タイトル
ジャンル
開発元
販売元
実勢価格
発売日
Full Spectrum Warrior(日本語版)
:ストラテジー
:Pandemic Studios
マイクロソフト
:6500円(税抜き)
:2004年9月30日
※Xbox Live対応


一見「まーたよくあるミリタリーアクションか」と思いきや,実はアクション性をほぼ排したシミュレータだった「Full Spectrum Warrior」に挑むのは,当編集部きってのハートマン鬼軍曹ことGueed。「戦場にあって最も大切なのは,射撃の腕前ではなく冷静な判断力だ」なんてセリフは戦争映画などでたまに耳にした気もするが,まさに本作は射撃の腕は基本的にまったく無関係で,銃撃戦での判断力のみをテストする極端なゲーム。冷静な判断力と消費者金融からの借り入れには定評のあるGueedが,ついにその本領を発揮するときがきた。

 トム・クランシーの小説を読み漁り,朝昼晩とレーションのフルコースを食い,さらに鋭気を養うために仕事をせずに8時間以上も寝ているのに,未だ米軍からオファーが来ない。やはり実戦経験不足が大きな原因だろうか。
 この経験不足を補うため,以前自分のアパート3階からのラペリング訓練中に頭から落下,光に包まれてアチラからお誘いがきたという新人風の若年寄である,当サイト編集者Guevaristaをサバイバルゲームに誘ってみたが,近代兵器で武装したい筆者とは異なり,「ソマリアの民兵ルックならお供しますよ」と目を潤ませる彼との音楽性の違いから,あえなく断念。今も隣でカラシニコフの木製ストックをヤスリ掛けしているというのはさすがにウソだが,将来,軍払い下げの潜水艦に住みたいと願っているのは本当らしい。きもーい。ボクだからいいけど,ほかの人には言わないほうがいいですよ。

基本的には,このようにやや引いた視点でゲームが進行する。左のアイコンで,現在選択している兵科と武器が分かる仕組みだ

 さて,筆者はそこそこFPSを好んでおり,「Rainbow Six3:Raven Shield」のラダーを制覇すべく買ったFatal1ty御用達のFatPadも,筆者御用達のごま焙煎ドレッシングをこぼして以来ランチョンマットとして使っているというぐらい,やる気マンマンだ。だがやっぱりシューティングアクションよりも,旧レインボーシックスの"プランニングフェーズ"のような,戦略的に攻略するほうが好きらしい。ただ残念なことに,レインボーシックスシリーズは進化の過程でリプレイ機能がなくなってしまい,フテ寝をしつつも仕方なく本連載担当編集者とマルチプレイを重ね,業界人にあるまじきDeath数(注:Kill数ではない)を重ねる日々が続いていた。

 そんな"敵を倒したいけどケガはしたくない"というヘタレた欲求を満たしてくれるのが,一見FPS風とよくいわれるが,実はアルファ/ブラボーチームを小隊レベルで操作するリアルタイムストラテジーであり,それでも一人称視点で射撃はしてるっぽいしFPSといっても差し支えないんじゃないの? と天邪鬼気味に思うコンバットシミュレータ「Full Spectrum Warrior」だ。
 このタイトルは2004年6月に英語版が発売されており,"コアエンジンは,アメリカ陸軍に納入された訓練用シミュレータ"という生い立ちもあって,欧米で大きな反響を呼んだタイトルである。今回,マイクロソフトが日本語化してXbox版を9月30日に発売,また2004年秋(もう秋だけど)には,メディアクエストからPC版が発売される予定だ。本記事を読むほどヒマじゃないという人は,9月末に公開された当サイトの「こちら」にあるシングルデモをプレイしてみるのもいいだろう。

 一応ゲームの説明をしておくと,本作はFPSのように自分でレティクルを操作して射撃を行うシューティングゲームではなく,あくまでも小隊をコマのように進めつつ,敵を倒したり負傷した兵士の救護を行ったりするストラテジーゲーム。プレイヤーはNATO軍の歩兵として,チームリーダー,グレネード兵,マシンガン兵,ライフル兵という4兵科で構成される2チームを代わりばんこに操作し,イラクを露骨に意識した砂漠地帯の仮想国「ジーキスタン」を舞台に,戦闘を繰り広げることになる。

砂漠地帯特有の乾いた風景の再現が見事。遮蔽物として点在するクルマは,銃弾によって穴があいたり,爆風でバンパーが外れたりと,ディテールも細かい。右のアナログスティックをグリグリ回していろんな角度でチェックしてみるべし

