新作MMORPG「Arch Lord」韓国オープンβテストレポート
「Arch Lord」は,NHN Games開発によるファンタジーMMORPGで,現在韓国内でオープンβテストが行われている。「The Next RPG」とサブタイトルを付けるほどNHNが力を入れている作品だが,このたびプレス用のアカウントを入手したので,現行バージョンの概要とプレイフィールなどを紹介してみたい。 ■Arch Lordの特徴
Arch Lord,すなわち「最高の君主」というのは,ゲーム内にある五つのアーコンを備えたものが「Arch Lord」として絶対的な力を持つという,ゲームシステムのことを意味している。そう,ゲームの究極的な目標は,このArch Lordになることだ。五つの城に封印されたアーコンを揃えると,一般プレイヤーに税金を課したり,一定地域のモンスターを消滅させたりといった特殊な力を,一定期間使用できるという。
●種族とクラス Arch Loadには,現在3種類の種族が実装されている。それぞれ,オーク,ヒューマン,ムーンエルフだ。各種族で2ないし3のクラスに分かれており,全部で8種類からプレイヤーキャラクターを選択できる。 クラスによって性別は固定されており,また現状では各クラスのキャラクターモデルが1個に固定されているので,あまり個性的なキャラは作れないが,街のショップで髪型や顔などを有料で変更できるようにはなっている。資料を見る限りでは,ドラゴンシオンというのがあるので,今後もしかしたら新種族として加わることになるかもしれない。 現状の各クラスを紹介しておこう。
・バーサーカー(オーク/男) ・ハンター(オーク/女) ・ソーサラー(オーク/男) ・ナイト(ヒューマン/男) ・アーチャー(ヒューマン/男) ・メイジ(ヒューマン/女) ・レンジャー(ムーンエルフ/女) ・エレメンタリスト(ムーンエルフ/女)
騎乗しての戦闘
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近接系,遠隔系,魔法系と,だいたいの特徴はクラス名で想像できると思う。エレメンタリストは召喚を主とした魔法使いとなる。ちなみに,いわゆる「ヒーラー」というのが用意されていないので,どのクラスでも戦闘中はポーションでの自己回復となる。戦闘自体は,韓国産MMORPGとしては一般的なマウスのクリックで行うスタイルを踏襲している。
●パーティ 1パーティは5人までのようだ。パーティリーダーにはボーナスが付き,近接職では攻撃力が,遠隔職では防御力が,魔法職ではHPとMPが強化される。必要な人材を登録しておくと,パーティメンバーをマッチングしてくれる機能もあるようだ。
●マウントシステム Arch Loadでは,動物に騎乗することができる。オークは砂漠牛,ヒューマンは馬,ムーンエルフはライオンに騎乗できる。 騎乗中,移動速度が速くなる。なお騎乗したまま戦うには専用の武器が必要だが,騎乗するとすべての補助魔法や強化魔法(いわゆるBuff)が消えるので,そのまま戦闘するのはかなり効率が悪そうである。ただ,防具をつけた騎乗動物も存在するようなので,一概にはいえないかも。
●生産システム まず,殺した獲物から,皮剥ぎや肉剥ぎといったスキルで,素材となるアイテムが得られる。さらにそれらを,料理や錬金術のスキルでいろいろなものに加工できるようになっている。例えば,変身薬。モンスターに変身する薬を調合できるのだ。戦闘中に使うとパワーアップするほか,危険な場所を通り抜けるときにも使えるらしい。
●PvPシステム 3種族に分かれているが,基本のArch Lordシステムにしても,ベースとなるのはギルド戦であり,RvRではない。 マップは,PvPができるゾーンとできないゾーンにはっきりと分かれている。前者では無差別にPvPが可能で,同等レベル以上のキャラクターへの攻撃はペナルティなし,レベル下のキャラクターばかり攻撃していると,ペナルティが課せられて「賞金首」となる。 なお,PvPで相手を倒すと,髑髏を入手できる。これを素材として使うことで作成できる特別な力をもった髑髏装備などもあり,PvPへの求心力としているようだ。しかし,負けたときのペナルティがないと,談合でにぎわいそうである。 賞金首については不明な点が多く,リネージュIIの赤ネームと,どの程度の違いがあるのか,現状ではいま一つ分からなかった。
