1週間におよぶ出張と,不眠不休の4日間で臨んだE3 2005取材も,一段落ついた。初日に会場が停電したり,(毎年のことだが)ホテルのインターネット回線が切断されまくったりなどハプニングも多かったが,次世代コンシューマ機の陰で,PCゲームもたくましく展示/紹介されており,我々4Gamer取材班にとっても"苦労した甲斐のある"イベントとなった。今回は,今年のE3をひとまず終えたところでの雑感を書き出してみる。
■E3の裏にある,Web系ライターのセレナーデ
Call of Dutyブース前に立つ軍曹は,もはやE3名物になりつつある。誰も笑顔を見たことがないという…… |
それは,年明け早々には会場のあるダウンタウン一帯のホテルが軒並み満室になっていたり,会場でも例年なら誰もいない通路まで人でごった返していたりということからも,十分感覚的に察知できるものだった。
4Gamer.netも,カメラ班や通訳まで含めると10名を超えるという大所帯で参加した。案の定,ギリギリになっても泊まるホテルが決まらない&ホテルに入ったら入ったで最終日まで回線がパンク状態で使えないなど数々のトラブルに巻き込まれたものの,結果的には昨年を上回る取材記事を掲載できたことには,取材班一同それなりに満足していることだと思う。
商談ルームがなぜか食堂風のデザインに。ヨーロッパ製の携帯機メーカーGizmondoには,せめて"ブース大賞"をあげたい |
9時前に会場に着くと,そこからは取材の連続だ。30分で終わるアポもあれば,2時間かかるものもある。今年は,「Metronome」や「The Witcher」のように,あまり聞きなれないソフト1作でも,1時間をかけての特別デモンストレーションが行われることが多かった。最近トレンドになりつつあるが,これでは一人あたり1日に8本程度しか見られないことになり,ライターとしては効率が悪くて仕方ない。
自分の開発しているゲームを,取材陣に十分に理解してもらおうとする開発者にとっては,1時間を費やして入念なデモをするのは,当然のことかもしれない。
しかし,記事執筆を割り当てられているタイトルをすべて入念に見て回りたいライターには,3日という開催期間は短すぎるのだが,逆に毎回同じ説明ばかりを繰り返す開発者やデモ担当者には,3日は長過ぎてこたえられないらしい。実際,3日目には声をからしている人も見られたし,我々ライター(というか4Gamer取材班の一人)にだって,足をくじいてしまう"負傷者"が出た。みな,もう自分との戦いなのだ。
6時の閉会と共にホテルに帰ってくるとすぐさまミーティングを行い,その日の素材を提出したり,ムービーのエンコード順を決めたり,記事の担当を決めたりする。各自部屋に戻ったらルームサービスで夕食/夜食を食い散らかしつつ執筆作業を進めるのだが,その作業は早く切り上げる人で朝5時頃,大抵は6時半くらいまで執筆作業を続ける。6時半といえば日本時間で22時半であり,その原稿のチェックや記事アップ作業を考えたら,4Gamerの更新が終了するまでに掲載できるギリギリの時間というわけだ。
さて7時には起きて,朝食をとり……。
ここが,4Gamer.netのようなWeb媒体のライターと,執筆は帰国後でも間に合うため,夜にパーティや飲み会に出かける余裕のある紙媒体のライターとの異なるところだろう。まぁ実際には彼らも,昼間のE3取材で歩き回ってクタクタになるため,ホテルに戻った瞬間に爆睡する人も多いようだが。
■PCゲームのプレゼンス
会場で見かけたロシアのパズル王Alexei Pajitnov(アレクセイ・パジトノフ)氏。そう,あの「テトリス」の開発者だ。今はMicrosoftも離れ,ロシアの開発者の橋渡し役になっているそうだ |
行列ができるほどの話題となったのは,ここ最近のE3で増えてきた専用シアターのブースだ。とはいえ今年は「Half-Life 2の20分ムービーを観るのに3時間待ち」なんていう異様な盛り上がりはなく,「Quake 4」「Unreal Tournament 2007」,そして「Call of Duty 2」に人気を3分した列が,それぞれのブースを取り囲んでいた。
