ニュース
「World Cyber Games 2006」日本予選開催。「パンヤ」「Counter-Strike 1.6」の日本代表選手が決定
2006/09/04 20:40
 オンラインゲームの世界大会「World Cyber Games 2006」(以下,WCG2006)の日本予選が,9月2日と3日の2日間にわたり,秋葉原のUDXビル内「先端ナレッジフィールド」にて開催された。この日本予選を勝ち抜いた選手達は,10月18日から22日にかけてイタリアで開催されるグランドファイナル(決勝大会)に出場する。

 WCGとは,オンラインゲームの世界チャンピオンを決定する世界最大規模のゲーム大会で,2000年に韓国で初めて開催されたプレ大会を含め,これまで年に一度のペースで6回開催されてきた。2003年までは韓国で決勝大会が開催されていたが,2004年以降は予選に参加している国々で持ち回る形になり,2004年はサンフランシスコ,2005年はシンガポール,そして今年はイタリアで世界一のプレイヤーを決定する決勝大会が開催されることになっている。競技種目となるゲームの種類も年々増加し,今年はPCゲームから6タイトル,コンソールゲーム(家庭用ゲーム)から2タイトル,計8タイトルが公式種目として採用された。PCゲームの枠にとどまらず,家庭用ゲームも含め,さまざまなゲームジャンルのチャンピオンを決定するこのイベントは,まさに世界中が注目する「オンラインゲームのオリンピック」なのだ。

 今年,日本予選に採用された種目は,PCゲームでは,5 vs. 5の3Dシューティングゲーム「Counter-Strike 1.6」(以下,CS1.6)と,公式種目ではないが,主にアジアの国々が参加する「スカッとゴルフ パンヤ」(以下パンヤ)。Xbox 360からは,昨年世界チャンピオンを輩出した日本のお家芸ともいえる対戦格闘ゲーム「DEAD OR ALIVE 4」と,カーレースゲームの「Project Gotham Racing 3」の,計4タイトル。それぞれの種目でこの予選大会の上位に入賞し,日本代表の資格を得た選手達は,決勝大会に参加するために必要な渡航費や現地での滞在費をサポートしてもらえるので,今回取材した予選決勝となるオフライン大会にまで勝ち上がってきた選手達はまさに真剣そのもの。中にはこの大会に参加するために地方から会場に駆けつけたという選手もいるので,その意気込みが窺えるだろう。それでは,パンヤを含め,計11名の代表枠をめぐって争われた日本予選の模様をお伝えしていこう。



■会場の使い方を工夫した“見せ方”に注目

 今回会場となった先端ナレッジフィールドは,選手達が試合を行うトーナメントエリアと試合の模様を観戦する会場が別々になっていて,観客が試合に熱狂して大きな歓声をあげても試合を行っている選手達の集中力を乱すことがないような作りになっていた。昨年,東京ゲームショウの会場で日本予選が行われたときは,ほかのブースの音がうるさかったり,選手と観客の距離が近すぎたりして「試合に集中できない」という不満が選手側から出ていたので,今回は選手達の事情も考慮したのだろう。しかし,観戦する側からしてみれば,選手達の様子を間近で見たいというのは正直な気持ちで,とくに出場している選手と親しい友人や,同じチームのメンバーなどは,選手の表情を見ながらすぐ側で応援したいはずだ。

 実は,この会場のトーナメントエリアの一部はガラス張りになっていて,比較的近い距離で試合を行う選手達の様子を見られるようになっていた。選手達を見守りたい人達は,このトーナメントエリアのすぐ側で,ゲーム画面を見ながら試合を楽しみたい人は観戦用の会場でと,今回の会場では選手達の迷惑にならない範囲で,見る側のニーズに合わせた観戦の形を実現していたのは,筆者的にはとても面白いと感じた部分だった。

 観戦用の会場では,実況解説入りのゲーム画面が映画館並みの500インチスクリーンで生中継されていて,家庭用ディスプレイでは味わえないような迫力ある試合中継を楽しめた。この実況解説入りの試合中継は,イベント開催期間中に「Yahoo!動画」でストリーミングライブ配信も行われていて,会場へ足を運ぶことができない人はインターネットを利用して大会の模様を見ることができるようになっていた。たくさんの人が注目するイベントだけに,こういったオンライン中継は観戦を楽しみにしている人にとっては嬉しい配慮だろう。筆者自身も,予選の初日にこのストリーミング放送を実際に体験してみたのだが,ストリーミング放送にありがちな,「混み合って接続できない」「途中で映像が停止する」「接続が切断される」といった不具合はほとんどなく,とても快適に観戦できた。ゲーム画面の明るさ調節が上手くできてなくて,見づらいと感じるときもあったが,無料で楽しめる放送としては満足のいくものだった。また,それぞれのゲームに詳しい実況者,解説者が中継を行っていた点も,分かりやすくて好印象だった。

