[COMPUTEX 2005 #02] ”真の”デュアルコアCPU,Athlon 64 X2発表
■1GHzもデュアルコアCPUもAMDが一番乗り
発表会場の様子。ステージにはF1フェラーリのパネルが
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COMPUTEX TAIPEI 2005の初日,5月31日にAMDはデュアルコアCPU「AMD Athlon 64 X2」を発表した。ラインナップは4800+,4600+,4400+,4200+で構成され,それぞれ動作クロックとL2キャッシュの容量で性能差が設けられている。詳しい仕様は後述しよう。 発表会はTaipei World Trade Centerの隣にあるGrand Hyatt Taipeiで盛大に開催された。会場内の装飾にはAMDがスポンサーを務めているF1チームのフェラーリがフィーチャーされており,AMDのイメージカラーである緑や黒とは正反対の,フェラーリカラーの赤を基調とした配色になっているのが印象的であった。「AMD64=F1フェラーリ=最速」という図式を連想させる意図であることは,説明するまでもないだろう。
写真左:AMDブースには,F1フェラーリの実車も展示されていた
写真右:F1ドライバーのヘルメットとF1マシンのリアウィングに,AMDのロゴがある。こんなに小さくても(場所がいいので)スポンサー額は相当なものらしい
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壇上で自信たっぷりのスピーチを展開する,AMDのセールス&マーケティング部門上級副社長,Henri Richard氏
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壇上に立ったAMDのセールス&マーケティング部門上級副社長,Henri Richard氏は「Athlon 64 X2は世界で唯一の,"真の"(true)デュアルコア64ビットCPUである」と述べ,競合インテルのPentium Dを揶揄しつつ,Athlon 64 X2の技術的な優位性をアピールした。 先に発表されたインテルのデュアルコアCPU,Pentium Extreme EditionやPentium Dは,一つのCPUパッケージ内でPrescottコアのPentium 4をただ二つ詰め込んだような構造になっており,端的に表現するなら"デュアルダイ"だ。それぞれのCPUの間の通信が,FSBクロックに制限されてしまう特性をそのまま引きずっている。 対してAthlon 64 X2では,一体成形された1ダイに二つのCPUコアが内包され,それぞれのCPUコアは非常に高速な内部バスで接続されるので,前述したボトルネックを持たない。AMDはこの部分の違いを指摘しているわけだ。 さらにRichard氏は「1999年に世界で初めて1GHz動作するCPUを世に送り出したのはどこだったか。AMDだ。そして2005年,本当のデュアルコアCPUを出せたのもAMDだった」と締めくくった。
■アップグレードは容易だが,価格がネック
ステージ上にAMD,マイクロソフト,チップセットメーカーなどのエグゼクティブが集結。AMDロゴに手を当てて忠誠を誓うのだが,チップセットメーカーが手を当てていないのは偶然か必然か
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Pentium Extreme EditionやPentium Dが独自の対応チップセットを必要とし,ひいてはマザーボードの買い換えが必要となるのに対して,Athlon 64 X2では,現行のSocket939ピンベースのマザーボードであれば,BIOSのアップデートのみで利用できるとされている。段階的なアップグレードを積み重ねていくことで高いパフォーマンスを維持し続けたいゲームユーザーからすると,Athlon 64 X2は理想的なCPUだ。 ただし,Athlon 64 X2は,現行のAthlon 64の上位ラインナップという位置づけになるため,かなり高価になる。簡単なスペックと1000個ロット時の価格は以下のとおりだ。
4800+■2.4GHz,L2キャッシュ1MB×2,11万110円 4600+■2.4GHz,L2キャッシュ512KB×2,8万8330円 4400+■2.2GHz,L2キャッシュ1MB×2,6万3910円 4200+■2.2GHz,L2キャッシュ512KB×2,5万9070円
