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「PCゲーマーを増やしたい」 NVIDIAに聞く「THE WAY」創刊の目的
2007/06/19 13:03
THE WAY日本語版創刊号
 NVIDIAが,PCゲームや同社製品を紹介する無料マガジン「THE WAY」の日本語版を創刊し,第1号の配布を始めてから1か月半。4Gamer読者のなかにも,すでに手に取って読んだ人は多いと思う。
 2007年4月27日の記事でお伝えしたとおり,THE WAY自体は北米などですでに発刊済み。英語版は通巻11号を数え,海外のPCゲーマーにはかなり知られた存在だが,日本では馴染みの薄いこの無料マガジンを国内で発刊した意図は何なのだろうか。今回は,NVIDIA米国本社のコンテンツリレーションズ事業本部/アジア太平洋 部長で,THE WAY日本語版の責任者でもある飯田慶太氏に,その真意を聞いてみた。

■THE WAYによってPCゲーム市場の拡大を図る

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まず最初にお聞きしたいのは,THE WAYとは誰に向けた無料マガジンなのかという点です。少なくとも,配布開始時点ではどのゲーム媒体にも載っていなかった情報が出ていたりする一方で,網羅的にゲームを紹介しているわけではありません。100%ゲーマー向け,というわけではない気がするのですが。

飯田慶太氏(NVIDIA コンテンツリレーションズ事業本部/アジア太平洋 部長)
飯田慶太氏:
 一般的なゲーム雑誌と言うと,ゲームの攻略法やアップデートやリリース情報といった記事が中心になりますが,ご指摘のとおり,THE WAYはそれらとは大きく異なっています。これは,THE WAYでは「PCゲームとハードウェアのリンク」が主題になっているからですね。

4Gamer:
 ゲームとハードのリンク,ですか。

飯田慶太氏:
 例えば,日本語版創刊号ではDirectX 10にフォーカスして,「対応GPUを利用すると対応ゲームで表現力豊かな画面描写が得られる」ということをメインテーマに据えています。
 PCゲーマーに読んでいただきたいのはもちろんですですけれども,それ以上に,これまでPCゲームを遊んだことのないようなユーザーに読んでいただきたいと考えています。

4Gamer:
 それは,例えばハイエンドのグラフィックスカードを買って,3DMarkなどのベンチマークを実行してみているといったユーザーのことですか? 日本だと,かなりの数に上りそうな気がしますが。

飯田慶太氏:
 そういったユーザーが多いのは日本市場の特色ですね。ハイエンドな環境を持っているにもかかわらず,これまでゲームをプレイしてこなかった人達が,THE WAYでPCゲームに興味を持ってもらえればと思います。
 ただ,ハイエンドな環境を持つ人達だけが対象ではありません。

4Gamer:
 エントリー層も対象になってくる?

日本語版創刊号ではWindows Vistaへのアップグレードが特集された
飯田慶太氏:
 弊社の調査によると,アンチエイリアシングなど,グラフィックスエフェクトを掛けずに,いわゆる標準設定でPCゲームをプレイしているユーザーが非常に多いんですね。そういった,最近PCゲームに初めて触れた人達に向けて,「○○というGPUを使えば,これくらい負荷の高い描画設定を行っても快適にプレイできる」といった具体的な指標を,THE WAYでは今後提供していく予定です。
 ハードウェアを加味した具体的な情報は,GPUやチップセットを手がけると同時に,多くのPCゲームデベロッパと開発で提携しているNVIDIAだからこそ,できるものと自負もしていますし。

4Gamer:
 まったくPCゲームをしていない人や,本当にごく最近,PCゲームに初めて触れたような人なども,ぜひともターゲットにしたいと?

飯田慶太氏:
 ええ。THE WAYを配布している場所を考えてみてください。ゲーマーにだけ訴求するのであれば,PCゲーム売り場にあればいいのですが,今回NVIDIAでは,量販店のPC売り場や,PCパーツショップでも配布して,これまでPCゲームをプレイしたことがほとんどない人達へ,PCゲームを紹介するというスタンスを採っています。

4Gamer:
 しかし,なぜ紙媒体なのでしょうか? 初回の刷り部数は6万部と聞いていますが,それでも,規模で考えればWebのほうがはるかに有利なはずです。とくにNVIDIAの場合,PCゲーマー向けのサイト,「nZone」がありますよね。あれを日本語化するというやり方もあったように思うのですが。

nZoneについて話が脱線したときのことだが,同サイトにあるβ版は“いわゆるβ版”とは少々位置づけが異なり,いち早く最新のゲームに対応した,ゲーマー向けバージョンとしての側面があるという。そう聞いて,見方が変わった人もいるのでは?
飯田慶太氏:
 nZoneは――現在ワールドワイドで新規ユーザー数が毎月700万人にも達している人気サイトですが――確かに,ハードウェアの側面からPCゲームの情報を提供していますから,その意味ではTHE WAYとよく似ています。
 しかし,nZoneは対象としているユーザー層がハイエンドとなっていますし,βドライバの提供などを行っています。そのため,これからPCゲームを始めようとしているユーザーもカバーするTHE WAYとは,ターゲットとする範囲が大きく異なるわけです。

