レビュー
ズーのダウンロード販売タイトル5本に注目してみる
ズーがPCゲームのダウンロード販売を10月より開始
現在ダウンロード販売されている5タイトルは,1本を除いてダウンロードでのみ購入できるものだ。海外のPCゲームで,日本ではパッケージ販売に踏みきれないような,ややマイナーなタイトルを提供する手段として実に興味深い。
ダウンロードはDVDレンタルや通販,動画配信をしている総合エンタメサイト,DMM.comから行う。
今回は現在販売されている五つのタイトルを,ここでご紹介していこう。
●Attack on Pearl Harbor 日本語マニュアル付英語版
価格:4800円(税込)
公式サイト
「Attack on Pearl Harbor」(以下,APH)は,真珠湾攻撃に端を発した太平洋戦争に焦点を当てて,日米双方の視点から戦いを体験できる,フライトシューティングだ。
フライトものと聞くと,操作が難しいというシミュレータ系のイメージが先行し,拒否反応を起こしてしまう人も多いとは思うが,そういう心配はまったく無用。ほぼマウス一つで,大空を自由自在に飛び回り白熱のドッグファイトを楽しめる。スロットルの操作があるものの,ぶっちゃけこれすらも操作する必要はなく,失速して墜落なんてこともない。
航空機の操作で最も難しいといわれるのが離着陸だが,離陸に関してはなんとSpaceバーを押すだけで自動的に離陸し,着陸に至っては「する必要がない」という簡単操作である。つまり難しい飛行機の操作や航空力学など意識せず,勇壮な空の戦いに専念できる。
機銃の銃弾や魚雷,ロケット弾も無制限に使用できるが,機銃は撃ち続ければオーバーヒートしてしばらく使えなくなるし,魚雷やロケット弾はリロード時間もあるので連射できるわけではない。
キャンペーンは日本軍と連合軍(アメリカ軍)のものがそれぞれ用意されており,アメリカンコミック調の劇画によってストーリーが展開されていく。それぞれのキャンペーンは,真珠湾攻撃,ミッドウェイ海戦,硫黄島など,ほぼ同じ戦場を日米双方の視点で攻略あるいは防衛していくのである。
太平洋戦争でお馴染みの99式艦上爆撃機,97式艦上攻撃機,F4Uコルセア,TBFアベンジャーなどといった数々の名機が登場し,それらが十数機,ミッションによっては数十機も太平洋の美しい空で入り乱れる様は圧巻である。
また海上の空母や輸送船の駆逐,日本本土を爆撃に向かうB-25の迎撃あるいは護衛など,ドッグファイトに終始しない点も評価したい。
空の描写も美しく,とくに夕日の中での戦闘も実に雰囲気がいい。また海面すれすれで魚雷をリリースし,シュルシュルと艦艇に走っていく様を見るのは痛快だ。
フライトシムのつもりでプレイすると,あまりにシンプルな操作に少々面食らうだろうが,逆にいえばドッグファイトの爽快さを存分に楽しみたいという人にはうってつけのタイトルと言えるだろう。
●Combat Wings - Battle of Britain 日本語マニュアル付英語版
価格:2940円(税込)
公式サイト
「Combat Wings - Battle of Britain」も第二次世界大戦を扱ったフライトシューティングで,1940年のイギリス本土に来襲したドイツ軍と,その防衛に当たったイギリス空軍との戦いを題材としている。
プレイヤーはイギリス軍パイロットとなって,ドイツ空軍の猛攻からイギリス国土を防衛することになる。キャンペーンはイギリス軍パイロットのものだけだが,バトル・オブ・ブリテンから始まり,ドイツ本土の空爆に至るまでの四つのステージがあり,それなりにボリュームがある。
キャンペーンは空中戦に終始するものが多く感じられたが,地上から対空砲を使ってドイツ軍機を撃墜するミッションや,輸送船団の護衛,戦艦の撃破などのミッションなどもある。ちなみに一度プレイしたミッションは,あとから自由に選択してリトライできる。
さて,本作も操作が容易なフライトシューティングではあるが,前出のAPHと比較すると若干ながら飛行機の挙動にリアリティがある。それでも本格的なフライトシムというほどのものではないのでご心配なく。このコントロールのリアリティは「ARCADE」と「ADVANCE」で調整できるので,ARCADEでの操作で物足りない場合は,ADVANCEに切り替えてみよう。ちなみに被弾して機体にダメージが加わると,スピードが出なくなったり,機体の制御が徐々に難しくなったりする。
スクリーンショットを見ると分かるように,グラフィックスはなかなか秀逸。日光によるフレアや水面の反射など,目に付きやすい部分はもちろんのこと,波打ち際や地上の建物も十分なクオリティで描写されている。ただし一部のマップでは地表が一枚絵になっていて,ある程度の高度以下には下がれないマップもあったのは残念だ。
ゲームにはハリケーンやスピットファイア,メッサーシュミット,スツーカなど,10種類ものマニアが泣いて喜ぶ名機が登場する。キャンペーンが進むにつれて使用できる機体が増えていくのだ。
