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日本代表ギルドは初戦で敗退。ひどいラグに祟られた,世界チャンピオン決定戦1日目
2007/07/23 12:00
開会式開始1時間前のメインステージ付近。21日の試合はここではなく,ガーデンステージで行われる
 RWC2007については,日本代表ギルド決定戦の以前からコンスタントに情報をお伝えしてきたが,7月21日,世界最強ギルドの名誉と1万米ドルの賞金をかけて,各国代表ギルドによる激しい戦いが始まった。当初,全13ギルドが出場予定となっていたのだが,オープニングセレモニーの記事でもお伝えしたとおり,実際に参戦したのは11ギルドだ。
 21日には全部で7試合が行われ,ベスト4まで絞込まれる。そして翌22日に準決勝,3位決定戦,決勝戦というスケジュールとなっている。

 第一試合の開始予定時刻は10:45AM。それに先立って10:00AMから開会式が予定されていたため,日本代表ギルドは8:30AMには宿泊先であるHotel Lotte Worldのロビーに集合,メインステージ裏に用意された各ギルドの待機スペースに向けて移動を開始した。
 もちろん各国ギルドも同様のタイムスケジュールで動いたものの,時差の大きい国から来たギルドのなかには,かなり早めに目が覚めてしまい,朝の6時からホテル周辺を散歩していたギルドもあったとか。
 開会式が行われたのは,屋内スケート場である「アイスリンク」上にマットを敷き詰めて設営されたメインステージ。式そのものははごくあっさりとした内容で,まずRWC2007とは何かというごく簡単な説明に続いて,11か国の代表ギルドが順番にメインステージ上に登場。そして韓国の有名人による,Gravity Festival 2007およびRWC2007への応援ビデオレターが紹介されたあと,会場内に用意されたGravity運営作品のブースに詰めている,コンパニオンや着ぐるみがいっせいに壇上に上り,会場が華やいだところで終了だ。
 なお,開会式に用意された席の最前列には,昨夜のレセプションに現れたLEVEL UP! INTERNATIONAL COOのBen Colayco氏をはじめ、各国でROを運営するパブリッシャが並び,そのなかにはガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長 森下一喜氏の姿もあった。

写真上段:開会式前,各ギルドはステージ後ろの待機スペースに集まった。アメリカギルドはなぜか,「招き猫」の置物を持参していた。ぜひ勝利を招いてほしいというところか。その後,各ギルドは順番にステージに現れた
写真中段:地元韓国の代表ギルド(左)と,お揃いの黒いブルゾンが目を引いたフィリピン代表(右)
写真下段:「ラグナロクオンライン」「同2」「エミル・クロニクル・オンライン」のほか,韓国でβテスト中のアイスホッケーゲーム「Body Check Online」やRPG「Time&Tales」のコンパニオンと着ぐるみがステージに,ズラリと並んだ。ややスリムな韓国版タイニーに注目


■基本戦術は似たり寄ったり。チェイサーを選んだpunchはややマイナー系

1日目の試合が行われた,ロッテワールド3階のガーデンステージ
 日本代表ギルドの試合内容について解説する前に,軽くRWC2007のルールについて触れておこう。試合は前日(20日)のレセプションで行われた抽選の結果をもとにトーナメント方式で進行。予選トーナメントおよび準決勝までは一試合7分の3本勝負。2本先取したギルドが次の試合へコマを進められる。決勝戦だけは一試合10分で,5本中3本先取すれば優勝という,RWC2007日本代表ギルド決定戦などとは微妙に異なるルールが採用されている。
 各国予選ではルールの違いから職業構成にも多少バリエーションが見られたが,本戦ではどこもほとんど同じ職業で臨んでいた。基本はハイプリースト,ハイウィザード,クラウン,プロフェッサー,パラディン,チャンピオンの6名で,これに加えてジプシーかアサシンクロスを採用してるところが圧倒的だ。
 ドイツ代表は「最も使い慣れたキャラクター」という理由で,予選と変わらずスナイパーを起用したが,それ以外のギルドはほとんどがアサシンクロスがジプシー。チェイサーを見かけたのはタイのみだ。しかも,タイのチェイサーはクローンスキルによるストームガストではなく,武器や防具を解除してしまうストリップ系スキルを駆使していた。

