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HUE COOに聞く,「グラナド・エスパダ」一周年とHUEの今後3年間の展望
2007/06/28 18:11
Song, Jin-ho (ソン・ジンホ)氏:EA Korea設立時のセールスマネージャを経て,Hanbitsoftゲーム事業総括理事に。その後,米国ペンシルバニア州Arcadia Universityにて経営学を学び,2005年5月にHUEの取締役COOに着任した
 来たる7月21日,ハンビットユビキタスエンターテインメント(以下,HUE)が運営するMMORPG「グラナド・エスパダ」(以下,GE)が,正式サービスの開始から1周年を迎える。本作は,2006年における韓国産MMORPG「BIG3」として日本でも注目を集め,また同年末には早々に基本プレイ無料+アイテム課金制へと移行するなど,何かと話題となってきた。

 今回,HUE取締役COO ソン・ジンホ氏に,GEが一周年を迎えるにあたっての感想や,一周年記念として行われるイベントやアップデートについて,またHUE自体の2007年後半を含めた今後3年間の展開について聞いてみた。


■GEを展開するにあたって,基本となる三つのテーマ

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。日本におけるGEの正式サービス開始から一周年を迎えるということで,まずはおめでとうございます。

ソン・ジンホ氏(以下,ソン氏):
 ありがとうございます。GEは2006年の7月21日にサービスを開始しましたので,あとひと月足らずで一周年ですね。こんなに早く時間が過ぎるとは思っていませんでした。

4Gamer:
 この1年間,GEにはさまざまなことがありましたよね。

ソン氏:
 そうですね。この1年の間には,いくつか大きな節目がありました。昨年7月に正式サービス開始,12月には基本プレイを無料化してアイテム課金制を導入しました。2007年に入ってからは1月に大型アップデートを行い,GE2.0にバージョンアップしましたね。加えて来月7月にも,大型アップデートを行う予定です。

4Gamer:
 1年を振り返ってみると,いろいろ思うところがおありだと思いますが。

ソン氏:
 ええ。そうした節目も含めて,この1年間,GEは三つのテーマに沿ってサービスを提供してきました。一つめは,日本のプレイヤーのためのコンテンツを追及すること。二つめは,コミュニティを強化すること。そして三つめは,快適なプレイ環境を作るために,不正ユーザーを除去することです。

4Gamer:
 それぞれ,もう少し具体的にお話ししていただけますか?

ソン氏:
 まずコンテンツの話をしましょう。実は私も先日調べて驚いたのですが,正式サービス開始前に実装されていたマップは,全部で25か所でした。ところが今では有料ダンジョンも含めて44か所になっています。ほぼ2倍近くになっているわけですから,開発スタッフのこの1年間における努力はもちろんのこと,その最中に彼らが飲んだコーヒーの量も凄いことになっていますよ(笑)。

4Gamer:
 オフィス内で喫茶店を開いたら,大繁盛しそうですね(笑)。

ソン氏:
 次に,コミュニティの強化について。今年2月と4月に,各党の結束を促すために,党対抗のランキングイベントを行いました。5月には,そのランキングでトップを飾った党のオフラインミーティングを支援するイベントを実施しています(関連記事)。続いて6月にも,党対抗の大規模なPvPイベント「ワールドトーナメント」を開催しました。こうした党の結束を強める各種のイベントを通じて,私自身もオンラインゲームにおけるコミュニティの大切さをあらためて感じているところです。

4Gamer:
 おっしゃるとおり,党というコミュニティに属すること,またイベントなどで党内の結束を強めることにより,GEはさらに楽しめる内容になっていると思います。ただ,それは主にキャラクターがレベル100,あるいはベテランに達している既存のプレイヤー同士の結束に対して言えることで,一方では新規プレイヤーが入り込みにくくなっている要因にも思えるのですが。