●アイテムアップグレード はやりのアイテムアップグレードも,もちろん取り入れられている。鍛冶屋でアップグレードしたり,祈願石や精霊石といったものを取り付けたりすることで,アイテムの性能がアップする。店売りのものを見る限り,基本となる装備自体は,クラスやレベルによってほとんど選択肢がないので,アップグレードによって個性を出していくタイプという感じだ。
アイテムアップグレードの様子。インベントリ(右側)にあるもやっとした色のものが精霊石で,これをアイテム上にドロップするとアップグレードが行われる。成功すると(よく分からないが),性能が上がる
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見た目は面白いけど渡りにくいだけの橋
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■オープンβプレイレポート
Arch Lordの大まかなゲームシステムを紹介してきたが,ココからはオープンβテストのプレイフィールを書いていこう。 今回のプレス用に用意されたキャラクターや新規キャラクターを使って,あちらこちらと訪れてみたが,ゲーム内はすべて韓国語なので,具体的なモノが少ないのはご容赦を。また,用意されたキャラクターのうち,最高レベルがムーンエルフだったので,必然的にプレイ時間も長くなり,スクリーンショットの登場回数も多くなっている。 なお,今回はクエスト関連はまったく手をつけなかったのだが,クエストを出してくれるNPCは頭の上に「!」マークがついているのは分かりやすかった。
●美しい風景 第一の特徴として挙げられるのは,背景などの描写が美しいということだ。建物なども凝った形状で,天空に向かってそびえ立っている。 細かな形状はよいのだが,その半面,移動時に邪魔になることも多い。移動はもちろん左クリックで行うが,ちょっとしたところに引っかかりやすいのだ。木などは単に棒が伸びているだけでなく,根っこの部分は太くなっている。するとそこの端に引っかかって,進めなくなるといった感じだ。建物の曲がり角なども,近づきすぎるとよく分からない感じで引っかかり,進めなくなってしまう。また,地形で通れそうなのに通れないところも結構多い。地図を見てもどこが通れるのか判断しづらい場合が多く,とくに初心者フィールド近くはあちこちが閉じた構造になっているので,ストレスも多い。 背景の作り込みが良い分だけ意外なのだが,水面は質素で今風の表現とはなっていない。映り込みや揺らぎはあるのだが,足元に水があると,気づかないままプレイしていたこともあった。 マップはシームレスで,大陸全体図がほぼそのまま(一部現状では封鎖されていて入れないゾーンもあるが)マップとなっている。 音楽は可もなく不可もなくといった感じだが,一応,ロンドン交響楽団による録音ということで,力は入っている。
空中に展開する構造物が多くダイナミックな景観が楽しめる
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大陸の最西端に到達
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●戦闘 モンスターはあまり移動しない。リンクも薄い。モンスターの種類は割と多いのだが,同じモンスターモデリングの使い回しが多く,色違いのものが数多く出てくる。ものによると,10回は使い回されていると思われるほどだ。このバージョンで判断するべきことではないだろうが,もしこのままならば,レベルが上がっても,新しいモンスターと遭遇したときの新鮮味が薄くなりそうだ。 モンスターには,「Named」モンスターもいる。これらは体力がレベルの割にかなり多く,特殊攻撃をしてくることが特徴だ。もちろん,見た目もほかのものとは違っている。かなりサービスがよいのか(?),倒した途端に次のNamedが湧いてくるので,気が抜けない。少し続けて何匹か倒してみたが,特別なDrop品は確認できなかった。 ポーションは,いわゆるHoT(Heal over Time:じわりじわりと回復)であって,飲むとただちに体力が回復されるわけではない。多少タイムラグがあって,ぐいぐいと回復されている感じだ。要するに,意外とコロっと死んでしまうことがあるので,注意が必要だろう。
ちなみに,レベル35のキャラクターでレベル38のモンスターを倒したときに入る経験値は,0.05%。2000匹倒せば次のレベルという計算になる。これは,一度も死ななかった場合の計算だが,体感としては,一度死ぬたびに3%分多く稼がないと次のレベルに行けない(Max150%)ようになっている気がする(韓国語が読めないのであくまで推測だが)。 もちろん,死ぬと経験値は減るのは確かだ。まあレベル落ちはないので,レベルアップした直後は比較的気楽に冒険できる。