 第一試合であるインドネシア代表 vs フィリピン代表の戦いを予選会場の「ガーデンステージ」で眺めていたpunchのメンバーは「緊張というより,ワクワクしてきました」と笑顔でコメント。初の英語クライアントでのプレイについて感想を聞いてみたが,とくに分かりづらいことは何もないと,頼もしい回答をくれた。

予選会場の席を後ろから見たところ(左)と,他ギルドの試合を観戦しつつくつろぐロシア代表ギルド(右)


■日本代表ギルドpunch無念の初戦敗退,抗議多発のラグ環境

 まずは日本代表ギルドpunchの戦いぶりから見ていきたい。punchの職業構成は強化合宿段階と同じで,ハイプリースト,ハイウィザード,クラウン,プロフェッサー,チャンピオン,パラディン,チェイサーというもの。ハイウィザードはランドプロテクター対策としてガンバンテインに集中し,チェイサーはクローンスキルでハイウィザードから取得した大魔法ストームガストで敵の凍結を狙う。そこに最大火力のチャンピオンが阿修羅覇凰拳を叩き込み,一撃必殺を狙うというスタイルだ。
 対する韓国代表ギルドはハイプリースト,ハイウィザード,クラウン,プロフェッサー,チャンピオン,パラディンと,ここまでは日本代表ギルドと同じだが,残る1キャラクターにチェイサーではなくアサシンクロスを選んでいた。ただし,細かく見ていくともう一つ大きな違いがあって,日本ではディボーションやプロボックを活用したサポート兼タンク役として働くパラディンが,韓国代表ギルドではプレッシャーを多用するタイプとなっていて,スキル構成は火力最重視の設定であるようだ。

 第2試合,日本 vs. 韓国の1戦目は,開始直後からお互い積極的な攻めの姿勢を見せた。しかしpunchは押されているのか,あるいはそれが作戦なのか,マップ端にある細い通路へメンバー全員がジリジリと後退していく。
 punchのチェイサーがストームガストで応戦するも,相手クラウンの寒いジョークで凍結を繰り返し,リカバーは遅れ気味に。そこへ韓国代表ギルドのチャンピオンが一人で突っ込み,繰り出す阿修羅覇凰拳によって一人また一人とメンバーを失い,全滅という形でこの勝負を落としてしまった。
 と,ここでpunchのメンバーが通訳を通して,Gravityスタッフに何事かを抗議する姿が目に入る。もしやマシントラブルによるRWC2004の悪夢再び? と気を揉んでいたのだが,試合はそのまま続行となる。2戦目の準備時間中,punchメンバーの表情は遠めに見ても明らかなほど,固く険しいものになっていた。

 2戦目はpunchもスタートと同時に前へ前へと出る,攻撃的な戦い方を採ったが,韓国代表ギルドはそれをも上回る勢いである。とくにパラディンはpunchの側のディボーションを断ち切るために,プレッシャーを連続で使い続けていた。やがて1戦目と同様,幅の狭い通路まで下がるpunchに,体勢を立て直させまいと韓国側アサシンクロスはソウルブレイカーで,クラウンまで音楽スキルの合間にアローシャワーを使う。追撃の手を休めない韓国代表ギルドは,ついにpunchのプロフェッサーを戦闘不能に追い込む。ランドプロテクターを失ってメンバーのほとんどが凍結すると,そこからは1分以内に残った6人のメンバーが倒されるという結末を迎えた。韓国代表ギルドは2本先取のストレート勝ちでコマを進めた。

 試合終了後も非常に不満げな表情で,何事かを通訳担当者に告げているpunchの面々。実はこのRWC2007本選のために用意された特設ワールドにはひどいラグが生じており,ベストを尽くすどころか普通にキャラクターを操作するのも難しい状況だったのだ。オンラインゲームでは派手なエフェクトが連発されたり,プレイヤーキャラクターが大勢集まったりするとラグが発生しやすくなるものだが,試合会場はこのイベントのためだけに用意されたエリアであって,選手は両チーム合計で14名にしかならない。
 しかし,今回の試合ではスキルを一つ使うたびに十数秒も画面がフリーズし,次の瞬間にはとんでもない方向に自分のキャラクターが取り残されていたり,ひどい場合その間に戦闘不能になっていたりしたという。

