[COMPUTEX 2006#16]C-Media,ワイヤレスサウンドデバイスを公開 「寝転がって,部屋のスピーカーで音を聞きながらゲーム」がまもなく現実に
サウンド関連のチップメーカーとして知られるC-Media Electronics(以下C-Media)は,COMPUTEX TAIPEI 2006に合わせて,隣接するホテル「Grand Hyatt Taipei」でクローズドブースを開設。ワイヤレスサウンドデバイスとでもいうべきサンプル「Wi-Sonic」を展示していた。実際の製品が店頭に並ぶのは若干先の話になりそうだが,とにもかくにも,現時点で判明した情報をお伝えしたい。
Wi-Sonicのサンプル「CMWS-01」
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さて,Wi-Sonicについて簡単に説明すると,無線LANを利用してPCからサウンドデータを受け取り,それをアナログ/デジタルで出力する装置だ。 実は,このアイデアに基づく製品はこれまでも「AirMac Express」や「Wireless Sound Blaster」などいくつか登場している。だが,これまでの製品では,専用の再生ソフトを利用しなければならなかったり,特定のサウンドフォーマットにしか対応していなかったり,スピーカーと一体の“ミニコンポ”タイプだったりと,何かと制約が多かった。これに対してWi-Sonicでは,まず,ソフトウェアやサウンドフォーマットの制約がない。つまり,ゲームのサウンドも出力できるというわけである。
Wi-Sonicの接続イメージ
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■Realtekとの台湾チップメーカーコラボによるWi-Sonic
「RTL」で始まる型番のものが,Realtek製のネットワークコントローラ群。基本的にはIEEE 802.11b/gで接続する仕様だが,有線LANによる入力もサポートされている
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右は,Wi-Sonicのブロックダイアグラムだ。Wi-Sonicは,C-Mediaと同じ台湾のネットワーク関連デバイスメーカー,Realtek Semiconductor(以下Realtek)との共同開発とされており,無線LAN周りをRealtekが,サウンド周りをC-Mediaが担当している。 ちなみにWi-Sonicが採用するC-Media製サウンドチップ「CMI 8769」は,Dolby Digital Live/DTS Connectの認証を取得済み。サウンドデータをリアルタイムエンコードでデジタルストリームに変換し,光角形端子からデジタル出力可能。AVアンプなどのAVレシーバーがデコードに対応していれば,仮にゲームや音楽のサウンドが2chステレオでも,5.1chスピーカーシステムでサウンドを楽しめるというわけだ。
デジタルストリーム出力関連設定項目。エンコードに利用する方式ごとに項目が用意されており,ユーザーのいる場所に合わせて,仮想的に各スピーカーの場所を指定する(=各スピーカーユニットの出力を調整する)こともできる
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ドライバ側でバッファ設定項目を持つ(※クリックすると全体を表示します)
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ドライバ側には,無線LANによるデータの送信ミスに対処するためのバッファ設定(≒Wi-Sonicから出力するまでの遅延時間設定)が用意されており,Movies(100ms)/Games(200ms)/Music(1s)のプリセットから選択できる。ゲームの場合,ゲーム内の動きとサウンドは同時に処理される必要があるが,完全に同時の処理は理論上不可能なので,標準では0.2秒(200ms)の遅延時間が設定されているというわけだ。 もちろん,手動設定項目も50〜3000msの範囲を任意で設定できるが,値を低くしすぎると,動きの激しいゲームでは音が再生されないといった問題の生じる可能性がある。
クローズドブースでは,実際にデモを見ることができた。そこでは,無線LAN対応のノートPCから直接Wi-Sonicに接続していたが,ハブ/ルーターを介した接続も可能とのことだ。 今回のデモは,ゲームのサウンドを無線LANでWi-Sonicに飛ばし,PCMデータを光デジタルケーブルで5.1chスピーカーシステムに送るというもの。PCの3D性能が今ひとつとのことで,ずいぶんと古いタイトルである3人称視点アクションRPG「Crusaders of Might and Magic」を使ってのデモだった。 デモ時のバッファは200ms設定で,この状態だと,アクションシーンでは,画面と音がややズレている感じを受ける。やはり0.2秒の遅延というのは,アクション性の高いゲームだとつらい印象だ。ただ,一方でゲームのBGMや,歩いているときの効果音などに違和感はない。
デモの様子。さすがに全体は撮影しきれないが,左の写真右手にあるノートPCでゲームをプレイ中。このとき,無線LANを利用して,写真中央のWi-Sonicユニットにサウンドデータは転送され,そこからデジタル伝送で5.1chスピーカーシステムに送られ,出力されるという流れだ。写真左の液晶ディスプレイは無関係。右の写真は,ノートPCとWi-Sonicユニットの間に“ワイヤー”がないのを確認したカットである
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全体的には,まったり系のオンラインゲームなどをノートPCでプレイするような場合には,かなりアリと感じた。部屋にあるオーディオ用スピーカーやAVシステムとWi-Sonicを接続しておけば,ノートPCでゲームをプレイする場合,プレイヤーは好きな場所で,ノートPCの貧弱なスピーカーなどを利用せずにゲームをプレイできる。もちろん,その状態で,ムービーを見たり音楽を聴いたりすることも可能だ。
Josephine Lin氏(International Sales Manager, Sales & Marketing Dept.,C-Media)
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C-MediaのインターナショナルセールマネージャーであるJosephine Lin氏によれば,Wi-Sonicを実現するコンポーネントはすでに完成しているとのこと。これから,C-MediaやRealtekのサードパーティ各社によって,実際の製品が発売される予定で,すでに何社かが開発をスタートさせているとのことだった。早ければ2006年中にも製品は登場する見込みだ。 なお,採用製品の店頭価格は99〜129ドルになる予定。他社の“動作上の制約付き”製品とほぼ同じような価格になるわけで,汎用性を考えるとなかなか面白そう。ノートPCゲーマーは,Wi-Sonicという技術の存在を,記憶に留めておくといいかもしれない。(佐々山薫郁)
左:デモ機の入出力インタフェース。ミニピンによるアナログ5.1ch出力をサポートしているのも見て取れる
右:サードパーティが開発中のWi-Sonic搭載製品
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