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[GDC07#14]“本命”不在のデベロッパーズチョイス・アワード,PCゲーム&日本勢の結果は?
2007/03/08 23:50
 GDCでは毎年恒例となる,現地時間の3月7日8:30PM(日本では3月8日1:30PM)に開催されたばかりの「デベロッパーズチョイス・アワード」(以下,DCアワード)の表彰結果をお伝えする。これは文字どおり,ゲーム開発者達が選ぶゲームの賞で,受賞するのは(いわゆる“外からの圧力”が働きにくいこともあって)非常に名誉なこととされている。

 会場となったのは,GDCが行われているモスコーニ・センターのSouthホール。……といってもピンと来ないと思うが,このホールには“Esplanade”という,数千人は入っちゃうんじゃないかと思われる実に巨大なホールがあり,そこがほぼ満席という大観衆の中,賑やかに,そして派手に進行していった。

 さて,今回のノミネート作品を眺めると,PCゲームは4Gamerではお馴染みの「The Elder Scrolls IV: Oblivion」,家庭用ゲーム機の日本勢はWiiの「Wii Sports」,そしてPlayStation 2の「大神(OKAMI)」がそれぞれ4部門でノミネートしているくらいで,全体的にばらけている印象。前回(2006年開催,つまり2005年分)は「Shadow of the Colossus」(邦題 ワンダと巨像)と「God of War」(邦題 ゴッド・オブ・ウォー)がそれぞれ6部門にノミネートされ,結果Shadow of the Colossusが五冠に輝いたことを考えると,今回(2006年分)は,大物不在の感は正直否めない。
 この状況の中で,Best Game(大賞)の最有力候補とされていたのは,Xbox 360タイトルである「Gears of War」だ。Unreal Engine 3を採用したタイトルとして,4Gamer読者にも知っている人は多いだろう。本命といえば確かに本命だが,ノミネートは3部門にとどまっており,前回のShadow of the Colossusと比べると,やや小ぶりの印象を受ける。

 ……とまぁ,ちょっぴり地味めのラインナップだったが,そこで目立っていたのが,一人の日本人,任天堂の宮本茂氏である。もはや押しも押されぬ世界的クリエイターである宮本氏は,現地時間の3月8日にEsplanadeホールでKeynote(基調講演)を行うことになっている。これまた大勢の観客(聴衆者)を呼ぶのは確実だろうと目されているのだが,その前日のDCアワードでもEsplanadeホールを大いに沸かせていた。いかに沸かせていたのかは,彼の受賞内容と共に,後述することにしよう。

 ここで,4Gamerとしては忘れちゃいけない,PCゲームに話題を移そうと思うのだが,前述のThe Elder Scrolls IV: Oblivionが4部門にノミネートしているくらいで,あとは「Company of Heroes」(邦題 カンパニー オブ ヒーローズ)がやっとこさ2部門にノミネート。そして,……じらしていても仕方がないのでズバリ結果を書いてしまうと,どちらも1部門すら受賞できなかった。実に残念である。
 ではPCゲームは無冠かというと,まぁ確かにゲームだけで見れば無冠なのだが,「Titan Quest」(邦題 タイタン クエスト 日本語マニュアル付英語版)を制作したIron Lore EntertainmentがNew Studio賞(つまりは新人賞)を獲得しているので,なんとか2年連続の全敗(?)は免れたといっていいのではないだろうか。

(左)The Elder Scrolls IV: Oblivion,(中央)Company of Heroes,(右)Titan Quest


 さて,気持ちを切り替えて,主な結果を順に紹介していこう。

■Best Game of 2006:「Gears of War」

 下馬評どおり,Gears of Warが受賞。同作は,Technology賞およびVisual Arts賞も受賞しており,ノミネート部門はすべて制したことになる。
 一応簡単に紹介しておくと,Gears of Warは,SFの世界観を採用した三人称視点のアクションゲーム。Xbox 360で最も売れたタイトル&最も早く100万本を達成したタイトルとして知られており,4Gamerとしては,「早くPCに移植してくれよ」という賛辞(?)を送っておこう。

■Lifetime Achievement賞:宮本茂氏

 ゲーム業界の功労者に贈られるLifetime Achievement賞に輝いたのは,日本が誇るクリエイター,宮本茂氏である。この日,宮本氏は大活躍で,Innovation賞とGame Design賞の二冠となったWii Sportsの受賞でも登壇しており,観客の前に出るのはこのLifetime Achievement賞のときで3度め。しかし個人に向けた賞のためか,前2回以上に,会場が割れんばかりの大きな拍手で迎えられた。見渡す限りすべての観客が,スタンディングオベーションで氏を称えていたのが印象的だった。
 なお余談だが,DCアワードの合間合間には,ゲームキャラクターのコスプレをしたコメディアンが,そのキャラクターの行動をまねて,街ゆく人を驚かせる(困らせる?)という映像が流されていた。その最後の映像に出てきたのが,マリオ&ルイージの兄弟。この二人が,またもや誰かを驚かせようと走っていくと,その先でしかめっ面をして立っている人が……そう,宮本氏その人だったのだ。観客達は大いにウケた,というのは言うまでもないだろう。



