京都生まれHip Hop育ち,悪そうなヤツにはだいたいお金を奪われてきたGueedが今回挑むのは,Electronic Artsの格闘アクション「Def Jam:Fight for NY」だ。黒人リスペクトのGueedにとって避けては通れぬ道,それはHip Hopと黒人霊歌。黒人霊歌はすでに持ち前の美声でマスターしている彼にとって最後の関門となるのが,そうHip Hopなのである。実在するHip Hopミュージシャンが多数登場するという本作は,Gueedに何を授けてくれるのだろうか。
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筆者は幼少の頃より,いわゆるアフリカ系人種に憧れていた。走ってよし,飛んでよし,踊ってよし,ダンク決めてよし,Tシャツ売ってよし,ジョークのネタにされてよし。筆者は,素敵な彼らのようになりたかった。黒くなりたいがためにコーラやコーヒーをガブ飲みし,タバコを吸って肺の中を真っ黒にし,消費者金融のブラックリストにも名を刻んだ。一昔前のラジカセを肩に担ぎ,リズミカルに肩を揺らしながら歩き,寒い夜にはドラム缶で焚き火をして掌を暖めた。
おかげで筆者は日本人にしては色が黒くなり,アフロの似合う顔立ちになったが,それでも彼らとは何かが違った。そう,筆者には決定的にHip Hopが足りなかったのだ。Hip Hopのイメージといえば,なにやら黒い人達がバスケットボールのユニフォームを来て集い,金のネックレスをして鉄パイプでクルマのフロントガラスをガンガン割りつつ,古谷一行の息子とロボットダンスをするという感じだが,どうやら実際はもっと奥の深いものらしい。
こんなことではマトモな原稿は書けんということで,筆者の隣でしきりにメガネの位置を直す男こと4GamerのWWIIデータベースことチュルキことGuevarista氏に,Hip Hopの真髄について聞いてみたところ「メッサーシュミットは航行距離の関係で爆撃機の護衛には死ぬほど向いてないんですよ」という,大変鋭い意見が得られた。きもーい。ぼくだからいいけど,ほかの人には言わないほうがいいですよそれ。
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見るからに悪そうで,親達仲間達に感謝という感じ。そういえば,E3会場のトイレでこんな人達に囲まれた記憶もある。すぐに床に這い蹲らせてやったけどな!ハッ! |
そんな筆者がブラック・ミュージックシーンに君臨しつつ韻を踏み倒して今回紹介するのが,Electronic Artsが発売中のHip Hop格闘アクション「Def Jam Fight for NY」だ。……ん? 格闘アクション?
ご存知の通り格闘アクションは,そのとりあえず遊べてしまうプレイの手軽さとビジュアルの良さから,古今東西いろんな題材が扱われることで有名なジャンルだ。K-1などのスポーツや武道はもちろん,ロボットや時にはビキニ(4Gamer風にいうところの「こちら」)までと,実に幅と心が広い。だが,たった一つだけ,今まで格ゲー界で誰も手を出さなかった(ウソ)テーマがある。そう,それこそが「Hip Hop」なのである。筆者は担当編集者に対して常日頃から,「Hip Hopの格闘アクションだけはやめて」とクギを刺しているわけだが,持って来ちゃったし,もう目の前にあるし,パッケージも封を切ってしまったので,紹介することにしよう。
さて,なにはともあれ"Def Jam"とはなんぞや? と思って調べてみたところ,どうやらこれは米国の老舗ヒップホップ・レーベルのことを指すらしい。そんで,その頭文字をとってDJ,と。なるほど,ディスクジョッキーとかけて,本作は「DJ Fight for NY」となり,「おれのライムにチェキチェキチェキラ」と訳すのであろう。
格闘家として登場するのは,今この瞬間も全米ヒットチャートを沸かせている現役Hip Hopミュージシャン達。なぜ彼らミュージシャンが格闘家なのか? という説明は,見たところ一切ない。とにかく彼らは皆,ごく当たり前のように,このゲームの中ではファイターなのだ。
Xbox Liveに対応していないため,本作のメインとなるのはストーリーモード。NYのストリートで抗争に励むHip Hopな人達が,酒場(今風にいうとクラブ)や地下に隠されたリングを舞台に,自らの肉体と酒瓶やデッキブラシなどの凶器を使って正々堂々と戦うアクションゲームだ。
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全米のヒットチャートを賑わせつつ,相手を殴りつけバットを振りかざす。やっぱりHip Hopはコワイ |
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ストーリーモードの対戦相手は割とヘンな人が多い。っていうか,アンタどうみても格闘家だろ |
ゲームを始めてまず驚くのは,本作のキャラクターメイキング。ストーリーモードではあらかじめ用意されたキャラクターを使うこともできるが,身長や体重,顔の作りなどを好みに仕上げたオリジナルキャラクターでも遊べるのだ。パターンもMMORPG並に豊富なので,下段の画面写真のようにアンジェリーナ・ジョリーを思わせる美しい眉にモニカ・ベルッチのごとき豊満な唇,そこへアラン・プロストもたじたじの曲りっ鼻という具合に,実に個性的なキャラクターが作り上げられる。ただ一つだけ不満があるとすれば,このゲームのデザイナーが,最近惜しまれながら廃刊となった「薔薇族」をリスペクトしていたのかいなかったのかは知らないが,どうデザインしてもオカマとスシ屋の頑固オヤジを足して2で割ったような顔になってしまうところだ。それともこれは,角刈りとヒゲを組み合わせがちな筆者が悪いのだろうか?
