アメリカではXbox 360フィーバーの陰に隠れてしまうように思えたが,ふたを開けてみれば,2005年も前年に負けず劣らずPCゲームの大作が目白押しだった。今回は第2回 Access Acceptedゲーム大賞と題し,筆者(編注:奥谷海人氏)が私的に選んだ,2005年のBestゲームを発表しよう。なお,あくまでアメリカ在住の筆者個人による選出なので,アメリカで販売/サービスされているタイトルのみが対象となる点は,ご了承を。
ゲーム内容のデキでは,次点を含めた計4作が(高い水準で)横並びに思えた今年のFPSジャンルだが,プレイするたびに違った興奮を味わえたという意味で,「Battlefield 2」を選出した。広大なマップ中で搭乗兵器を使って縦横無尽に走り回る前作のエッセンスを継承しながらも,コマンダー/小隊システムやランキングシステム,ボイスコミュニケーション機能の追加など,ネットワークプレイの楽しさが追求されている。
6月発売ながら,すでに拡張パックがリリースされているのもポイントが高い。「ネタ切れでDesert Combatの二番煎じ」などと当初タカをくくっていた筆者も,十分に反省した。
・Call of Duty 2
・F.E.A.R.
・Quake 4
ストラテジージャンルでは,ほぼ「Age of Empire III」と「Sid Meier's Civilization IV」の一騎打ちと言ってよいほど,この2作のレベルの高さが印象的だった。
どちらも,完全3Dに生まれ変わった人気シリーズの続編。リアルタイム制とターン制という大きな違いはあれど,面白さに直結する“絶妙のゲームバランス”を従来作から引き継いでいるという点など,似ている部分は多い。
美しいグラフィックスと物理効果を生かして,このジャンルにありがちな地味さを払拭した前者も魅力的だが,MODサポートを積極的に打ち出しているCivilization IVの将来性に期待して,こちらを選出した。
・Age of Empire III
・Dragon Shard
・Shattered Union
「Grand Theft Auto: San Andreas」は,舞台が現代社会に近づいたことで,逆に従来作よりも,現実との温度差を感じるようになっていた。とはいえ,自由度の高さという魅力をよく理解し,さらに新境地を開拓している点で,San Andreasを選出したい。
本作はミッションがずいぶんと洗練されているし,何をしていのか分からなくてイライラすることもほとんどない。マウスによる銃の照準はやや簡単すぎで,これはマウスのないコンシューマゲーム機版で調整したためだろうが,ここはグッと我慢。PC版にはHot Coffee MODなどという話のタネもあったことだし。
・Gun
・Indigo Prophecy
・Peter Jackson's King Kong
なかなか魅力的なラインナップで,ようやくRPGジャンルの復活が感じられた今年。ここでは,目立った批判材料もなく,手堅くまとめられた「Freedom Force vs. The Third Reich」を選ぶことにした。
本作は,スーパーヒーローの小隊を使って,地球征服を企む敵と対峙するというタクティカルRPG。Marvelなどからライセンスを受けているわけではなく,アメコミ文化へのオマージュというべきオリジナル作品で,パロディ調になり過ぎていないストーリーやキャラクター達も良い。どこか大作感のない作品ではあるが,その“お気楽”な雰囲気で,多くの人にとって取っつきやすいだろう。
・Dungeon Siege 2
・Fable: The Lost Chapters
・Star Wars Knights of the Old Republic II: The Sith Lords
タイクーン系のシミュレーションは,毎年数多くリリースされる。Lionhead Studiosの「The Movies」も同タイプに分類できるが,その作り込みやアイデアでは,群を抜いているといえるだろう。ハリウッドの映画スタジオの経営者として,さまざまな要素を管理するだけでなく,プレイヤー自身が映画を制作し,しかもそれをWebサイトで公開できるのだ。
俳優のわがままに振り回されて制作が思いどおりに進行しないなど,ストレスの溜まる要素も少なくない。とはいえ,ここ数年「The Sims」一色だったシミュレーションジャンルには,頼もしい新参入である。
・Dangerous Waters
・FIFA 2006
・NASCAR SimRacing
2004年に「EverQuest II」と「World of Warcraft」という二大巨頭が登場したためか,はたまた無料のゲームが充実してきたためか,(欧米では)あまり活気がなかったのがオンラインゲームジャンルだ。
候補作もそれほど多いとはいえないが,アメリカにおいて月額課金システムの呪縛を解き放った「Guild Wars」が,頭一つリードしていたのは間違いないだろう。同じNCsoftの「Lineage II」と似たPvP系の路線で,クエストベースのゲームシステムのために遊びやすくなっている。
・City of Villains
・Yohoho! Puzzle Pirates
