[COMPUTEX 2006#10]ASUSTeKに聞く「PhysX PPUの今後」
Sean Lai氏(Product Manager, ASUSTeK Computer)
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ゲームにおける物理シミュレーションを可能にするプロセッサ「PhysX PPU」。搭載製品が発売されてしばらく経ったが,価格の高さがネックとなり,大ヒットと呼べる状態にはなっていないようだ。ではこのあたり,“作って売る側”はどう考えているのだろうか? COMPUTEX TAIPEI 2005で,PhysX PPUの取り扱いを公言していた,ASUSTeK Computer(以下ASUSTeK)のグラフィックスカード部門プロダクトマネージャ Sean Lai(シャーン・ライ)氏に,わずか20分という短い時間ながら,いろいろ聞いてみた。
4Gamer.net: お久しぶりです。さっそく質問させてください。あなたは昨年のCOMPUTEXで,2005年中にPhysX PPU搭載カードが出ると言っていましたよね。にもかかわらず,発売は2006年春にまで遅れ,日本ではまだ発売されていません。この理由は何ですか?
Sean Lai氏: 1年ぶりですね。質問に答えると,対応ゲームがなかったからです。「Tom Clancy's Ghost Recon: Advanced Warfighter」の発売を待っていた,とも言えますね。全世界では,同タイトルの発売1週間後にカードを発売しました。
4Gamer.net: まだASUSTeK製品が発売されていない日本は別として,世界規模では,PhysX PPU搭載カードの苦戦が伝えられています。
Sean Lai氏: いや,そんなことはありません。5月上旬に発売されてから,週ごとの売り上げレポートを入手していますが,売れ行きは順調ですよ。この1か月で,数千枚。ほぼ予想どおりです。
ASUSTeKブースにおける搭載カードのデモ。こうして見ると派手に感じられるかもしれないが,現実には「ただ動かしているだけ」で,案外地味な雰囲気だった
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4Gamer.net: その数字って,ASUSTeKという会社の規模からすると,少ないですよね。今後に不安はありませんか?
Sean Lai氏: まったく心配していません。これからMicrosoftにNCsoftといった大手パブリッシャの対応ゲームが出てきますし,それに,「Unreal Tournament 2007」(以下UT2007)もありますからね。これから,コンテンツは増えていきますよ。
4Gamer.net: 分かりやすいベンチマークテストが存在しないため,ユーザーの認知が今一つ上がらない現状をどう考えていますか? 3DMark06のCPU Testsでは,PhysXライブラリは使っていますが,PhysX PPUを利用してもスコアはまったく上がらないという現実があります。
Sean Lai氏: 3DMark06のPhysXサポートはソフトウェアですからね。FuturemarkがWindows Vistaの発売に合わせて投入する「3DMark07」では,PhysX PPUが大きな意味を持つようになるでしょう。あと,分かりやすいベンチマークという意味では,AGEIA Technologiesが近々,「CellMark」を投入する予定ですね。
4Gamer.net: CellMark!? 初耳ですけど,それは「Cellfactor: Combat Training」ベースですか?
Sean Lai氏: ええ。PhysX PPUの差さっていないPCでもCPUによるソフトウェア処理で動きますから,PhysX PPUのあるなしでどれだけ変わるか,分かりやすくなると思いますよ。
4Gamer.net: ゲームに関しても聞かせてください。先ほど,具体的なパブリッシャやゲームタイトルの名前が挙がりましたが,「GRAW Edition」の次にくる,具体的なバンドル戦略はあるんですか? それこそ今年中に,UT2007をバンドルした製品が出てきたりとか。
Sean Lai氏: UT2007を今年中にバンドルする……間に合わないなあ(笑)
4Gamer.net: その笑いが気になりますが,時間もないのでこれ以上突っ込まないでおきましょう。 ハードウェア的な拡張の可能性についてはいかがです?
Sean Lai氏: いつかはハードウェア的な拡張をする必要があるでしょうが,それは今ではないですね。
4Gamer.net: それこそASUSTeKは,メモリ256MB版の取り扱いをすでにアナウンスしていますよね。もっといえば,現在出荷中の「PhysX P1 GRAW Edition」は,メモリを256MB搭載しているのに,128MBしか使っていない。あのあたりには,今後のハードウェア的な拡張に向けての何かがあるように思うのですが。
Sean Lai氏: 現在のリビジョンのPhysX PPUは,メモリを128MBしか扱えないんですよ。
4Gamer.net: なんと!
Sean Lai氏: それも含めて,やはり,ハードウェア面における何らかの拡張は,PhysX PPUに最適化されたビッグタイトルの登場タイミングに合わせる必要があると思います。その必要が生じるまで,何か拡張を加える予定はありませんよ。安心してください。
――回答に対して,いろいろ突っ込んで聞いてみたいところが何か所もあるうえ,こちらとしても質問はさらにいくつか用意していたのだが,残念ながら時間の都合で今回はここまで。とはいえ,いろいろ初耳の話も出てきており,「発売して終わり」ではなく,今後もいろいろありそうな気配を感じられたのは収穫だった。 COMPUTEX TAIPEI 2006終了後に,改めて時間を作ってもらうよう頼んできたので,これに関しては続報に期待してほしい。(佐々山薫郁)
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