タイトル
ジャンル
開発元
販売元
実勢価格
発売日
Rocky:Legends(北米版)
:アクション
:Venom Game
Ubi Soft
:6800円(税込)
:2004年9月28日
※日本国内では未発売
※日本語版Xboxで動作可


「シルベスター・スタローンって知ってる?」と聞いたところ,「ハムの人でしょ」と答えたGueedが今回ハンドリングを試みるのは,ハムの人のボクシング映画を題材にしたアクションゲーム「Rocky:Legends」だ。ろくでなしのチンピラのまま30になるロッキー・バルボアと,今のところ寸分違わぬ人生を歩んでいるGueed(27歳)が,本作を通じて世界の頂点に立つ男に成長できるかどうか。ロッキーのテーマを聴きつつ見守っていきたい。

 ぬくぬくと温室で育ったヘタレ男集団4Gamer編集部の中で,最もロッキーに近い男といえば,間違いなく筆者である。筆者はフィラデルフィアでテクニカルノックダウン中の女ボクサーから生を受け,成長したあとはチンピラとして斜めに帽子をかぶり,ユッサユッサとシャドーを決めながら残飯をあさっていた。もちろん毎日生卵を最低5個は丸呑みしていたし,今でも工場長がやめてくれと懇願する中,売り物の牛肉をしこたま叩いている。女の子とのデートは,もっぱら営業時間の終わったスケート場である。
 ……なのになぜ筆者がロッキーになりきれないか? 担当編集の「顔がアポロに似てるから」という意見も鋭いが,筆者が思うに,おそらく心優しいゴロツキの必須アイテムであるエイドリアンを所有していない点であろう。エイドリアンとは,いわゆるロッキーの奥方であり,元ペットショップの店員。塩沢トキ顔負けのヘンテコメガネを取ったらアラ美人というベタベタな設定だが,筆者には美人に見えなかった。試合後,勝っても負けても「エイドリアーン!」と叫ぶのは,ロッキーを観ていない人でも知っているエピソードだろう。

二人とも磨り減った消しゴムのような髪型だが,筋肉のテカリ具合など,グラフィックスは上々。いっしょに遊んでくれる奇特な友達がいるなら,ぜひ対戦プレイを

 何はともあれ,スタローンと筆者ではフィジカル面と所得面での差が激しすぎる。こんなことでは科学的トレーニングで鍛え抜いている旧ソ連の秘密兵器ドラゴ(注:劇場版第4作のラスボス)には勝てんということで,いつも通り筆者の隣の席で筆者の全身を舐め回すように見つめている,4GamerのWWIIデータベースこと潜水艦が好きな普通の男の子(本人談)ことチュルキことGuevarista氏に,右フックの正しい打ち方を聞いてみたところ,メガネの位置を中指でガツガツと激しく直しつつ「私が使う傘を選んでいるのは,アッラーの神かセブンイレブンなので」と言った。きもーい。僕だからいいけど,女の子には言わないほうがいいですよそういうの。

 そんなわけで今回紹介するのは,今となっては正気の国内メーカーならおそらくリリースしないであろう,シルベスター・スタローンの代表作「Rocky」シリーズを題材としたアクションゲーム「Rocky:Legends」だ。
 シルベスター・スタローンとロッキーシリーズについては,もはや語るまでもあるまいが,せっかくなので筆者が脅威のライティングテクニックで的確かつ簡潔かつ美しくまとめておこう。
 ロッキーシリーズは,フィラデルフィアの片隅で,勝って40ドル負けて15ドルぐらいの野良ボクシング試合を繰り返しつつ,裏では指抜き皮手袋をして借金の取り立て業に勤しむ主人公のロッキー・バルボア(イタリアの種馬)ことスタローンが,ひょんなことから世界選手権に舞台に立つこととなり(第1作),意中の女をモノにしつつ(同じく第1作)世界チャンピオンの黒人に負けたり(第1作)勝ったり(第2作),ついでに特攻野郎Aチームの飛行機だけは勘弁な黒人を倒し(第3作),さらには第1作の黒人を殺してしまった旧ソ連の白人を倒し(第4作),完結編の第5作で脳障害が発覚して現役引退,ついでに破産しつつ下町へ戻ってトレーナーになるという,完結までに14年を費やした下町のゴロツキ・ロッキーのサクセスストーリーのようでラブストーリーのような,スコポン映画だ。もとい,スポ根映画だ。いやぁ分かりやすい。


路地裏のストリートファイトから,多くのギャラリーが詰め掛けるリングでのタイトルマッチなど,シチュエーションはさまざま。もちろんアポロはいきなり大舞台からストーリーが始まる

