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[台北ゲームショウ番外編] 業界人必見。Mr.Kimの台湾PCオンラインゲーム事情
台北ゲームショウでは「Guild Wars: 2006 World Championship」が併催されていたため,予想した以上に多忙な取材となったが,現地の人のオンラインゲームに対する高い関心を見るにつけ,いろいろな疑問が湧いてきた。そこで,会場のあちこちを取材しながら,ゲーム業界関係者に聞いた話をまとめて,いわば「台湾PCオンラインゲーム事情」とでもいうべき原稿をまとめてみた。物事の奥の奥まで掘り出せている自信はないのだが,台湾ゲーム業界に興味のある人は,ぜひご一読を。
■2500万住民の20%がゲーマー?
総勢2500万人の住民のうち,500万人以上がゲームを楽しんでいるという,予想以上のゲーム人口で,ゲーム文化に慣れ親しんでいる地域といえるだろう。
PCパッケージゲームを中心としてきた市場の流れが,変わり始めたのが2000年。Gamaniaによる「Lineage」のサービスと同時に,オンラインゲームが主流として浮び上がり,全土に続々とPC Bang(ゲーム主体のインターネットカフェ)ができたという。
2001年から2002年にかけて急激に成長したオンラインゲーム市場は,2002年6月に「Ragnarok ONLINE」のサービスが開始されると,Lineage vs. Ragnarok ONLINEという二強体制が固まっていく。この2タイトルはそれぞれ20万人と30万人を超える最大同時接続者数を記録し,台湾の人々をオンラインゲームの魅力の中に引き込んだ。
韓国市場および日本市場と比較してみると,台湾の立ち位置はさらに興味深く見えてくる。さまざまな経緯はあるものの,Lineageが優勢な韓国とRagnarok ONLINEが人気の日本。両市場での人気タイトルが,絶妙に均衡しているのが台湾なのだ。
NC TAIWANのKim Seung Beomチーム長は「台湾人は,多様な文化を吸収する能力では世界最高水準にあります。非常に開放的な性質を持っているし,海外の文化を現地化する能力は卓越しています。SD風の可愛いキャラクターを好みながらも,8頭身のリアル系のキャラクターも同時に好きなのがそれを証明しています」と言う。
台湾でオンラインゲームをプレイする年齢層は大きく二つに分けられる。「Ragnarok ONLINE」「Maple Story」などを楽しむ,小学校5〜6年生から中学校3年生の低年齢プレイヤー層,「Lineage」「リネージュII」「World of Warcraft」などを楽しむ,大学生から30代前半の成人プレイヤー層だ。
1990年代の台湾ゲーマー達は,武侠モノのPCパッケージゲームと三国志を原作にした多くのゲームを非常に好んだが,オンラインゲームの隆盛につれて,歴史モノからファンタジーモノへと,トレンドが移りつつある。それは,初めて台湾市場でブームとなったオンラインゲームが,Lineageなどのファンタジー作品であったことと,ゲームに親しむ年齢がどんどん下がっているためだ。
■コンビニを中心にした強固なオンラインゲーム流通市場
ただし,そうした配給方式に,ネットワークインフラより大きな影響を与えているのは,台湾人の“現物愛好”だ。中国系の文化に属する人々は,伝統的に現物(現実に形がある品物)を非常に信頼する。そのため,オンラインで行われる決済について,一般に強い違和感を持っている。
もちろん,パッケージ販売が盛んな国/地域はほかにあるので,そればかりが理由だとはいえないが,自分のお金を支払ったら,どんな形であれ,それに対応する品物をもらわなければならないとする意識が,台湾ゲーム市場でパッケージ販売が盛んな理由の一つではなかろうか。
また,これは日本でもよく見られることだが,台湾でオンラインゲームをプレイするために購入しなければならないゲームポイントカードは,コンビ二(ほとんどSEVEN ELEVEN)で手軽に購入できる。台湾ゲーマー達は,楽しみたいオンラインゲームパッケージ(クライアントCD+ゲームポイントカード)を購入して,自宅やPC Bangでプレイする。
現地業界のある関係者は「台湾におけるオンラインゲームパッケージのコンビ二流通はほとんど絶対的だ。何年か前に韓国のある会社がダウンロードの流通方式を採用してビジネスを展開し,倒産したことがあるほどだ」と言う。台湾のオンラインゲームビジネスはコンビニから始まると評しても過言でないくらい,強固な流通構造を誇っているようだ。
現在台湾全土では約3000店のPC Bangが営業中だ。しかし,ピークだった2002年には約8000店がひしめき合ったという。PC Bangの減少は,やはり過当競争による料金下落が主要原因だ。しかし,すべてのPC Bangに設置されているPC台数総計はあまり減らなかった。というのも,PC Bangのフランチャイズ化が進んで,高級化/大型化されていっているからだ。
南部にある,台湾第2の都市である高雄市が,PC Bangのトレンドを主導しているという。台北市に比べて平均所得水準がやや低い高雄市は,一般家庭のPC保有率が非常に低く,オンラインゲームプレイヤーの70%がPC Bangを利用している。一方中心都市である台北市では,自宅でゲームを楽しむ割合とPC Bangでゲームを楽しむ割合が,およそ8:2と,圧倒的に自宅でプレイする人が多い。 PC Bangの利用料金は地域によって差があるが,平均して1時間あたり300円前後だという。
■より簡単で可愛らしいMMORPGという新たなトレンド
同ゲームは台湾市場において累積会員350万人,最大同時接続者18万人を記録する,驚くべき成果を収めているという。上述したように,台湾のゲーム人口は約500万人。その中で350万人という数値は,あまりにも大きい。
Maple Storyの現状から,台湾オンラインゲーム市場のトレンド変化をある程度予測することもできよう。現地の業界関係者は「正統派MMORPGを非常に好んだ台湾ゲーマー達が,最近になってより可愛くてシンプルな形態のオンラインゲームに注目している」という。いわば,Lineage系から始まったオンラインゲームのトレンドがRagnarok ONLINEを経てMaple Storyへと,ますます「簡単」で「可愛いらしい」方向へ移っている。つまり,マニア中心のゲーマー層から,家族単位の遊び文化になりつつあると解釈できるだろう。
オンラインゲームプレイヤーの性質は,最初に韓国系のオンラインゲームが市場を形成したからかどうかは不明だが,非常に韓国と似ている気がする。アイテム収集とPK(Player Killing)が好きで,RMT(リアルマネートレード)などにも,かなり関心を持っているという。韓国でオンラインゲームに関する好ましからざる事件が発生すると,台湾でも何か月かのちに,必ず同種の事件(例えばアイテム取り引きが社会的な問題になるなど)が起きるほどに,似ているのだ。
■東南アジア・オンラインゲーム市場へのハブ
しかし,市場発展のハードルがまったくないわけではない。まだネットワークインフラが不足しており,回線費用が非常に高いことが,現地メーカーおよびプレイヤー達の大きな負担になっているようだ。
そして,オンラインゲームを好む住民の特性だけではなく,同市場に注目しなければならない,別の重要な理由がある。台湾のオンラインゲーム市場は,中華人民共和国を含めて香港,タイ,マレーシア,シンガポールなど,東アジア/東南アジアにおける文化コンテンツ市場のハブ(Hub)として,周辺諸国にコンテンツを伝える役目を果たしている。つまり,台湾市場にアピールするゲームなら,周りの国/地域でも十分に成功可能性が高いというのだ。
いろいろ足りないものも多いように見える台湾市場だが,その動向には今後とも注目しなければならないようだ。(Text by Kim Dong Wook,Photo by kiki)
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