ATI,世界初のGDDR4対応GPU「Radeon X1950 XTX」を発表 Radeon X1600/X1300のマイナーチェンジも
ATI Technologies(以下ATI)は,2006年8月23日19時,Radeon X1000シリーズの新モデル「Radeon X1950 XTX」「Radeon X1650 Pro」「Radeon X1300 XT」を発表した。ハイエンド,メインストリーム,バリューの3セグメントに,それぞれ1モデルずつ追加された格好になる。
型番からも想像がつくように,今回登場した3モデルはいずれも既存のRadeon X1000シリーズから見るとマイナーチェンジだ。競合メーカーであるNVIDIAのラインナップを意識しつつ,同時に変動する市場の要求に合わせてラインナップを調整(修正?)してきた,といったほうが分かりやすいだろうか。 このため,アーキテクチャ面では,Radeon X1000シリーズのそれを踏襲しており,GPU(グラフィックスチップ)に何か新機能が追加されたわけではないが,新製品だけに,スペックなどが気になる人は少なくないだろう。今回は,既存のGPUともどもラインナップを整理しつつ,発表された3モデルをチェックしてみたいと思う。
■Radeon X1950 XTXは世界初のGDDR4対応GPU
Radeon X1900 XTXリファレンスカード。HDCPに対応する
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まずはハイエンドもハイエンド,Radeon X1000シリーズの最上位に置かれたRadeon X1950 XTXから。正確には,「Radeon X1950 CrossFire Edition」も用意されているが,同製品はCrossFireのマスターカードになれる以外,Radeon X1950 XTXとまったく同じ仕様なので,本稿では同じものとして扱うことにする。
さて,開発コードネーム「R580+」ことRadeon X1950 XTXが持つ最大の特徴は,GPUのアーキテクチャやコアクロックはRadeon X1900 XTXからそのままに,組み合わせるグラフィックスメモリをGDDR3 SDRAMからGDDR4 SDRAMへ切り替えた点にある。民生向け量産品でGDDR4 SDRAMを採用した製品は,Radeon X1950 XTXが世界初だ。 ATIのJoe Macri氏がDRAMセクションでチェアマンを務めるなど,ATIは電子デバイスの仕様標準化団体「JEDEC」(Joint Electron Device Engineering Council)と深いつながりがある。そうした優位性が発揮され,競合他社に先駆けての採用となったのだろう。
GDDR3とGDDR4の違いを示したイメージ。バースト転送時のデータ転送速度は同クロック動作比較でGDDR3の2倍になる
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GDDR4 SDRAMは,動作電圧がGDDR3 SDRAMの1.8Vに対して1.5Vと下げられており,同じ動作クロックで比較すると,GDDR3よりもGDDR4のほうが30%ほど低い。また,まとまったデータを一括転送するバースト転送時のプリフェッチ量では,GDDR3の4bit幅に対し,GDDR4では倍の8bit幅。同じクロックで比べたときに,バースト転送時のデータ転送速度はGDDR4がGDDR3の2倍になる。 Radeon X1950 XTXが採用した2GHz相当のGDDR4だが,すでにGDDR4はサンプル品で3.2GHz相当(データレート3.2Gbps)が存在しているから,近い将来,そのくらいまでは行くことになるはずだ。
GPUコアクロックが変わらないので,Radeon X1950 XTXは,本質的にはX1900 XTXのGDDR4メモリ組み合わせバージョンといった解釈で問題ない。スペックは表1で比較してみたので,参考にしてほしい。 メモリ帯域幅が広がったため,GPU側のメモリレイテンシは低減され,パフォーマンスが若干向上するのは間違いないが,その率は型番の“+50”でイメージされる程度に留まると思われる。
だが,イメージ画像から分かるように,チップクーラーがまったく新しくなった点には,注目しておきたい。チップクーラーは,市販のarctic cooling製品(いわゆる“ZAV”シリーズ)に似た形状と説明すると分かりやすいだろうか。GPUやメモリチップの発熱は銅製のヒートシンクに伝わり,排気口から遠く離れた場所のファンが起こす風で,すべてケース外へ排出される仕組み。ATIは,これを「High Performance Fansink Design」と名付けているが,Radeon X1900 XTXが持つ「熱いうえにファンがうるさい」イメージを,この鳴り物入りで登場した新型クーラーがどこまで払拭できるか,注目したい。
クーラーは,arctic cooling製品によく似た印象。写真を見る限り,熱は,GPUと接触する部分からヒートパイプで“風が通るトンネル”へ運ばれる仕組みのようだ
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■Radeon X1650 Proは完全なるマイナーチェンジ ■Radeon X1300 XTは地味ながら興味深い仕様
Radeon X1650 Proリファレンスカードのイメージ