今回のラインナップを見ても,決して出展されていたPCゲームの内容が悪いわけではないことが分かる。「Battlefield 2」「F.E.A.R.」「Hellgate:London」「Age of Empires III」「Rise of Nations:Rise of Legends」「The Movies」など,"プレイアブルな状態"で出展されていた有望ソフトは少なくないし,「Commandos:Strike Force」「Prey」「Tomb Raider:Legends」「Company of Heroes」「Age of Conan:Hyborian Adventures」「Dungeons & Dragons Online」のように,シリーズものではない(もしくはシリーズ作品とは一線を画した)タイトルもあった。「Sid Meier's Civilization IV」「Spore」「Tabula Rasa」「Black & White 2」のような業界の大御所達が関わる作品も揃っていた。
それでもPCゲームの存在感が薄く感じられたのは,各社のブースでXbox 360などの次世代機用ソフトの紹介に重点が置かれている例が多かったからだろう。例えばElectronic Arts社のフロアではBattlefield 2以外にキーボードのあるセクションはなく,360°の大画面でも大きく次世代ソフトのムービーが流されていたし,Ubisoftのフロアにも,「Myst V:End of Ages」をはじめとするPC作品は見当たらず,Xbox用の「FarCry Instinct」やXbox 360でリリースされる「Tom Clancy's Ghost Recon 3」のイメージムービーが流されているばかりだ。
NC Softブースを賑わせていた「The Mutators」。マッドマックスから抜け出てきたようなボンデージ姿が,「Auto Assault」の世界感にピッタリ!? |
また,2004年の「EverQuest II」vs.「World of Warcraft」という図式も今年はなく,どの作品も際立っていた様子がない。とくに韓国系のMMORPGは失速しているようで,全体的なMMORPGの数がいつになく少なくなっているのが気掛かりだ。
NC Soft社は「Auto Assault」を正面に据えたブースの配置で,ボンデージ姿の男女がドラムに合わせて行うパフォーマンスが人目を惹いていたものの,まだ発売は先とはいえTabula Rasaが隅に追いやられているのではもったいない。Webzen社も広いフロア面積を確保していたが,ムービーばかりの出展だったためか,赤いカーペットが目立って仕方なかった。
■たかがPCゲーム,されどPCゲーム
もちろん,悪いことばかりではない。ジャンルを変えてやろうという意気込みが感じられる新作や,技術力の高いテクノロジデモも多く見られ,数は少なくても全体に底上げされているのは確かだった。シェーダ世代のグラフィックスに,そろそろ開発者も慣れてきたのだろう。
今年は新たに,イギリスのDeep Silver社と,Take-Two Interactive社のブランドである2K Gamesが新たにサウスホールでデビューした。とくに2K Gamesは,Civilization IVやSerious Sam 2などのPCゲーム期待作を続々とラインナップに加えており,今後も要注目の販売元となりそうだ。
Hellgate:LondonのNamco Hometekも,PCゲームにコミットメントを見せてくれているのが嬉しい。今回は大人気だったHellgateのほかにも,台湾で開発中の「Mage Knight Apocalypse」とシューティングゲーム「Sniper Elite」の3本を出展しており,海外メーカー以上に頼もしい存在だ。
ATI社やNVIDIA社のブースも,本来ならフロアに出展できる予算のない独立系開発会社のソフトを展示する場所として機能していた。
ある業界関係者は,「少なくとも2007年まではPCゲームの減退期は続くだろう」と予想する。ここ数年,ハードウェアやオンラインサービスでPC化するコンシューマ機に押されっぱなしのPCゲーム市場だが,次期Windows「Longhorn」(ロングホーン)が視野に入ってくる来年には,より派手にやってもらいたい。
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コンパニオンなくしてE3なし。よくも写真を撮る時間があったものだと我ながら…… |
次回は,E3で発表されなかった作品について紹介しよう。