[韓国ゲーム事情特別編]Kim,Hakkyu氏が語る「Granado Espada」
Kimの韓国最新PCゲーム事情 特別編
「Granado Espada」のプロデューサーKim,Hakkyu氏メールインタビュー(2005/3/30)
Text by Kim Dong Wook特派員
現在,韓国のオンラインゲームプレイヤーに対して,「一番期待しているMMORPGは?」と質問したら,十中八九はKim,Hakkyu氏がプロデューサーとして手腕を振るっている「Granado Espada」(以下,GE)を挙げるのではないだろうか。 これは同ゲームの公式サイト(「こちら」)のユーザーBBSを見ると明確に感じられる。そして,そこに連日寄せられている意見や要望の大半は,「いつオープンβサービスが始まるか?」という内容だ。どうやら韓国のオンラインゲームプレイヤーの多くは,「World of Warcraft」に嫌気を感じ始め,また,最近βテストが行われている韓国産MMORPGにはあまり期待していない様子だ。 「Arcturus」「Ragnarok Online」(邦題 ラグナロクオンライン)などの名作ゲームを通じて, Kim,Hakkyu氏の熱烈なファンになった多くのプレイヤー達は,完成度が高く,娯楽性に溢れるMMORPGをGEに期待しているようだ。彼らは公式サイトを毎日訪れ,オープンスケジュールをチェックしてはGEに対する討論を行っている。
4Gamerでは,オープンに向けて最終仕上げ作業中のKim,Hakkyu氏に,GEに関して気になるポイントをメールで質問してみた。 最近では韓国内のメディアからのメールにも,少しずつしか答えていないというほどに多忙を極めている彼だが,4Gamerには,かなり充実した回答を寄せてくれた。Kim氏はインタビューに関してはいつも,「良い質問をしてくれれば,良い返事をするしかない」と語っている。今回4Gamerが投げた質問を,Kim氏は「良い質問」だと受け取ってくれた……のかもしれない。
それでは,サービス開始が徐々に近付いてきているMMORPGの期待作,GEの実態に迫ってみよう。
■βテストの期間は「可能な限り短く」
MMORPGに限ったことではないが,オンラインゲームといえばβテストを経て正式サービスにこぎ着けるのが,一般的。GEもやはり,βテストを予定しているようだが,どれくらいの規模のβテストが予定されているのだろうか? そしてβテストにはどれくらいの期間を考えているのだろうか?
4Gamer: いつでも「開発度は50%」と答えるKim氏に,あえて質問です。βテストの段階では,最終的に目指しているものと比べて,何%くらいの状態になりますか?
Kim,Hakkyu氏(以下,Kim氏): 完成度のパーセンテージは,どう考えてもあまり意味がないと思います。だからやはり,今言える数字も50%です。
4Gamer: βテストは,どれくらいの期間を考えていますか? 選挙 / 政治のシステムを楽しめるようになるのは,ある程度ゲーム内の世界での時間が経って,"コミュニティ"が熟成してきてからだと思うのですが,βテストの期間中にそこまでたどり着けますか?
Kim氏: ゲームシステムがプレイヤー達にどのように受け入れられるかを評価することと,安定性のテストがβテストの目的です。この目的を十分に満たせるまで,テストを行う予定です。このテスト期間は,可能な限り短いほうが良いと考えていますが,"選挙"やこれに関連する機能のテストも,βテスト期間中に行うつもりです。
4Gamer: 最初はクローズドβテストでしょうか? クローズドであれば,どれくらいの人数を予定していますか?
Kim氏: 最初のテストはもちろんクローズドで行います。テスター人数は,テスト目的に見合った範囲内で最小限の人数にする方向で考えています。
■コマンダーには"爵位"が与えられる
GEの特徴の一つに「バラックモード」がある。詳しくは「こちら」の記事を参照してほしいが,GEでは一人のプレイヤーが同時に最大三人のキャラクターを操作できる。そのためのキャラクターメイクやチーム編成を行うのが,バラックモードだ(ほかのプレイヤーとキャラクターのトレードも可能)。 また,GEではキャラクターに"名字"が存在する。この名字は,画面上には表示されない"コマンダー"(プレイヤーのこと)の名前。キャラクターにはプレイヤーが命名した名前と同時に,コマンダーの名前が付加されることになる。
4Gamer: バラックには,どこからでもすぐに帰れますか? 例えばあるチーム編成では倒せない敵に出会ったとき,すぐに別のチーム編成でその場所へ向かえますか?
