特別インタビュー「Rise of Nations:Rise of Legends」:プレイヤーの戦略でシナリオが分岐するシングルキャンペーンについて
人類の歴史を題材にした前作「Rise of Nations」(以下,RoN)から打って変わって,機械文明と魔法文明の対決を描くファンタジーRTSとなった「Rise of Nations: Rise of Legends 」(以下,RoL)。そんな本作の開発を手がけるBig Huge Games社のCEO,Brian Reynolds氏が2005年9月15日に来日した。当編集部でも,時間をもらってインタビューできたのでここに掲載しておこう。
RoLは,新たに作り起こした3Dエンジン「Big Huge Engine」や物理エンジン「Novadex」を搭載し,美しいグラフィックスと各種アニメーション処理が物理エンジンによって表現されるなど,技術的にもかなり先進的な作品。また巨大な最終ユニットである「マスターユニット」や,今やRTSではお馴染みとなったヒーローユニットが登場するなど,ゲームとしても,前作RoNとはまったく違う雰囲気を漂わせているタイトルである。
今回のインタビューで使用された最新版ビルドで作り込まれていた部分は,前作にもあったシングルプレイモード「コンカー・ザ・ワールド」に関する部分。Reynolds氏本人にデモンストレーションをしてもらいながら,ゲームの内容についていろいろと聞いてみた。 とはいえ本作の基本的な部分に関しては,すべて5月時点の記事で押さえた通り。そちらについては,「こちら」や「こちら」のE3記事を参照してほしい。
ストーリー要素が盛り込まれる「コンカー・ザ・ワールド」
4Gamer.net(以下,4Gamer): まずは,E3の時と比べて変わった部分の説明をしてもらえますか?
Brian Reynolds氏(以下,Reynolds氏): オーケー。では最初は,シングル用のキャンペーンモードである「コンカー・ザ・ワールド」から紹介していくよ。
4Gamer: お願いします。
Reynolds氏: 「コンカー・ザ・ワールド」というのは,大まかには前作にあったもの(邦題:世界征服キャンペーン)と同じ内容になる。知ってるかもしれないけど,戦略マップ上から攻める地点を選択していって,最終的には全拠点の制圧を目指すという内容だね。 戦略マップでは,技術のアップグレードやヒーローのレベルアップなどという戦略コマンドを実行できるようになっていて,自軍を強化しながら任意の地域へと駒(軍団)を進めていくことになる。
4Gamer: 前作と変わっている部分は主にどこになるのでしょうか?
Reynolds氏: 一番の特徴は,壮大なファンタジーの世界観を生かした「ストーリー」が用意されていることだね。前作の「コンカー・ザ・ワールド」は良くも悪くも淡々と進行していったところがあったと思うけれど,ストーリーが用意されることによって,シングルプレイをより熱中して楽しめるんじゃないかと思う。 実は歴史を題材にしたRoNから一転して,RoLでファンタジーの世界を題材した理由の一つには,シングルキャンペーンを充実したエキサイティングな内容にしたかったというのがあるんだ。
4Gamer: 物語仕立てというと,何か決められたストーリーラインにのって「コンカー・ザ・ワールド」が展開されていくという意味ですか?
Reynolds氏: いや,ストーリーはプレイヤーの決断によって変化していく形だね。戦略マップ上で取るアクションや攻め込む地域によって,プレイヤー毎に異なる物語が展開していくんだ。そこが本作のキャンペーンモードの特徴でもあるんだけど,RoLの「コンカー・ザ・ワールド」モードは,プレイヤーに戦略的な"決定権"があるのが面白い部分だと考えていて,その"決断する面白さ"に壮大なストーリーを絡ませていくというシステムを考えているんだよ。
4Gamer: それは,シナリオが戦略的な条件によって分岐したりするという意味でしょうか? ある地域を占領していないと見れないとか。
Reynolds氏: まさにその通り。プレイヤーの決断がファンタジー世界に影響を与え,それがシナリオとして展開されていく。だからプレイする人によって,シナリオの展開はかなり変わっていってしまうだろうね。
4Gamer: なるほど。ということはもしかして,凄い特殊な条件でしか見ることができない"レアなシナリオ"なんかも用意されていたりするんですか?
Reynolds氏: そういう要素ももちろんあるね。シナリオには,ヒーローの誰を味方にするのかといった展開も含まれていて,女性ヒーローとロマンティックな関係になることだってあるんだよ(笑)。
4Gamer: 用意されるストーリーについてですが,やはり作品のテーマである"機械文明と魔法文明の戦い"が主な内容になるんですよね?