ちなみにPentium Dだと,最上位モデルのPentium D 840/3.20GHzで1000個ロット時の価格は5万7180円。すでに店頭販売が始まっている最下位モデルのPentium D 820/2.80GHzだと,実勢価格は3万円前後と,単純にデュアルコアCPUが欲しいのであれば,Pentium Dのほうが求めやすい。なお,この点についてRichard氏は「確かにCPU単体で見ればそうだが,CPUだけではPCは動かない。Pentium Dは対応チップセット搭載マザーボードが必要なので,トータルコストはそれほど変わらない」とした。
■将来的にはデュアルコアのSempronやAthlon 64 FXも
Q&Aセッション時のRichard氏。もう,質問に答えるその表情からして笑み満面。Athlon 64 X2に自信アリ,だ
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発表会後にはQ&Aセッションが開かれ,ここでは将来的なAthlon 64 X2のロードマップについての話題が数多く取りあげられた。非常に興味深い内容もあったので,最後に抜粋して示しておきたい。
[Q]Sempronのデュアルコア版は出るのか [A]計画はある。だがそれが姿を現すのは,おそらくCeleronが同様のソリューションを示すころだろう(笑)。彼らより一週間先になるか,後になるかは大した問題ではない。
[Q]Intelは「プロセッサナンバ」を採用したが,AMDは"ペンティアムレイティング"ともいわれるPR値(Processor Rating,「モデルナンバ」ともいう)表記を続けるのか [A]車には馬力表示という分かりやすい性能表記の指標がある。これに相当するのがPR値であり,この値はユーザーに非常に便利に認知されている。例えば近い将来,Athlon 64に5000+というPRが与えられるとしよう。もちろんPentium 4に5GHzの製品はないわけだが,それはそれとして,「5000+はすごく速い」ことがユーザーに伝わる。だから当面はこれを活用していきたいと思っている。
[Q]IntelはプラットフォームのメモリシステムをDDR2に移行完了した。AMDは? [A]AMD64アーキテクチャでは,最大パフォーマンスを追求するOpteronブランドから移行を開始することになるだろう。いつからかは言えない。
[Q]今は少数派だが,すでにマルチスレッド対応のゲームエンジンも登場しつつある(「こちら」)。3Dゲームユーザー向けのCPUとして,シングルコアのAthlon 64 FXシリーズを推しているのは分かるが,将来的には,どのようになると考えているのか。 [A]実はすでにいくつかのゲームスタジオとタイアップし,マルチスレッドに対応したゲームエンジン開発の技術サポートを行っている。事がうまく運べば,来年内にこれに関連したアナウンスができるだろう。ただ,ゲームエンジンというものは開発期間が長いため,短期的にすべてのゲームエンジンがデュアルコアを要求するようにはならないだろう。当面はシングルコアのAthlon 64 FXが,最適なソリューションとなるはずだ。多くの3Dゲームがマルチスレッド対応となった暁には,デュアルコア版Athlon 64 FXをリリースすることだってあり得る。
(原稿,写真とも:トライゼット 西川善司)
写真左:AMDでは「Shatters The Hourglass」(砂時計を粉砕せよ)をキーワードにしてデュアルコアを強力に推進する。これはWindowsにおける"待ち"のときに表示される砂時計マークをなくせ……という意味だ
写真中:発表会で展示されていた,MSI製マザーボードによるAthlon 64 X2実動作デモ
写真右:同じく,こちらはGIGA-BYTE製マザーボードによるAthlon 64 X2実動作デモ
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写真左:DVD-VideoとWMV HDの動画を同時再生して,その負荷を比較。比較相手は同クラスのシングルコアAthlon 64だ
写真中:CPUメーターを見ると,シングルコア(上)では負荷率100%で苦しいのに対し,デュアルコア(下)では60%に留まっている
写真右:会場内を徘徊するAMDサンドイッチマン。なぜか一貫してアフロヘアーだ
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Athlon 64 |
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