前出のAPHと併せて,フライトシューティングの入り口としてはピッタリな作品なので,ぜひこのあたりから奥深いフライトシムの世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。
●Bus Driver 日本語マニュアル付英語版
価格:4800円(税込)
公式サイト
「Bus Driver」は,タイトルどおりのゲームである。プレイヤーはバスの運転手となり,乗客の安全や交通法規を守りつつ,タイムテーブルに沿ってバスを運行していく。まぁ言ってみれば,「電車でGo!」のバス版と思ってもらって差し支えないだろう。
操作は非常にシンプルで,ミッションはギアチェンジのないオートマチックのみ。基本的にステアリング,アクセル,ブレーキ,方向指示器の操作だけで運行していくのだ。操作はキーボードだけで行えるので,ノートPCでも気軽に遊べるだろう。
ゲームは路線の出発地点から,ルートに従ってバス停で乗客を乗せていき,時刻表どおりに終点まで安全に運行することが目的となる。というと簡単そうに聞こえるが,通常のドライブゲームと異なり,ただ目的地に速く到達することが目的ではないのだ。
BusDriverの舞台となるのは架空の都市と思われるが,高いビルが立ち並び,道路には整然と車が往来している活気ある街だ。天候は毎日同じわけではないし,当然ながら交通法規を遵守せねばならないので,赤信号では停車し,車線変更や交差点などではウィンカーを上げなければならない。邪魔な路上駐車などもあって,なかなかタイムテーブルどおりの運行はできないのだ。あまりスピードを出しすぎて,信号が赤になった途端に急ブレーキをかければ,乗客から悲鳴が上がり,ポイントが下がってしまう。
バスのような大型車は,車体が大きくホイールベースが長いため,大きな内輪差が生じる。また車体が重いため慣性も高くなり,ブレーキも利きにくいのである。普通車のようにステアリングを切ればすぐ曲がれるというものではなく,独特のドライビングテクニックが必要になるのだ。試しに乗用車の感覚でプレイすると,交差点を曲がるときに反対車線どころか,その先の壁に激突してしまうのがオチだろう。
ゲームには2階建てバスやスクールバス,はたまた囚人護送車といったものまで,12種類のバスが登場する。こうしたさまざまなバスを操って生活感のある街を走り回るのは,なかなかほかのゲームでは味わえない感覚だろう。それにも増して,電車以上にいろいろな条件が絡み合う中,時刻表どおりにバスを運転するのは,こんなにも難しいことなのかと再認識できるのではないだろうか。割と軽めのゲームなので,ちょっとした時間に「いっちょバスでも運転してくっか!」的なノリで楽しむといいかもしれない。
●Fish Fillets 2 日本語マニュアル付英語版
価格:4800円(税込)
公式サイト
のっけから言ってしまうが,このゲームの最大の特徴は,このゲームに登場する,ものすごいインパクトのある顔立ちのキャラクター達ではないだろうか。一度見たら忘れられない,夢にまで出てきそうな顔である。
「Fish Fillets 2」は,このなんともユニークな面立ちの魚が諜報部員となり,さまざまな難関を潜り抜けていくという,謎だらけの設定の水中パズルゲームだ。当然のことながら,この人面魚達(失敬)には手も足もないわけで,「押す」という動作だけで障害物を動かし,ステージをクリアしていくのだ。
基本的には,画面上にいる操作可能なお魚ちゃん(と愉快な仲間達)を外に出せればクリアとなるのだが,これがもう夜も眠れないほどの難しさ。ステージ上には藻や空き缶,歯ブラシや電話機といった障害物があり,行く手を阻んでいる。
主人公はMax PlunderとTina Guppyという2匹の魚なのだが,体の大きさの違いや力の強さに違いがあり(例えば鉄のパイプはPlunderだけが動かせる),この2匹を交互に動かして,うまく障害物を除いていかねばならない。
資料によると100以上のステージがあるとのことだが,筆者は中盤にすら到達できなかった。時間が足りないとかの問題ではなく,筆者の頭脳がついていけなかったのである。かなり手ごわいパズルゲームで,序盤ステージからかなり悩まされたわけだが,「こんなもんどうやって脱出するんだよ!」と思えるステージを,さんざん悩んだ挙句にクリアできたりすると,強烈なアハ体験を実感できるのである。これはもう,脳のエクササイズには打ってつけであろう。
しかしインパクトのあるお魚ちゃん達も,見ているうちに愛らしく思えてくるから不思議である……。さらにこのお魚ちゃん達,ゲームを通して喋りまくるのだ。何らかの操作をするたびに…いや,操作せずに考え込んでいるときでも,とにかく喋る。プレイヤーはお魚ちゃん達とパズルを通して,お友達になれるのだ。
どう見ても人気TVシリーズ「Xファイル」のパロディにしか見えないロゴと,強烈にユニークな見た目のお魚ちゃん達を見ただけで「これはちょっと……」と思ってしまいそうだが,実はなかなかの好タイトルなのではなかろうか。とくに往年のパズルゲーム「倉庫番」にハマったことのある人には最適である。