 実際,試合のスクリーンを観客席から見ているだけでも,試合中なのにキャラクターが何もせず立ち尽くし,いきなり数マス先までテレポートしたかのように動くといった状況が,たびたび見られた。ベストを尽くせたとはとてもいえない環境での試合に抗議したものの,Gravityスタッフからは「ラグがあるのは韓国代表ギルドも同じ条件」という,まあ一理あるといえなくもない見解に加えて,「韓国のROは通常サーバーでもこれぐらいラグがある。ラグはROの仕様だから再試合は認めない」と,驚くべき返答があった。結局,試合結果は韓国代表ギルド勝利のまま動かず,日本代表ギルドpunchは初戦敗退という,大変残念な結果になってしまった。



■不公平と思われた会場セッティングに各国ギルドから抗議

ひどいラグでとても勝負にならないと,通訳担当および自国パブリッシャの職員を通じて強硬に抗議する,ブラジル代表
 上述の試合経過だけ読むと「punchの負け惜しみでは?」と誤解する読者がいるかもしれない。だが,このラグ問題はあとあとの試合にまで影響を及ぼすこととなった。
 Aブロックでシード権を確保していたブラジル代表ギルドが,第1試合を勝ち抜いたフィリピン代表と対戦を始めると,試合途中からブラジルのメンバー数名が大きく腕を上げ,肩をすくめるジェスチャーをして通訳担当,そしてブラジルパブリッシャの担当者を呼び,Gravityスタッフに激しい抗議を始めたのだ。

 理由はpunchとまったく同じで,ラグがあまりにひどく,とうていまともな試合にならないというもの。そうした抗議が行われたのは,1本目が終わって2本目の試合が始まる前,本来ならば次の対戦に備えて消耗品を買ったりするはずの時間なのだが,ブラジル代表の抗議は続き,試合はいったん中断されてしまった。
 Gravity側は日本代表への説明と同じ内容を繰り返し,試合は再開される。とはいえ状況が改善されるわけもなく,ブラジル代表のメンバーは,2本目,まだ一部メンバーが生存しているにもかかわらず,次々と席を立って再び猛抗議を始める有様だ。次に試合が控えている韓国代表とロシア代表が試合前のセットアップのために壇上に現れるころになっても,納得のいかないブラジル勢は一歩も退かないといった態度を見せていた。

フィリピン vs. ブラジル戦の様子。フィリピンが2本奪取して勝利した


次の試合が始まろうというタイミングだが,なおもブラジル代表の抗議は続く
 また,本来であれば観客席から見て右側の対戦席で戦う予定だったドイツ代表ギルド,ロシア代表ギルドが「右側のPCでトラブルが起こりやすいのでは?」と疑念を抱き,左側対戦席でのプレイをスタッフに要求するなど,ラグが引き起こしたトラブルは,その後の試合全般に大きな影響を及ぼすこととなった。
 ただし,左側対戦席に着いたロシアは右側の韓国に敗れており,左右のポジションが与える影響は,実際のところそれほど大きくなかったようだ。まあ,どちらの席でもひどいラグに見舞われる点で,とりたてて違いはなかったということである。

 すでにアメリカ代表との試合に勝利し,他国の試合を見学していた台湾代表ギルドに「本当にラグはそこまでひどかったのか?」と質問をぶつけてみたところ,「確かにラグはひどいけれど,台湾では普段ROをプレイするときも似たようなものなので,慣れている。劣悪なプレイ環境での経験の有無による,ラグに左右されにくいスキル選択も実力のうちといえる。だからこの試合がアンフェアとは思わない」とのことだった。しかしこれは,勝者だから言えるセリフであろう。競技性を大きく損ない,いわば運不運が試合を強く左右する原因となるラグを,やはりそう簡単に容認するわけにはいかないと思う。ベストを尽くして負けたのではなく,全力を出しきることすらできないまま敗退したと感じたギルドの気持ちを考えれば,万全のプレイ環境を用意できなかった運営側の責任は,軽いとはいえないだろう。

右側対戦席に着いたギルドが立て続けに敗れ,ラグのひどさを訴えたことから,ロシアギルドは左側対戦席に着くことを主張し,容れられた。ただし,左右は本質的な問題ではなかったようで,この試合は韓国ギルドの勝利に終わった