ソン氏:
 そうした点については,公式サイトで党専用掲示板を提供することによって対応しています。党専用掲示板を利用すれば,新規にGEを始めてまだまだキャラクターのレベルが低いプレイヤーであっても,ベテランプレイヤーの教えを請うことができるでしょう。
 また,今回の一周年記念イベントの中にも含まれていますが,定期的に「お友達紹介イベント」を実施しています(関連記事)。今回は,紹介されてGEを新規に始めたプレイヤーのキャラクターがレベル29になれば,紹介した側と紹介された側それぞれに同じコスチュームアイテムをプレゼントします。そのように新規プレイヤー開拓の努力も続けていますよ。

4Gamer:
 その友達紹介イベントについてなのですが,GEは基本プレイ無料で,一人のプレイヤーが複数のアカウントを取りやすく,またMCCというシステムを採用していることで,敢えてほかのプレイヤーと協力しなくとも,比較的容易にレベルアップできてしまいますよね。
 少々重箱の隅を突くような質問になってしまって恐縮ですが,友達紹介という趣旨にもかかわらず,既存のプレイヤーが,アイテムだけを目的に別途新規アカウントを取得してしまってはいませんか?

ソン氏:
 HUE社内でもそうした懸念は出ています。そして,これを考慮した結果,新規プレイヤーがキャラクターをレベル29まで成長させる,という条件をつけているわけです。もちろん,そうした行為を完全に防止できるとは思っていませんが,レベル29というのはそれなりにプレイ時間を必要としますから,期間内に,一人のプレイヤーが多数のアイテムを取得することは困難でしょう。

一周年記念10大イベントの中の,「オソロで着ちゃおう! お友達紹介プレゼント」の賞品。「GEWP コスチュームデザインコンテスト」で入賞したデザインの衣装だ


4Gamer:
 さまざまな方向から検討した結果,現在の内容に落ち着いたというわけですね。それでは三つの柱の最後,不正ユーザーの排除について教えてください。何やら「クリーンキャンペーン」を実施するというお話を小耳に挟んだのですが。

ソン氏:
 私自身,業務の合間を縫って,時間の許す限りプレイヤーの皆さんのコミュニティサイトを拝見して感想や意見を参考にしているのですが,その中で一つ,非常に気になっていることがあります。というのは,BOTやRMTなどを利用する不正ユーザーへの対応についての意見です。
 「HUEは不正ユーザーの取り締まりに興味がない」「不正ユーザーを放置している」といった意見が多く見られるのですが,実際には,運営スタッフは日夜頑張って不正ユーザーの排除に努めています。したがって,あらためてプレイヤーの皆さんに,その事実をお知らせする必要性を感じたのです。

4Gamer:
 プレイヤーの目に見える部分と事実とは異なっているということですね。

ソン氏:
 はい。2006年12月末までに2万件以上,2007年に入ってからは毎月3000件前後の不正ユーザーを排除しています。BOTとRMTについては,引き続きGMによるインゲームのパトロールを強化していきますよ。
 また,海外IPからの接続もブロックしています。これについては,これまで公式にアナウンスしたことがないため,本日初めてお話しすることになりますが,すでに中国と台湾からの接続はできなくなっており,今後韓国と香港のIPもブロックする予定です。またプロキシを通した接続に対しても,選別してブロックするシステムを準備しています。

4Gamer:
 IPブロックは,基本的な策ではありますが,確かに必要かもしれませんね。

ソン氏:
 さらに,これも本日初めてお話しするのですが,「監獄ゾーン」の導入を予定しています。これは韓国では先日実装されており,日本では8月頃となる予定です。具体的なシステムは,例えばゲーム内で不正を行っているらしきプレイヤーキャラクターが発見されたとしましょう。GMは,そのキャラクターを強制的に監獄へと送り込むことができます。一度監獄に入れられたキャラクターは,与えられた特定のクエストをクリアしないと外に出られません。

4Gamer:
 監獄から解放される手段が,クエストのクリア,というわけですね。他社のオンラインゲームだと,そうしたクエストを簡単にクリアしてしまう手法を見出すのに長けた不正ユーザーも見受けられますが,何か対応策はお考えですか?

ソン氏:
 その点については,クエストクリアの条件を非常に厳しく設定することで対応しています。例えば,あるアイテムを1000個集めるクエストだったとすると,それだけでも十分厳しいですが,もし1001個集めてしまった場合にはそれだけでアウトです。つまり,ぴったり1000個でないとクリアできないんですね。

4Gamer:
 今のお話だと,不正ユーザーを監獄に送り込めるのはGMのみのようですが,政治システムの構想のあるGEですし,将来的にプレイヤー自身が実行できるようにはなったりしますか?