●サドンストライク 〜ゴールドエディション〜日本語版
価格:4800円(税込)
公式サイト
第二次世界大戦を扱ったチマチマ系RTSの代名詞的存在“サドンストライク”。このたびダウンロード販売されることになった「サドンストライク〜ゴールドエディション〜」は,2000年に発売された「サドンストライク」本編と,2001年に発売された拡張パック「サドンストライク 〜フォーエバー〜」がセットになったものだ。
かつて日本語版パッケージが販売されていただけに(現在も廉価版パッケージが流通している),このタイトルは上記の4本と異なり,完全日本語版である。
4Gamerではこれまでも,サドンストライクシリーズをたびたびレビュー(本編,拡張パック)してきたので,詳しい内容はそちらを参照していただき,ここでは簡単なおさらいをしておくに留めておこう。
サドンストライクシリーズといえば,クォータビューから見下ろした戦場を,チマチマと描かれた兵士や戦車などのユニットが動き回り,敵軍との激しい戦闘を繰り広げるRTSだ。だがチマチマ描かれた見た目とは裏腹に,勝利するためには実に高度なストラテジーが要求される,非常に硬派なRTSなのである。
本シリーズを硬派たらしめる要因は,ミッションの手ごわい構成もさることながら,視野の確保という部分にある。まず戦場は全体的に霞がかかったような状態になっていて,敵のユニットはどこに潜んでいるのかさっぱり分からない。自軍のユニットがいる場所は霞が晴れているが,これは視界が届いている範囲を表している。
この霞の正体は,サドンストライクシリーズをはじめとしたミリタリーRTSでは多く見られる,フォグ・オブ・ウォーというもの。視野の確保ができていれば敵に奇襲をかけたり,防衛したりも可能だが,視界の確保ができていない状態であれば,どこから撃たれているのかすら分からないまま,なす術もなく全滅という憂き目にあうことになる。
このように,視野の広いユニットをうまく使ったり,地形を有効利用しての索敵能力が要求されるのが大きな特徴といえるだろう。
とはいえ,「サドンストライク本編はあまりに難しすぎる」というプレイヤーからの声もあってか,拡張パックでは難易度の調整ができるようになった。ゴールドエディションでは本編のキャンペーンも難度設定できるので,かなり遊びやすくなっているだろう。
キャンペーンはサドンストライク本編が「連合軍」「ドイツ軍」「ロシア軍」の3本,拡張パックの追加ミッションが「アメリカ軍」「イギリス軍」「ドイツ軍」「ロシア軍」という合計7本ものキャンペーンが収録されている。全部をプレイするとなると,かなりの時間楽しめることだろう。
最新作「サドンストライク:リソースウォー 日本語版」が,同じくズーから12月に発売される。このシリーズやミリタリーRTSに縁のなかった人は,原点ともいえる本作から始めてみてはいかがだろう。
ラインナップのさらなる拡充に期待!
以上5本が,2007年11月現在のラインナップである。サドンストライクだけはパッケージ品の再販だが,残りの4本は国内ではダウンロードでのみ販売されるものだ。いずれもわりと軽めのゲームで,ちょっとした時間に遊べるお手軽なものばかり。
ダウンロード販売ということで,その手間や時間,DMM.comの会員登録といった面倒臭さは否めないが,これまで日本でパッケージ化にまでは至らず輸入パッケージを購入するしか手段がなかったタイトルを,安心して手に入れられるという点で意義があるのではないだろうか。
なお購入方法の詳細については,DMM.comの購入ページで直接確認してほしい。4Gamerでは購入に関する質問についてお答えできないのでご了承を。
扱うテーマがマイナーだったり,そこそこ良い出来のゲームなのにビッグタイトルの陰に隠れてしまったり,ゲームのボリュームが小さくてパッケージ販売に踏み切れなかったりと,世界にはまだまだ惜しいゲームが数多く埋もれているはず。このダウンロード販売によって,より多くの「知る人ぞ知る」的な作品を日本で楽しむチャンスが増えるのではないだろうか。
さらにはマイナー作品のほか,ビッグタイトルもダウンロード販売によって安価に購入できるようになるかもしれない。それは我々PCゲーマーにとって歓迎すべきことであり,今後のラインナップのさらなる拡充に期待したい。
- 関連タイトル:
Attack on Pearl Harbor
- 関連タイトル:
Combat Wings - Battle of Britain 日本語マニュアル付英語版
- 関連タイトル:
Bus Driver
- 関連タイトル:
Fish Fillets 2
- 関連タイトル:
サドンストライク〜ゴールドエディション〜日本語版
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