[G★2006#95]“憑依システム”が特徴的なMMORPG「Requiem」。プロジェクトディレクターインタビュー
本作のプロジェクトディレクターを務めるYoon Sang Jin氏
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韓国で名の通ったゲーム会社であり,日本でも「ラグナロクオンライン」の開発元として有名なGravityが開発を進めている「Requiem」(レクイエム)。本作は,2005年の東京ゲームショウにプレイアブル版が出展されていたものの,それ以降は大きな動きがない。発表から3年という年月が経った現在,果たしてどのようなゲームになりつつあるのか,プロジェクトディレクターYoon Sang Jin氏に聞いてみた。
■“SF+ホラー”,プレイヤーは世界を支配する巨大な“企業”を相手に戦い抜く
4Gamer: 今回はよろしくお願いします。2005年の東京ゲームショウで出展されていたものから,かなり変わっていると思いますので,まずは本作の概要説明をお願いします。
Yoon Sang Jin氏: こちらこそ,よろしくお願いします。 Requiemは,ハードコアスタイルのMMORPGで,ゲームエンジンに物理演算エンジンの“Havok”を用いているのが大きな特徴です。Havokのおかげでスタイリッシュなアクションが実現でき,橋や階段が崩れ落ちたり,箱が爆発したりといったダイナミックな演出が随所に盛り込まれています。 それとMMORPGでは珍しいと思いますが,退廃的な世界観も本作の特徴で,ホラーチックな雰囲気を存分に味わえますよ。
4Gamer: そのスタイリッシュなアクションを実現する操作方法と,ハードコアスタイルについてもう少し具体的に説明していただけますか?
Yoon Sang Jin氏: アクションに関しては,本作はFPSに近い操作システムを採用することで,爽快な戦闘を行えるようにしています。ハードコアについては,敵を倒した際に四肢が切断されるといった,グロテスクな描写によって表現しています。
4Gamer: そういったグロテスクな描写がある以上,それに見合った世界観やストーリーが欠かせないと思いますが,そのあたりはいかがでしょうか?
Yoon Sang Jin氏: 世界観のイメージとして近いのは「サイレントヒル」や「バイオハザード」,それと映画「ブレードランナー」といったところでしょうか。 本作の世界では,巨大な企業が世界全体を支配しており,そこで暮らす人々はその企業に操られているのです。そしてプレイヤーが扮するキャラクターは,ある日突然,自分が操られていることに気付いたという設定になっているんですよ。それ以降は企業を相手に戦う,というのがメインストーリーですね。
4Gamer: 一つの企業に支配された世界というのはユニークですね。SF的な要素も多く含まれているのですか?
Yoon Sang Jin氏: 世界観を構成する要素の割合としては,SFの要素が30〜40%で,残りがホラーといったところです。
■四大元素の力得られる「憑依システム」は,ストーリーにもリンク
4Gamer: プレイヤーと巨大企業の対立構造が,ゲームのシステム面に反映されているのでしょうか?
Yoon Sang Jin氏: いくつかありますが,もっとも大きなものとしては「憑依システム」があります。これによってプレイヤーは強力なスキルを会得し,派手でスタイリッシュな戦闘を行えます。ちなみに,この憑依システムの存在は,プレイヤーが企業と戦うきっかけの一つになるのですが,詳しいことは秘密とさせてください。
4Gamer: なるほど,ゲームのストーリーに関わる部分なので,やってみてのお楽しみといったところでしょうか。では,憑依システム自体につて,もう少し詳しく説明してください。具体的にはどういったものに憑依できるのでしょうか?
Yoon Sang Jin氏: Requiemの世界には,憑依できる特別なアイテムがあります。プレイヤーはクエストを通じてそれを入手すれば,それ以降,自由に憑依できるようになります。現時点で憑依できるアイテムは8種類。通常時はアクセサリとして身につけられるんですよ。
4Gamer: なるほど,動物やモンスターといった生命体ではなく,物体に憑依するんですね。憑依を行うことで,どのような能力を得られるのでしょうか?
Yoon Sang Jin氏: 現時点では“火,水,風,土”の四大元素にちなんだ憑依アイテムがあり,それらの能力を得ることができます,そして……いや,これ以上詳しい情報はもう少し待ってください。
4Gamer: 秘密にされると気になりますね……,とはいえ分かりました。では,職業は全部でいくつあるのか教えてください。
Yoon Sang Jin氏: プレイヤーがゲームを始めるときに選択できるのは4種類です。種族ごとに就ける職業が決まっていて,レベルが上がるごとに増えていき,最終的に46種類になります。
4Gamer: プレイ時の人数規模はどのくらいになりますか?
Yoon Sang Jin氏: 主な冒険の場となるダンジョンはグループ単位でのプレイを想定していて,8〜32名が中心になります。一応ソロプレイも可能にはしますが,グループ単位で行動するのがベストでしょう。
4Gamer: 現在の開発進行はどの程度か教えてください。
Yoon Sang Jin氏: 基本的なシステム面は一通りできており,社内テストを行っている段階です。現在は,憑依システムを煮詰めており,順調に進めば来年の上半期にクローズドβテストを行えると思いますよ。そして来年中にオープンβテストに移行できればいいなと考えています。
4Gamer: サービス形態はどのようになりますか?
Yoon Sang Jin氏: 現時点では未定ですね。
4Gamer: 日本での展開は考えていますか?
Yoon Sang Jin氏: どちらかというと本作は,アジアよりもヨーロッパやアメリカ市場を意識して作っています。しかし,日本でのサービス展開も行ってみたいですね。
4Gamer: 最後に,4Gamerの読者に向けてコメントをお願いします。
Yoon Sang Jin氏: MMORPGジャンルの中で,本作のようにSFやホラーの要素を取り入れたタイトルは数が少ないです。こういった世界観を好む人に気に入ってもらえるように努力していきますので,楽しみに待っていてください。
4Gamer: 今日はありがとうございました。
一年以上,ピタリと情報の途絶えたままだったRequiem。今回は,動いている画面を一切見られなかったが,インタビューを通じて,ゲームの形が少しずつ見えてきた。 確かにいわゆるファンタジーや,東洋テイストの入った武侠などを扱ったMMORPGは多いが,本作のような世界観をベースにしたものは少ない。毛色の変わったMMORPGの登場は新鮮に映るだろう。 また物理エンジンを使用し,その世界観の描写に力を入れている点も見逃せない。どこまでエンジンの性能が引き出されるかは分からないが,ゲーム内のオブジェクトが物理法則に従い動き,反応するさまは,プレイヤーがその世界で冒険している感覚を味わいやすくしてくれるだろう。 だが,実際の開発状況が思ったほど進んでいないのは心配だ。物理エンジンを採用しているというアドバンテージは,時間が経てば経つほどアドバンテージではなく“当たり前”になってしまう。できれば,なるべく早い段階でプレイできるものを公開し,ファンを掴んでおきたいところだ。 矢継ぎ早にオンラインゲームが登場し,消費されている現状では,コンセプト映像/画像や世界観だけで,人々の関心をつなぎ止めるのは難しい。2007年中にオープンβテストを行うということだが,なるべく早い段階で,スクリーンショットやプレイムービーなどを公開し,本作を心待ちにしている人を安心させてもらいたい。 2007年のG★では,今回のような画面写真すら見られない状況でのインタビューではなく,しっかりとプレイしたうえで,ゲームの深い部分について話を聞かせてもらいたいと思った次第だ。(ライター:川崎政一郎)
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