ソン氏:
 実は韓国では,選挙で王党派と共和派の代表として選ばれた党に,そうしたパトロール権限を与えるという案も出ています。ただし,具体的にいつからというのは,今のところ未定ですね。

4Gamer:
 将来的には,日本でも派閥の代表に選ばれた党に,パトロール権限が与えられる可能性もあるということでしょうか?

ソン氏:
 そうですね……,韓国で導入されれば,日本でも可能性はあります。ただ,韓国と同じ権限を持たせるかどうかについては検討する余地がありますし,また日本では,まだ選挙自体が行われていませんから,現時点ではなんとも。なお,選挙については7月10日の大型アップデートを終えた後に実施する予定となっていますが,これも韓国の事例を踏まえて,日本では少し異なる形式にすることも検討しています。現時点では申し訳ないですが,はっきりとは言えないですね。


■一周年記念イベントと今後行われる3回のアップデート

4Gamer:
 それでは,一周年記念イベントについて教えてください。十大イベントを実施するとのことですが,現在は先ほどお話に出た友達紹介も含めて,六つしか公開されていませんよね。

ソン氏:
 未公開のイベントのうち,一つは7月21日,すなわち昨年正式サービスが開始されてから1年経った,まさしく記念日に実施する予定です。いわゆるサプライズイベントなので,内容に関しては当日までご容赦ください。
 そのほかの三つについては,シーズンに合わせた七夕イベントなどを予定しています。これらについても,一気に全部発表してしまってはプレイヤーの皆さんが抱く期待感も薄れてしまうでしょうから,今後順次公開していきます。いずれもサプライズ要素が強いものですから,皆さん楽しみに待っていてください。

4Gamer:
 分かりました。それでは,すでに公開されているイベントについてお聞きします。最もプレイヤーの注目を集めているのは,やはり「サムライコスチューム」の販売だと思うのですが,これが採用された経緯について教えてください。

ソン氏:
 企画が出たのは約3か月前ですね。韓国の開発のトップであるキム・ハッキュと「日本のプレイヤーに一周年記念の感謝の意を表すにはどうすればいいか」という相談をしたんです。その結果,日本独自のコスチュームを作ろうということになり,ゲイシャやスモウレスラーなどさまざまな案が出ました。その中で,最終的にサムライに決めました。

4Gamer:
 芸者や力士も,ちょっと見てみたい気がするのですが,侍に決定した理由は,どういったものでしょうか?

ソン氏:
 今回は,ゲーム内の主人公的な存在であるファイター専用として企画したという理由があります。ファイターに最も相応しいのは,やはりサムライでしょう。

4Gamer:
 なるほど。それでは今後,例えばスカウト専用として忍者のコスチュームが登場する可能性もあったりするわけですか。

ソン氏:
 GEではないのですが,HUEで運営している「ネオスチーム」には,すでにニンジャアイテムが実装されていますよ。私自身も,個人的に「NARUTO」(週刊少年ジャンプ連載)が大好きなので,GEのニンジャコスチュームもいいですね(笑)。

4Gamer:
 ぜひいつか,お願いします。

これが話題の,一周年記念サムライコスチュームセット


4Gamer:
 では,次の質問です。一周年イベントと並行して,7月10日に,大型アップデート「バハマルの魔女」が実装されますよね。この内容について教えていただけますか?

ソン氏:
 まず,バージョンは2.2.2になります。魔女の住む湿原地帯のマップが追加され,さらに「エンジ」「ビキ」という二人のNPCが追加されます。当然,それらに合わせた新しいクエストも追加されます。

4Gamer:
 韓国では,実装されてから少し時間が経っていますが,評判はどうでしょう?

ソン氏:
 非常に評判がいいという報告を受けていますよ。かなり話題になっているようです。

4Gamer:
 もう少し,内容について具体的なことを教えてもらえますか?

