来るべきIntelとの勝負に向け,製造キャパシティを強化するAMD
AMDのDaryl Ostrander上級副社長
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AMDの製造部門を統括するDaryl Ostrander(ダリル・オストランダー)製造・テクノロジ担当上級副社長が来日。2006年4月18日に,AMDの製造部門に関する報道関係者向け説明会を行った。 AMDは昨年の10月,ドイツのドレスデンに新しい工場「Fab36」を完成させるなど,製造キャパシティの強化を図っているとのこと。今回は,ゲーマーにとっても決して無関係ではないAMDの戦略,そしてそれを下支えするAMDの製造部門の現状などに関してレポートしていきたい。
6月のCOMPUTEXでSocket AM2と AMD Live!の立ち上げを発表するAMD さて,2006年におけるAMDのハイライトがいつかと問われれば,筆者は「6月6日から台湾で開催される予定のITトレードショー『COMPUTEX TAIPEI 2006』だ」と答えることになる。 それは――AMDのOEM先となるPCメーカー筋の情報によると――AMDはCOMPUTEX TAIPEI 2006で,同社が「Socket AM2」(AMDのM2ソケットの意)と呼ぶ,新しいCPUソケットに対応したAthlon 64 FXとAthlon 64 X2を発表する予定になっているからだ。
Socket AM2を採用したマザーボード(ASUSTeK Computerの「M2R32-MVP Deluxe」)。Socket AM2はこれまでのSocket939から1ピン増えた940ピン仕様となる
※クリックするとマザーボード全体を表示します
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Socket AM2世代のAthlon 64 FX/X2では,サポートされるメインメモリが従来のDDR SDRAMからDDR2 SDRAMに変更される。また,CPUコア自体も,現行の「Rev.E」(リビジョンE)から,「Rev.F」(リビジョンF)と呼ばれる最新ステップに切り替えられることになる。 Rev.Fはプロセスルールこそ90nmで,Socket939版Athlon 64シリーズと変わらないが,新たに開発コードネーム「Pacifica」(パシフィカ)という仮想化技術に対応。「VMWare」などのソフトウェアと組み合わせて利用すると,より安定した仮想化環境を利用できるようになる。Pacificaは,ゲーマーに直接的なメリットをもたらすものではないが,Windows XPでは動作しないような昔のゲームタイトルを,仮想化した(バーチャルな)PCにインストールした過去のOS上で,より安定して動作させられるようになる,という利点はある。
また,AMDは同時に,2006年1月に開催された2006 International CESというイベントで発表された「AMD Live!」というブランドについても,“お披露目”を含めた詳細を発表する予定になっている。 AMD Live!は,IntelのViivテクノロジ対抗であること以外,明らかになっていないが,Viivがゲームメーカーを巻き込んで展開している以上,AMD Live!の存在を無視するわけにはいかないだろう。
■2008年では年間で1億個のCPUを製造可能に
Ostrander氏が示したスライドの1枚。Fab36では2006年後半に65nmプロセスが立ち上がり,2008年中に45nmへ移行することが示されている
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こうしたAMDのロードマップを下支えするのが,好調の伝えられる製造部門だ。今回来日したOstrander氏は,この製造部門のトップで,AMDの製造関連部門はすべて同氏の管理下にある。
AMDは世界中にいくつかの工場を持っているが,AMDの本業であるCPUダイの製造を担当しているのは,先述したFab36と,Fab36に隣接するFab30の二つだ。 Fab30は,AMD設立30年めとなる1999年に完成したことから名付けられた,200mmウェハ(ウェハとは,CPUダイを切り離す前の板のこと。詳細については本誌連載「ソフトにハードの物語」第2回を参照してほしい)の製造を担当する工場だ。現在市場に出回っている,Athlon 64やSempron,OpteronといったAMD製CPUは,ほぼすべてがこのFab30で製造されたウェハから採れたCPUダイを利用している。