■First Penguin賞:Alexey Pajitnov氏

 全受賞者の中で,宮本氏のほかにもう一人,観客ほぼ全員によるスタンディングオベーションを受けた人がいた。それが,このFirst Penguin(サメが待っているかもしれない海に,最初に飛び込む勇気あるペンギンの意)賞を獲得した,Alexey Pajitnov(アレクセイ・パジトノフ)氏だ。
 名前から分かるとおりロシア生まれのクリエイターで,一時期はMicrosoftでゲーム開発を行っていた……なんてクドクドと書くより,「テトリスの生みの親」と言えば,それだけで受賞理由が分かるだろう。
 テトリスがプレイできないゲームプラットフォームを探すほうが難しい状況で,誕生から20年以上経った2006年(テトリスがゲームとして世に出たのは1985年)に,ニンテンドーDS用ソフト「テトリスDS」が大ヒットしたのは記憶に新しい。
 この人がいなければ,“落ちゲー”と言われるジャンルそのものが存在していたのか(あるいはこのタイプのゲームがあったにせよ,一ジャンルを築くほどの人気になっていたのか)は怪しいだろう。

 今回の表彰結果は,ページの下にまとめておく。来年こそは,ここにPCゲームのタイトル名がずらりと並ぶことを,4Gamerとしては期待したい。(Iwahama)

■Innovation賞
「Line Rider」[Bostjan Cadez]
「OKAMI」(邦題 大神(OKAMI)),[Clover Studio/Capcom Entertainment]
「Wii Sports」[Nintendo]

■New Studio賞
Iron Lore Entertainment

次点:Gastronaut Studios,Naked Sky Entertainment,Ready at Dawn Studios,Wadjed Eye Games

■Writing賞
「The Legend of Zelda: Twilight Princess」(邦題 ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス)[Nintendo]

次点:「Bully」「Dreamfall: The Longest Journey」「Sam & Max Episode 1: Culture Shock」「The Elder Scrolls IV: Oblivion」

■Game Design賞
「Wii Sports」[Nintendo]

次点:「Bully」「OKAMI」「The Elder Scrolls IV: Oblivion」「Viva Pinata」

■Maverick賞
Greg Costikyan氏

■Audio賞
「Guitar Hero II」[Harmonix Music Systems/RedOctane]

次点:「Company of Heroes」「DEFCON: Everybody Dies」「Lara Croft Tomb Raider: Legend」「LocoRoco」

■Character Design賞
「OKAMI」(邦題 大神(OKAMI)),[Clover Studio/Capcom Entertainment]

次点:「Final Fantasy XII」「LocoRoco」「Rayman Raving Rabbids」「Viva Pinata」

■First Penguin賞
Alexey Pajitnov氏

■Technology賞
「Gears of War」[Epic Games/Microsoft Game Studios]

次点:「Company of Heroes」「Dead Rising」「Rockstar Games presents Table Tennis」「Wii Sports」

■Visual Arts賞
「Gears of War」[Epic Games/Microsoft Game Studios]

次点:「Final Fantasy XII」「OKAMI」「The Elder Scrolls IV: Oblivion」「Viva Pinata」

■Community Contribution賞
George "The Fatman" Sanger氏

■Lifetime Achievement賞
宮本茂氏

■Best Game賞
「Gears of War」[Epic Games/Microsoft Game Studios]

次点:「OKAMI」「The Elder Scrolls IV: Oblivion」「The Legend of Zelda: Twilight Princess」「Wii Sports」

Best Game賞のプレゼンターは,前回のLifetime Achievementの受賞者でもあるRichard Garriott氏。「Gears of War」で見事栄冠に輝いたEpic Gamesの若きクリエイターCliff Bleszinski氏は,尊敬する人の名に,宮本茂氏の名前も挙げていた。今回の主役は,Gears of Warではなく宮本氏だったのかもしれない

Gears of War
■開発元:Epic Games
■発売元:Microsoft Game Studios
■発売日:2006/07月中
■価格:N/A
→公式サイトは「こちら」
The Elder Scrolls IV: Oblivion
■開発元:Bethesda Softworks(ZeniMax Media)
■発売元:2K Games(Take-Two Interactive Software)
■発売日:2006/03/20
■価格:49.99ドル
→公式サイトは「こちら」
カンパニー オブ ヒーローズ
■開発元:Relic Entertainment
■発売元:ズー
■発売日:2006/12/22
■価格:8190円(税込)
→公式サイトは「こちら」
タイタン クエスト 日本語マニュアル付英語版
■開発元:Iron Lore Entertainment
■発売元:ズー
■発売日:2006/09/01
■価格:8190円(税込)
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2007.03/20070308235000detail.html