ソン氏:
 NPCのうちエンジは,ジャックの姪という設定で,砲台やフェンスを召喚する「コンストラクション」などのスタンスを使います。一方のビキは,ラミロやティビュロンと同様の幼い外見のNPCで,モンスターを召喚できるまったく新しいスタンスを使います。とくにビキを編入するための条件はかなり厳しくなっているため,韓国では非常に挑戦しがいのあるクエストとして評判を呼んでいます。

4Gamer:
 条件が厳しい……とおっしゃいますと?

ソン氏:
 高レベルキャラクターが必須となることは当然として,さらに必要になるアイテムを集めるのに党全体で協力する必要があったり,アイテムのドロップ率が極めて低かったりといったところですね。そのため,韓国ではクリアに向けて,日夜プレイしている党も多いそうです。

4Gamer:
 なるほど。お話を伺っていると,以前のグラングマ編入クエストに近い感じがしますね。

ソン氏:
 そうですね。そこにトルシェー博士が登場するストーリーが絡んできて,非常に面白く仕上がっています。

4Gamer:
 トルシェー博士が出てくるということは,GEに隠されたストーリーが,また一つ明らかになりそうな雰囲気ですね。ただ,クエストクリアの条件があまり厳しいと,日本のプレイヤーは挑戦する以前に諦めてしまう場合も多いので,できればやさしめに調整していただきたいところですが。

ソン氏:
 もちろん,日本に合わせた,そういった調整も検討していますよ。

新NPC,ビキ。彼を仲間にするのは,かなり大変そうだ


4Gamer:
 また関連して,日本でのGEの人気の中心は,魅力的なNPCやコスチュームであるといえます。バハマルの魔女以降も,そうした魅力的な要素が継続的に追加されていくと考えていいのでしょうか?

ソン氏:
 新規マップや新規NPC,新規コスチュームを継続的に追加するのは,当然やらなければならないことです。それを踏まえたうえで,プレイヤーの皆さんの意見や要望を取り込んでいきたいと考えています。そのために,過去にはイラストコンテストを行い,デザインされたコスチュームを実際にアイテム化してイベントのプレゼントにしたり,ゲーム中のローディング画面に表示させたりといったことを行っています。このようなプレイヤー参加イベントは,今後も行っていきたいですね。

4Gamer:
 具体的には,どのようなことをお考えでしょうか?

ソン氏:
 先日,HUEの日本人スタッフに,「日本人プレイヤーの一人として,GEに何を望むか」というテーマで意見を募集しました。すると「GEは音楽が優れているので,ゲーム内で自由に選曲できる環境を作ってほしい」という意見が出ました。そこで例えば「カラオケボックス」のようなところを作って,自由に音楽を聴けるようにすることも検討しています。
 一方では,コミュニティ強化のために温泉をモチーフにしたマップを作るのはどうだろうというアイデアも出ていました。そういったアイデアを韓国の開発スタッフと検討し,実現させていきたいと考えています。

4Gamer:
 では,バハマルの魔女の後は,どういったアップデートが予定されているでしょうか?

ソン氏:
 「スーパーファイト」,さらにその後「十人の貴族の秘密」というアップデートを予定しています。
 スーパーファイトについては9月に実装予定となっています。十人の貴族の秘密は,シナリオとNPCの準備に多少時間がかかるので,現状ではまだはっきりとした時期は分からないですね。バージョンは2.3以降になるのではないでしょうか。

4Gamer:
 スーパーファイト……ちょっと名前からは内容が想像できないのですが(笑),これはどういったものになるのでしょうか?

ソン氏:
 私も初めて聞いたときは,ファミコンソフトかと思ってとまどいましたよ(笑)。
 具体的に説明すると,まず1日に数回,時間限定で専用のミッションルームが出現します。このミッションルームは,レベル無制限で誰でも参加することができるPvPルームになっていて,一定時間が経過すると極めて強力なボスモンスターが登場します。そこでその場にいるプレイヤーキャラクターで力を合わせてボスと戦うか,それともあらかじめPvPでライバルを潰してから自分もしくは自分のスクワッド(パーティ)だけでボスと戦うか,といった選択ができます。

4Gamer:
 なるほど。現状のGEからすると,まずは実力派で知られる複数の党がミッションルームで争って,勝ち残った党だけがボスとの対戦権を獲得するといった光景が見られそうですね。

ソン氏:
 そうですね。ボスに関しては1スクワッドだけで倒せるのか,それともレイドを組まないと倒せないのかといったような調整は,まだまだこれからなのですが,いずれにしても党で協力してもらうためのコンテンツですね。

4Gamer:
 十人の貴族の秘密は,従来のように連続したクエストをクリアすることで一つのストーリーになるタイプと考えていいですか?