オープニングムービーは劇場版の実写映像をふんだんに取り込んだものだ

筆者的には主人公級のアポロことカール・ウェザース。今,筆者と担当編集の間で,彼の出演する「俺は飛ばし屋!プロゴルファー ギル」というドラマが話題になっている
 ゲームは,この映画のアクションシーンだけを抜き出して,主人公のロッキーや,当初のライバルであり良きパートナーのアポロ(アフロ),クラバー(ミスター・T)やドラゴ(ドルフ・ラングレン)といったキャラクターを操作できる点をフィーチャーとし,鉄拳ライクなボタンによるコンボシステムで格闘ゲームらしくまとめた作品である。
 今回ロッキーのゲームを紹介するということで,そういや日本国内でも昔ロッキーのゲームがあったかなと真剣に考ようとしたが,面倒なのでGoogle様に聞いてみたところ,膨大な「ファミコンロッキー」(「ゲームセンターあらし」後継のクレイジー系マンガ)ファンページが表示された。たしかにロッキーの基本となる50連打(定規でも無理)や,超能力でカセットを"ずらし"て相手のファミコンを狂わせるという大技のような小技を延々と語るのも本連載の趣旨と違わず筆者もやぶさかではないが,生活もかかっているので,ここではやめておきたい。

 さて,そうなると筆者のボクシングゲームの思い出は,サントリー・ドライのCMと耳を噛むことで有名なマイク・タイソンをフィーチャーした「パンチアウト」('87年11月21日発売/ファミコン),そしてカクカクのポリゴンでありながら正直めちゃくちゃ面白かった「ボクサーズロード」('96年8月9日発売/PS)ぐらいと非常に情けない経験になるわけだが,このゲーム,先週第14回で紹介した「Def Jam:Fight for NY」同様に,キワモノ臭をプンプンと漂わせながらも格闘アクションゲームとしてのデキが良い。面白い。

 本作は,通常のコンボシステムやガード,カウンター,コンボを当ててゲージがたまると発動できる「Super Punches」や,体力が30%以下になると20秒間キャラクターが強まる「Fury Mode」など,格闘ゲームの定石ともいる機能を完備。ボクシングゲームらしくゴム人形をパコパコ叩いている感覚は非常に気持ち良いが,とくに面白いのがトレーニングのシステムだ。
 本作の通常モード「キャリアモード」は,ランカーと戦いながらトレーニングを行い,自らのランキング上げていくというものだが,このトレーニングモードではミット打ち,縄跳び,腹筋といったメニューを,連打ゲームやリズムゲームの感覚で楽しめる。
 しかも,その成功率によってキャラクターの成長度はガラリと変わってしまい,引きずられるようにゲームの難度も変わる(つまり,やり直しがきかない)という厳しい仕様なので,本作は本編とミニゲーム部分の両方に習熟しなければならないという硬派なゲームなのである。

 ストーリーモードでもあるキャリアモードでは,最初っからロッキー,アポロ,ドラゴといった主要メンバーを主人公として,その出自に合わせて場末のリングから,あるいは華やかなスポットライトが当たるリングからとスタート地点が変わるというこだわりぶり。版権は高そうなのにアテレコで実際の映画キャストを使っていないという中途半端ぶりも発揮しているが,筆者と同様に負け組から脱出したい人やゴロツキになりたくない人,またエイドリアンはあのとき本当に処女だったのだろうかと疑問を抱いている人などは,映画のコレクターボックスなどを注文しつつ,遊んでみてほしい。


一試合終えると,リプレイが見られる。しかもKOシーンは残像つきでカタルシスも満点だ。ちなみに一番右のレフェリーはリプレイで残像が残っているだけで,目にも止まらぬスピードでカウントをとっているわけではないので注意してほしい

ちょっぴり楽しい本作のトレーニング風景。プレイヤーの腕(リズム感)次第で,"縄跳びのできない世界ランカー"も生み出されてしまう。腹筋もしかりだ

キチンこういったコマンド表やコマンド再生機能がついている辺りが,本作が格闘ゲームとして作り込まれている証拠だ。画面右のように,ロッキー同士の同キャラ対戦もできる


(C)2004 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Ubisoft, ubi.com, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries. "Rocky"?"Rocky V" TM & (C)1976?2004 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. Developed by Venom Games Ltd.

■■Gueed(4Gamer編集部)■■
Gueedは「どう考えても,ロッキーよりアポロが主人公じゃないか」と,今回とてもうるさかった。それも彼のアフリカ系アメリカ人に対する憧れの強さゆえだと思うのだが,だったら「カール・ウェザース主演作「アクション・ジャクソン」を,10回早口で言ってみろ」と言ったところ,3回めくらいで早くもトチっていた。彼の憧れなど,所詮その程度である。みんなも10回,言ってみよう。

連載記事一覧

4Gamer.net