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印刷2008/03/31 21:44

連載

剣と魔法の博物館 〜モンスター編〜
第79回:スレイプニル(Sleipnir)
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 馬という動物は古くから,移動手段や財産としてなど,さまざまな形で人々の生活に関わってきた。そんな共存関係の長さも影響してか,剣と魔法の世界には,ギリシャ神話に登場するペガサス,グリフォンと馬の混血で不可能の象徴ともされるヒポグリフ,水棲馬ケルピーなどなど,馬をベースとしたモンスターが多数棲息している。
 今回は,しばしば評価基準としてスピードが重要視されることがあるこうしたモンスターの中で「最速」と評されることのあるスレイプニル(Sleipnir)を紹介してみよう。
 スレイプニルは北欧神話に登場する八本足の馬である。オーディンの騎馬として知られ,陸地や海上だけでなく,死者の国をも駆けるという神獣だ。走る速度は,すべての馬の頂点に君臨するといわれており,ファンタジー界最速の馬と呼んでもいいだろう。
 スレイプニルといえば,ゲームにはあまり登場しないのだが,強いて挙げるなら「女神転生IMAGINE」のものが有名だろう。同作でのスレイプニルは,8本足で緑のたてがみを持つ白馬として描かれており,電撃を無効化し,炎に耐性を持ち,魔力を弱点とする設定になっている。
 なおこれは余談だが,日本でスレイプニルといえば,Webブラウザの名前としてのイメージが強いと思われるが,これもスレイプニルの「最速」にちなんだものなのかもしれない。

 

 北欧神話におけるスレイプニルは,イタズラ好きな神として知られるロキから生まれたとされている。
 あるとき,神々のもとに一人の男がやってきた。彼は神々の住むアースガルドの周囲に城壁を作ってはどうか? と提案し,もし今冬の間に城壁を作り上げた場合,太陽と月と女神フレイヤをもらいたいと申し出た。これを聞いた神々は,できるわけがないとタカをくくっていたためにそれに同意したのだが,男が連れてきたスヴァジルファリという馬が目を見張るような活躍をし,城壁はすごい勢いで作られていく。やがて冬が終わろうとしたとき,すでに完成は目前となっていた。このままでは城壁が完成してしまうと慌てた神々は,ロキに「なんとかせよ」と命じたのである。
 ロキは牝馬に変身すると,スヴァジルファリを誘惑した。その誘惑が功を奏し,城壁は完成を迎えることはなかったのである。このことがきっかけとなり,スヴァジルファリとロキの間にはスレイプニルという八本足の馬が生まれたというのだ(ちなみに,スヴァジルファリを連れてきた男は,実は神々に敵対する巨人族だったことが発覚し,彼は雷神トールによって撲殺されてしまった)。

 その後スレイプニルはオーディンに献上されて,彼の騎馬として活躍することになる。スレイプニルはのちにグラニという子供を残しており,これはオーディンから英雄シグルズ(ジークフリート)に与えられている。また,ディートリヒの活躍を描いたサガ「シドレクスサガ」(「シズレクのサガ」とも)には,ハイメという馬術に長けた人物が登場するが,実は彼の一族は,スレイプニルの血統に連なる馬を育てているという。

 スレイプニルは死者の国をも駆けたというが,実はシベリアのシャーマンの伝説にも,似たような八本足の馬が登場し,現実世界と異世界との橋渡し役を担っている。ひょっとすると両者の間には,何か密接な関係があるのかもしれない。

 

次回予告:スマウグ

 

■■Murayama(ライター)■■
先日仕事の合間を縫って,友人と二人で花見に行ったというMurayama。ビール8缶,ワイン2本を空けたのちに居酒屋へなだれ込み,そこでもしこたま飲んだという。その後Murayamaは,朝方飯田橋の駅で友人からのメールを受信し,目覚めた。「途中で抜け出しちゃって悪い」という内容だったそうだが,Murayamaはどのタイミングで別れたのか,そもそも,直前までどこで飲んでいたのかも記憶にないという。せっかくの花見が台なしだと思うのだが,どうなんでしょうか。
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