Kim氏: バラックは,ログインした状態でワールドに入る直前に入る場所です。プロスポーツにたとえるなら,選手控え室とでも言えばいいでしょうか。このバラックへは,ワールドのどこからでも直接戻れます。 しかしチームを再編する場合,バラックに戻る前の位置からすぐに再開することは不可能です。質問にあるようなケースでチームを再編した場合は,再度,村などから戦闘の場所を探して歩く必要があります。
4Gamer: バラックモードで,「以前のチームでスタート」というメニューを使えば,最後にプレイしたときのチームと場所でプレイできるとのことですが,例えば最後にプレイしたときのチームメンバーのうち二人と,別のキャラクター一人で新しいチームを作れますか? 作れた場合,どこからゲームは始まりますか?
Kim氏: MCC(Multi Character Control)を再編する場合は,どんなときでも村から再度スタートすることになります。ただ,直前に戦闘を行っていた場所へ帰る時間を短縮する方法は,別途用意する予定です。
4Gamer: 戦闘中にキャラクターの一人が死んだとき,バラックからキャラクターを補充できますか?
Kim氏: そのようなシステムを導入すると,PvPがキャラクター達の消耗戦になってしまうという懸念があったため,その都度バラックに行ってチームを再編するようにしました。
4Gamer: コマンダーの名前は,一つのサーバー内だと,一つしか付けられませんよね。キャラクターの名前はどうでしょう? ほかのプレイヤー(コマンダー)と同じ名前をキャラクターに付けられますか?
Kim氏: コマンダーの名前はすべてのサーバーで唯一のものになり,キャラクターの場合はそのサーバー内でのみ唯一のものとなります。
4Gamer: コマンダーにも,レベルはありますか?
Kim氏: もちろんあります。名声,決闘の戦績などの数値が保存され,"爵位"という身分が与えられます。また,爵位に応じた権限が付与される予定です。
4Gamer: キャラクターの職業は,大まかにファイター系,ウィザード系,スカウト系に分かれているということですが,それぞれの詳細と,いくつか特殊技能を教えてください。
Kim氏: 現在公開している職業は3種類ですが,第1次クローズドβテストでは,4種類になる予定です。具体的なスキルに関しては,まだお答えできません。楽しみにお待ちください。
4Gamer: 公式サイトからは,ウォーロック(Warlock)とマスケッティア(Musketeer)という職業の存在がうかがえますが,これらはいつ追加されるのでしょうか?
Kim氏: マスケッティアは第1次クローズドβテストで,ウォーロックは第2次クローズドβテストで追加する予定です。ウォーロックは火炎,雷撃系列の魔法を専門にする魔法師で,ウィザードとは異なる性質の魔法を使います。
4Gamer: チームの編成によって(例えばファイター二人+スカウト一人,など)敵モンスターの属性が変わるようなことはありますか?
Kim氏: モンスターの属性が,チーム編成などによって変わることはありません。
■AIによる自動戦闘と"スタンス"システム
一人のコマンダー(プレイヤー)が,同時に複数のキャラクターを操作できるチームシステムを採用していることは,前述の通り。 そのチームを使って戦闘に臨むわけだが,その戦闘システムにいくつかの特徴がある。その代表的なものが,AIによる自動戦闘と"スタンス"だ。
4Gamer: AIの設定として,"ターゲット"と"攻撃方法"を決められるとのことですが,攻撃方法には,具体的にどのようなものがありますか? また何種類くらいありますか?
Kim氏: 例えばファイターには,"リーダーが指定したターゲットを攻撃" "周囲の敵の中でHPが一番低い敵から順に攻撃","キャラクターのHPが20%以下ならば戦闘に参加しないで待つ"などの設定があります。AIの種類はその特徴が明確な何種類かを,テストを通じて適切な水準まで進化させることに重点を置いており,最終的にはクラスあたり4〜5種類程度になるでしょう。
4Gamer: AIによる自動戦闘システムで,プレイヤー達が退屈してしまうようなことにはならないのでしょうか?
Kim氏: AIは初心者プレイヤーでも,基本的な戦闘ができるという水準です。そのため,操作に熟練したプレイヤーなら,手動でより效果的な戦闘を行えるでしょう。 また,中級レベル以上のプレイヤーを対象とした,強いモンスターが多数登場するゾーンでは,操作が上手になっていなければ,生き残るのは難しいでしょう。
4Gamer: プレイヤー達がMCCシステムによってソロプレイに傾倒するようになったら,オンラインゲームの長所であるコミュニティ性が弱くなるのではないでしょうか?
Kim氏: 戦闘のためにパーティプレイを強要するつもりは,私にはありません。しかしながら,コミュニティ性の強化のために準備しているものはあります。詳細については,後日の発表とさせてください。
4Gamer: キャラクターが死ぬと,どういうペナルティがありますか? 以前うかがった(「こちら」)「ライフカウント」が減るとか? また,チームが全滅したときなど,"コマンダー"に対するペナルティはありますか?
