後半にかけては怒濤の勢いでメジャーなタイトルが発売され,多くのファンの財布のひもも緩みっぱなしだったに違いない。2005年の始まりにあたって,あくまで筆者の個人的な趣味で,2004年の傑作を選んでみた。



○Bestシューティング
Half-Life 2
(邦題 ハーフライフ2)
開発元:Valve Entertainment
発売元:Vivendi Universal Games
2004年は「FPSの1年」と言えるほど,本当に大作揃いだった。しかし,中でも「Half-Life 2」は,ずば抜けた傑作だったと思う。美しいグラフィックスや物理効果を巧みに利用したパズルや効果も良いが,キャラクターの感情表現の獲得に挑戦したアニメーション技術は,FPSだけでなくすべてのジャンルやプラットフォームを含めてもマイルストーン的な存在だったと思う。ストーリーなどで不満の残る部分もあるが,Steamによる認証システムや開発段階での翻訳作業など,時間と労力をかけて制作されただけのことはある。
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FarCry(邦題 ファークライ)
Painkiller(邦題 ペインキラー)
The Chronicles of Riddick:Escape from Butcher Bay



○Bestストラテジー
Rome:Total War
(邦題 ローマ:トータルウォー)
開発元:Creative Assembly
発売元:Activision
筆者が2004年に一番遊んだソフトかもしれないのが,この「Rome:Total War」。その壮大なスケールや戦略マップ/バトルマップ両方における戦略的駆け引きまで,もう面白くて面白くて仕方がない。敵AIは改良の余地があるが,マルチプレイヤーモードで遊べば戦闘本来の楽しさも十分に発揮される。選択できる国家も多いし,ファミリーツリーや地形のランダム性などゲームの寿命も相当長いので,拡張パックや次のシリーズが発表されるまで,アンインストールされることはないだろう。
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○Bestアドベンチャー/RPG
Sid Meier's Pirates!:Live the Life
開発元:Firaxis Games
発売元:Atari
「Sid Meier's Pirates!」を初めてE3で見たときは少し子供っぽさを感じたものの,シド・マイヤー作品だけあって遊んでみればやっぱり面白かった。海賊になって自由にカリブ海を航海でき,ゲームで与えられたミッションに従わなくてもOKと,好きな生き方を楽しめるのが持ち味だ。海賊,提督,パイレーツハンター,プレイボーイ,肉親や失われた遺跡を探す冒険家……。20年近く前に発表された同名作品と同じく,プレイヤーを縛るものなどほとんどない。ミッションや顔グラフィックスにバラエティがないため,彼の名を冠した作品にしては珍しく,繰り返しプレイするのには向いていないのが残念だ。
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○Bestシミュレーション
The Sims 2
開発元:Maxis
発売元:Electronic Arts
砂場や積み木が目の前に用意されていて,あと何をするのかはプレイヤー次第という感覚にさせてくれるゲームは,ほかに少ない。The Sims 2は,まさに箱庭ゲームの王道というべき作品である。本作では,老齢による死という結末が加えられ,そこに至るまでにどのような生き方をするかという命題も生まれている。そのため,前作を敬遠した熟練ゲーマーにもアピールできる,魅力的な作品になったのではないだろうか。
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○Bestオンラインゲーム
World of Warcraft
開発元:Blizzard Entertainment
発売元:Vivendi Universal Games
まだプレイを始めたばかりだが,現在筆者が遊んでいる唯一のMMORPGが「World of Warcraft」。だからというわけではないが,Bestオンラインゲームには本作を選んだ。インタフェース,グラフィックス,ゲームシステムなど全体的にはライトな作りになっていて,ハードコアに傾倒しつつあったMMORPG界に一石を投じたのは間違いない。クエストも非常にストレスなく作られていて,特定のモンスターを倒すために何時間も待ったりする必要がない。まるで(褒め言葉として)シングルプレイヤーRPGを遊んでいる気分にもなってくる。
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○新人賞
The Chronicles of Riddick:
Escape from Butcher Bay
開発元:Starbreeze Studios
発売元:Vivendi Universal Games
「FarCry」にするか迷ったが,個人的にはRiddickのほうがインパクトが強かった。恥ずかしながら,このゲームがPC版で出ているのを知ったのは発売されてからのことで,欧米のオンライン誌で高評価を得ていたから目に付いた。その前に観た原作映画のつまらなさと比べると,荒削りながらもグイグイと引き込まれる良作で,さらにはBGMの良さが際立っていた。系統ではFPSだがステルスを加えたアドベンチャー要素も強く,近未来の宇宙監獄から脱出するという内容だ。グラフィックスも「DOOM III」に引けを取らず,原作よりもよくできたライセンスゲームも珍しいと思った次第。
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○残念賞
DOOM 3
開発元:id Software
発売元:Activision
一番期待外れだった作品には,あえてDOOM 3を選びたい。多くの部分で申し分ないデキだったが,それだけに気になる点も目立った。モンスターに突然襲いかかられても暗すぎてうまく反応できないもどかしさ,ただ狭い通路を延々と進んでいるような演出のなさ……。「あのDOOMの後継ソフト」という先入観を吹っ飛ばすこともなく,その名にふさわしい大作感を見いだせなかったのだ。カーマック氏によるグラフィックスエンジンの能力は認めざるを得ないが,せめてダクトテープMOD(銃に懐中電灯をテープで固定するMOD)をデフォルトで用意しておいてほしかった。
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○Access Accepted ベスト オブ ザ イヤー賞
Half-Life 2
開発元:Valve Entertainment
発売元:Vivendi Universal Games
お決まりすぎて面白みがないが,これはもうお約束。Half-Life 2の功績は素直に称えたい。これから登場するMODや拡張パックを含め,今後の繁栄を願って一本締め! よ〜〜〜うっ!


―奥谷氏の選ぶ2004年10大ニュース―

1月Microsoftゲーム部門の責任者エド・フリーズ氏が辞職
2月Electronic Arts,Origin Systems社の廃業を決定
6月Interplay社が倒産
8月LucasArts Entertainment社が大規模リストラを公表
9月WCG 2004でhanbei選手がUT 2004で日本人初の決勝トーナメント進出
Valve SoftwareとVivendi Universal Gamesの係争があらわに
DOOM 3リリース
11月ウォーレン・スペクター氏がION Storm社を辞職
Half-Life 2リリース
12月Electronic Artsが,Ubisoft社の株の19.9%を取得



次回は,MacWorld 2005の様子を紹介する予定。ジョン・ロメロファンの人,もうしばらくお待ちを


■■奥谷海人(ライター)■■
本誌特派員。新年は,アメリカではずいぶんとそっけないのだと奥谷氏は言う。元旦こそ休日となるが,11月末から続くホリデーシーズンの締めくくりの意味が大きく,次の日からはほとんどの店舗で営業が始められる。学校だって月曜日だった3日から始まってしまったので,アメリカの習慣に今でも慣れない奥谷氏は,一人で家に取り残された気分になったらしい。酒とパックの餅をお供に,ゲームで遊びほうけていたようだ。



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