このサテライトナビ(GPS)に戦場のすべての情報が集まる。見るときにイチイチ開閉するのが面倒だが,これがないと泣きそうなぐらい周囲の状況が分からない

 ここでプレイヤーに課せられるミッションは,主に市街地や主要道路の制圧や,別働隊の負傷兵の救護,またレンジャー部隊のサポートといったものがメイン。視界の開けた場所での戦闘はほとんどなく,偵察ヘリから送られてくるGPSデータ(全体マップおよび目的地,敵の位置が表示される)を頼りに,2部隊でうまくクリアリングフォーメーションをとりながら市街地を行軍しつつ,任務をこなしていくという具合。敵の配置とマップを頭に入れて戦う詰め将棋と考えるといいだろう。
 ちなみに兵士の武装は,アメリカ系特殊部隊を中心に人気のM4A1カービンにM203グレネードランチャーをマウント,分隊支援火器(SAW)が1艇,さらにフラグ/スモークグレネードを所持と,至ってオーソドックスだ。

 本作のウリは"アクションではなくストラテジーである"という部分だと思うが,プレイしてみると,場所取り次第で意外にアクション性を要求されるポイントもある。もともとAIの出現位置や行動はスクリプトで制御されているため,ある程度予想ができるのだが,銃弾を受け続けると徐々に崩壊していく遮蔽物のせいで迅速な移動を要求される場所もあるし,建物の角で縦と横の方向から交互に攻められる場合などもある。あくまでもリアルタイムストラテジーの感覚なので,ときには敵兵士が隠れる車もろともM203で吹き飛ばしたり,一方の部隊でおとり射撃をしつつスモークグレネードで進路を確保,他方の部隊が敵の側面に周りこんで射撃という教科書どおりの戦法だけでなく,プレイヤーの工夫が要求されて面白い部分でもあるのだ。

 ちょっと戦闘が単調かなぁと思いつつも,かなり遊びこめる本作だが,筆者が最も気になったのは兵士のバックグラウンドについて。挿入ムービーを見ないダンディな人や,マニュアルを見ない頑固な人はきっと知らないだろうけど,実はこの兵士達には,かなり詳細で,しかも本編にほとんど生かされていない設定があるのだ。
 たとえばアルファチームのリーダー,通称"アイアンマン"は2児の父でボディビルダーだったりするし,遺憾ながら筆者がプレイ中になぜか被弾を重ねるピッコリ伍長(!?)は,裁縫と料理が得意とのこと。しかもマニュアルには"見事なダブルチョコレートファッジブラウニーを作れるほどの腕前"と,イマイチ人物像が見えてこない詳細な記述がある。また,どうやらこの部隊の兵士は不運な人も多く,グレネード兵のシメンスキー上等兵はハネムーン直前にイラクに派兵されたらしいし,ライフル兵のオータ二等兵などはコンピュータサイエンス専攻にもかかわらず,"歩兵訓練で高成績を収めたため,ライフル兵以外の選択肢が無くなってしまった"というネガティブな理由で隊に在籍しているらしい。大丈夫か?

 このように,どの隊員もモチベーションが低そうで,みんなイヤイヤやってるのかなと不安になってくるが,兵士の会話に感情移入できない人は,次回作への布石として前向きに捉えつつ,マニュアルを一度読んでみることをオススメする。実際,2段階の難度設定があり,通常モードなら比較的サクサク進められるので,現実さながらの小隊戦術を学びたい,将来キルハウスで亡霊のように老後を過ごしたいと考えてる人などは,試してみるといいだろう。

長く丁寧なチュートリアル。この部分は「こちら」にあるPCのデモ版でも体験できる

攻撃時の画面インタフェースはこんな感じ。画面左が通常射撃,中央がグレネード投擲のマーカー,そして右がスモークグレネードを炸裂させたところだ

敵の銃弾を浴びると,このようにカメラ(?)に鮮血が飛び散る。あえなく倒れてしまった場合も,命が尽きる前に医療班に届ければ,不意にムックリと復活してくれる。な,なにしたの!?

本作にはやたらと多めにムービーが挿入されている。画面右下は子供がNATO軍の進軍を仲間にチクるシーン。なんか「ブラックホーク・ダウン」みたい

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■■Gueed(4Gamer編集部)■■
ちなみにGueedの老後は,水で茹でられるパスタの研究に捧げたいとのこと。そんな常温核融合のようなSFを夢見ているのは,彼がパスタを茹でるガス代の捻出すら困難な生活を送っているからである。最近は姿もあまり見かけないし,このコーナーの存続も危ないかもしれない。ところで先日,SETIを会社のPCで動かしていたアメリカ人が解雇されたが,Gueed及び担当編集者の職場PCにもSETIがインストールされている。このコーナーの存続も危ないかもしれない。

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