ATI,「Radeon X1650 XT」を発表 遅れてきた“7600 GT”対抗馬
ATI Technologies(以下ATI)は,2006年10月30日,Radeon X1600シリーズの最上位モデルとなる「Radeon X1650 XT」を発表した。AMDによる買収完了後,初の新型GPU(グラフィックスチップ)となる同製品は,型番からは想像できないポテンシャルを持つ,かなり意欲的なスペックに設定された製品だ。
Radeon X1650 XTリファレンスカードのイメージ
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2005年10月発表のRadeon X1600シリーズは,Radeon X1000ファミリーにおける,ミドルレンジ市場を狙う製品として出荷された。しかし,競合相手となるNVIDIAのGeForce 7600シリーズに,3Dパフォーマンスでまったく歯が立たなかったのは,4Gamerの読者ならよくご存じだろう。 その後,時間の経過とともに“ミドルレンジ”の定義は様変わりしたが,ATIが199ドル未満――もっといえば2万円前後かそれ以下の市場で,競争力のあるGPUを1年もの長きにわたって持てなかったというのは事実だ。この間に,1万円台中盤から2万円強の市場は,少なくとも日本では完全にNVIDIAのものになってしまったわけだが,Radeon X1650 XTは,そんな状況からの挽回を図る一手である。その意味では,先に3万円前後でデビューし,「GeForce 7900 GS」に戦いを挑んでいる「Radeon X1950 Pro」と同じような立ち位置の製品といえるだろう。
■「R580の半分」となる「RV560」 ■Radeon X1600シリーズが抱える課題を払拭
Radeon X1650 XTのスペックを示したスライド(出展:ATI,以下同)。GeForce 7600 GTのピクセルシェーダユニット数が20基と記載されているが,正しくは12基である
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Radeon X1650 XTの開発コードネームは「RV560」。80nmプロセスで製造されるGPUだ。Radeon X1650 XTと,その上位/下位モデルやライバルとのスペック比較は表にまとめたが,RV560を一言で説明するなら,「R580をベースに,ピクセルシェーダユニット以降をちょうど半分にしたGPU」ということになる。同じくR580をベースに80nmプロセスで製造されるRadeon X1950 Pro(RV570)が“4分の3”だったので,このあたりは非常に分かりやすいといえるかもしれない。いずれにせよ,従来のRV530系Radeon X1600シリーズとは,まったくの別モノだ。
また,対NVIDIAという見地からは,ピクセルシェーダユニットの数が24基と,GeForce 7600 GTの倍になり,同時にROPユニット数が互角になった点に注目したい。先にNVIDIAは「GeForce 7900/7600シリーズが持つピクセルシェーダユニットのベクトル演算性能は,Radeon X1000の2倍」という,“実効性能2倍理論”を展開していたが,この理論に100%従っても,シェーダユニットのスペックでは互角以上となったわけだ。 もちろん,R580ベースなので,FP16(16bit浮動小数点ユニット)を用いたHDR(High Dynamic Range)レンダリングや,高速動的分岐,Avivo Technologyなどといった,アーキテクチャレベルの特徴はRV560=Radeon X1650 XTでも健在である。
※動作クロック,グラフィックスメモリ容量はリファレンスカードのものです
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CrossFire構成のイメージ
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この結果として,GeForce 7600 GTと比べて,常に同等以上のパフォーマンスを発揮するとATIは謳う。 また,Radeon X1950 Proと同じく,専用のリボンケーブル「CrossFireブリッジ接続ケーブル」による新しいCrossFireインタフェースをサポートしており,CrossFire構成も可能だ。シングルカード構成と比べるとスケーリング効果に波があることは認めつつも,最適化が進んでいるタイトルでは,GeForce 7600 GT SLIを寄せ付けない性能を発揮すると主張する。
左はシングルグラフィックスカード,右はデュアルグラフィックスカード構成で,それぞれRadeon X1650 XTとGeForce 7600 GTを比較したグラフ。GeForceに最適化されているはずのQuake 4においても,Radeon X1650 XTはGeForce 7600 GTより高速とされている
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■カードの想定売価は149ドル ■2万円前後で登場なら面白い
セグメントごとの価格一覧。Radeon X1650 XTの登場によって,ようやくミドルレンジ(表では「Mainstream」)市場向けのGPUが用意されたことになる
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気になるカードの想定売価は北米市場で149ドルとなっている。1ドル118円換算で1万8000円弱という計算だ。 ちなみに,ライバルとなるGeForce 7600 GTの実勢価格は,は2006年10月現在で1万6000〜2万2000円前後である。スペック的にはGeForce 7600 GTといい勝負をすると思われるRadeon X1650 XTだけに,同程度の価格で登場するなら,コスト重視でそこそこの3Dパフォーマンスを持つグラフィックスカードを求めている人にとっては,嬉しい新製品となるに違いない。
Tul製Radeon X1650 XT搭載カード「PowerColor X1650 XT」の製品イメージ。GPUクーラーは2スロット仕様,CrossFireをサポートすることなどを確認できる。コア600MHz,メモリ1.4GHz相当のクロックアップモデルで,予想実売価格は2万2000円前後だ
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逆にいえば,GeForce 7600 GTの牙城を崩すには,店頭価格2万円前後での登場が絶対条件と思われる。仮に2万円を大きく上回るようだと,すでに市場を制圧しているGeForce 7600 GTには太刀打ちできないだろう。さらに,2万円台後半にはGeForce 7900 GSやRadeon X1950 Proが控えているわけで,Radeon X1650 XTが生き残る道は限られている。
買う側のゲーマーとしては,予算が2万円前後の場合,Radeon X1650 XTのパフォーマンスはもちろん,店頭価格を見てから判断を下す必要がありそうである。(米田 聡)
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