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次にRadeon X1650 Pro。これは本当の意味でのマイナーチェンジバージョンという感じで,Radeon X1600 XTと比較して,コアクロックが10MHz,グラフィックスメモリクロックが20MHz高速化されただけだ。念のため,スペックの比較を表2で行ってみたが,すでにGeForce 7600シリーズとの決着は付いてしまっているだけに,性能面ではかなり苦しいだろう。ミドルレンジを捨てた……とは思えないので,(それがRadeon X1650 XTになるかどうかはともかく)ATIは今後,このあたりに何か新製品を投入してくるつもりなのではなかろうか。
一方,Radeon X1300 XTは,型番こそ“これまでなかったピース(XTモデル)が埋まっただけ”で,一見地味だが,実はちょっとした戦略を伴って投入された製品である。
まずはローエンドGPUのスペックを比較した表3を見て,続けて先ほどの表2をチェックしてほしい。 そう,Radeon X1300 XTは,Radeon X1300型番ではあるものの,コアはRadeon X1600(RV530)そのものなのだ。実質的には,Radeon X1600 Proが改名されたような製品となっている。 その証拠に,1億5700万というトランジスタ数や,5基という頂点シェーダユニット数,12基というピクセルシェーダ数など,主要なスペックは完全に同じだ。
ATIによる,Radeon X1300 XTのパフォーマンス指標。GeForce 7300 GTよりも高速と謳う
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この動きは,NVIDIAがGeForce 7300 GTを先に投入してきたことを受けたものと見られる。 NVIDIAのGeForce 7300 GTも,製品型番こそバリュークラスの「GeForce 7300」だが,その実,コアはGeForce 7600の「G73」そのものであった。実質的には「GeForce 7600 GSの低クロック版」であり,頂点シェーダユニット5基,ピクセルシェーダユニット8基は,まさにGeForce 7600の構成となっている。
ピクセルシェーダユニットが12基と多く,コアクロックが高いのがRadeon X1300 XT,動作クロックが低くピクセルシェーダユニットも8基しかないが,ROPユニットの数はRadeon X1300 XTの2倍,8基あるのがGeForce 7300 GT。これが両者の機能的なポイントになるだろう。 まあ,ローエンドだとあまりパフォーマンスについての議論は盛り上がらないが,Radeon X1300 XTとGeForce 7300 GTのトータル性能は拮抗すると見られ,オーバークロック動作まで視野に入れると,そこそこ面白い戦いになると思われる。
なお,ATIによれば,Radeon X1650 ProとRadeon X1300 XTについては,PCI Express x16−AGP 8X変換チップ「Rialto」を組み合わせたAGP 8X仕様グラフィックカードのリリースが予告されている。AGPは,なおも生き残るようだ。
■予価どおり登場するなら ■“身近なハイエンド”になるRadeon X1950 XTX
Radeon X1900シリーズの価格一覧。このスライドだと,カードは2006年9月4日発売予定となっているが,実際には9月14日前後とのこと
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最後に,搭載カードの予価をまとめておこう。ATI提供のリストは下にまとめたが,Radeon X1950 XTX/CrossFire Edition搭載カードの予想実売価格は449ドル。1ドル116円換算で5万2000円程度になる。Radeonシリーズの場合,この予価を大幅に上回る価格で登場することが多いだけに予断を許さないが,仮にATIの予想どおりの価格で登場するなら,身近なハイエンドカードになるのではなかろうか。 なお,これに合わせて,搭載カードの想定売価が349ドルとされていたRadeon X1900 GTは,249ドルへと100ドル下がっている。Radeon X1900 GTについては,レビュー記事を参照してほしい。
ATIによる,搭載カードの価格比較。なお,Radeonシリーズで,表記が「PRO」になっているものがあるが「正しくは『Pro』」(ATIテクノロジーズジャパン)とのことだ
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Radeon X1650 Proは,グンと安くなって99ドル。Radeon X1300 XTは89ドルとなり,ATIによる分類上は「メインストリーム」に引き上げられた。正直なところ,Radeon X1600シリーズのパフォーマンスはRadeon X1900シリーズと比較してずいぶん下になるので,ATIがいうところのメインストリームクラスは,GeForce 7600とGeForce 7300の間あたりに位置づけられるのが正しいように思う。
今世代のグラフィックスカードは,型番がいよいよよく分からなくなってきたが,ATIとNVIDIAの想定する売価で判断するなら,価格相応の性能が得られる,分かりやすい状況ともいえる。それだけに,今回の価格設定が,日本でも適切に反映されることを願いたい。(トライゼット 西川善司)
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