写真左:ガラスの向こう側が選手達のいるトーナメントエリア
写真中央,右:観戦会場では大型スクリーンで試合の模様が実況中継されていた


■スーパーショットの連続で盛り上がりを見せた「パンヤ」トーナメント

 すべての種目で日本代表選手が決定するオフライン決勝二日目。午後になり,オフライン決勝に残った選手達によって,大会モードで行われた代表者決定戦が行われ,グランドファイナルに出場する代表選手4名が選出された。その後,その4名による「日本一決定戦」がストロークプレイにて行われた。

 一昨年のWCGでも一部の参加国限定で種目に加えられたパンヤだが,当時日本代表選手だった「れいんまん」選手が今回の予選の審判を務めていたので,今年参加している選手達のレベルについて感想を聞いてみた。彼ほどのプレイヤーが「前回よりも数段レベルが高い」と評する通り,ここまで勝ち残った選手達は皆当たり前のようにスーパーショットを繰り出していた。日本一決定戦は,Blue WaterのBack 9H(10H〜18H)で行われ,コースの難度が極端に高くないぶん,決められる場面でのホールインワンや,イーグルショットを如何に決めるか,という部分で差がついていた。

 ほかの選手と席を並べてのプレイで,しかも中継用のカメラが向けられているという状況では,家でプレイしているときに比べミスが増えるのは当然なのだが,それほど緊張することなく,落ち着いてプレイしているように見えた。中級者以下のプレイヤーにとっては信じられないようなアプローチ,ロングチップインの連続で,パンヤをプレイしたことのない観戦者にもその凄さは伝わっていたようだった。

 内容がゴルフゲームというのもあるかもしれないが,ゲームシステムが複雑で,試合の様子が観戦者から分かりづらいタイトルが多いPCゲームの中で,幅広い層のファンが手軽に楽めるというのはカジュアルゲームの良い部分なのだろう。最終的には,後半で一打差をつけた「(おんぷ)モカ」選手が最後までリードを守りきって優勝。2位には惜しくも敗れた「Chlorella.」選手が続き,「ゆーき(てんし)」「しゅーた」の2選手を加えた計4名が,グランドファイナルへ出場することになった。

 今回のWCG日本予選は,9月23日と24日に韓国で行われる「日韓対抗戦」に参加する代表選手の選定も兼ねていたので,前述の1位〜4位に入賞した4名と,5位決定戦で勝ち残った「TSURARA(ゆき)」選手を含む5名で,対抗戦に臨む形になるようだ。パンヤは日本以外のアジア諸国でも非常に人気が高く,レベルの高いプレイヤーがたくさんいるという話を聞いているので,日本代表の選手達は厳しい戦いを強いられることが予想されるが,今回はライバルとして競い合った選手同士も,グランドファイナルまでは互いに協力し,更なるスキルアップに努めてもらいたい。

ホールインワンやイーグル連発のハイレベルな戦いとなった「パンヤ日本一決定戦」


■元プロクラン所属のプレイヤー同士の意地がぶつかった「CS1.6」トーナメント

 二日目は,初日の時点ですでに決勝進出が決まったクラン「PARANOID」に挑戦する権利を得るための戦いが繰り広げられた。初日の試合で,一度はクラン「Ownz」相手に敗北を喫したクラン「Cynthia」だったが,de_nukeで行われたこの日の試合では,見事前日の雪辱を果たす結果となった。

 「Ownz」のリーダー,「xENqLity」選手に話を聞いたところ,「de_nukeはほとんど練習をしていないマップで,チームとしての練習不足が敗因」と語っていた。「Cynthia」が「Ownz」を上回ったのは,チーム力ということになるが,それもそのはず。「Cynthia」のメンバーは,昨年のWCG2005日本予選にも参加していた「Aggressive Gene」のメンバーを中心に構成されたクランなのだ。そして,その「Cynthia」を迎え撃つ「PARANOID」も,同じく昨年のWCG2005日本予選に参加し,決勝戦で「Aggressive Gene」に勝利した「4dN.psymin」のメンバーを中心に構成されたクランなのである。当時はお互いにいくつかの企業などがスポンサードする「プロクラン」として活動していたが,さまざまな事情により現在は共に活動を休止し,個人個人でイベントへの参加に取り組んでいるそうだ。

 ということで,一年前からの因縁を引きずっている両クランだが,今回はそれぞれ新たにメンバーを加え,再度日本代表の座を賭けて争うこととなった。果たして「Cynthia」が一年越しの雪辱を果たすというドラマチックな展開は待っているのだろうか?