 このほかにも,試合の合間にロッテワールド側の一般客向けイベントとして,会場を練り歩くパレードが始まり,その音楽があまりに大音響すぎて声が届かないどころか,ボイスチャットもかき消されるため,試合開始が数分延期されるなどという事態も生じた。
 また,アメリカ代表 vs. 台湾代表の第一試合では,台湾ギルドの頭上にギルドエンブレムが表示されないまま試合がスタートしてしまい,無効試合となるなど,結果として運営サイドの問題が非常に目立つイベントとなった。



■優勝候補台湾がまさかの敗退,波乱のRWC2007

 1日目の試合日程を通して,ベスト4進出を決めたのはフィリピン,ドイツ,韓国,タイであり,優勝候補と目された台湾勢の姿はない。台湾代表ギルドは,なんとCブロック代表をかけた第7試合で1本目こそ勝利したものの,2本目,3本目を連続で落としてドイツに負けてしまったのだ。
 各国事前情報の記事でもお伝えしたとおり,ドイツ代表は本戦でもスナイパーを活用する戦術に出た。台湾のプロフェッサーをファルコンアサルトで執拗に狙い撃ち,詠唱妨害を試みるなど後方から地味ながら確実な支援を行い,その隙を狙ってドイツのチャンピオンが台湾のプロフェッサーを戦闘不能にするという見事な連携プレイで台湾ギルドを撃破。近接戦闘と異なり,遠距離からの支援攻撃はラグで蒙るリスクが小さい。ラグの影響を覚悟のうえで敵陣に斬り込むチャンピオンの負荷を減らすのに成功したことが,ドイツ代表ギルドの勝利に貢献したと思われる。いずれにせよ,RWC2007の行方はこれですっかり分からなくなった。

 ともあれ,7月22日には世界最強ギルドを決める決勝戦が,アイスリンクのメインステージに会場を移して行われる。どのギルドが優勝するとしても,最高のプレイヤースキルを駆使して,悔いのない試合を行ってほしいものである。(ライター:麻生ちはや)


おそらく本大会で最大の番狂わせ,台湾の敗北。スナイパーを有効に使うドイツが,優勝候補と目された台湾勢を打ち破った


■日本代表ギルドpunchを応援してくれた全員にありがとうを

 最後に試合終了後のpunchへのインタビューをお伝えしよう。予想もしない理由での敗北によるショックから立ち直り,気持ちの整理がついたタイミング,1日目の夕食時に,今回の顛末に対するコメントと,今後の活動について聞いたものだ。

4Gamer:
 punchのみなさん,お疲れ様でした。予選を突破することはできませんでしたが,今の気持ちを聞かせていただけますか。

punch:
 残念な結果になってしまいましたが,自分達なりにベストは尽くしました。韓国代表ギルドは強かったですよ。

4Gamer:
 試合途中,ラグのひどさについて抗議していたようですが。

punch:
 スキルを何か一つ使うたびに,画面がフリーズしてしまうというひどさで,ふだんとはまったく勝手が違うプレイ環境でした。第1試合のフィリピン vs インドネシア戦を見て,ラグのひどさは想像できたので気をつけたつもりでしたが,スキル使用のタイミングや,キャラクターの位置情報のズレは,想像以上にひどくて対応できませんでした。

punch:
 ラグについてはもう,あまり思い出したくないですね。あの環境に慣れない限り,punchが何度戦っても韓国代表ギルドには負けるでしょう。

punch:
 ただ,同じプレイ環境で韓国代表ギルドは思いきりよくこちらに飛び込んで攻めて来て,そのパワーには圧倒されました。やっぱり強いですよ,韓国ギルド。
 がんばって勝ち抜いて,人が少ないUrdrワールドの宣伝をしたかったので,とても残念です。

4Gamer:
 RWCや日本のRJCのようなオフラインイベントが来年も行われたら,同じメンバーで出場しますか?

punch:
 全員が揃うとは限りませんが、このメンバーがROを続けている限り,同じチャレンジをしたいです。国内大会なら負けません(笑)。

4Gamer:
 明日の決勝でみなさんの姿を見られないのは本当に残念ですが,ここまでの経過を振り返って,コメントをお願いします。

punch:
 RWC2007で日本代表ギルドを支えてくださったみなさん,応援してくれた方々に,本当にありがとうございました。


ラグナロクオンライン
■開発元:Gravity
■発売元:ガンホー・オンライン・エンターテイメント
■発売日:2002/12/01
■価格:プレイ料金:1500円/月(税込)
→公式サイトは「こちら」

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