ソン氏:
 そうですね。その予定です。


■今年中に3本の新規タイトルを投入!
■話題を呼んだあのMMORPGも!?


インタビューには,GMチームのジャン・ウジン氏(右)も同席して,細かい情報を補足してくれていた
4Gamer:
 それではGEに限らず,今後のHUEの予定について教えていただけますか?

ソン氏:
 今年は,3本の新規タイトルのサービスを開始します。今までは日本市場に参入して基盤を作る準備段階でしたが,GEの一周年を節目として,本格的に事業展開していきます。そこでまず新規タイトル3本のローンチを成功させ,さらにそれぞれをメジャータイトル化させるのが目標ですね。

4Gamer:
 ソンさんは昨年末に,カジュアルゲームのサービスを考えていると仰っていましたが(関連記事),今お話しされた3本の新規タイトルには,そのときのものも含まれているのでしょうか?

ソン氏:
 ええと……,詳細を7月に発表しますので,それまで待っていただけますか? 準備は順調に進んでいるのですが,公開時期については現在社内で検討中です。

4Gamer:
 7月中に3本すべてが発表されるのですか?

ソン氏:
 いえ,段階的になります。まず1本目が7月に発表予定ということです。

4Gamer:
 3本ともオンラインゲームと考えていいですか?

ソン氏:
 ええ,そうですね。

4Gamer:
 おそらく3本の中にはMMORPGも含まれていて,4Gamerでもすでに何度か記事にしていると思うのですが……?

ソン氏:
 おっと,誘導尋問ですか?(笑) いやあ,どうでしょう,まぁそうかもしれませんね。

4Gamer:
 ガードが堅いですね(笑)。ちなみに,韓国ですでにサービスが開始されているタイトルでしょうか?

ソン氏:
 サービスされているものもありますし,今後予定されているものもあります。まあ7月まで楽しみにしていてください。

4Gamer:
 それでは話題を変えましょう。最初に,GEの一周年はあっという間だったというお話がありましたが,HUEが設立されてからは,もう2年半が経ちますよね。その2年半を振り返っての感想をお聞かせください。

ソン氏:
 法人としてのHUEの設立は確かに2年半前ですが,GEのスタートが遅れてしまったために,実際に事業を始めたのは1年前だと考えています。正直,1年でここまで来られたのは,HUE全体の頑張りがあったからこそと自負しています。しかし,それよりも今後迎える3年間がさらに重要であり,今まさにターニングポイントに立たされていると感じています。

4Gamer:
 では,このターニングポイントを越えて,今後御社はどう展開していくのか,重要という今後3年間のビジョンを教えてください。

ソン氏:
 先ほど述べたとおり,2007年は新規タイトルを3本追加することにより,計6タイトルの運営を行います。さらに,2008年は計10本,2009年は計14本と増やしていく予定です。このように,サービスタイトルのカタログを増やすことを当面の目標としています。
 具体的に考えているのは,これまでは時間に追われて開発を急ぎ,コンテンツも揃わず調整も不十分なままサービスを開始してきた例が多かったのですが,今後は開発にも十分な時間を取り,また社内でも調整を行って,完璧といえる状態にしてからオープンしていこうということです。まあ,これはあくまでも目標で,実現できるかどうかというと難しいところですが,こうした指針があるのとないのとでは全然違いますよね。

4Gamer:
 そうですね,確かに難しいとは思いますが,ぜひ挑戦してほしいと思います。
 しかし,2009年とはいえ,14本とは凄い数字ですね……。これまでの3タイトルは,HUEの中で,うまく住み分けができていると思います。しかし今後,6〜14タイトルと数を増やしていくと,HUE内でのパイの奪い合いが発生してしまうことも考えられますよね。そのあたり,どのようにお考えでしょうか?