Guild WarsのArena.netに新人賞を与えようかとも思ったが,ここでは,また別の新しい開発チームにスポットライトを当てておこう。
ちなみに,Arena.netがBlizzard Entertainmentの元スタッフを中心に構成されているように,Wideload Gamesのスタッフも,まったくの新人ではない。あの「Halo」を作ったBungie Studiosの創設者,Alex Seropian(アレックス・セロピアン)氏によって旗揚げされているのである。
その処女作となった「Stubbs the Zombie」は,主人公がゾンビを狩る側ではなく,ゾンビとなって人々に襲いかかるというコメディー調のアクションゲーム。ボリューム的には物足りず,またキーボードでの操作に向いていないなど改善すべき点もあるが,ユーモアの少ない昨今のゲームへのアンチテーゼになっている点で,高く評価したい。
・AWE Studios(Agatha Christie: And Then There Were None)
・Arena.net(Guild Wars)
・Dounble Fine Studios(Psychonauts)
レビュー記事でも厳しく書いたが,「Black&White 2」はさまざまな進化やアイデアがゲームとして結実しておらず,2002年秋に初めてα版を見せてもらって以来何度となく紹介してきた筆者も,まさに「残念!」と言わざるを得ない仕上がりであった。
敵のAIと戦闘システムがうまく機能しておらず,前作にあった「相手の村に火の玉を投げつけて悪神としての信仰を得る」という小悪魔的な要素が減っているうえ,クリーチャーの行動はパラメータで調整するなど,“黒と白,そしてその間”という奇妙な感覚を得るゲームではなくなってしまった。
・BloodRayne 2
・Empire Earth II
・Serious Sam II
一年を締めくくるAccess Accepted ベスト オブ ザ イヤーは,素直にCivilization IVに贈ることにした。「文明の発展」という毎回同じテーマでありながら,なぜ我々は生活に影響がでるほどプレイし続けてしまうのだろうか。
ボードゲームを思わせる伝統的なシステムを搭載しながら,ついつい「もう1ターンだけ……」とプレイを続けてしまう同シリーズには,プレイヤー達に休息を許さない“魔物”が潜んでいる気がする。
今年は,ゲーム業界でも尊敬を集める二人の人物の作品が明暗を分けることになった。シド・マイヤー氏とピーター・モリニュー氏,彼らの新作であるCivilization IVとBlack&White 2が,ゲーム大賞と残念賞になってしまったのだ。このように選んだ筆者自身も,彼らのゲームがリリースされれば真っ先に飛びつくタチなので,今回はどこか複雑な気分である。
今年の受賞作/次点作は,ほとんどがもともと人気のあるゲームを洗練させたものだ。Civilization IVもそうだし,Battlefield 2やGrand Theft Auto: San Andreas,Quake 4,Call of Duty 2,Age of Empire IIIなど,前作でもミリオンセラーとなったものばかり。逆に,何か新しいものを予感させてくれるソフトや,既存のゲームにはないものを生み出そうという革新的なソフトは少なかった。
そういう意味では,Black&White 2も続編とはいえ,その個性はまだまだ輝いているし,もっと良い賞を与えてもよかったかもしれない。続編の制作などにまったく興味のないピーター・モリニュー氏が,Black&Whiteの進化をライフワークの一つとし,今までにはなかったようなゴッドゲームへと昇華させようと努力している。
MaxisやOrigin Systemsなどを吸収してきたあのElectronic Artsでさえ,Lionhead Studiosの独立を認めているのは,モリニュー氏のような才能は野にいてこそ開花すると考えているからではないだろうか。結果が不完全で非商業的なものであっても,その中から何か生み出されるものも少なくないはずだ。今のPCゲームには,Black&White 2のような作品が必要なのである。
来週1月4日は年始休暇でお休み。1月11日から再開します。では,よい年を!
■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。前回のゲーム大賞では,ゲーム業界10大ニュースも選出していた奥谷氏だが,今年はさまざまな時事ニュースについて,折に触れて当連載で書いてきたため,見送ることに。ただ,もちろん連載で触れていないニュースもあって,中でも奥谷氏が最も気になっているのが,id SoftwareのJohn Carmack(ジョン・カーマック)氏が作る試験宇宙ロケットが8月の打ち上げ失敗で大破したというもの。地元新聞には「人気ゲームを作っていて良かった」などとジョークを飛ばしていたらしいカーマック氏だが,この損失補填のために,再び新しいゲーム開発に全力を傾けてくれるのではと,奥谷氏も期待しているようだ。
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