レベリングしている人達を見ると,多くのモンスターを集めてきてAE攻撃でまとめてばったばったと倒していることが多い。まぁ,オークバーサーカーの人は1匹ずつ殺していたので,ひょっとしたら魔法使い系限定かもしれない。 なお,パーティプレイはあまり見かけない。いても二人パーティくらいで,あとはソロが多い感じだった。パーティ募集らしきものはときどきあるので,ないわけはないと思うのだが。
●大陸横断 個人的に,このゲームの一番の見どころは,風景だと思う。どんなゾーンがあるのか,レベル35のキャラクターで,ムーンエルフが住む大陸の東端から西の端まで横断を試みた。 モンスターレベルの最高値もよく分からないままの暴挙だが,西に進んでいくに従って,モンスターレベルはどんどん上がっていった。橋を渡り,大陸中央部に渡った段階で,40台後半。砂漠でNamedらしきモンスターがレベル50だったのを確認したが,その先はそんな甘いものではなかった。 途中でレベル70のモンスターもいて(おそらく最高レベル),こういうのに引っかかる(攻撃される)と一撃で倒されることもあるものの,それ以外は,逃げるだけならたいていはポット連打(ポーション連続使用)でなんとかなる。大陸の西半分になってくると,だんだんレベルも下がり始め,橋を渡ってヒューマンのエリアに入ると,ほっと一息。 踏破してみて思ったのは,広いようで案外狭いということ。前述のとおり,騎乗していれば走り抜けられてしまうことが大きい。レベルごとにゾーンが分かれていて,成長とともに行動範囲が中央部に移動していくと思われるものの,一度通過した低レベルエリアには行くことがなくなるだろうこともあり,広さを感じる局面は少なそうだ。 なお,マップの要所要所にはワープゲートがあり,近隣のゲートに移動できる(有料)。踏破したときには使わなかったが,地名さえ分かれば,効率良く各地に移動できるだろう(ハングル文字ばかりで地名がよく分からず,使ってみても最初の村に戻ってしまうことが多かった)。
■第一次総評
韓国語で,勝手が分からないこともあって,とりあえずの印象という程度しか書けないのだが,全体に「The Next RPG」とまでいえるような斬新でユニークな要素はとくに見つけられなかった。 ボリュームでいえば,かなりの大作なのは確かだ。この段階で,これだけあちこち作り込んである作品は最近では珍しい。しかし,マップ上の目立ったポイントに行っても,たまにNamedがいることもあるが,たいていなにもなく(クエスト関係かもしれないが),肩透かしも多かった。 韓国では,第3の種族としてムーンエルフが実装されたばかり。ムーンエルフは,なにやら猫耳のついた,変なキャラに仕上がっている。エレメンタリストなどを見ると,猫耳なうえツインテールで提灯ブルマである。オークやヒューマンのデザインを見る限り,かなりシリアス系のものだったと思うのだが,いきなり勘違いした萌え系(?)に走ってしまっている。ゲームの資料を見る限りでは,初期のムーンエルフらしきデザインはかなり違ったもののようなのだが……。 個人的には,このムーンエルフのデザインが全体のイメージを壊しているようにも思える。もっとも,自分で使っている分には正面から顔を見ることはないので,プレイ中は気にならないが。日本ではちょっとどうかと思うデザインだが,韓国内でどのような評価になっているのか,気になるところではある。 ベースとしては,かなり意欲的に作り込んでいるのだが,内容的には「普通」という印象(言葉の問題もあるし)。もの凄く積極的にPvPを目指したゲームシステムでもなく,かといって,PvE部分ではモンスターは「置いてあるだけ」感が強い。変身薬のシステムなどは面白そうなのだが,それだけではちょっと弱い。 一番のウリとなるはずなのは,もちろんArch Lordシステムだ。しかし,韓国内はともかく,特権階級志向に根差したArch Lordシステムが「一億総中流」の日本で受けるかというと,「ちょっと疑問」と言わざるをえないだろう。 (aueki)
上左:大陸全図
上中:モンスターに占拠された城
上右:ダンジョンの入り口
下左:砂漠のマップ上に奇怪なものを発見。行ってみるしか
下中:到着。巨大なドラゴンと思われる骨だ
下右:とにかくデカい。しかし骨があるということは……
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