Kim氏: キャラクターに対するライフカウントは,基本的には無限ということになりました。あくまでこれは基本的な仕様で,サーバーごとに別のルール設定も可能です。 キャラクターの死亡時には,魔法やアイテムなどですぐに復活させられます。魔法やアイテムがない場合は,バラックに戻って,再度そのキャラクターを連れ出すということになります。ただし,仲間にしていたNPCやモンスターにはライフカウントが適用されるため,バラックからも消える場合があります。なお,コマンダーに対するペナルティはありません。決闘で敗れたら,戦績に記録されるくらいですね。
4Gamer: スタンスもレベルアップするということですが,具体的にはどのようにすればレベルアップしますか? 戦闘時に使用したスタンスのみ経験が入るのでしょうか?
Kim氏: 戦闘で使ったスタンスには"熟練経験値"が加算され,それが決まった数値に達するとレベルが上がります。"スタンスレベル"は,戦闘演算式の各種数値に影響を与えます。
4Gamer: スタンスレベルは,キャラクターごとに持つものですか? それともコマンダーが持つものですか?
Kim氏: スタンスレベルはキャラクターが持つものです。例えば,キャラクターが"ハイガードスタンス"をレベル5まで上げたとします。すると,同タイプの別の武器を装備してハイガードスタンスを選択した場合も,そのスタンスレベルは維持されます。なお,コマンダーが新しいキャラクターを作成した場合は,そのキャラクターのすべてのスタンスレベルは1から始まります。
4Gamer: スタンスは武器の種類ごとに複数用意されているのですか?
Kim氏: 装備する武器の種類によって選択できるスタンスは異なりますが,最終的には武器の種類ごとに1〜4種類ずつになる予定です。また,テスト段階ではある武器のスタンスが1種類だけでも,今後のアップデートで追加される可能性は高いです。
4Gamer: 装備した武器の種類によって選択できるスタンスが変わるとのことですが,珍しいスタンス(特定のアイテムを装備したときだけ使える,とか)もあるのでしょうか?
Kim氏: 珍しいスタンスを見つけたときのお楽しみということで…… (笑)。
4Gamer: 韓国でGEを待ち望んでいる人達は,戦闘における"打撃感"に一番期待しているようです。この期待に応えるために,何か具体的に用意していることはありますか?
Kim氏: 各種スキルごとに,多彩な攻撃時,守備時のアニメーションとエフェクトを用意しています。位置の移動や状態の変化に関しても,できるだけ多くの演出パターンを考えています。
左:マスケッティアの男女キャラクター。ライフル銃,拳銃,散弾銃,銃剣などの銃器と,それに応じたスキルが備わったクラスだ(なお,ファイターはこれらの武器のうち拳銃しか使えない)
中央:ライフル銃装備時のスタンスの一つ,"スタンディングショットスタンス"
右:"ニーリングショットスタンス"。地面に片ひざをついた状態で敵に照準を合わせて攻撃する。スタンディングショットに比べて攻撃力と命中率,連射力(速度)は高いが,移動が不可能(移動するにはスタンディングショットスタンスに変更しなければならない)
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■仲間になるNPC/モンスター
GEでは,NPCやモンスターを仲間にできる。そのシステムについての詳細を聞いてみた。
4Gamer: 仲間になるNPCやモンスターは,バラックに入るのですか? そこに関してですが,バラックにすでに12人いても,仲間にできますか?
Kim氏: もちろんバラックに入ります。バラックに収容可能なキャラクターは最大12人で,この数の中にはNPCやモンスターも含まれます。そのため,もしすでに12人のキャラクターがバラックにいて,そこからさらに新しいキャラクターを迎え入れるためには,それまでにいたキャラクターを捨てる必要があります。
4Gamer: チームは,NPCやモンスターを含めて3人まででしょうか? また,NPCやモンスターばかりでチームを組むこともできますか?
Kim氏: 仲間にしたNPCとモンスターは,一般のキャラクターと同じように扱えるので,3人までということになります。また,仲間にしたNPCやモンスターだけでチームを編成することもできます。ただ,一定時間が経てばバラックで消えるといった,使用時間制限などのオプションが付いているものもあります。
4Gamer: これらのNPCは,同じサーバー内に一人ずつですか? 例えばあるコマンダーが雇ったNPCを,同時に別のコマンダーが雇えますか?
Kim氏: NPCによってレア度の差があります。例えば,一サーバーの中で一人のコマンダーだけが所有できるNPCや,複数人が所有できるNPCがいるといった具合です。 4Gamer: どのようなNPC / モンスターを仲間にできるのですか?