Reynolds氏: そうだね。プレイヤーが扱える文明は,機械文明を発達させた「Vinci」と魔法文化を発展させた砂漠の民「Alim」,そしてもう一種類まったく違う文明が登場することになるし,さらにCPU専用の勢力も一つ用意される。キャンペーンの物語というのは,それらの勢力の争い,あるいは協力を描いたものになるんだ。
4Gamer: あ,そういえば,プレイヤーが扱える"三つめの勢力"について聞いてもよいですか? E3の時に「まだ発表できない」と言われた記憶があるんですけど(笑)
Reynolds氏: ああ! そういえばそうだったね(笑)。でもごめんなさい,実は今でもそこはまだ発表できないんだよ。
4Gamer: 何か大まかな部分だけでも教えてもらえませんか?
Reynolds氏: うーん,えーと(チラリと周りを見て),ごめん,やっぱりまだ駄目だってさ(笑)。
4Gamer: それは残念。では次の機会にはぜひ教えてくださいね。
RoNとは違うゲーム性? プレイヤーに"新しい体験"を提供する
4Gamer: マルチプレイモードについて聞きたいのですが,マッチングシステムなどはどういう形を予定しているのでしょうか。以前はGameSpyを利用していた形だったと思いますが。
Reynolds氏: マッチングシステムは,今回は完全にオリジナルのものを用意することになるね。それはゲームの起動からシームレスに行えるような形で,個人の戦績なども完全に記録される。まぁ……他のRTS作品にある程度の機能は全部盛り込まれると考えてもらっていいと思う。もちろんクラン機能など実装予定で,クラン毎にポイントを競うようなランキングシステムも検討しているよ。
4Gamer: なるほど。あと今回は種族が少なめですし,前作とはゲームバランスがかなり変わっていると思うのですが?
Reynolds氏: そうだね。多くの文明が用意されていた前作と比べると,ゲームの作り方自体が大きく変わっていると言えるね。例えば,前作での戦闘の基本概念であった,いわゆる「三すくみ」というような要素は今回は用意されていないんだ。なんといっても,今回は勢力毎にまったく違うユニット,まったく違う戦い方が用意されているからね。そういう概念すら存在しないというか。もっとも,当然各ユニット間で得手不得手は設定されているんだけど,以前ほどカウンターユニットが幅を効かせるようなゲーム性にはなっていないんだよ。
4Gamer: ではRoLは,前作とはプレイ感覚が違うと考えてよいのでしょうか。
Reynolds氏: うーん,それは難しい質問だね。今回もRoNで好評だった要素……例えば,「国境」や独特の進化システムは継承しているワケだし。ただヒーローユニットやマスターユニット(究極兵器)の存在,そして素晴らしいグラフィックスなど全部をひっくるめて,プレイヤーに「新しい体験」は提供できると確信しているよ。
4Gamer: なるほど,製品版の発売が待ち遠しいですね。発売時期などはいつ頃になるでしょうか。
Reynolds氏: 今のところは,2006年春を予定しているよ。体験版などもリリースする予定だけど,こちらはまだ時期は分からない。ゲーム自体がまだまだ開発中の段階だからね。
4Gamer: 分かりました。作品の完成を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
Reynolds氏: 期待に応えられるよう,頑張って開発に取り組むよ。
さて,シングルキャンペーンモードについての問答がメインになった今回のインタビュー。戦略性を重視した「コンカー・ザ・ワールド」モードで,どう違和感なく物語が展開されていくのかは興味が尽きないが,今のバージョンでは,まだまだ細かい部分までは作り込まれてない様子。ことグラフィックスに関しては,ある意味でライバル(?)の「Age of Empires III」よりも目を惹かれる本作だけに,シングルキャンペーンで展開される演出にはぜひ期待したいところだ。新しい種族の件を含め,細かいシステム周りについては,情報が入り次第追ってお伝えしたいと思う。
ちなみにインタビュー後の軽い雑談で,「もし,RTS以外のゲームを作るとしたら?」という話を振ってみたところ,「やはりRPGを作ってみたいなぁ」との発言が。ただ「今後しばらくはRTSのことで手一杯だから,当分はオアズケさ」と冗談めかして話してくれたのが印象的。知性的で柔らかな物腰ながらも,気さくで人当たりの良いBrian Reynolds氏。彼が作るRPGも非常に気になるが,まずは本作の完成に注目したい。(TAITAI)
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