 注目の決勝第一試合の舞台となったマップは「de_inferno」。大きさ的にも程良くバランスの取れたMapだが,攻め込む経路が3か所あるので,テロリスト(以下,T)側がやや有利なマップだ。戦力が分散されやすいカウンターテロリスト(以下,CT)側は,遠距離で圧倒的な強さを発揮する「マグナムスナイパーライフル」(通称AWP)を早い段階で手に入れることが,試合を有利に進めるためのキーポイントになる。前半T側でスタートした「Cynthia」は,1stラウンドの勝利を機に序盤のアドバンテージを取る。しかし,中盤以降攻めきれない展開が続き,ほとんどイーブンに近いスコアで後半戦へ突入する。今度はCT側となった「Cynthia」だが,1stラウンドを落としてしまい,AWPなどの強力な装備を十分に整えることができない状態が続き,「PARANOID」の勢いを止めることができないまま,最終ラウンドを迎えることなく敗北が決まってしまった。途中,相手の裏をかきポイントを取ったラウンドもあったが,「PARANOID」の「KeNNy」「noppo」両選手の活躍などにより,流れを取り返すまでには至らなかった。

 「4dN.psymin」の元メンバーであり,「PARANOID」の中心メンバーである「KeNNy」選手は,過去に4度WCGのグランドファイナルに出場しているトッププレイヤーで,国内だけではなく海外のプレイヤーからも一目置かれる存在だ。また,「PARANOID」でリーダーを務める「qiloth」選手も,昨年に続いてのグランドファイナル出場となった。二人に本戦に対する意気込みと今後の課題について聞いてみたが,「初めてのヨーロッパの大会ということで非常に楽しみ。良い結果を出せるようベストを尽くしたい」「オフラインでメンバーを集めて満足な練習を行うことができないのが大きな課題」と語ってくれた。このあたりは個人競技ではなく,チーム戦における難しさなのだが,個々の練習とオンラインでのチーム練習を最大限に生かして,グランドファイナル本番に臨んでもらいたい。

優勝したクラン「PARANOID」のメンバー(左)と,惜しくも敗れた「Cynthia」のメンバー(中央)。


BenQ Japan社長 マーティン・モーレ氏
 以上の試合をもって,WCG2006日本予選の幕が降ろされた。日本代表となった11名の選手は,日の丸を背負い世界約70か国,およそ700人の強豪プレイヤーが集結するグランドファイナルにて熱い戦いを繰り広げることになる。本番までにはまだひと月以上の時間があるが,悔いの残らないよう残された時間を有効に使い,決勝の舞台に備えてほしい。日本予選の締めくくりとして,BenQ Japan社長のマーティン・モーレ氏からの「この大きなイベントを楽しんで来てほしい」という言葉にあったように,代表選手達には,世界中のプレイヤーと交流を持って「Have fun!」(楽しもう!)と,声を掛け合い,ゲームを共通の言語として楽しむ経験をしてもらいたい。「Good luck!」「Have fun!」日本代表選手の幸運を祈りつつ,我々もWCG2006グランドファイナルの開催を楽しみに待つことにしよう。(ライター:Crize)

左から:パンヤ上位入賞者,CS部門で優勝したクラン「PARANOID」,日本代表選手全11名による記念撮影

スカッとゴルフ パンヤ
■開発元:Ntreev soft
■発売元:ゲームポット
■発売日:2005/05/27
■価格:無料(アイテム課金),フロンティアグルーヴ販売のパッケージ版は2100円(税込)
→公式サイトは「こちら」
ハーフライフ:カウンターストライク正式ライセンス版
■開発元:N/A
■発売元:サイバーフロント
■発売日:2001/03/09
■価格:5800円(税別)

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2006.09/20060904204013detail.html