AMD,TDP 89W版Athlon 64 X2 6000+を発表。使い勝手をチェック
Athlon 64 X2 6000+(TDP 89W版)
日本AMDによる参考価格:2万5000円
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AMDの日本法人である日本AMDは,2007年8月31日9:01AM,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)89W版の「Athlon 64 X2 6000+/3.0GHz」を発表した。同CPUは,2月20日にTDP 125Wで発表,販売されたAthlon 64 X2 6000+/3.0GHzの,いわば低消費電力版に当たるもの。日本AMDによれば,このTDP 89W版は日本国内のユーザーから寄せられた強い要望に応えた日本限定モデルとのことだが,果たしてどこまで扱いやすいCPUになっただろうか? 今回4Gamerでは,日本AMDからTDP 89W版(OPN:ADA6000IAA6CZ)を借用できたので,Socket AM2ベースのゲーム用PCに向けたアップグレードパスとしての可能性をチェックしてみたい。
■90nm SOIプロセスで製造される「Windsor」コア ■TDP以外の仕様は従来製品と同じ
今回リリースされたTDP 89W版Athlon 64 X2 6000+だが,3.0GHzの動作クロックや,L2キャッシュ容量が1コア当たり1MBとなっている点,90nm SOIプロセスで製造される,いわゆる「Windsor」(ウインザー)コアのCPUである点も含め,TDP以外の仕様は従来のTDP 125W版とまったく同じだ。今回は日本AMDのほか,販売代理店である日商エレクトロニクスとファストの協力でTDP 125W版も用意して,下に「CPU-Z 1.40.5」の実行結果を示したが,CPUのステッピングやリビジョンすら,TDP 125W版から変わっていない。
TDP 89W版(左)とTDP 125W版(右)で,それぞれCPU-Zを実行した結果
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そんななか,唯一違いを確認できるのが,CPUコア電圧だ。スクリーンショットを拡大して見てほしいと思うが,TDP 89W版は1.392Vなのに対し,TDP 125W版は1.440Vとなっている。 CPU-Zによるコア電圧表示の信頼度はいま一つということもあって,CPUが内蔵するサーミスタの温度を直接表示できるモニタリングツール「CoreTemp」を用いてみると,TDP 89W版は1.35V,TDP 125W版は1.4Vで,やはりコア電圧が下がっている。冒頭で「いわば低消費電力版」と述べたが,低電圧化している以外には,どうやらまったく違いがない模様。日本AMDから提供された資料によれば,TDP 89W版のトランジスタ数は「Athlon 64 X2 6400+/3.2GHz」と同じ2億4300万個(※TDP 125W版は2億2740万個と発表されている)なので,TDP 125W版からコアに何らかの手が入れられているのは確かなようなのだが,「いつの間にかWindsorコアが若干シュリンクしていた」可能性もある。ゲーマーの立場からすると,“TDP 89Wの選別品”という理解で問題なさそうな気配だ。
では,コア電圧の低下は,扱いやすさにどれだけの違いをもたらしているだろうか。今回は消費電力とCPUのコア温度を中心にチェックし,念のためベンチマークレギュレーション4.0から「3DMark06 Build 1.1.0」(以下3DMark06)と「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」の体験版(以下ロスト プラネット)を利用して,性能に違いがないかも確認してみることにしたい。 なお,ベンチマークレギュレーションの最新版は4.1だが,今回は時間の都合で,Steamからのクライアントダウンロードが間に合わなかったため,4.0準拠としている。この点はご了承を。 このほかテスト環境は表のとおりだ。
■高負荷時に40W以上もの消費電力低減を実現 ■CPUコア温度も比例して低下
さっそく,気になる消費電力の検証から行ってみたい。 ここでは,OSの起動後30分間放置した直後を「アイドル時」,CPUだけに負荷を掛けるべく,MP3エンコードソフト「午後のこ〜だ」をベースとするベンチマークソフト「午後べんち」を30分間実行した状態を「高負荷時」とする。Athlon 64 X2 6000+は,省電力機能「Cool’n’Quiet」(以下CnQ)をサポートするため,アイドル時についてはCnQ有効の場合と無効の場合のそれぞれで消費電力を確認することにし,それぞれにおけるシステム全体の消費電力をワットチェッカーで計測した。その結果をまとめたものがグラフ1である。
これを見ると,CnQ無効時の違いが大きいと分かる。アイドル時でも,TDP 89W版はTDP 125W版より20W程度低く,高負荷時には40Wもの差が生じている。期待どおりのスコアが出ているといっていいだろう。
続いて,グラフ1におけるそれぞれの時点におけるCPUコア温度を,前出のCoreTempで計測した結果をグラフ2にまとめた。CPUクーラーは,Athlon 64 X2のリテールボックス付属のものを利用しており,テスト環境はPCケースに組み込んでいない,バラックの状態となる。
さて,CPU温度は消費電力のテスト結果を踏襲したものになっており,CnQ無効時で比較すると,アイドル時で8℃前後,高負荷時で10℃以上,TDP 89W版のほうが温度は低い。とくに高負荷時のCPU温度は,TDP 125W版が80℃に達したのに対し,TDP 89W版は70℃を切っており,静かに運用するには実用的な温度になっているといえる。
消費電力やCPUコア温度と違い,スペック的には変わらないTDP 89W版とTDP 125W版。パフォーマンスに大きな変化はないと思われたが,果たして3DMark06の総合スコア(Game Tests)とCPUスコア(CPU Score),あるいはロスト プラネットのCaveにおけるフレームレートに差はなかった(グラフ3〜5)。「Core 2と比べてどうか」といったあたりは,TDP 125W版のレビュー記事を参照してもらえればと思う。
日本AMDによるTDP 89W版Athlon 64 X2 6000+の参考価格は2万5000円。同社によれば,本日中にもPCショップで販売が始まるとのことなので,数時間も待てば実勢価格が見えてくると思われる。
一方,8月31日時点におけるTDP 125W版Athlon 64 X2 6000+の実勢価格は2万3000円前後なので,仮に日本AMDの想定どおりの価格で店頭に並ぶとすれば,2000円が「TDP低下分のプレミア」となる。これを高いと感じる人もいるだろうが,Athlon 64 X2 6000+の弱みであった高消費電力が解消されたことを考えると,選択するだけのメリットは相応にあるといえそうだ。Socket AM2プラットフォームのPCをゲーム用途で使っている人にとって,“TDP 125Wではない”ハイクラスCPUの選択肢が増えたことは,素直に歓迎すべきではなかろうか。(ライター:宮崎真一)
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Athlon 64 |
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