ソン氏:
 こういうことを「カニバライゼーション」と言うのですが,最も単純な手段として,まずサービス開始の日程をずらします。また企業としてのポートフォリオを考えた場合には,商品ラインナップを揃えることもまた重要なことです。加えて,例えば一口にMMORPGといっても,それぞれ性格が違いますよね。GE,リネージュシリーズ,あるいはファンタジー系といったように少しずつ性格の違うラインナップを揃えることで,プレイヤーを奪い合うという事態は避けられると考えます。

4Gamer:
 今,MMORPGを例に挙げられていましたが,HUEとしては,今後もオンラインゲームにこだわっていくと考えてよいのでしょうか?

ソン氏:
 「選択と集中」という言葉がありますが,戦略を立てるにあたっては将来を見据えたビジョンが必要になりますし,そのためにHUE自体の力量も鑑みる必要があります。正直,今のHUEはオンラインゲームの分野では,メジャーになっているとはいえません。それなのに他分野に進出するのは,まだまだ力量不足でしょう。もちろん他分野進出も視野に入れてはいますが,まずはオンライン分野でメジャーになってから,ということですね。

4Gamer:
 分かりました。それでは最後に,読者,およびGEをはじめとするHUEのゲームのファンに,一言お願いいたします。

ソン氏:
 私が四六時中考えているのは,どうすればプレイヤーの皆さんに,楽しみを与えることができるのかということです。そのためにHUEのスタッフと,常に話し合いをしています。また実際にインゲームイベントも行っていますが,それを形式的なものにとどまらせず,本当にプレイヤーが心から楽しみ,喜んでいただけるようなものにしようと努力しています。
 またこれまで以上に,日本のプレイヤーの皆さんが喜ばれるようなコンテンツを提供していきたいと考えています。これからも愛情を持ってHUEを見守ってください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

※※※

GEの生みの親,IMC Gamesのキム・ハッキュ氏からもコメントをいただいたので,紹介しよう。
「今後のグラナド・エスパダに関して,もっとプレイヤー同士の関係を深めるコンテンツを多く作ろうというのが,IMC Gamesの基本方針です。近々導入予定の新システム,スーパーファイトがその代表的な事例となるでしょう。プレイヤー同士の対決と,協力を通じたコミュニケーションを同時に楽しむことができるはずです。またその後も,あまりストレスを感じずに誰でも楽しめるコンテンツを,継続的に用意していきます。さらに,新マップや新シナリオの追加を通じて,新大陸“グラナド・エスパダ”の新しい面と,本大陸のオルペシアから来た十人貴族の秘密が,一つずつ明らかになります。ぜひ,ご期待ください」
 GEの正式サービス開始から一周年。正式サービス開始当初は,開発の遅れによるコンテンツ不足と,それに伴って事前に発表されていた構想とは異なる内容から,クローズドβテストからGEを支持してきた熱心なファンの反感を買ったりと,色々あった1年だが,ここに来てグッと安定してきた印象が強い。
 それはアップデートによるコンテンツの充実もそうだが,インタビュー中でもソン氏が指摘しているとおり,2007年に入って繰り返し行われてきた,党ランキングイベントなどのコミュニティ強化に努めてきた結果,GEに定住するプレイヤーが増えたからではないだろうか。GEに関しては,今年中の大型アップデートスケジュールもすでに具体的なものとなっており,今後しばらくはこの状況が続くと考えていいだろう。
 またHUE自体の事業計画も,優れたビジネスマンたるソン氏の頭の中では,かなり先まで見通しが立っているようで,今後が楽しみである。GEの未来はもちろん,7月以降に発表される予定のオンラインゲームの新規タイトル3本にも期待したい。(ライター:大陸新秩序)





グラナド・エスパダ
■開発元:IMC Games
■発売元:ハンビットユビキタスエンターテインメント
■発売日:2006/07/21
■価格:基本プレイ料金無料,アイテム課金
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2007.06/20070628181139detail.html