2006年4月現在,Fab30では90nmプロセスを利用しているが,Ostrander氏によれば,現時点でウェハは月産3万枚が可能で,半導体工場の性能指標となる,歩留まりとサイクルタイムのどちらも,他社の半導体工場と比べて優れた結果を出し続けているという。
Fab30における歩留まりとサイクルタイムを説明するスライド。歩留まりとは、製造したうちで何個が実際に製品として利用できたかを示す率で,サイクルタイムは,工場が製品を製造するのにかかる時間を示す。前者は高ければ高いほど,後者は短ければ短いほど,効率のいい工場であることを示す。つまりFab30は,半導体工場としてかなり優秀な結果を残していると,AMDは主張しているわけだ
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そして,AMD設立36年めとなる2005年10月に完成したFab36(36個めの工場という意味ではないので注意)は,より直径の大きい,300mmウェハを製造できるのが特徴だ。300mmウェハは直径が200mmウェハの1.5倍あるので,1枚のウェハから取れるダイの数を飛躍的に増やせる。ちなみにOstrander氏は「AMDはすでに2006年第1四半期からFab36において90nmでCPUの製造を開発しており,第4四半期には,65nmプロセスルールへの移行を開始する」という。
AMDでは、プロセスルールをIBMと共同で開発している。そのパートナーシップは2011年まですでに確定しており、技術力に定評のあるIBMとの協業はAMDのアドバンテージとなる
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また,AMDはプロセスルールを共同で開発しているIBMとのパートナーシップを強化している。AMDとIBMは,2011年まで共同でプロセスルールの微細化を進めていく契約を交わしており,「今後は45nm世代あたりで,同じ技術を共有していくことになっていく」(Ostrander氏)。 IBMのプロセスルールは,プレイステーション3などで採用されるCPU「Cell」でも明らかになっているように,低消費電力技術で定評がある。この点は今後,AMDの強力な武器となる可能性がありそうだ。
さらにAMDは,IBMの子会社であるChartered Semiconductor Manufacturing(以下Chartered)のシンガポール工場で,AMDのCPUを委託生産する契約をすでに締結済み。Ostrander氏は「2008年には,Charteredで製造される分も入れて,2005年の製造量の倍,年間1億個のCPUを製造可能になる」と述べ,今後,Intelとの競争の中で,AMDの市場シェアが増大していっても,それを賄えるだけの製造能力的裏付けがあると強調した。
65nmプロセスルールは今年の後半に立ち上げを開始する。さらに2007年には65nmへの移行を完了し,2008年にはCharteredの生産分を含めて,年間1億ユニットの出荷を目指す
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■日本市場では低消費電力版のAthlon 64 X2にも期待
AMDに関しては,とくに日本市場向けに注目すべき動向がある。それは,低消費電力版Athlon 64 X2だ。 AMDの低消費電力CPUといえば,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が低いこともあって,日本では自作派を中心に注目を集めている,Turion 64 Mobile Technology(以下Turion 64)がある。AMDはTurion 64のデュアルコア版となるTurion 64 X2を2006年後半にリリースする予定なのだが,さらに“Turion 64 X2のデスクトップ版”,つまり,TDP 35W,あるいは65Wといった,低消費電力版のAthlon 64 X2をリリースする計画があるようなのだ。
もちろんその場合には,通常版のAthlon 64 X2に比べて低いクロックや電圧で駆動されることになるので,性能面ではAthlon 64 X2に比べて低くなる可能性が高い。3Dゲームをバリバリプレイするタイプのゲーマーには向かないだろう。ただ,そこまでのパフォーマンスを必要としないゲームのプレイヤーにとって,小型の省電力PCを実現できるCPUは魅力的なはずである。 その意味で,ゲーマーとしても,AMDの低消費電力路線の動向には注意を払っておきたい。(笠原一輝)
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Athlon 64 |
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