4Gamer:
 なるほど。

飯田慶太氏:
 スタンスも異なりますね。先ほど述べたように,THE WAYは,(大なり小なりの)ショップへPCやパーツを購入しに来る人達にPCゲームを紹介するための存在ですが,nZoneは,PCゲーマーが自発的にアクセスするサイト,といったところでしょうか。

4Gamer:
 コストの面ではどうなのでしょう? 無料マガジンということで「次もちゃんと出るの?」と心配する人もいると思います。

飯田慶太氏:
 THE WAYに関しては,例えば広告収入などといった,“それだけで利益が出るようなビジネスモデル”は考えていません。コストうんぬんよりも,店頭で情報発信することを重視していますから。
 「THE WAYをもらいに行く」ことが,ショップへ足を運ぶ理由の一つになって,さらに,THE WAY自体が,弊社のGPUを搭載したパートナー製グラフィックスカードのマーケティングツールとして作用し,売り上げにつながってくれれば最高です。

4Gamer:
 そういう方向であれば,“1号出しておしまい”にはなりようがありませんね。安心しました。

飯田慶太氏:
 エンドユーザーさんだけではなく,PCゲーム市場の拡大が図れるとして,ハードウェアメーカーやPCゲームメーカーからも好評をいただいていますし,今後も定期的に刊行していくつもりです。
 創刊号では,GPUやマザーボードなどの紹介に留まっていますけれども,例えばPCゲームにおけるディスプレイの重要性を考えると,次号以降のTHE WAYで高解像度の液晶ディスプレイなどを紹介することも検討しています。ボーナスシーズンなどのタイミングを見計らう必要があるので,次はいつといったように,時期は明言できませんが……。

4Gamer:
 ボーナスシーズン,で十分ヒントになりますね(笑)
 ところで,先ほど「足を運ぶ」という話が出ましたが,地方在住の読者から「近くのショップに行ったけど,THE WAYが置いてなかった」という声がいくつか寄せられています。このあたり,現状はどうなっていますか?

飯田慶太氏:
 第1次配布は,全国の主要都市をカバーしました,6月中には,ほぼ同じ数を第2次配布として,第1次でカバーできなかった都市にも配布する予定です。

4Gamer:
 ありがとうございました。最後に4Gamer,そしてTHE WAYの読者へ向けてメッセージをお願いします。

飯田慶太氏:
 今回制作したTHE WAYは,良いハードウェアと良いPCゲーム,そしてプロモーション時期の妙が重なり,結果としてかなりいい出来になったと自負しています。
 今後,日本においてPCゲーム市場が拡大していくのは間違いないでしょうし,NVIDIAが提携を行なっているPCゲームデベロッパやパブリッシャの開発環境も目まぐるしい進歩を遂げています。私は立場上,さまざまなPCゲーム開発の現場を見てきていますが,今から2年後のPCゲームを考えるとどんな素晴らしいものが出来上がるのか期待で胸がいっぱいなほどです。そういった素晴らしいPCゲームを,THE WAYを通してユーザーのみなさんにお伝えしていきたいと考えていますので,期待していてください。


 ……NVIDIAは極めて明確な意図を持ってTHE WAYを創刊した。少なくとも,「ちょっと始めてみる」といった感じでスタートしたわけではないことが分かったのは収穫だった。
 そもそも,PCゲーマーの裾野を広げるという壮大(?)なテーマである。どんなに大きな企業であっても,一社で成し遂げるのは相当なチャレンジになるはずで,NVIDIAがその強みを生かして,国内ゲームメーカーとハードウェアメーカーを同時に巻き込んでいる点は,素直に評価されてしかるべきではないだろうか。
 いずれにせよ,飯田氏の言葉を素直に受け取るなら,THE WAYという無料マガジンは,それ自体の成功/失敗を語ることに,そう大きな意味はない。THE WAYを媒介に,PCゲーマーの裾野が広がってい(き,NVIDIAのGPUやチップセットが売り上げを伸ばしてい)くことこそが,NVIDIAの目的なのだ。そのためのツールとして,THE WAYが有効に機能すること,有効に機能するような誌面構成が実現されることを大いに期待したい。

 ちなみにインタビューには入れていないが,飯田氏は,nZoneの日本語化にも意欲を見せていた。ハードコアゲーマー諸兄諸姉は,こちらを楽しみに待つといいかもしれない。(ライター:宮崎真一)


そのほかのハードウェア
■開発元:各社
■発売元:各社
■発売日:-
■価格:製品による

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