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パターン豊富なキャラクターメイキングとショッピングでのキャラカスタマイズ。"帽子の傾き"までも細かく設定できる。コンプレックスの反動か,筆者はやたらと巨大なキャラクターを作ってしまった |
まぁそんな感じで,このキャラメイク部分だけでも5ページぐらいは書けそうだ,イヤ書いちまおうか手っ取り早いし,とも思ったが,とりあえずは一通りプレイしたので,ゲームの話もしておこう。
ここは実に太字で強調したい部分だが,格闘アクションとしての本作は,非常にデキが良い。正直言って面白い。
プレイヤー,非プレイヤー問わず,キャラクターにはStreet Fighters/Kickboxers Martial Arts/Wrestling/Submissionsという五つのファイティングスタイルが用意されており,打撃,投げ技,間接技と,格闘ゲームの基本をバッチリ押えている。加えて,ギャラリーが面白半分に渡すバットを奪って使ったり,柱を利用して相手を叩きたりといったオブジェクトへのインタラクティブ性,また体力とは別に用意されたMomentum Stamina meterを貯めると発動できる"Blaze",いわゆる"超必殺技"も完備しておるのだ。
んで,これだけだとあんまりピンとこないと思うけど,一番特徴的なのが対戦時の"間"。弱パンチで相手の技をつぶして強パンチを入れる。と思ったらそれは弱パンチでつぶされちゃった――ん? あれあれ? このモリモリ沸きあがる既視感。そう,この感覚はまさにファミコン時代に一世を風靡した「アーバンチャンピオン」のそれではないか!
もちろん警察が通りがかって両者そしらぬ顔をしたり,上から植木鉢が落ちてくるなんてことはないが,実に同作に似た"間"なのだ。しかもそこに投げ技も間接技もあるのだから,どう考えても面白くないワケがない。しかもマンホールに落とさなくても,体力を奪うだけで勝ててしまうのだから,見切り商品のようなお得感だ。ちなみに地下鉄のホームで戦い,相手を線路に投げ出して列車に轢かせるというステージはある。マンホールよりよっぽど残酷だ。
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デッキブラシでズコズコ殴る。このゲームではギャラリーが,リングでいう"ロープ"の役目を果たしていて,舞台の中心に押し戻されることもあれば,羽交い絞めで動きを止められることもある |
ついでにいうと,超必殺技であるBlazeも,戦いに勝利すると貯まっていく技術開発ポイントで次々と習得することができる(発動時はビカビカ光ってカッコよい)。筆者の目指したキャラクターは,大きくて太くて黒くてすばしっこいサブミッションのプロ。ワキのニオイでトドメが刺せたら最高だなぁと思ってプレイしていたのだが,バックドロップ(プロレス技だけど)やアキレス腱固めなどを覚えていけるし,ポイントさえ貯まればスタイルを変更してキックボクサーに転向,なんてこともできてしまうのだ。
この面白さは,担当編集者が筆者よりも早くハマリ,そしてわずか一晩で100%クリアしてしまったことでも分かる。そりゃ独り身の週末にやることがなかっただろう。「ショップのYo! 店員がYo! あとで格闘家として出てくんだけど,強ぇぜ〜ヒャーハッハッハ! ヘイメーン!」と一人はしゃぎ回っている。筆者的にも非常に満足のいく作品だったが,そこまで好きならアンタが書けと思っているのは内緒だ。
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界王拳発動ライクにズギューン!と(精神的に)ビーストチェンジするキャラクター。この感にBlazeを発動すれば,画面下段中央のように大技が繰り出せる仕組みだ |
最後に,英語の堪能な筆者は,ストーリーモードでは基本的に「ヘイ,カモン!」しか聞き取ることができなかったが,実際は「お前のママはビ●チだぜ」というように,映画「8mile」でエミネムが見せたラップバトル的な言葉も発していると思われるので,ブロークンな英語が堪能な人は,ぜひ堪能してみてほしい。
服装やタトゥーなどを凝ってみるのも実に楽しいが(いや,お世辞じゃなくてHip Hop系の服やアクセサリーは,なんか多彩で見どころ有り),アクション部分がとにかくよく遊べる作りになっているし,接待プレイなんかにも良さそうだ。筆者はすでに二人ぐらいに対戦を断られているが,それでもやっぱり良さそうだ。
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本作では,なんとガールフレンドまで手に入る。タイミング的にどうしてモノにしたい筆者は,チャイニーズ系の彼女(下段中央)を選んだが,恋敵にノされてあえなく断念。そんなボクに手を差し伸べてくれたのは,下段右にあるモノだ |
■■Gueed(4Gamer編集部)■■
実は,Gueedが持っているHip HopのCDは別れた彼女が置いていったというRIP SLYMEぐらいなもので,実際のところHip Hopは本当に何も知らないというか,あまり好きではないらしい。本作に関しても最初はあまり乗り気ではなく,記事中で痛烈なHip Hop批判を展開するつもりだった。だが,ゲーム内容があまりにもそういった音楽とは関係なかったため,展開のさせようがなかった。
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4Gamer.net
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