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Gravityをソフトバンク系企業が,400億円で事実上の買収
2005/08/31 23:54
 Gravityの会長で,大株主でもあった金正律(キム・ジュンユル)氏(およびその親族)が,同社の株の52.4%にあたる約364万株を,日本のソフトバンク系企業であるテクノグルーブ,アジアングルーブ,EZERに,4000億ウォン(約400億円)もの金額で売却したことが明らかになり,韓国を中心に話題となっている。ちなみにこの金額,韓国ベンチャー企業史上最高値とのことだ。
 韓国のゲームメディアはこぞってこのニュースを伝えており,「驚いた」「(Gravityまでが海外資本に屈して)残念」「その金額に見合うとは思えない」「ガンホー・オンライン・エンターテイメントとの合併も秒読みか?」など,反応はさまざまだ。
 なお9月21日に臨時株主総会が開かれ,この場でキム会長が退任し,新たな取締役が決まる見込みだが,韓国のWebメディアであるGameMecaに掲載されたキム氏へのインタビュー(「こちら」)によると,同氏はしばらくはGravityに残り,またその後もゲーム業界には残るつもりとのことである(「またゲーム会社を作りたい」との発言まで見られる)。ちなみにGravity本体の株価は,終値を見る限りさほど動いていないものの,出来高は前日比42倍。1株あたりの売却額98ドルは,NASDAQの株価を考えると破格の金額。明日以降の動向にも要注目だ。

 400億円という数値,Ragnarok2という新作,ガンホーとの関連性だけに目がいきがちな今回の買収劇で,ややもすると「Ragnarok2で400億は高くない?」と思いがちだが,外から眺めてみると,当事者達の思惑が若干なりとも明らかになる。

 まず,この件の日本における影響を考えてみよう。とくに影響が顕著なのが,今回の買収劇には直接は関係ないものの,Gravityとは切っても切れない関係にあるガンホー・オンライン・エンターテイメントである。現状では売り上げの96.3%をROに依存しているガンホーもソフトバンクグループの企業であるから,両社は事実上の兄弟会社となる。韓国で合併の噂が出てくるのも仕方のないことだろう。
 実際に合併があるかどうかはともかく,この件を受けて,ガンホーの株価が跳ね上がっているのは事実である。ほんの1週間前まで1株300万円前後で推移していたのが,今では500万を突破し,まだまだ上がりそうである。時価総額にして実に約4200億という,数字だけ見れば日本を代表する大企業といってもよい状態だ。ストップ高連発のその勢いに引きずられた「連想買い」か,"パンヤ"をサービスインするゲームポットの親である「アエリア」,4Gamer読者もご存じの「コーエーネット」なども大きく上がり,またもやガンホーがオンラインゲーム市場を引っ張った形となった。

 一方Gravityに目を向けてみると,同社は2004年12月時点のデータで,年間で6226万ドル,つまり日本円にして約69億5000万円の売り上げがあり,純利益で年間約31億5000万円を叩き出している。一見すると(オンラインゲーム会社として)恐ろしいまでに収益率が高いが,これはもちろん,事実上Gravityがライセンスカンパニーであることからきている数値だ。非常に極論ではあるが,黙っていてもそのほとんどが入ってくるのだ。
 各種公開情報を見ると,Gravityの売り上げの70%ほどは「海外へのライセンシング」で稼ぎ出されていることが見てとれる。39か国/地域へのライセンスは伊達じゃない。ライセンス先は各国の大手通信会社だったりするわけで,そのライセンシングのノウハウ(およびコネクション)だけでも,単純にお金には換算できない価値があるといってもよいだろう。すでに彼らが引いてあるレールをなぞるだけでよいのだ。

 "買った側"にしてみれば今回のこの買収劇で,新作Ragnarok2,いま39か国/地域に存在するコネクションとライセンス,そこからあがる年間30億以上もの利益,結果としてのガンホーへの"良い"影響,オンラインゲーム運営ノウハウという数々のものを一気に手に入れたわけで,それを考えると400億円という数字は,お金の面だけで見れば非常に"お買い得である"と判断せざるを得ない。
 Gravityにしてみても,ここ最近の成長スピードはすっかり鈍っており,そういう意味でも「売り時」だったと見るのが妥当だ。Ragnarok2,Requiemなどの新作こそ準備してあったが,激化して成長が鈍化しつつある韓国オンラインゲーム市場の中にあっては,成功するか否か,激しく疑問だったのだから。

 それにしてもユーザーにしてみれば,「面白いコンテンツ」が「より多く」,「より良い形」で登場することがもっとも嬉しいことなのだが,その内容とは直接関係のない部分ですごい金額が動いているのを見るにつけ,若干の寂しさをも禁じ得ないのは筆者だけだろうか。今回の買収劇が,プレイヤーにとっても良い結果になることを願ってやまない。
 まだあまりにも情報が少ない本件だが,もしなにがしかの情報を入手できるようなことがあれば,再び記事にしてみたいと思う。今日のところは,まずはここまで。(Kazuhisa)

#8月31日23:00時点では,アジアングルーヴ,テクノグルーヴを始めとする国内当事者からの公式リリースも存在せず,本原稿はあくまでも各種公開情報を元にしたものにすぎない。もとより経済関係には激しく疎い筆者の書いたものなので,各種勘違いや間違いなどがあったら,容赦なくご指摘いただきたい。


ラグナロクオンライン2 -Episode:0 巡りあう大地-
■開発元:Gravity
■発売元:ガンホー・オンライン・エンターテイメント
■発売日:2007年内
■価格:1980円/30日間(税込),5310円/90日間(税込)
→公式サイトは「こちら」
ラグナロクオンライン
■開発元:Gravity
■発売元:ガンホー・オンライン・エンターテイメント
■発売日:2002/12/01
■価格:プレイ料金:1500円/月(税込)
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http://www.4gamer.net/news/history/2005.08/20050831235412detail.html