Kim氏: 大部分のNPCとモンスターを,仲間に加えることが可能です。しかし,第1次クローズドβテストで仲間にできるのは2種類のNPCのみで,残りは後日の追加となります。というのは,プレイヤー達にとって,使用可能なキャラクターの種類が増えていくことも,楽しみの一つと考えているからです。 4Gamer: レベルアップしたNPC / モンスターも,キャラクターと同じようにトレードできますか?
Kim氏: トレード可能です。ただ,第1次クローズドβテストでは,キャラクターのトレードは行えません。
■選挙で領主になると,組閣や税率の設定,戦争などができる
2004年8月に,4GamerがKim氏にインタビューをしたときの記事(「こちら」)でも触れているが,GEには"政治" "選挙"という要素がある。
4Gamer: 先ほどの質問とちょっと重なりますが,βテストにも選挙システムはありますか?
Kim氏: 第1次クローズドβテストでは,選挙システムは登場しません。本格的な政治システムについては,もう少し後のβテストまでお待ちください。
4Gamer: 以前インタビューさせていただいたとき(記事は「こちら」),選挙を行う周期(1か月に1回など)は未定とのことでしたが,今ではどれくらいの周期を考えていますか?
Kim氏: 選挙権を持つすべてのプレイヤーが参加する大型選挙は,1か月に1回を予定しています。しかし選挙にはいろいろなパターンを計画しており,例えばギルド長の職権として選挙を行うような場合もあるため,1か月に1回を必ず行うという"固定された周期"はありません。 4Gamer: 何か一つか二つ,領主などの偉い立場の人が持つ,権力 / 特権を具体的に教えてください。
Kim氏: 各種公職(通称"内閣")に別のプレイヤーを任命できる権限,ほかの都市と戦争ができる権限,各種税率を設定できる権限など,都市運営の全般に絶対的な影響を与えられます。 ただし,国庫の使用内訳と決定事項の記録は,すべての市民達に公開されるなど,政治の透明性は確保されています。これにより,市民は権力者の統治力を判断できるというわけです。
■各国でGEを展開するにあたって,Kim氏が考えていること
最後に,GEを各国で展開するにあたってKim氏が考えていることなどを聞いてみた。
4Gamer: 2004年9月に,「世界のコアユーザーを見据えて作ってある作品」と語られていましたが(記事は「こちら」),これについて具体的なことを教えてください。
Kim氏: プレイヤー達が自ら参加して楽しめるシステムを,たくさん準備しています。具体的なことについては,まだ回答を控えさせてください。
4Gamer: 同じインタビューで,アジアのプレイヤーの好みは割と似ているから,国家別のカルチャライズには大きな意味がないと話していましたよね。ただ,日本の場合はまだまだオンラインゲーム(MMO)というジャンルに対する発展の度合が低いかもしれないと思います。こういう場合に,現地プレイヤーに合わせた調整も必要ではないかと感じるのですが,いかがお考えでしょうか?
Kim氏: 日本のオンラインゲームに対する発展度が低いとは思っていません。ただ,コアなプレイヤーとそうではない一般的なプレイヤーの比率は,韓国などとはちょっと違うようです。しかし,一般的なプレイヤーへの配慮という点では,韓国と日本,そしてそのほかの国で違うものにしようとは思いません。 一般的なプレイヤーがGEに親しんでもらえるような方策は,HUEを通じて研究していく予定ではあります。
4Gamer: ところで最近,韓国メディアのインタビューで,「World of Warcraft」と比較して「Guild Wars」を褒めていらっしゃいましたよね。具体的にどのような点でGuild Warsが優れていると考えていますか?
Kim氏: (1)ゲームシステムが"リアルな仮想世界の追求"より"ゲーム自体を楽しむこと"に向いている点。これは,同じ時代を生きる開発者達が今後の進むであろう方向だと思います。
(2)クエストが(パッケージゲームのように)それぞれ独立しているため,そのクエストの最初から最後まで,という単位で楽しめる点。
(3)Guild Warsというタイトル通り,集団によるプレイを,まるでスポーツやレジャー感覚で楽しめる点。この部分を非常に気に入っています。
(4)最近のβテストでプレイしたところ,パッケージゲームのような深いストーリー性を実現するにも良いシステムであることが分かりました。ただし,クエストとシナリオの完成度については,もうしばらく時間をかけて見ていかないと分かりません。
4Gamer: 質問は以上です。本日はありがとうございました。
Kim氏: こちらこそ,ありがとうございました。
「Granado Espada」 →公式サイトは「こちら」 →紹介ページは「こちら」
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