Henri Richard氏(Executive Vice President and Chief Sales and Marketing Officer, AMD,左)とRick Hegberg氏(Senior Vice President, World Wide Sales, ATI Technologies,右)。写真のとおり,和気あいあいとした雰囲気
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日本AMDとATIテクノロジーズジャパン(以下ATI-J)の両社,つまりAMDとATI Technologies(以下ATI)それぞれの日本子会社は,2006年7月24日の記事でお伝えした合併についての国内発表会を開催した。 本発表会では,AMD本社の執行副社長兼ワールドワイドセールス/マーケティング最高責任者のHenri Richard(ヘンリ・リチャード)氏と,ATIのワールドワイドセールス担当上級副社長のRick Hegberg(リック・ヘグバーグ)氏が並んで登壇。AMDとATIの今後について,二人でビジョンを説明するというパフォーマンスを披露した。
Richard氏は,今回の合併により,コンピュータ関係のあらゆる技術を結集した組織が生まれると強調。続けてHegberg氏が,AMDとATIは見事なまでに相互補完的な存在であり,お互いが不足していた部分を補い合って,すべての市場でシェアを拡大していくことが可能だと述べた。
■ATIブランドは継続! ■ATIの製品も可能な限りすべて継続へ
2006年7月24日の記事で紹介したのとほぼ同じスライドだが,発表会でも示されたので再掲。「これを見てもらえば,日本でブランドイメージがいかに高く,また日本がいかに重要な市場か分かる」とはHegberg氏
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ただ,4Gamerとして,最も注目すべきは「合併後のATI」について,かなりのビジョンが示されたことだろう。以下はQ&Aセッションにおける両氏の回答を抜粋したものだが,AMDのRichard氏は「ATIの製品に,AMDの製品と相乗効果を生まない製品はなく,すべてが新生AMDの戦略にとって重要だ」と述べ,ATIの製品ロードマップに変更は生じないと説明。さらにHegberg氏は「ATIは,日本における知名度も高く,ブランドイメージも高い。合併後におけるAMD&ATIのマーケティングの責任者として,AMDにとって意味のあるときには,ATIのブランドを積極的に使っていきたいと考えている」と,ATIブランドの継続を公言した。
もちろん,現時点では合併が発表されただけなので,「何に」「どのような形で」ATIの名が残ることになるのかは分からない。だが,「製品ロードマップに変更はなく,これまでATIがやっていた事業についても,もちろん変更はない」(Hegberg氏)とのことなので,これまでのATI製品には,(チップセットは微妙かもしれないが)たいていの場合,ATIのブランド名が冠されることになるのではなかろうか。 “GPU(グラフィックスチップ)戦争”を見るときに,赤対緑(ATI対NVIDIA)なのか,緑対緑(AMD対NVIDIA)では,意味合いもずいぶん変わってくるだけに,製品ロードマップ,そしてATIブランドの継続が示されたことは,ゲーマーとして歓迎したいところだ。
ただし,チップセットに関してだけは,第三者――Intel――が絡むだけに,流動的との姿勢が示された。 ATIは現在,Intelのバスライセンスを取得して,Intel製CPU向けの製品を販売している。ロードマップにはCore 2 Duo対応版もあるが,「ATIは今後も,顧客が望む限り,Intel製CPU対応版のチップセットを提供していく。それがAMDとATIのスタンスだ。だが,Intelがどう考えるかは分からない」(Richard氏)とのこと。AMDとATIが望むと望まざるとにかかわらず,Intelの出方次第で,チップセットビジネスだけは方針転換の行われる可能性がありそうである。
■2005年のCOMPUTEXから少しずつ温められてきた ■合併話
2007年に登場する製品について言及するスライド。本文にあるノートPC用プラットフォームのほか,発表会では触れられなかったが,ゲームとマルチメディアに特化した製品の予定もあるようだ
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合併の効果がいつ出てくるかだが,今回の発表会では,2007年には,ATIが強みを持つバッテリー管理能力を生かしたノートPC用の製品が登場する可能性が示されている。あくまで想像だが,3Dグラフィックスとビデオ処理能力に優れたノート用のプラットフォーム,みたいなものが出てくるとすれば,これはなかなか面白いことになるだろう。
ちなみに合併の話は,2005年のCOMPUTEX TAIPEIを機に,少しずつ温められてきた話とのこと。同イベントで両社は,より強力なパートナーになるべく協力していくことが確認され,そのうちにAMDから合併の申し入れをするに至ったのだとか。 もっとも,買収の決定自体はやはり,かなりギリギリの話だったようで,ATI-Jには2〜3週間前,日本AMDには2006年7月24日の朝まで,最終的な話はなかったとのことだった。
握手をするAMDとATIの面々。中央の2名は,左が日本AMD代表取締役社長のDavid M.Use(ディビッド・ユーゼ)氏,右がATI-J代表取締役社長の森下正敏氏
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実際の合併プロセスはまさにこれから。日本法人がどうなって,国内の体制がどのように変わるかは,2006年第4四半期とされる合併終了まではまだ見えそうにない。 それでも,ATIブランドが継続される見込みであること,AMDとATI(とくに買収される側のATIとATI-J)が,事態をポジティブに捉えているように見えた点は,ひとまずよかった,と書いておくべきだろう。短期的には何らかの混乱があるかもしれないが,Radeonの今後に一抹の不安を抱えていた人は,胸をなで下ろしていいかもしれない。 ATIとNVIDIAが戦いを繰り広げてこそ,グラフィックスカード市場,ひいては3Dゲーム市場が盛り上がる。新生AMDには,手綱を緩めず,突き進んでほしいところだ。
あとできれば,リテールパッケージ版Athlon 64シリーズの流通網を使うなどして,Radeonシリーズ搭載グラフィックスカードの価格を,海外市場と同程度まで下げてくれれば,言うことなしなのだが。(佐々山薫郁)
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